ワーカホリック(ワーカーホリック)という言葉を、目にしたり耳にしたことがある人は少なくないのではないでしょうか?ワーカホリックとは、仕事中毒という意味の外来語です。
そして、世界の国々の中でも労働時間が長いことで知られる日本には、ワーカホリックの人が多いとされています。近年は、過労死などが社会問題となったことから、働き方に対する問題提起や改革の機運もあり、ワーカホリックという言葉を新聞記事やテレビのニュース番組などで触れる機会も多くなっています。
そこで今回は、ワーカホリックの人に見られる特徴、ワーカホリックとなる原因やワーカホリックによる影響などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
ワーカホリックとは?
そもそもワーカホリックという言葉は、どのような意味を有する言葉なのでしょうか?
耳なじみの無い人もいるかもしれませんので、ワーカホリックの人の特徴やワーカホリックの原因・影響などに触れる前に、ワーカホリックという言葉の意味を確認しておく必要があるでしょう。
そこで、まずはワーカホリックという言葉の意味について、再確認しておこうと思います。
ワーカホリックとは?
ワーカホリックとは、自分の健康状態や家族の社会生活を犠牲にしてまでも、仕事に打ち込んでいる状態や様子のこと、あるいは仕事に打ち込む人のことを言います。すなわち、ワーカホリックは、いわゆる仕事中毒の状態や様子、あるいは仕事中毒者・仕事依存症を意味します。
ワーカホリックという言葉には、次のような二つのポイントがあります。
- 仕事をし過ぎる。働き過ぎる。
- 自分や家族との私生活を犠牲にする。
仕事をし過ぎる
仕事や働くことの意味については、その人の価値観や生き方によって様々な意味が存在するでしょう。ある人にとっては、仕事とは自己実現や社会への貢献であるかもしれません。しかしながら、仕事や働くことの根底には、食べていくため、生活をするためにお金を得るということが存在します。つまり極論すれば、仕事とは単に生活の糧を得る手段にすぎないのです。
ですから、ワーカホリックの人にとっては、生活の糧を得る手段にすぎない仕事が、何らかの理由によって、それ以上の存在になってしまっているのです。
私生活を犠牲にする
ワーカホリックの人は、仕事に打ち込んで働きすぎるあまりに、自分の健康状態に無頓着になって、過剰労働の結果として心身に不調が生じるケースがあります。また、ワーカホリックの人が家庭を持っている場合には、家族という最小の共同体・社会組織にも様々な影響が及ぶケースがあります。
このようにワーカホリックという場合には、自分自身や家族関係といった私生活が犠牲になるという側面も大きなポイントになります。
ワーカホリックの語源
ワーカホリック(workaholic)という言葉は、仕事を意味するworkとアルコール中毒・アルコール依存症を意味するalcoholicという二つの英単語からできた合成語です。1970年代の米国人作家ウェイン・オーツが最初に用いてから、社会一般で広く使われるようになったとされています。
ワーカホリックという言葉が生まれた背景には、欧米の国々で基本となる個人や家族を大事にする個人主義という価値観やキリスト教に由来する宗教的な価値観があると考えられています。また、戦後の高度成長に沸く日本の長時間労働と相対的に景気が低迷していたアメリカとの間の経済状況の差も影響していたことは間違いないでしょう。
ワーカホリックの人に見られる特徴
このようにワーカホリックの人は、自分や家族を犠牲にしてでも仕事に邁進する仕事中毒・仕事依存症の人を言います。
それでは、ワーカホリックの人には、どのような特徴が共通して見られるのでしょうか?そこで、ワーカホリックの人に見られる傾向のある特徴について、ご紹介したいと思います。
仕事に熱中し、特に趣味がない
ワーカホリックの人は、いわゆる仕事中毒であり仕事依存症であるために、周りから見ると異常なまでに仕事に熱中し、仕事一辺倒な時間の使い方をします。
そのため、ワーカホリックの人は普通の人が1つや2つは持っている趣味も特に無く、休みに遊ぶということも少ない傾向があります。むしろ、ワーカホリックの人は趣味が仕事と言っても過言ではなく、自分の持ちうるエネルギーを惜しみなく仕事関係のことに注ぎ込みます。
