夜寝ていると、ふと目が覚めて体が動かない!意識ははっきりしてるのに声もでない!なんていう状態になったことはありませんか?
これが「金縛り」です。昔は幽霊のせいとかお化けがでるという噂もあり、心霊現象と思われていた方も多いのではないでしょうか。
しかし医学的視点や科学的な目線で金縛りを見つめると実は身体的、精神的な原因があって金縛りになっていることがわかります。一度なってしまうと、割と頻繁に起こることも少なくありません。
今回はそんな金縛りについて書きたいと思います。毎晩金縛りに苦しんでいる人また金縛りに関しての情報について知りたい人は是非読んでみてください。
金縛りのメカニズム
金縛りのメカニズムについて現段階でわかっていることを紹介します。
そのためにはまず、レム睡眠とノンレム睡眠という二つの睡眠サイクルを人間は繰り返しているということを知らなくては行けません。
この二つの状態や働きについて知ることで、金縛りのメカニズムがなんとなくわかってきます。
睡眠状態について
主な睡眠状態について説明します。
覚醒状態
睡眠状況における覚醒状態は完全に起きている状態のことを指します。
脳と身体が完全に起きている状態でそれぞれの神経がリンクしている状態です。意識があり、睡眠しているとはいえない状態になります。
ノンレム睡眠
まず覚醒状態から睡眠状態に移行するとき、一気にノンレム睡眠まで神経が落ちていきます。
深い眠りと呼ばれる睡眠がノンレム睡眠で、脳が深い休息状態に入っていて身体が働いている状態です。脳が休息しているので夢を見にくい状態でもあります。
およそ30分間〜45分間で最も深い領域に達します。
この状態では副交感神経が優位に働いていて血流は穏やかです。深い睡眠効果を得られ、脳内での情報の処理や整理を行っています。しかし体温が徐々に低下していき、だいたい0.5度ほどの体温低下が確認されます。
このまま脳が停止している状態が続くと体温低下が危険域に達するので「視交叉上核」(しこうさじょうかく)と呼ばれる前頭葉の部分の働きにより自動的にレム睡眠へと移行していきます。
レム睡眠
レム睡眠はノンレム睡眠の次に到達する波です。
レム睡眠は急速眼球運動および眼振様眼球運動と呼ばれる上下左右に微弱に眼球が動いていることが確認される睡眠サイクルで無意識下の中で脳が起動している状態になります。
身体が休んでいて脳が働いている状態ですので夢を見やすいタイミングです。
ノンレム睡眠で低下した体温を再び上昇させるために脳の神経が働いて血圧の変動を起こし、身体を温めていきます。これは再びノンレム睡眠に移行するための準備と言っていいでしょう。
ですので、薄着やクーラーの風などが直接当たっている部屋では上手に体温調節を行うことが出来ずに睡眠不足に陥ってしまう可能性があり、更に神経を働かせて身体を温めようとします。
人間はこのノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返す睡眠サイクルを形成して身体と脳を交互に休めてより質の高い睡眠効果を得ています。
金縛りを起こすタイミングは?
上記の二つの睡眠サイクルからも想像できるかもしれませんが金縛りを引き起こすのはレム睡眠の時になります。
レム睡眠は脳が働いているのに身体は休んでいる状態。
詰まりこのタイミングで脳が、より覚醒状態に近い状態まで活動してしまうと、半目が開いているところから視覚が脳で処理されて「自分は起きている」と認識できるのに(実際にはレム睡眠状態)身体が全く反応しないので混乱しパニックになります。
脳と身体の神経が完全に覚醒状態になっていないために、機能が連動していないので身体は動きません。これがレム睡眠時に発生する金縛りの全貌です。
恐怖体験や幻覚はどうして?
金縛り=怖い幻覚を見るというイメージが付きまとっていますが、どうしてこの様な幻覚を見てしまうのでしょうか?
