飲み会の翌日お腹を壊したという経験のある方、結構多いのではないでしょうか。食あたりでもないのに起きてしまった下痢は胃腸の働きが弱まっていることに起因しているかもしれません。
宴会の季節、楽しい飲み会からそうでもないものまで、その内容は様々ですが、暴飲暴食が続いてしまって…という方は要注意です!ストレスの多い日々に加えて食べすぎたり飲み過ぎたり、というのは胃腸に大きなダメージを与えます。
健康状態そのものに大きく関わる胃腸を大切にするためにできる対策や、下痢を起こしてしまったときの対処法についてまとめました。
下痢になる仕組み
下痢には水分吸収の仕組みが関わっています。健康な便は大体6~7割が水分です。これよりも水分が多くなった状態が軟便で、水分が90%を超えた状態が下痢と呼ばれています。
食事をすると胃や十二指腸で消化を行い、続いて小腸、大腸で吸収が行われます。人間が食事などの際に口にする水分は、一日3リットル程度、消化の際に胃液などの消化液が6リットル程出るため、一日に腸まで届く水分は9リットル程あることになります。
このうち小腸で7リットル程度、大腸で残りの2リットルを吸収し、便として排出されるときにはほとんど水分は残っていないのが健康な状態です。
食べ過ぎで下痢が起こる理由
下痢が起こるのは、便として出て来る水分が多過ぎるせいであるというのは前述の通りですが、その理由は水分過多か消化不良による所が大きいと言えます。
水分過多
腸の中に流れ込む水分が多いと吸収が追いつかなくなります。単純に口にした水分が多過ぎる場合は、この症状が出るということで暴飲暴食の影響がダイレクトに現れます。ただし、暴飲暴食以外でもアレルギーがあるものや毒素のあるものを食べてしまった場合には、悪いものを体内から追い出そうとする分泌液が出るため、これを腸が吸収しきれず下痢を起こすというパターンもあります。
腸内の水分に影響を与える食べ物は以下の通りです。
牛乳
腸内の水分を変化させる食物が牛乳です。牛乳には乳糖が含まれていますが、乳糖の分解が苦手な体質の人が多くいます。
乳糖は水分を引き寄せる性質を持っており、このような性質を持つ物質が分解されず腸の中に留まるため水分が多くなってしまいます。
甘味料
甘味料のうち消化に影響を与えるのは難消化性糖類と呼ばれる甘みです。セルロース、ペクチン、人工甘味料などがこれに該当します。
名前の通り消化されにくい成分のため腸に溜まりやすく、これらが高濃度で腸に溜まることで腸内の濃度が高くなり、腸管から水分が分泌されます。
マグネシウム
マグネシウムは便秘薬として使われることがあるように、腸内の水分を増やす成分です。仕組みとしては、甘味料と同様に腸内の濃度を高くして分泌液を多くする作用を持ちます。
マグネシウムは大豆や魚介などに含まれ、通常の摂取で過剰症になることは少ない成分なのでいくら食べたからといって下痢を起こすとは限りませんが、サプリメントなどで大量に摂取しすぎると影響が出るようです。
※食べ過ぎを直接の原因とするものではありませんが、腸が炎症を起こしている場合、腸管粘膜からの出血や浸出液が出るため同様の症状が出る場合があります。
消化不良
入って来た水分は通常通りでも、吸収が鈍っていると水分を取りきることができません。食べ過ぎによる下痢が起きるもう一つの大きな理由がこの点に見られます。
特に消化がされにくい食材や食べ合わせによって消化不良が起こります。胃での消化不良で腸に送られた食材は吸収がうまく行われず、水分量が多く残ったまま便になります。
それによって下痢が引き起こるのです。
その中でも特に腸の吸収に影響を与えるのはアルコールなどです。
アルコール
アルコールは胆汁の生成に影響を与えます。胆汁は消化を助けるものですが、これを作る肝臓がアルコールの分解に手一杯になってしまうため胆汁の生成まで手が回らず、消化が遅れてしまうのです。
また、分解しきれなかったアルコールはそのままの状態で体外に排出されます。吸収してしまうと体内でアセトアルデヒドに変換しその後水と二酸化炭素に分解しなくては居ないため、そのまま排出されるのです。
そのまま排出が行われると当然水分量が多くなってしまうので便に水分が多く下痢になってしまいます。
お酒と下痢の関係については、お酒による下痢の原因を紹介!いったいどういう仕組み?の記事を参考にしてください。
腸管の運動異常
水分の吸収に影響があると述べたアルコールですが、実は他の悪影響もあるようです。
第一に、アルコールにはぜんどう運動を活発にするという効果があります。自律神経に働きかけてぜんどう運動を活発にしすぎることで、吸収しきれないままで体外に出てしまうという結果が生まれます。
