世の中には生まれついて病気を発病してしまう赤ちゃんがいます。それはすぐに治療ができるものから、治療が難しい病気まで幅が広く、親や家族に大きな不安をもたらすこともあります。
スタージ・ウェーバー症候群は、指定難病の病気の一つです。得意な皮膚症状やてんかんなどの症状がみられ、治療も難しい病気です。では、このスタージ・ウェーバー症候群について詳しくみていきましょう。
この記事の目次
スタージ・ウェーバー症候群とは
スタージ・ウェーバー症候群は脳髄膜・脈絡膜の血管病変、軟膜血管腫(脳軟膜、脳表を覆う膜)、および顔面皮膚の血管腫を特徴とする病気です。特に顔面皮膚にできる血管腫は、得意な赤みを帯びた症状を起こし、ポートワイン母斑(ブドウ酒様血管腫)と呼ばれます。
非常に稀な病気・脳病変で50,000〜100,000人に1人の割合で発症します。発病者は年間で10〜20人といわれていて、現在1,000人程度の患者がいるとされています。
発病の原因については遺伝的な要因が示唆されていますが、具体的な原因特定までは至っていないのが現状です。遺伝性の可能性は低く、家族内で発症するケースはないようです。また、妊娠期の薬剤使用や細菌・ウイルス感染等によっては発生しないことがわかっています。
スタージ・ウェーバー症候群の症状
では、スタージ・ウェーバー症候群は具体的にどのような症状を発症するのでしょうか。難治性の病気であり、その後の生活に支障をきたすこともあります。以下の症状があげられます。
神経の症状
頭蓋内病変では脳内の血流が悪くなるため、運動機能の低下・麻痺、偏頭痛、そして難治性てんかんを発症します。特にてんかん発作・症状、運動麻痺は注意深く観察する必要があり、病気・疾患の診断の材料として重要です。
てんかん症状は四肢の痙攣のほか、動きが緩慢になったり、停止しているように思われることもあります。後者の場合、症状に気付きにくいことがあるため、よく観察する必要があります。痙攣発作が起きた時は注意が必要でしょう。
そのほか、頭痛症状では機嫌が悪い、嘔吐などの症状がみられます。幼児は言葉で症状を伝えることができないので、こういった症状がみられるようであれば注意が必要でしょう。
皮膚症状
ポートワイン斑、毛細血管奇形とも呼ばれる症状を発症します。顔面、特に三叉神経の領域に症状がでます。顔面の両の側に紅斑がみられる場合は完全型、片側だけに紅斑がみられる場合は不完全型といいます。ポートワイン母斑のみ見られ、他に異常がない場合を単純性血管腫(通常は片側性)といいます。
眼球症状
てんかん、皮膚症状のほか、目にも深刻な症状を招くことがあります。具体的には緑内障を発症することがあります。緑内障は視神経に何かしらの異常が起こることで、視野狭窄が起こる病気です。
緑内障の影響で牛眼という症状も起こります。これは眼圧が高くなることで、角膜が伸展し、見た目からもそれとわかる症状を発症します。乳児では光に敏感だったり、涙の量が多いなどの眼症状がみられます。
知能障害
ウェーバー病では知能障害がみられることがあります。その数は患者の8割ともいわれています。
そのほかの症状
症状の程度はそれぞれですが、人によっては精神障害・知能症状を発症することがあります。社会生活を営んでいけるかどうか、こういったことが親としては心配になる要素でしょう。病変部の石灰化、虚血などもみられます。けいれん発作などの症状が出る場合は周囲のサポートが必要となることもあります。
スタージ・ウェーバー症候群の治療
難治性の病気でも、症状を改善することができます。病気とうまく付き合っていくことが、より良い生活を実現するために必要なのです。では、どのような治療をしていくのかみていきましょう。
抗てんかん薬の投与
てんかん症状が認められる場合、薬によって症状を抑えていきます。抗てんかん薬を投与することで、症状改善が期待できます。効果を実感できるのはおおよそ50%程度といわれています。
一方、薬を投与しても症状の改善がみられない場合は、脳外科手術を検討します。発作の改善、また発達を促すために必要であり、医師との十分な検討が必要でしょう。その後の成長を考えた治療をしていくことが重要です。
点眼薬による治療
緑内障など目に症状が現れているときは点眼薬を用いて治療をしていきます。これにより眼圧降下が期待できます。一方で、点眼薬を使用してもあまり効果がないようであれば、手術などの外科的治療をすることもあります。
緑内障の症状は初期の段階ではそれほどはっきりわからないことがあります。症状が徐々に進行し、悪化してから病気がわかるということもあります。点眼薬や手術でも治療が難しくなってしまうことがありますから、視覚に関して何かしら異常が見て取れるようであれば、早期対応が大切です。
レーザー治療
