無顆粒球症の症状・原因・治療法を紹介!早期発見のポイントや注意する薬を知ろう!

無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)という病気について、聞いたことはありますか?無顆粒球症は、簡単に言ってしまいますと、血液中の白血球の数が減少してしまう状態のことです。

血液中の白血球が減少してしまうと、免疫システムが働かなくなり、感染症に罹患しやすくなります。免疫システムが働きませんから、感染症にかかると重症化の恐れもあり、最悪の場合には死に至る可能性もあるといわれます。

そして、無顆粒球症の原因は、他の治療のために服用している薬剤であることがほとんどだといいますから、とても驚くべきことですよね。

そのような無顆粒球症の原因、発症の仕組み、症状、早期発見のポイント、治療方法についてまとめてみましたので、参考にしてください。

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白血球について

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無顆粒球症の「顆粒球(かりゅうきゅう)」とは、白血球の一つです。ですから、無顆粒球症を理解するには、前提として白血球についての知識が必要になります。

そこで、まずは白血球についての概要を見ていきましょう。

白血球の構成

血液は、無形成分の血漿(血漿タンパク質、糖、脂質、電解質、老廃物、水分など)と有形成分の血球(白血球、赤血球、血小板)で構成されています。

このように白血球は血液の血球成分の一つであり、生体防御に不可欠な免疫を担当する細胞です。さらに白血球の構成要素を分類すると次のようになります。

  • 顆粒球
  • リンパ球
  • 単球

顆粒球とは?

顆粒球は、体内に入ってきた病原体に対して、攻撃をする免疫担当細胞の一つで、白血球の半分以上を占めます。

顆粒球は、その働きや特定色素に対する染まりやすさによって次の3種類に分類されます。

  • 好中球(こうちゅうきゅう)
  • 好酸球(こうさんきゅう)
  • 好塩基球(こうえんききゅう)

好中球

好中球は、中性色素に染まりやすく、細菌やカビといった微生物に攻撃をする免疫担当細胞です。顆粒球の9割以上を好中球が占めています。

好中球は、異物に向かって進む性質「遊走能」と異物に近づいたらそれを細胞内に取り込む性質「貪食能」を有しています。この貪食能から、好中球は貪食細胞とも呼ばれます。

好中球に取り込まれた異物は、好中球のもつ酵素から作り出された活性酸素によって消化、殺菌、分解をされて死滅します。好中球は、一連の異物処理を行うと自らも死滅してしまいます。好中球の死骸は、単球から分化したマクロファージによって処理されるか、膿として体外に排出されます。

好酸球

好酸球は、酸性色素に染まりやすい免疫担当細胞です。好酸球は、好中球と同様に「遊走能」と「貪食能」を持ちます。しかし、好酸球が捕食する対象は、好中球の捕食対象より少し大きい花粉や寄生虫などです。

好酸球は、異物を細胞内に取り込むと、特殊な蛋白によって異物を処理します。

好塩基球

好塩基球は、塩基性色素に染まりやすく、顆粒球の中でも1%以下の数少ない細胞です。好塩基球の役割については不明な部分が多いのですが、体外からアレルギー物質(抗原)が体内に入って好塩基球とくっつくと、好塩基球はヒスタミンを放出してアレルギー反応を起こすことがわかっています。

リンパ球とは?

リンパ球は、体内に侵入してきたあらゆる異物に対して攻撃をする免疫担当細胞の一つで、白血球の30%から40%を占めます。リンパ球は、次の3種類に分類されます。

  • B細胞
  • T細胞
  • ナチュラルキラー細胞

B細胞

B細胞は、体内に異物が入ってくると抗体(免疫グロブリン)を放出する働きがあります。この抗体は、特定の抗原(異物)に結合する機能があります。抗体が抗原に結合すると、抗原は病原体としての働きを失います。また、抗体は抗原に結合することで、好中球などの貪食細胞による異物への攻撃の目印となる役割もあります。

