赤ちゃんが出来ると、胸が大きくなるというイメージを持っている方は多いと思います。しかし、実際に胸が大きくなったと感じる人は6割程度で残りの4割の方は、変化を感じないと言われています。
その為、なかなか胸が大きくならない方や、少し大きくなったとはいえ、まだ貧乳の方の中には、母乳が出るのか心配な方がいらっしゃいます。ここでは、貧乳の方の為に母乳の仕組みや母乳が出るケア方法や体験談について詳しくご紹介します。
母乳について
ここでは、母乳の概要と、母乳で育てるメリット、貧乳は母乳が出にくいかについてご紹介します。
母乳とは?
母乳とは、読んで字のごとく母の乳のことです。母親が子供を育てる為に、乳房から白色や透明な液体を分泌します。
この母乳は、乳幼児の栄養源となる為、水分やビタミン、脂質、糖質、タンパク質、ミネラル、カルシウムなど豊富な栄養素だけでなく、免疫効果や成長を促進する成分、更にグルタミン酸などのアミノ酸や、ヌクレオチドなどの睡眠を促進する成分も含まれています。この母乳の成分は常に一定ではなく、赤ちゃんの成長に合わせて1日単位もしくは1ヶ月単位で成分が変わっていきます。
母乳は母親が摂取している栄養素を基に作られるので、赤ちゃんを産む前また産んだ後も食生活や体調管理に気をつける必要があります。質のいい母乳をつくったり、分泌をよくするには、根菜類や海藻、大豆製品、小豆などを摂取し、脂っこい食事やコレステロールの高い食事は控えることをおススメします。
母乳で育てるメリットとは?
現在、母乳で育てずに粉ミルクで育てている方もいますが、世界保健機関では固形物が食べられるようになる最初の6ヶ月程度は、母乳のみで育てることを推奨しています。また、母乳は、2歳程度までは子供が望むようであれば、離乳食と平行して母乳を行っても問題ないと言われています。
人工乳でなく母乳を行う利点は、栄養素よりも免疫効果を高めたり、成長を促進できる部分にあります。母乳を行った場合人工乳と比べると、HIVの垂直感染や乳幼児突然死症候群、小児糖尿病、小児白血病、風邪、中耳炎、喘息、湿疹、虫歯、自閉症、肥満などの様々な病気にかかるリスクを低下させたり、成長促進を高める為に知能向上が期待できます。
更に、養子縁組の子供の場合は、精神疾患のリスクの低下も期待できると言われています。その他にも、グルタミン酸などのアミノ酸や、ヌクレオチドといった睡眠の助けとなる成分も含まれている為、母乳で育てる方がメリットが高いと言えます。
また、母乳は、子供だけでなく母親にとっても利益があります。母乳を与えることで、出産後の子宮拡大を防ぎ元の大きさに戻す効果、出産前の体重に戻す手助け、乳癌のリスク回避にも繋がります。
貧乳は母乳が出にくい?
結論から言うと、貧乳だからといって母乳の出方に影響するわけではないので安心してください。しかし、妊娠すると乳腺が発達することで乳房が大きくなる方もいるのも事実です。胸は主に乳腺、脂肪組織、筋組織から成り立っています。
脂肪が9割、乳腺が1割という割合で構成されている為、ほとんどが脂肪で、脂肪の量が乳房の大きさを決めるといっても過言ではありません。妊娠時に乳腺が発達すると、大きくなる方もいますが、もともと脂肪の少ない方は変わらないという声もあります。
しかし、乳房の脂肪組織が大きくても母乳の分泌量には影響しません。母乳が関係するのは、脂肪ではなく、乳腺の発達が関係する為、乳腺が発達すれば母乳の生成が出来ます。貧乳の方で、母乳が出ないという方がいれば、他に理由があるかもしれません。しかし、正しいケアをすれば母乳が出るようになるので、諦めずに根気よく続けることが大切です。
母乳が出る仕組み
母乳は母親の血液を基に作ります。妊娠すると、脳の中で母乳を作ることを指示し、様々なホルモンが作られ母乳を作る手助けをします。
ここでは、どのように母乳が生成され、赤ちゃんに届けられるのか、母乳が出るまでの仕組みを解説します。
エストロゲンで乳腺が発達する
妊娠するとまず、乳房の中にある乳腺が発達します。この乳腺を発達させる手助けをするのがエストロゲンというホルモンです。妊娠すると、このエストロゲンが乳房だけでなく、胎盤の中にも増加します。
このホルモンは、妊娠期間中は母乳の分泌を抑える働きもある為、このホルモンが大量に出ている限りは母乳は分泌されません。産後に胎盤に分泌されていた、エストロゲンが外に流れ出て、減少することで母乳が分泌される仕組みになっています。
プロラクチンが母乳を生成
胎盤と一緒にエストロゲンが外に流れでることで、エストロゲンが減少し母乳が出始めます。赤ちゃんは乳首である乳頭と呼ばれる部分を口に含み、母乳を吸い出します。この吸い出す刺激により、脳に母乳をもっと作るように伝達指示が出されます。
