目はものを見る器官として、日常生活に欠かせない存在ですよね。運動や不慮の事故などでケガをしてしまうと、コンタクトレンズをつけることもできませんから、目の悪い人にとっては非常に困りますよね。普段、当たり前に見えているからこそ、不便さや不安を感じることもたくさんあるでしょう。また、実生活に大きな影響をもたらすことになります。
さて、目のトラブルには様々ありますが、今回は眼窩底骨折についてお話していきます。目の骨折と聞くととても怖いですが、実際にはどのような疾患なのでしょうか?その原因や症状、対処法なども含めて、詳しくご紹介していきます。
眼窩底骨折とは?
眼球の周りには、眼球を保護するための骨があります。これを眼窩(がんか)と呼び、いわゆる穴が開いている部分に当たります。
眼窩は、前頭骨、上顎、頬骨、口蓋骨蝶形骨、涙骨、篩骨という7つの骨から形成されていますが、中でも、下の方に位置する眼窩底は薄くてもろい構造になっています。
そのため、外側から強い力が加わると、耐えきれずに骨折してしまう可能性が高い部位なのです。眼窩底が折れることを、眼窩底骨折と言います。
眼窩底骨折の原因
眼窩底は非常に薄く、もろいため、外から強い力が加わることで、骨折することがあります。たとえば、スポーツならばプロレスやレスリングが当てはまります。また、ケンカなどで顔面を殴られた場合にも、なる可能性があります。
眼窩底骨折の症状
眼窩内には、眼球の他、筋肉や神経、血管や脂肪組織などが入っています。眼窩底骨折すると、こうした内容物がはみ出してしまうことがあります。
眼球は本来、眼窩の中に収まっているため、落ちることはありません。しかし、眼窩底骨折によって骨が折れてしまうと、眼球を囲っていた穴が壊れるために、眼球が一カ所に収まっていられなくなり、非常に不安定になります。
もちろん、眼球が外れてしまうことはありませんが、本来の位置からずれてしまうため、様々な弊害が起こってくるのです。
上を向きにくい
眼窩底があるおかげで、目にダメージを受けても、被害を最小限に押さえる働きを果たしてくれます。しかしながら、骨折し、外眼筋がはまりこんでしまうと厄介です。
外眼筋が眼球の動きに関わる筋肉なので、上手く眼球を動かすことができなくなり、眼球を上に向けることが難しくなるのです。
さらに、神経がダメージを受けてしまうと、唇や頬に感覚障害が起こる可能性もありますし、合併症として網膜剥離を引き起こす可能性もあります。
鼻血や皮下気腫
また、皮下気腫や鼻出血を伴うこともありますが、眼窩低のおかげで、眼球自体のダメージは少ないのが特徴です。
時として、出血によって視神経が圧迫され、視力障害を引き起こすこともありますが、眼窩底骨折自体が視力障害につながることはありません。
複視
外眼筋がはまりこむことで上方を向きにくくなった時に現れる症状に、複視があります。
複視は、ものがダブって見えることで、外眼筋がはまりこんでしまった時に無理に上方を見ようとすると現れます。
詳しくは、複視の治療方法を知ろう!原因や症状はなに?見え方や乱視との違いを紹介!を参考にしてください。
(眼窩)吹き抜け骨折とは
吹き抜け骨折とは、名前の通り、眼窩底骨折によって眼窩底の内容物(脂肪や筋肉など)が副鼻腔に入り込んでしまうことを言います。内容物が飛び出した分、その場所が陥没しますから、外見的に変化が出てしまいます。眼球陥没が起こり、まるで底が抜けたように見えるため、このように呼ばれています。
吹き抜け骨折が起こる要因としては、眼窩を構成している骨の構造上、下方や内方は壁が薄いためです。特に下の方が薄くてもろいため、骨折しやすい構造になっているのです。ボクシングやレスリングなど、ぶつかり合いの多いスポーツで起こりやすい他、喧嘩や交通事故、その他の事故なども原因として挙げられます。複視があったり、眼球陥没など明らかな症状が出ていれば、診断は容易にできます。