第二に、アルコールが胃腸を傷つけることが下痢の原因として挙げられます。アルコールは胃や小腸の粘膜に小さな傷をつけるために炎症が起き、(1)で示した腸内の水分過多につながります。
他の病気の可能性
食事をしたあとに下痢をする場合、多くの方は「食べ過ぎてしまったせいかな」と考えるかと思いますが、別の病気が原因の場合もあります。病気の判断は専門家でも難しいので、自己判断せず診察を受けましょう。
過敏性腸症候群
ストレスなどにより腸が過敏になって大腸の運動に異常が生じ、腹痛や便秘、下痢が起こる病気です。腸は脳と密接につながっているため、ストレスが直に影響してしまうのです。
症状が軽いものも含めればこの症状の患者は日本に1000万人以上の患者がいると言われています。神経伝達物質であるセロトニンが腸内で過敏に反応することで腸のぜん動運動が働き下痢になると言われています。
中には、ガスが出てしまう型の人や便秘と下痢を交互に発症する混合型の人も居ます。特に酷い人では、電車やバスの中や会社の会議の時になど、決まったタイミングでストレスがトリガーになり症状を発症する人も居ます。
この症状の治療法には、薬物療法、食事療法、運動療法がありますが、薬物療法で即効性のある改善を行うことが出来ますが、根本から完治する訳ではなく、あくまで一時的な治療なので一緒に食事治療や運動療法やカウンセリングと言った治療法が必要になります。
また、市販薬でも薬に頼りすぎる治療ですと、どんどん薬の効きが悪くなったり、自己修復能力が低くなってしまいます。自己免疫での腸内環境の状態を良くすし善玉菌を増やすため食生活や生活習慣の見直しを行って治療していきましょう。
過敏性腸症候群の詳しい情報については過敏性腸症候群の症状をチェック!治療方法は?を御覧ください。
クローン病
消化管に炎症を生じる病気で、原因不明の特定疾患です。若い人に多く見られます。この病気によって腸管粘膜に炎症が起こり吸収が低下し、炎症によって分泌物が増加することで下痢を引き起こします。ひどい場合は腸に穴が空いてしまうこともあります。
日本での発症の増加の原因としては、特にアメリカでの発症確率が日本の10倍であることから食の欧米化や水道水の水質の変化などが原因ではないかと考えられていますが、まだはっきりとした原因の解明はされていません。
症状は下痢や腹痛や血便などで、稀に腸閉塞を引き起こしたりします。症状が他の病気との重複が多いため、クローン病の判明には時間がかかります。あまりにも長期間これらの症状が収まらない場合に精密検査が行われ判明することとなります。
過敏性腸症候群同様完治が難しい病気であります。特にクローン病は不明な点が多く、まだはっきりとした治療法が確立されていないのが現状です。
早期発見が症状の回復に重要になりますので、異変を感じた際は専門医師の診断を受けるようにしましょう。
クローン病に関する詳しい情報は
こちらを御覧ください。
胃腸炎
カフェインの摂り過ぎや冷たいものを多く食べたこと、辛いものなどの刺激物の過剰摂取、アルコールの摂り過ぎなどが原因になって引き起こる胃腸の炎症です。
食べ過ぎのの他には、薬の副作用や過度な喫煙やストレスや疲れやウィルスによって発症する場合があります。この病気の症状は胃や腸の粘膜が炎症することで引き起こります。
主に下痢や嘔吐や腹痛や発熱などが現れます。特に急性胃腸炎では症状が重くなるケースがあります。長い場合で3〜5日間症状が続く場合があります。多くの場合は2,3日の安静で症状が和らぐでしょう。
特に食べ過ぎが原因の胃腸炎の場合は半日間ほど絶食をして胃を休ませてあげることが重要です。この時水分はしっかり摂りましょう。胃を冷やすことは大きな疲労に繋がりますので白湯や常温のスポーツドリンクでの水分補給が適しています。
しかし、食事をしたほうが痛みが和らぐ場合は胃酸過多や十二指腸潰瘍の可能性が考えられるため、この場合は空腹を避けたほうが良いでしょう。
下痢を予防するには
では、下痢が起きないようにするにはどうすれば良いか紹介していきます。下痢の予防には原因となるものの把握をしておく必要があります。食べ過ぎによるものなのか、食べた食べ物の内容によるものなのかしっかり把握しておきましょう。食物アレルギーがある人はその食材によって下痢になりやすいので注意しましょう。
生活習慣
体調不良時には、そもそもの胃腸の機能が低下していることがあります。そのため、ここに食事によって様々な要因が乗ることで余計に下痢を起こすリスクが高まります。
また、腸内が疲弊している状態も同様に胃腸の働きを悪くします。腸が疲れる原因は食べ過ぎや飲み過ぎだけではなく、時間に縛られず食べてしまう・間食が多いことも腸を疲弊させます。いつもちょこちょこ仕事をしていると腸も疲れてしまうのです。