別の言い方をすれば、普通の人が仕事とは別に趣味などの世界で自分を表現するように、ワーカホリックの人はビジネスを通じて自分を表現しているわけです。仕事・ビジネスで成果を出すことによって、ワーカホリックの人は自らの存在価値を再確認するなど、ワーカホリックの人にとっては仕事やビジネスが承認欲求を満たす場所になっていると言うこともできるでしょう。
それゆえ、ワーカホリックの人の中には、仕事をしていないと不安や恐怖を感じてしまい、仕事をしなければならない強迫観念にとりつかれているケースもあります。というのも、ワーカホリックの人にとっては仕事をしていなければ、自分の存在価値を確認する術がないからです。
このようにワーカホリックの人は、趣味や遊びといったことは二の次にして、仕事に対して度を越した熱中を示し、仕事で成果を得ることに努力を惜しまないのです。
残業や休日出勤を厭わない
ワーカホリックの人の多くに見られる特徴として、残業や休日出勤を厭わずに仕事をしていることも挙げられるでしょう。
ワーカホリックの人は、前述のように異常なほど仕事に熱中しますので、出勤時間が同僚よりも早い傾向があり、しかも会社の上司・部下が帰宅してもなお職場に残って、いわゆる残業に勤しみます。また、ワーカホリックの人は、本来は休日である日であっても、休暇をとらず休日出勤をして仕事をしたり、あるいは仕事を家に持ち帰る傾向もあります。というのも、前述したようにワーカホリックの人は無趣味であることが多く、仕事以外にすることが無くて手持ち無沙汰になるからです。また、仕事をすることで自分の価値を再認識するため、仕事をしないで休日を過ごすことに抵抗感を感じるからでもあります。
このようにワーカホリックの人は、起きている間のほとんどで仕事のことを考えていて、プライベートについては無頓着なのです。そして、周囲にはプライベートを犠牲にしていると見えても、本人にとっては当たり前のことであって、プライベートを犠牲にしている意識が希薄である場合も少なくありません。
仕事優先で通信機器を手放さない
仕事が最優先であって、そのために携帯電話・スマートフォン・パソコンといった通信機器を肌身離さず持ち歩く傾向が高いことも、ワーカホリックの人に多く見られる特徴と言えるでしょう。
ワーカホリックの人でも仕事や職場から離れざるを得ない場合もありますが、その場合であっても常に仕事で関係性のある人と連絡を取れるように、ワーカホリックの人は携帯電話やスマホを手放すことがありません。また、ワーカホリックの人の中には、いつでも仕事内容を確認・管理できるようにパソコンを持ち歩く人すら存在します。
この点、ワーカホリックの人は仕事の生産性向上や効率アップのために、新しいテクノロジーや新たな通信デバイスへの関心が高く、新製品が登場するとチェックを怠りません。今や情報収集などにも欠かせないスマホは仕事をする上でも必要不可欠であり、ワーカホリックの人の中にはスマホ中毒・テクノロジー中毒と言える人もいるようです。
このようにワーカホリックの人は、最先端の通信デバイスを用いながら、いつでも、どこでも仕事優先の生活をする傾向があるのです。
プライベートな人間関係が希薄
ワーカホリックの人は、前述したように仕事に熱中して残業や休日出勤もするために、どうしてもプライベートな人間関係が希薄になりがちです。
ワーカホリックの人は、プライベートなことに時間を割かないことによって、学生時代からの友だちとも疎遠になりがちで、しかも仕事以外の交流が無いので新たな友人を作る機会も少ないのです。
また、ワーカホリックの男性に多く見られるのは、人生を共に歩むと決めたパートナーの女性との結婚生活についても、優先度が仕事よりも低くなりがちなことです。男性本人には仕事優先であることが当たり前でパートナーに対する罪悪感が無いケースもあれば、罪悪感を感じているケースもありますが、いずれにしても仕事を優先することによりパートナーとの人間関係が希薄になりがちであることに変わりはありません。
そして、ワーカホリックの人は、このような行動をとることによって、徐々にプライベートな世界での居場所を失っていきます。ですから、プライベートな世界に自分の居場所がないために、余計に仕事へと邁進することになるのです。
ワーカホリックとなる原因
このようにワーカホリックの人には、いくつかの外形的で分かりやすい特徴が見られます。それでは、ワーカホリックの人は、どうして仕事中毒や仕事依存症と呼ばれるような状態になるのでしょうか?