眼窩底骨折の診断・検査方法
眼窩底骨折の診断や検査には、X線やCT、時としてMRI検査を用います。
また、どの程度眼球運動障害が出ているのかを調べるため、ヘス赤緑試験を行うこともあります。X線検査は費用も安く、時間もかからないため、患者の負担が少ないのが特徴です。
X線検査の画像を見れば、上顎洞に血液が貯まっていることが一目で分かるため、必ず行われる検査です。X線で判断がつなない場合には、CTやMRI検査も合わせて行い、診断をくだします。
どの病院を受診すべきか
眼窩底骨折は眼部の外傷のため、眼科を思い浮かべやすいですよね。また、そうしたケガを負った場合には、救急車で運ばれることも多く、救急科や脳外科、整形外科を受診することが多いでしょう。
これらの科を受診して、眼窩底骨折だと診断された場合には、耳鼻咽喉科や形成外科、頭頸部外科で診てもらいます。
眼窩底骨折の治療法
眼窩底骨折の治療法としては、保存療法と手術療法があります。それぞれの判断基準と治療法について見ていきましょう。
保存療法
骨折の程度の軽いものであれば、経過観察で十分に治癒が期待できます。まず、眼球を動かすための。眼球運動から始めて行きます。
具体的な方法としては、目の前に何かをつるし、顔を動かすことなく、目だけを左右に動かすというやり方です。この練習で複視が直れば、手術の必要はありません。
ただし、1ヶ月から半年かかることもありますから、長期治療と思って向き合いましょう。
手術療法
眼窩の骨は非常に薄いため、欠けてしまうこともよくあります。
そのため、眼球の位置を安定させることが難しくなるのです。保存療法を2週間行っても改善しなかった場合や、骨のずれがひどく、眼窩内のものが上顎洞内にまで飛び出し、複視などの症状が出ている場合には、骨を元通りに整形する必要があるため、手術療法に切り替えます。
眼球陥没が起こる吹き抜け骨折の場合は、整復手術が必要になってきます。骨折した部位の修復方法としては、骨の損傷が軽い場合には、骨を整復して眼窩の内容物が落ちないよう、固定することが大切になってきます。
チタンプレートなどの挿入や骨移植
ただし、骨の損傷が重度の場合には、眼球がずれるのを防ぐための土台作りが必要になります。たとえば、チタン製やシリコン素材などで作られた補正用プレートを眼窩内に入れたり、場合によっては骨移植によって骨を結合させ、治癒を補助することもあります。
上顎洞バルーン
これは、風船のような素材の上顎洞バルーンを鼻腔に入れる方法です。およそ2~3週間、鼻の中に入れておくことで、眼球を支える役割を果たします。鼻出血がある場合は、期間中、できるだけ鼻をかむこと避け、スプレー式点鼻薬を使用します。
手術をしても、組織の挟みこみが強い場合や、長期にわたった場合には、後遺症が現れることがあるため、注意が必要です。手術と言っても、下まぶたと眼球の間にある結膜を切開するため、術後に痕が目立ちにくくなっています。
手術療法は人によって術後の感想が違いますし、顔を手術することに抵抗を持ってしまう人もいるでしょう。しかし、病院によっては上顎洞に穴を開け、内視鏡手術する方法をとっているところもあるため、傷口が小さく済みます。皮膚を切って手術する場合にも、粘膜など、目立たないところを切る手術が多いようです。まずは事前に情報を集め、納得のいく形で手術を受けることが大切ですね。
他の病気にかかるリスク
眼窩底骨折事態は骨折ですので、手術で整復手術をすれば回復が見込めます。しかし、眼窩底骨折をきっかけとして、他の病気にかかるリスクがあるのです。
副鼻腔嚢胞
鼻の中央には鼻中隔という、左右を仕切る壁のようなものがあります。があります。さらに左右には、上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介という3つの突起があります。これらを囲むようにあるのが、前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞で、この4つのことを副鼻腔と言います。