T細胞

T細胞は、ヘルパーT細胞とキラーT細胞に分類されます。

ヘルパーT細胞は、キラーT細胞やマクロファージを活性化させたり、B細胞の抗体産生を助けます。これに対して、キラーT細胞は、ウイルスに感染した細胞を認識して破壊します。

ナチュラルキラー細胞

ナチュラルキラー細胞は、ウイルスに感染した細胞や腫瘍となった細胞を認識して破壊します。

単球

単球は、血液中で異物を見つけると、その異物を取り込む「貪食能」をもち、取り込んだ異物を分解・処理します。

一方で、単球は血管外に出てマクロファージという貪食細胞に分化・増殖もします。マクロファージになると、血管外の組織や体腔を「遊走」し、血管外に潜む異物を「貪食」します。また、マクロファージは新たな異物を貪食すると、ヘルパーT細胞とB細胞に対して抗体を作るための抗原提示を行うため、抗原提示細胞とも呼ばれます。さらに、マクロファージは、寿命を迎えた赤血球、白血球、血小板、その他各種細胞の死骸も取り込んで処理します。

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無顆粒球症とは?

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では、無顆粒球症とは、どういう病気なのでしょうか?

無顆粒球症は、血液中の白血球の一つである顆粒球、その中でも特に好中球が減少する病気です。顆粒球減少症や好中球減少症とも呼ばれることがあります。

好中球は、前述のように細菌やカビといった微生物を取り込み処理することで、細菌などを原因とする感染症から身体を守っています。その好中球が減少すると、細菌などに対する身体の抵抗力が弱体化してしまい、感染症に罹患する可能性が高くなります。

つまり、無顆粒球症とは、血液中の顆粒球、特に好中球が何らかの原因によって減少してしまい、細菌などに対する身体の抵抗力が弱くなる状態といえます。

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無顆粒球症の原因と発症の仕組み

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無顆粒球症は、どのような原因によって発症するのでしょうか?

無顆粒球症の原因

無顆粒球症の原因は、他の病気の治療に投与される薬剤の副作用です。無顆粒球症の原因となる可能性がある代表的な薬剤は、次の通りです。

  • β-ラクタム系の抗生物質【ペニシリン系、セファム系など】
  • 合成抗菌薬【サルファ剤系など】
  • 鎮痛解熱薬【アミノピリンなど】
  • 抗がん剤【オキサリプラチン(商品名:エルプラット)など】
  • 抗甲状腺薬【チアマゾール(商品名:メルカゾール)、プロピルチオウラシルなど】
  • 消化性潰瘍治療薬【ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)など】
  • 抗不整脈薬【プロカインアミドなど】
  • 抗精神病薬【クロルプロマジンなど】
  • 抗血小板薬【チクロピジン(商品名:パナルジン)など】
  • 抗リウマチ薬【サラゾスルファピリジンなど】

この他にも、無顆粒球症の原因となる可能性のある薬剤は、非常に多く存在します。詳しくは、無顆粒球症治療のガイドラインとして厚生労働省が平成19年にまとめた「重篤副作用疾患別対応マニュアル」をご覧ください。

ただし、これらの薬剤による副作用は、必ず起こるというものではありませんので注意が必要です。副作用が発生した際に、迅速に認識し対処することが重要です。

無顆粒球症の発症の仕組み

無顆粒球症の発生機序(発生メカニズム)は、大きく分けて2つに分類されます。

  • 免疫学的機序
  • 中毒性機序

免疫学的機序

免疫学的機序は、投与された薬剤が好中球の細胞膜のたんぱく質と結合してハプテンとして働き、抗好中球抗体の産生を引き起こす仕組みです。この抗体が結合した好中球は、貪食細胞に捕食され破壊されます。