そこで、ワーカホリックとなる原因について、ご紹介したいと思います。
真面目で完璧主義な性格
ワーカホリックとなる原因について、心理学的な調査研究によると、真面目で完璧主義な性格とワーカホリックの関連性が指摘されています。ワーカホリックの人は、真面目な性格の人が多く、その真面目さに起因した完璧主義的な考え方を持っている傾向があるのだそうです。
この点、ワーカホリックの人は、ここまで何度も触れてきたように仕事に対して熱中しますが、仕事に熱中するということは仕事に対して真摯で真面目だと言えます。そのため、ワーカホリックの人は、仕事の成果・結果を質の高いものにする責任感も持ち合わせているのです。つまり、ワーカホリックの人は仕事に熱中して仕事優先のライフスタイルを送っていますが、ワーカホリックの人は仕事に熱中するだけでなく仕事の成果・結果も極めて大切にするのです。
そして、その結果・成果に対する完璧主義が強くなると、例えば、同僚や部下である他人の仕事に満足できず、他人に仕事を任すことができないという症状が現れます。他人に仕事を任すことができなければ自分でやるより他なく、さらにワーカホリックの人の仕事が増える悪循環に陥るわけです。
ちなみに、ワーカホリックの人の完璧主義は、時としてワーカホリックの人と周囲の人との間の人間関係に軋轢が生じさせることもありますから注意が必要です。
負けず嫌いで上昇志向の強い性格
同様の心理学的な調査研究によると、ワーカホリックとなる原因について、負けず嫌いで上昇志向の強い性格もワーカホリックとの関連性を指摘されています。
ワーカホリックの人は仕事に熱中して、仕事の結果も重視します。その背景には、ワーカホリックの人の負けず嫌いで強気な性格と、その性格から導かれる強い上昇志向や強い出世欲が存在する傾向があるというわけです。
そのため、例えば、ワーカホリックの人は自らのキャリアを意識し、会社組織やグループの中で自分の存在感を高めようとして、仕事に熱中して成果・結果にこだわるわけです。時には自己中心的な振る舞いが問題点となる場合もありますが、ワーカホリックの人による仕事の成果・結果が所属会社や取引先から評価されることが多いのも事実です。
このようにワーカホリックとなる原因の一つには、負けず嫌いな性格からくる強い上昇志向と出世欲が関係していると言えるでしょう。
依存症の心理的メカニズム
ワーカホリックを仕事依存症として捉えると、依存症を発症させる心理的メカニズムもワーカホリックとなる要因の一つとして挙げられるでしょう。
依存症になる要因は複数存在しますが、その一つに否認という心理的防御行動があります。否認とは、自分にとって不快で苦痛な事実から逃げるためにとる行動のことです。
例えば、家庭生活における夫婦仲や子育て問題などから現実逃避するために、仕事が忙しいことを理由にするケースが考えられます。つまり、仕事に打ち込み仕事が忙しい状況を作ることで、直面する夫婦仲や子育て問題から目を背けているわけです。そして、夫婦仲などの問題は放置すればするほど悪化しますから、問題の悪化に連れて現実逃避が強化されて仕事依存症も強まるのです。
このようにワーカホリックとなる原因には、依存症を発症させる心理的メカニズムが関与している側面も否定できません。
ワーカホリックによる影響
このようにワーカホリックになる原因は一様ではなく、性格的なものや心理的メカニズムなどが関与していると考えられています。
それでは、ある人が仕事中毒・仕事依存症というワーカホリックの状態になると、どのような影響が現れるのでしょうか?そこで、ワーカホリックによる影響について、ご紹介したいと思います。
自分自身への影響