副鼻腔はにおいを嗅いだり、吸い込んだ空気を暖めたり、湿り気を与えたり、ほこりなどが外部から侵入するのを防いだりする働きを担っているわけですね。
副鼻腔嚢胞とは、こうした副鼻腔の出口が狭くなり(狭窄)、そのために液が充満してしまうことで起こります。充満した液によって副鼻腔が拡大し、骨壁が圧迫される、もしくは破壊されてしまいます。副鼻腔を満たしている液は、粘液状のものもあれば、膿状(のうじょう)のものもあります。
副鼻腔とは、上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞の4つを指し、副鼻腔粘液嚢胞と、上顎嚢胞が代表的な疾患と言われています。副鼻腔粘膜嚢胞は前頭洞に起こりやすく、上顎嚢胞は上顎洞に多く起こります。また、副鼻嚢胞の3分の2は術後に発症する例が多く、起こりやすいタイミングは上顎洞手術を最初に受けた時から15~20年経った頃と言われていますから厄介ですね。
病気はゆっくりと進行していくため、自覚症状があまり出ないのも困りどころで、気づいた時にはすでに進行していることが多いと言います。ただし、嚢胞に感染が起こると、急激に発症する場合もあります。嚢胞がどこにできるかによって症状の現れ方は違いますが、前頭洞では眉付近の腫れや、眼が動かしにくい、ものが二重に見えるなどの症状が現れてきます。一方、上顎洞に発症した場合には眼の症状はなく、頬に腫れや痛みが現れると言います。
この他、嚢胞ができる場所によって蝶形骨洞粘膜嚢胞と呼ばれることもあります。
判断基準
副鼻腔嚢胞を診断する上で欠かせないのは、過去に副鼻腔の手術経験があるかどうかです。蓄膿症の手術を受けた人に起こりやすいと言われていますから、過去の手術歴を聞き出すことは非常に大切です。
また、検査方法はX線よりはCTやMRIの方が安心です。術後に発症している場合、X線検査では発見できないこともありますが、CTやMRIならばすぐに診断できます。
治療方法
篩骨洞・蝶形骨洞・前頭洞嚢胞
嚢胞が感染を起こしている場合には、抗菌剤を使って治療します。嚢胞を根本的に治療する方法としては手術が主で、鼻の穴から内視鏡を入れて手術を行うため、切開の必要がないのがうれしいですね。篩骨洞や蝶形骨洞、前頭洞の手術は内視鏡手術を採用することが多いですが、眉の下を切って手術することもあるようです。
上顎洞嚢胞
上顎洞に溜まった膿を取り除くため、上顎洞洗浄を場合があります。通常の吸引器具では膿を吸い出すことができないため、薬物を流し込んで洗浄するというわけですね。直接上顎洞を洗浄するため、高い効果を期待できます。洗浄を行う前には、まずX線検査で上顎洞の発達状況や下鼻道側壁骨の厚さなどを調べておきます。
洗浄を行う手順は、薬に浸したガーゼを鼻に詰めることで麻酔をかけてから、刺突器具を使って下鼻道から上顎洞へ通していきます。器具が上顎洞まで通ったら、生理食塩水で洗浄を行い、膿を出します。すべて終わったら、最期に抗菌剤などを注入して完了です。急性副鼻腔炎の場合、頬の痛みや発熱の他、鼻閉(鼻づまり)や膿性鼻漏(黄色く粘りのある鼻水)といった症状が現れます。薬や洗浄を行っても治療が困難な場合や、再発を繰り返す場合には、手術に切り替えることもあります。
手術においては、最近は内視鏡手術が広がりつつありますが、歯肉の上側を切開して手術する場合もあります。これらの手術の特徴は、嚢胞を100%取り除くことを目的としていないことです。全摘出ではなく、鼻腔に開放することで治療を図る方法で、再発率は5~10%ほどです。入院期間は7~10日ですから、比較的短期間の入院生活で済むのは助かりますね。