さらに腸の疲れにはストレスも関係しています。ストレスは腸の働きを悪くするだけではなく、満腹中枢の働きにも影響を与えます。疲れている腸にいくらでも食べ物を流し込んでしまうことになるので、充分な休息、睡眠などストレス対策にも気を配りましょう。
食事の習慣
食べ過ぎ、飲み過ぎになりやすい食べ方に、ながら食べ・早食いがあります。
一気に食べてしまったり他のことをしながら食事することで、満腹感が満たされず食べ過ぎてしまう場合があります。よく噛んで集中して食事するようにしましょう。
よく噛むことで満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを抑えることが出来ます。また、食べ物をよく咀嚼することで、胃に運ばれたものが細かく消化されやすくなるので胃の負担が少なくなります。
噛む回数が少ないとそれだけ食べ物が大きい状態で胃で消化されるので、消化不良を引き起こす原因になります。
腸内環境を整える
普段の食事や運動によって腸の活動を促進させ、腸内細菌のバランスをいい状態に保っておくことが下痢や便秘などの腸内トラブルにならないためには必要なアクションです。
まずは、悪玉菌を増やさないことが重要です。悪玉菌が腸内に増えると腸の働きが低下し、体内に有害物質を作り出してしまいます。特に悪玉菌は肉などの動物性タンパク質を好み、それを餌にしてどんどん増えていきます。特に食事内容が偏ることが悪循環んの原因になりますので、注意しましょう。
善玉菌を増やす為には、直接的に善玉菌を腸内に届けるか、腸内の善玉菌を増やすかの二つの方法に絞られます。ヨーグルトやチーズや発酵食品やヤクルトなどを食べて直接腸内に善玉菌を送るか、善玉菌の餌になる、食物繊維やオリゴ糖の含まれる食品を摂ることが効果的です。
下痢を起こしてしまった場合の対策
下痢を起こしてしまった場合には、荒れた胃腸を休めるものや腸内の水分量を調節してくれる食べ物を採りましょう。(ただし基本的には下痢の症状がある程度回復してからの方が良いでしょう。)
絶食
食べ過ぎなどが原因で下痢になってしまった場合は、一旦胃腸を休ませてあげることが必要になります。半日から一日間ほど絶食をして、胃腸を休ませてあげましょう。
下痢による脱水症状の危険性があるので水分補給は忘れないようにしましょう。絶食の後は緩やかに機能を再開させるために、消化の良いものを食べるようにし、様子を見ましょう。
ひどい場合2〜3日経過しても下痢が解消しないようなら、専門医に診察してもらい治療が必要になるでしょう。
バナナ
バナナに含まれる水溶性食物繊維ペクチンは整腸作用を持ち、腸内を回復させる働きがあります。暴飲暴食が続いているかなと思ったら、食べておくのも予防になります。
その他にもバナナにはオリゴ糖が含まれています。なのでこのオリゴ糖が腸の善玉菌であるビフィズス菌の餌になるため腸内環境を良くすることが出来ます。
また水溶性食物繊維の他にも不溶性食物繊維も含まれているため、便秘にも効果的です。しかし、食べ慣れていないと2本3本と食べた時に逆に下痢になってしまうかもしれません。効果を上げるためには消化を良くするために、ミキサーにかけてジュースにするか、良く熟れた熟したバナナを食べるようにしましょう。
ウーロン茶
下痢を起こした時に怖いのが脱水症状です。いつもよりも水分を排出しているため、水分補給が必要です。冷たい飲み物は胃腸の働きを悪くするので暖かいものを選ぶと良いでしょう。
ウーロン茶に含まれるタンニンは便を硬い状態に戻す効果があります。逆に、刺激になりやすい緑茶やコーヒー、ジュース、炭酸飲料は不適切です。前述の通り牛乳も下痢の時は避けた方がよいでしょう。
野菜スープ
温かいスープで胃腸を温めてあげましょう。特に野菜のスープは消化にもいいですし、食物繊維を沢山含んだ根菜などを豊富に入れてあげれば、腸内環境を改善することが出来ます。
さらに栄養が豊富に取れるため、弱った胃腸の機能を回復してあげるには最適の食事になります。その他のものでは、具たっぷりのおかゆや、うどんなど、体を温めつつ消化の良いものが機能回復には最適でしょう。
あまりにも空腹が苦しいときや下痢だけど何か食べたい時におすすめです。
まとめ
宴会の多い時期でついつい食べ過ぎたり飲み過ぎたりしてしまいますが、下痢を起こす程の暴飲暴食はかなり身体に負担を掛けています。日頃から食事の習慣や内容に気を配り、胃腸の健康を保ちましょう。
また、脱水症状は非常に危険なものです。下痢を起こしてしまったら水分補給を心がけましょう。つらい場合は医療機関で医師の診察を受けて下さい。食事の内容やアレルギーの有無、薬を飲んだかどうかなどが分かっているとスムーズです。
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