ワーカホリックの人は、自分の意思で仕事をしていても、残業や休日出勤など休みなく働き続けるために、肉体的ストレスだけでなく精神的ストレスも蓄積することになります。そして、ストレスが体内に蓄積されると、循環器や消化器など生命維持に必要な臓器をコントロールする自律神経のバランスが乱れ、自律神経失調症に至る場合があります。自律神経失調症になると、動悸・息切れ・めまい・冷や汗・頭痛・吐き気・倦怠感・不眠症などといった様々な身体症状が現れ、イライラ感・不安感・情緒不安定などの精神症状も現れる可能性があります。
それでも働き続けると、慢性疲労などから脳血管障害や虚血性心疾患などを招いて、突然死・過労死の危険性も高まります。また、精神状態の悪化からうつ病と診断される場合もあり、過労自殺に発展する危険性もあります。
ですから、ワーカホリックの人は、そのような危険性を認識して、休息をとったりストレス解消をできる趣味を持つなど、解決策・解決方法を意識的に実施する必要があるでしょう。
家族への影響
ワーカホリックの人が結婚して家族持ちの場合は、最も影響を受ける存在がパートナーや子どもといった家族であると言えるでしょう。
たしかに、仕事は生活の糧を得る手段ですから、周囲が納得するような仕事の成果を上げることも必要になるでしょう。しかしながら、過度に仕事に熱中するあまり家族への対応がおろそかになると、最も近しい存在である家族との人間関係が希薄になり、最終的には離婚や家族崩壊に至ります。
ですから、ワーカホリックの人は、意識的に家族とのコミュニケーションを増やす必要があると言えるでしょう。家族との人間関係が崩れてから、修復しようとしても後の祭りですから。
周囲の人への影響
ワーカホリックの人は、前述のように他人に仕事を任せることができない傾向にあります。それゆえ、いくらワーカホリックの人が効率的に仕事をしようとしても、周囲の同僚との連携がなければ、全体としての生産性は上がりません。
また、ワーカホリックの人の完璧主義的な仕事姿勢は、ともすると同僚などへの厳しい態度となってしまい、周囲との人間関係にも軋轢を生んでしまう可能性があります。そして、働き方を見直す機運が高まる昨今の状況の中では、周囲の同僚や部下が帰宅しにくい雰囲気を作り出してしまっているかもしれません。
このようにワーカホリックの人は、自分自身は正しいと思って仕事をしていても、意図せず周囲に迷惑をかけてしまっているのかもしれません。ですから、ワーカホリックの人は自分自身の働きぶりについて、意識して客観視することによって、自分が周囲の人に迷惑をかけていないかを検証したほうが良いでしょう。また、ワーカホリックの人が管理職の立場にあれば、リーダー術を学ぶなど部下の職務満足度を高める努力が必要なのかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか?ワーカホリックの人に見られる特徴、ワーカホリックとなる原因やワーカホリックによる影響などについて、ご理解いただけたでしょうか?
近年は、過労死やブラック企業などが社会問題となったことにより、働き方に対する問題提起や改革の機運が高まっています。それゆえ、仕事中毒・仕事依存症と呼ばれるワーカホリックな人の存在にも、注目が集まりやすい状況だと言えるでしょう。
仕事や働くことの意味については、その人の価値観や生き方によって様々な意味が存在して、自己実現や社会への貢献に向けてガムシャラに仕事をする人もいるでしょう。自分の意思で仕事をするわけですから、それを否定するものではありません。
ただし、そのワーカホリックな姿勢が、自分の意図しないところで他人にも影響を及ぼしていることについては、認識と配慮を示すことが求められていると言えるでしょう。
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