皮膚に現れたワインレッド母斑にはレーザー治療を施します。これにより、母斑を除去することができます。皮膚科や形成外科で術式を受けることができ、数回実施することで改善が期待できます。
一方、年齢を重ねるほどその効果が薄くなることがあります。このため、レーザー治療を受けるようであれば、早めのほうがいいでしょう。皮膚にあざを残さないようにするためにも、早めに治療を受けるようにしてみてください。
治療方法のポイント
ウェーバー病の症状は人それぞれ進行や程度が異なります。深刻な症状が出ているケースもあれば、徐々に症状が進行していくケースもあり、注意深い経過観察が必要とされるでしょう。
特にてんかん症状は日常生活に大きな影響を与えることがあります。この症状を最小限に抑え、社会・日常生活を送れるようにすることが、この病気治療の目的でもあります。
根本的な治療がなく、症状を改善することが病気の目的になってしまいますから、いかに病気とうまく付き合っていくかというのがポイントになるでしょう。
皮膚の治療は早めに
ウェーバー病では皮膚症状が最も目につく症状です。人によって顔面の広範囲に痣ができることがあり、物心がつく頃まで残ってしまうとどうしても気になってしまうかもしれません。
そうならないためには、早めに治療を始めることが大切です。もちろん、皮膚の治療だけではなく、てんかん症状なども早めに治療を開始することが大切です。どんな病気でもそうですが、早期治療が予後を決定づけることがあり、注意が必要でしょう。
スタージ・ウェーバー症候群の経過
病気にかかったとき、気になるのはその後の経過です。生まれつきの病気ですから、その子が将来どうなってしまうのかについては、親としてとても心配になってしまうでしょう。
具体的には以下の経過をたどるといわれています。
抗てんかん薬によって症状を抑えることができる
日常生活で影響が出る症状として、てんかんがありました。てんかん症状には抗てんかん薬を服用することで症状を抑えることができます。ただ、症状の再発の可能性があることから、継続的な服用が望ましいとされています。
てんかん治療に関して、悲観的に構えてしまうことがあるかもしれません。しかし、けいれんがでたときは薬をうまく併用していくことで、日常生活に支障がないよう付き合っていくことができます。
手術を行うケースもある
頭蓋内に血管腫がある場合、薬による治療は可能です。しかし、その症状が広範囲に現れ、薬ので治癒が期待できない場合、手術をすることがあります。血管腫部の脳摘出・切り離しを行います。
脳の手術をする場合、その後の後遺症のことを考えなければなりません。それは運動機能・言語機能など、日常生活に必要な機能への後遺症です。手術をする・しないについては医師と十分話し合う必要があります。
一方で、早期に脳手術を行うことで、失われた機能を他の部位が補うことがあります。後遺症と今後の発達を天秤にかけ、メリットがあるかを考え、手術を行なっていきます。
緑内障の治療は難しいケースがある
ウェーバー病を発病したとしても、緑内障を発症しないことがあります。一方で、徐々に眼の内圧が上がり、深刻な目の病気を招くことがあります。突発的な症状ではないため、周囲の人も気づくことが難しいケースがあります。
通常、緑内障への治療は点眼薬によって行いますが、症状が改善されなかったり、重くなってくるようであれば手術を行います。しかし、手術を行なったとしても治療が難しいケースもあります。症状を悪化させないためには、早めの治療を心がける必要があるでしょう。
皮膚の血管腫の治療も早めに
病気特有の皮膚疾患は治療が遅れるほど、残りやすくなってしまいます。このため、幼児期できちんとした皮膚治療を受けることが望ましいでしょう。
顔に痣が残ってしまうと心的な負担となってしまうことがあるので要注意です。
どんな症状でも敏感に受け止める
てんかん症状や緑内障、皮膚の血管腫などの症状はどれも深刻な状態です。早めの治療をすることで、ある程度抑えることができますが、症状がいつまでも続き、悪化していくケースもあります。
症状が悪化していると感じているのであれば、すぐさま医療機関へ行く必要があるでしょう。自己判断をし放置してしまうと、症状が悪化してしまうこともあるかもしれません。症状の大小に限らず、何か異変が起きた時はすぐさま対応することが大切でしょう。
スタージ・ウェーバー症候群と障害等級
スタージ・ウェーバー症候群では、症状の程度によって日常生活に深刻な影響を与えることがあります。自身では自立した生活が難しく、周囲のサポートを常に必要とするケースもあります。
病気の主な症状はてんかん、精神発達遅滞、偏頭痛、ポートワイン斑、緑内障です。そのうち、てんかん・精神発達の遅滞がみられると障害等級が上がり、日常生活に支援が必要と判断されます。