入院期間と治療後のリハビリ
手術となると、やはり入院が必要になりますが、気になるのはその期間ですよね。生活もありますから、あまり長い期間入院しているのもつらいでしょう。眼窩底骨折の場合、入院期間はおよそ7~10日ほどのようです。それ以降は日常生活を送るためのリハビリ期間になるわけですね。
では、治療完了後のリハビリの期間はどれくらいなのでしょうか。これは骨折の程度によって大きく変わってきますが、骨折箇所が狭い範囲の場合なら、1~2ヶ月ほどで完治が可能です。
ただし、大きな腫れがなく、眼球運動にも弊害がないことがポイントになります。骨折範囲が広く、プレートなどを挿入する手術を受けた場合には、プレートを取り除くための手術を受ける必要があるため、完治までには4~6ヶ月かかると言われています。
リハビリ方法
では、治療後はどのように過ごせばよいのでしょうか。眼窩低骨折によって整復手術を受けたあとは、リハビリが必要になってきます。
リハビリに必要な器官としては、どの程度の損傷を受けたかによって変わってきます。眼窩低骨折によって目を自由に動かせなくなるため、正常な目と比べて、目の動きに違いが出ないようにすることが大切です。
手術当日~1日後
手術を受けた当日~1日後は、菌の感染を防ぐことが最優先になるため、手術を受けた方の目は塞がれた状態になります。
湿布のような保護材で目を覆われているので、眼帯を付けているような感じになります。
手術後2日
保護材から保護テープに替わり、両目でものを見ることができるようになります。もちろん手術を受けたばかりなので違和感はありますが、リハビリを続けていくことで回復していきます。
その後、いよいよリハビリが始まるわけですが、具体的にどのようなリハビリをしていくのか、これからご紹介しましょう。
振り子注視・遠近トレーニング法
これは、振り子をつるし、それを注視することで目を動かするリハビリ方法です。天井から5円玉をつるし、揺れ動く5円玉に合わせて目を左右に動かすことで、スムーズな動きを取り戻そうという方法です。
また、人差し指を目の前に持ってきて、そこから前後に動かすことで、遠近の動きを鍛える方法もあります。地道な方法ではありますが、目を動かすことで自然な動きを取り戻し、できる限り左右の目の動きに違いが出ないようにすることが目的です。
手術後の過ごし方
- 手術後、1週間ほどすると抜糸が可能になります。入浴も頭を洗うこともできますが、シャンプーする時には、上向きで行うよう注意しましょう。
- 顔を洗った後は、清潔なコットンなどで優しく拭き、傷口を清潔に保っておきます。うっかり患部をこすらないように気をつけましょう。
- 目を打撲するリスクのある運動や作業などは行わないようにし、運動するならウォーキングやジョギングなど、軽い物にしましょう。
- 菌がたくさんいるような場所での作業や、水泳など、感染リスクのある場所での運動はしないようにしましょう。
- 抜糸するまでは禁酒し、眼球運動やリハビリを継続的に続けていきます。
まとめ
目の骨折と聞くと非常に恐ろしいイメージがありますが、実際に眼球が潰れるなどリスクが低いことが分かりましたね。ただ、どちらにしても目に大きな影響が出ますし、別の病気を引き起こす原因にもなってしまいます。眼窩底は非常にもろい骨ですから、スポーツや危険な作業をする時には特に、ケガのリスクを考え、慎重に行動することが大切ですね。
形成外科による手術が必要になると厄介ですし、仕上がりに不満や不安が残らないとも言い切れません。やはり、整復手術は受けないに超したことはありませんから、まずはケガのリスクを回避することが最重要なのです。
関連記事として、
・眼球運動の役割を知ろう!眼球運動障害の原因や治療法も紹介!
・視野狭窄とは?原因や症状、治療方法を知ろう!どうやって検査するの?
これらの記事を読んでおきましょう。