それは金縛りを恐怖として認識している人が多いことから、それを危険なものあるいは精神的に逃げるべきものとして自己認識していることが関係しています。
これは動物学的にも言えることですが、何かしらの恐怖体験やトラウマ、固定概念などが存在しているとき、動物は無意識的に自分自信に虚像を見せて恐怖感を煽り、そこから効率的に逃げようとする本能が働きます。
(これは全く危険ではない人間に対して猫や犬などが逃げる態勢や警戒心を取ることと似ています。)
危険と感じられる空気感などを異常に敏感に感じ、その状況での(テレビの音、風の寒さ、寝姿勢からくる足への圧迫感など)を心霊的に認識して脳が虚像を投影してしまうということから幻覚を見るのです。
現に幻覚のイメージがそれぞれ共通しており、テレビで目撃される”それ”に近い形を殆どの人が見てしまっています。これは学術的には脳が作り出した恐怖の象徴を見ているに他なりません。
金縛りの症状
金縛りがどういった症状があるのかを紹介します。
- 幻聴がする
- 目が覚めても体が動かせない
- 声を出そうとしても出ない
- 息がしづらい
- 気配を感じる
- 目を閉じようとしても閉じれない
- 以上が金縛りの代表的な症状です。
上記の症状が発生することが一般的です。
金縛りの症状について
幽霊が原因と証言している人が体験した話ですと、実際に金縛りの最中に身体の上に髪の毛の長い女性がのしかかっていて、起き上がることができなかった。ずっと落ち武者に睨まれていたなど、何か怖い物を見えている状態で身体が動かなくなってしまいます。
基本的には人形の幽霊を見てしまうことが多いようですね。完全に恐怖体験です。これによって声も出せないので余計にパニックを起こしてしまって呼吸なども乱れてしまうという事が発生します。
特に金縛りが発生しやすい年齢について
1987年の大学生に取ったアンケート結果では回答者の40%に金縛りを経験したことがあるという報告が上がっています。
またそれらの大学生はいずれも15〜18歳までの間に金縛りを経験しており、思春期の後期に最も金縛りが発生しやすいことがわかっています。
これはこの年代に睡眠サイクルの乱れが頻発している事も指し示す結果と言えるでしょう。
またこの年齢層に頻発している事も、睡眠不足から来る身体のだるさを、幻覚の症状から幽霊によるマイナス現象と認識して一気に拡散してしまうという事に至ったのでしょう。
昨今一気に拡散しているYouTuberという職業も若い世代の子どもたちが特に注目している事で一気に広まりましたし、この拡散力は侮れません。
金縛りが起きやすい条件
金縛りはレム睡眠の時、つまり体は寝ているのに脳が起きている状態のときに目が覚めてしまうことで起きる現象です。どういう時にこの状態になってしまうのかを紹介します。
①疲れている
疲労が蓄積すると金縛りが起きやすくなります。
特に有酸素運動をすると起きやすいといわれています。疲労がたまると、睡眠のリズムも崩れやすくなるためにレム睡眠の時に目が覚める可能性が高くなってしまうのです。
逆をいうと、金縛りが起きるということは体が疲れているというサインでもあります。無理をしている可能性があるのでゆっくり休みましょう。
②睡眠の姿勢
実は仰向けで寝ていると金縛りが起きる可能性が高くなります。よくテレビなどで金縛りの紹介をしている時ってだいたい仰向けですよね。
仰向けで寝ることで、体が緩む確率が増してレム睡眠の割合が増えるのが原因とされています。
金縛りを極力避けたいときは、うつ伏せか横向きになって寝ましょう。
③旅行
意外と旅先での金縛りを経験する方も多いようです。
旅行というのは誰しもがワクワクするものです。このワクワクした状態により脳が興奮した状態になっているのが原因です。脳が興奮したまま眠りにつくとレム睡眠のまま入眠してしまい、睡眠のバランスが崩れやすくなります。
また海外旅行などは時差ボケや、慣れない環境により予想以上の疲れが蓄積するため、睡眠のリズムが狂いやすいのも原因の一つといえます。
④寝る時の環境
寝ている時に起きるものなので、寝る時の環境によっては金縛りが起きやすくなってしまいます。
布団が柔らかすぎる・枕が高すぎる・パジャマがきつすぎる・布団が重いなどはあまり良い環境とはいえません。眠りを浅くしてしまいレム睡眠を誘発する可能性があります。
自分に一番良い睡眠環境をつくるようにしましょう!