日常生活を営めるか
てんかん症状や精神運動の遅滞などが見られても、日常生活が送れるかどうかは人によります。てんかんの頻度が少なかったり、精神症状の程度が小さく、自立した判断ができれば、生活を送るのには問題はありません。
一方で突発的な出来事などに対して、冷静に対処できないこともあります。周囲の人とペースが合わないこともありますし、作業が止まってしまうこともあるでしょう。社会生活を営むことが難しいケースがあります。
その他の先天性の病気やてんかんと似た病気
先天的な病気やてんかんに似た病気はスタージ・ウェーバー病だけではなく、他にも様々なものがあります。
時には深刻な病気であるケースもあり、命の危険があるかもしれません。具体的には以下の病気が挙げられます。
ダウン症
ダウン症は染色体異常によって発症する先天性疾患の1つです。23対46本の染色体のうち、21番目の染色体の数が1本増え、合計47本になることで発病します。とても有名な病気といえるでしょう。
ダウン症では見た目に特徴があります。目尻の釣り上がり、顔が丸く平坦、耳の変形などが見られます。街中でもしばしダウン症の方を見かけることがあるかと思います。
ダウン症の症状は外見的なものだけではなく、発達障害を招くこともあります。具体的には知的障害、発語障害などの障害が起こります。ただ、症状は個人差による部分が多く、非常に幅が広いことが特徴です。
その他、循環器、消化器官に合併症がみられることがあります。心臓に異常があるケースが多く、適切な外科治療を必要とするケースがあります。症状がわかった時点でこれら内臓の検査をする必要があります。
脳動静脈奇形
脳動静脈奇形はその名の通り、脳の動脈・静脈において異常な血管構成がされてしまう病気です。胎児の段階で血管の構成がうまくいかず、正常な血管結合ができない結果、発症します。
血管の構成が異なるため、血管に通常ではかからないような強い圧がかかることがあります。それにより、脳出血を発症するリスクが高まります。命に関わるケースがあり、早期の治療が望ましいでしょう。病気の有無はMRIなどの検査によって発見することができます。
治療は開頭術や放射線治療、カテーテルなどがあります。開頭術では血管の流れを事前に検査し治療を行います。放射線治療ではガンマナイフと呼ばれる治療法が行われます。カテーテル治療では、血管を閉塞する閉塞物質を注入することで、治療します。
チック症
自分の意思とは無関係に体の一部が動いてしまう病気です。運動症状だけではなく、発声に現れることもあります。周囲の人から見るとチック症を理解できず、ふざけているようにも見えることがあります。
チック症には運動チックと音声チックがあります。運動チックは体を規則的、もしくは不規則に動かす症状がみられます。その場で飛び跳ねるといった症状もみられます。音声チックは寄声をあげたり、自制の聞かない言葉を発します。また、人に不快感を与える言葉を言ってしまうこともあります。チック症の治療では心理療法・行動療法を行なっていきます。
過換気症候群
過換気症候群は過度なストレスによって呼吸をするのが難しくなる状態です。過呼吸や失神、パニック症状を招き、発症者を苦しめることがあります。ウェーバー症とは全く原因が異なり、ストレスによって起こります。
そのため、症状を解消するためには本人を落ち着かせることが大切です。また、症状を再発させないためにも、ストレスをうまく発散したり、環境を変えるなどの行動が必要です。
ナルコレプシー
日中の普段であれば起きているような時間帯に、強い眠気に襲われそのまま寝てしまう病気です。睡眠発作とも呼ばれることがあります。誰しも日中眠いことがあると思いますが、ナルコレプシーでは突然睡眠に入る症状が見られます。一見しててんかんのようにも思えますが、原因は異なります。脳内の神経細胞の異常によって起こるとされていますが、その原因については不明な部分があります。
ナルコレプシーの治療では生活習慣の改善、薬物療法が行われます。生活習慣の改善では、計画的に睡眠をとることで症状を軽減することが期待できます。突然の睡魔ののち、気がついたら寝ていた。こういったことがあるようでしたら、ナルコレプシーかもしれません。
まとめ
先天性の病気は誰に原因があるものではありません。時として自分を責めてしまうなんてこともあるかもしれませんが、どこかで納得させる必要があるのでしょう。
非常に稀な病気でありますが、病気とどう向き合って行くか、どう生活していくかということが、今後のために大切なことなのかもれませんね。
薬によって症状を改善することもできますし、付き合い方・向き合い方が大事なのでしょう。症状の機微に敏感になり、適切な対処ができるようになることが大切です。