ハプテン(不完全抗原)とは、単独では免疫反応を引き起こさないものの、体内のたんぱく質と結合することで完全抗原となる物質のことです。

つまり、薬剤が好中球と結合したことで、この結合物が体内では異物として認識されるということです。結合物が異物として認識されると、体内では異物に対する抗体が作られます。抗体ができた後に、再び異物(結合物)が体内に現れると、抗体は異物と結びついて貪食細胞への目印となって、最終的に貪食細胞に異物もろとも捕食され処理されます。

このような結果、血液中の好中球の数が減少してしまうのです。

中毒性機序

そもそも好中球をはじめとする白血球は、赤血球や血小板などとともに骨髄に存在する造血幹細胞から作り出されます。造血幹細胞が分化・増殖して前駆細胞となり、前駆細胞が分化・増殖して最終的に好中球などが作られます。

この過程において、薬剤が好中球へと分化・増殖する前段階の顆粒球系前駆細胞の細胞質内蛋白と結合して、直接毒性によって前駆細胞を傷つけます。

その結果、好中球への分化・増殖に異常が生じて、作り出される好中球の数そのものが減少するので、血液中の好中球の数も減ってしまいます。

薬剤と発生機序(発生メカニズム)の関係

無顆粒球症の原因となる薬剤と、その薬剤が無顆粒球症を引き起こす仕組みがわかりましたが、すべての薬剤が免疫学的機序と中毒性機序のどちらかに明確に分類されるわけではありません。

免疫学的機序の場合、一種のアレルギーのような免疫反応ですから、薬剤の使用量に関係なく生じます(用量非依存性)。これに対して中毒性機序の場合、薬剤の使用量が増えるとその毒性の影響が前駆細胞に及ぶことになります(用量依存性)。

たとえば、チアマゾールという抗甲状腺薬(日本での商品名はメルカゾール)は、用量依存性とされ中毒性機序により、通常では使用開始から1~2ヶ月で無顆粒球症を発症するとされています。しかし、以前の使用歴があると、通常より早めに発症する場合があると報告されており、そこには免疫学的機序が作用していると疑われています。

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無顆粒球症の症状

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無顆粒球症が発症すると、どのような症状が見られるのでしょうか?

無顆粒球症の初期症状

無顆粒球症は、血液中の顆粒球、特に好中球が薬剤の副作用によって減少してしまい、細菌などに対する身体の抵抗力が弱くなる状態です。ですから、無顆粒球症自体は無症状です。

しかし、身体の抵抗力が低下した結果、様々な感染症に罹患することによって症状が現れます。初期症状として見られるのは、風邪に似た次のような症状です。

  • 急な発熱(多くの場合で38度以上の高熱になります)
  • 悪寒、寒気
  • 咽頭部(のど)の腫れ
  • 頭痛
  • 頸部リンパ節腫脹(首にあるリンパ節が腫れます)

無顆粒球症の重症化

上記のような初期症状を、単なる風邪と思い放置してしまうと重症化する可能性があります。なぜなら、免疫システムの中核となる好中球が減少し、感染症の原因となる細菌などは暴れ放題になっているのが理由です。

重症化すると、次のような合併症を引き起こし、最悪の場合は死に至る可能性もあります。

  • 肺炎
  • 敗血症
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無顆粒球症の早期発見のポイント

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前述のように無顆粒球症を放置してしまうと、最悪の場合は死に至ることもあります。ですから、無顆粒球症を早期発見できることにこしたことはありません。

そこで、早期発見につながるポイントを探ります。

他の病気の治療で薬剤服用中に、無顆粒球症の初期症状が見られた場合

ここまで見てきたように、無顆粒球症の原因は、他の病気の治療のために服用している薬剤です。このような薬剤を服用中に、風邪のような症状が発症した場合は無顆粒球症の可能性があります。放置せずに医師に相談しましょう。

また、このような薬剤の服用については、医師や薬剤師から無顆粒球症の発症可能性について説明があるのが通常です。このような説明を受けた方で、風邪のような症状が現れた場合も無顆粒球症の可能性がありますので、ただちに医師に相談しましょう。