⑤ストレス
過度のストレスを抱えると金縛りが起きやすくなります。
ストレスを感じると脳が、副腎皮質刺激ホルモンという成分を分泌し、体が緊張状態になってしまい睡眠の質を低下させてしまうのです。そのためレム睡眠時に目が覚めてしまう可能性が高くなってしまいます。
あまりストレスをためないように、リラックスするように心がけましょう。
⑥スマートフォン
眠る前にスマートフォンをいじっていると金縛りが起きやすくなります。
暗い部屋で、スマートフォンをみることで脳が活性化してしまうのが原因です。特に最近のスマートフォンは脳を活性化させるような光が発生しているものが多いのです。
眠りにつく1時間前にはスマートフォンを見ないようにする方がようでしょう。
金縛りが起きた時の対処方法
金縛りに起きた時は、体が動かせないのに意識はあるのでなんだか気持ち悪い感覚になりますよね。いったいどのように対処すれば良いのかを紹介します。
・目を動かす
手足を動かすことができませんが、目は動かせるという場合に有効です。
目を上下左右に動かすことで、脳が起きていることを理解して筋肉を動かそうとするため、解放される場合があります。
また、目を動かすことで解除できることを理解しているだけで効果も高くなります。
・深呼吸をする
もちろん体は動かなくても呼吸は行えるので、深く呼吸することで脳が起きたことを理解して、金縛りが解除される場合があります。
・強い意志を持つ
自分に金縛りが起きている事実を理解した上で、脳に体を動かそうとする意志を伝えることができれば逃れられる可能性があります。
・誰かに触ってもらう
ほかの人に触ってもらえれば簡単に解除できるのですが、夜中なので難しい可能性が高いでしょう。さらに、声がでない場合もあるのでこの解決方法は稀だといえます。
以上が金縛りが起きた時の対処方法です。しかし無理に解除しようとすると体が疲労する可能性があります。特に金縛りが起きても大きな問題はありませんので、あぁ金縛りだ。くらいの感じでそっと目を閉じて眠るというのも良いでしょう。
頻繁に起きる場合
上記のような原因にあたることを行っていないのに、金縛りがよく起きるという場合はもしかすると病気の可能性があります。
・ナルコレプシー
睡眠障害の一種で、昼間でも猛烈な睡魔に襲われて睡眠が必要な状態になってしまう病気です。
原因としては、「オレキシン」という成分が足りなくなってしまい、脳が異常をきたすことで発症します。予備軍も含めて日本人の600人に1人がなっているといい、国民病ともいえる病気です。さらにこのオレキシンが減少する原因は未だにわかっていません。
症状としては、金縛りを起こしやすい・急に睡眠に落ちてしまう・夜中に目が覚めて眠れなくなる・脱力感などがあります。特に金縛りは、週に何度も起きてしまうほどです。
規則正しい生活や、1日3食バランス良く美味しく味わいながら食べることで、改善することが可能とされています。どうしても改善されない場合は、医師に相談して少しづつ治療していきましょう。
運転中などに眠たくなってしまうと、命を落とす危険性もあるので早期改善することが必要です。また周囲の理解も生活には欠かせないので、しっかりと病気と向き合いましょう。
・自律神経失調症
自立神経のバランスが崩れてしまった時に起きる症状です。
過度なストレスや、不規則な生活などが原因で発症し、仕事が忙しく夜遅くまで働いている人などがなりやすいといえます。
動悸が激しくなったり、急に落ち込んだりする症状がみられ、パニック障害やうつ病などを引き起こす要因にもなってしまいます。
自律神経が乱れているため自律神経失調症になると、脳が緊張している状態が続くために金縛りが頻繁に起きる場合があります。
そのほかにも様々な症状があり、特定の病気と判断されない時に、自律神経失調症と医者に診断されるケースが多いようです。
心の病気でもあるので、長期の治療を要する場合があります。
まとめ
金縛りが起きる原因
- 疲労の蓄積による睡眠リズムの崩れ
- 仰向けで寝ているためレム睡眠が増えている
- 旅行などで脳が興奮状態に陥っている
- ストレスにより睡眠の質が下がっている
- 寝る前のスマートフォンいじりで脳が活性化している
金縛りが起きた時の対処方法
- 目を動かして脳に体が起きていることを脳に伝える
- 深呼吸をする
- 強い意志をもつことで、体が起きていることを脳に伝える
- 誰かに触ってもらう
金縛りが頻繁に起きる病気
- ナルコレプシー
- 自律神経失調症
以上が今回の記事のまとめです。金縛りは心霊現象ではありません。睡眠がうまくとれていない時に起きるものなのです。逆をいうと体の異常を現すサインの様なものなので、金縛りが起きた時は体を休めてリラックスするようにしましょう。
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