原因薬の服用開始から2ヶ月前後の発症が多い

無顆粒球症は、無顆粒球症の原因となる薬剤を服用開始してから、2ヶ月前後での発症が多いとされています。

ですから、このような薬剤の服用開始から2ヶ月前後で、風邪のような症状が現れた場合は、放置せず医師に相談しましょう。

血液検査の実施

無顆粒球症を引き起こす可能性のある薬剤には、使用説明書などの添付文書で定期的に血液検査を実施するように記載があります。

たとえば、抗甲状腺薬のチアマゾール(日本での商品名はメルカゾール)の添付文書では、服用開始後少なくとも2ヶ月間は、原則として2週間に1度の血液検査を実施するように記載があります。

血液検査で、常に白血球、顆粒球、好中球の数を把握していれば、無顆粒球症を早期に発見することができます。

高齢の女性や腎臓の悪い人の発症割合が多い

無顆粒球症は、高齢の女性や腎臓の悪い人に発症する割合が高いことが報告されています。

したがって、高齢の女性や腎臓の悪い人で、無顆粒球症の初期症状が見られた場合は、医師に相談して血液検査を受けて白血球、顆粒球、好中球の数を調査したほうがよいかもしれません。

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無顆粒球症の治療方法

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では、無顆粒球症の初期症状や血液検査などから、無顆粒球症を発症していることが判明した場合、どのような治療が行われるのでしょうか?

原因の疑いのある薬剤の服用中止

無顆粒球症は、他の病気の治療のために服用している薬剤の副作用です。ですから、無顆粒球症の治療で最も大事なことは、無顆粒球症の原因として疑わしい薬剤の服用を即時に中止することです。

広域スペクトラムの抗菌薬を使用

無顆粒球症の初期症状が現れている場合は、すでに何らかの細菌などを原因とする感染症に罹患している可能性があります。そこで、被疑薬の服用中止と同時に、血液検査とその血液の培養を含めた細菌学的検査を行います。

その上で、広域スペクトラムの抗菌薬を用いて、感染症の治療をすぐに開始します。広域スペクトラムとは、抗菌薬の薬効効果の対象とする微生物の範囲が広い、つまり多くの細菌やカビなどの微生物に対して効果を発揮するということです。

被疑薬の服用中止と広域スペクトラムの抗菌薬を用いた感染症治療で、被疑薬の服用中止から1週間から3週間程度で、好中球の数は回復するとされています。

無菌室での治療

前述したように、無顆粒球症は重症化すると、肺炎や敗血症などの合併症から死に至る場合もあります。

そのため、このような重症化リスクを回避するため、入院して無菌室で治療をする場合もあります。

G-CSF製剤の使用

G-CSFとは、顆粒球コロニー刺激因子の英語の略号です。顆粒球コロニー刺激因子は、マクロファージなどの免疫細胞で生産されるタンパク質です。このタンパク質には、顆粒球の産生を促進し、好中球の機能を高める作用があります。

そのため、遺伝子組替え技術によって医薬品へ応用され、G-CSF製剤が作られました。

このG-CSF製剤の使用については、好中球の回復が早くなり、広域スペクトラムの抗菌薬使用量を減らすことができ、入院期間も短くすることができるため、無顆粒球症の治療に使用するように勧める報告もあります。

ただし、G-CSF製剤は、商品化されたいずれの医薬品も相当高価なようです。

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まとめ

いかがでしたか?

医学の進歩で様々な病気の治療薬が開発された結果、好中球が減少して無顆粒球症になってしまう可能性は、200人に1人程度と非常に高くなっています。

しかし、無顆粒球症の原因となる薬剤の服用を中止し、適切な治療を行えば、感染症に罹患したとしても重症化する可能性は決して大きくありません。

ただし、感染症を重症化させないためには、早期に無顆粒球症であることを認識することが重要です。

そのためには、本記事や厚生労働省作成のマニュアルを参考にして、早期発見への意識を持つことが肝要です。

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