一番初めに出る母乳は、初乳と呼ばれクリーム色でドロッとしています。この初乳は、赤ちゃんの免疫力をつけたり、栄養素が非常に高い母乳の為、少しでも与える必要があります。また、初乳を吸わせることで、刺激が加わり、もっと母乳を作るようにと脳に伝達指示が届くと、プロラクチンというホルモンを増加させて、母乳を作り出します。
このプロラクチンというホルモンが出るのは、赤ちゃんを産んだ後が最も増加する時期で、授乳を続けていくうちに徐々にホルモンが減少します。その為、赤ちゃんを産んだ後、すぐに母乳に、挑戦することが母乳の出をよくするために重要なことと言えます。双子を出産した場合は、プロラクチンのホルモン濃度は2倍になると言われています。
オキシトシンが母乳を届ける
プロラクチンが増加すると、乳房に張り巡らされている乳腺という場所で母乳が作られます。そして赤ちゃんが吸いだす乳頭に母乳を届けるのが、オキシトシンというホルモンです。赤ちゃんが吸いだす力には限界があり、赤ちゃんが吸い出せない分の母乳は、オキシトシンが運ぶ役割をします。
オキシトシンというホルモンは、母親が赤ちゃんのことを思ったり、赤ちゃんが母乳を飲もうとする時に出るホルモンです。赤ちゃんが母乳を飲もうとすると、母親の母体では血中濃度が上がり、オキシトシンが分泌されます。赤ちゃんが母乳を飲み終えると5分程度で血中濃度は元に戻ります。また、このホルモンには大きくなった子宮を基の大きさに戻したり回復する効果もあります。
このように、様々なホルモンが影響して母乳が赤ちゃんに届けられます。最初は赤ちゃんの刺激により母乳が作られ、その後は母乳が定期的に作られて赤ちゃんが吸うという流れに変わっていきます。母乳が届けられるまでの仕組みを見ても分かるとおり、乳房の大きさは全く母乳に関係ありません。その為、貧乳で母乳の出方に悩んでいる方がいれば他の原因を探しましょう。
母乳が出ない原因は?
胸が小さいから母乳が出ないのかもと、悩んでいる方もいますが、母乳の出と胸の大きさは関係ありません。ここでは、母乳が出ない原因についてご紹介します。
ホルモンの分泌量が少ない
母乳を作るには、エストロゲン、プロラクチン、オキシトシンなどのホルモンが重要なことは前述に記載しました。エストロゲンは、乳腺を発達させるホルモン、プロラクチンは、母乳を生成するホルモン、オキシトシンは母乳を乳頭に押し出すホルモンです。これらの内、どれかの分泌量が少なくなることで、母乳の出が悪くなります。
特に、プロラクチン、オキシトシンのホルモンは、赤ちゃんが刺激を与えることで増加するホルモンです。赤ちゃんを産んだ後すぐに母乳を始めなかったり、赤ちゃんが吸うことになれていなく、刺激が少ない為に上手く分泌されていないということが原因として挙げられます。
血液不足
母乳は母親の血液を基に作られます。その為、血液が不足していると母乳が出にくくなります。母親が十分な栄養素が取れていない場合は、母乳が生成出来ません。また、母乳を作るのに水分が必要になる為、水分量が十分でないと、母乳が生成されなかったり、脱水症状になる場合があるので注意が必要です。
また、出産時には、大量に出血しているので、血液が不足しやすいので、鉄分や水分をきちんと補給することが重要です。一般的に成人女性は、毎日1.5~2リットルほどの水分補給が必要で、授乳中は2~3リットルの水分量が必要だと言われています。また、夏場に授乳が必要な方の場合は、4~5Lの水分補給が理想だといえます。
また、血行不良も母乳生成の妨げになるので、体の冷えや首こり、肩こりを感じている人は、適度な運動を行い血行不良を改善しましょう。
乳腺が詰まる
乳腺が詰まっていると、せっかく母乳が作られていても出が悪くなります。乳腺が詰まる原因は、下記のようなものが挙げられます。
- 乳首が陥没・扁平していて、赤ちゃんが吸いずらい状況にある
- 赤ちゃんが片方のおっぱいからしか飲まない
- 乳管が細い
- 母親の食べている物が脂っこい(脂肪の塊が出来ます)
- 水分不足
特に、乳管が細い、太いということに関しては、これは生まれつき決まっていることであるので、本人が変えようとして変えられるものではありません。また、乳腺が詰まっていることを改善しないと、細菌が感染して炎症を起こし、乳腺炎という病気を引き起こします。乳腺炎になると、母乳が出ずらいだけでなく乳首の痛みも加わるので、授乳が出来なくなり悪循環を招きます。
母乳を出すケア方法
ここでは、母乳を出すのに必要なケア方法をご紹介します。
バランスのよい食事をする
母体の栄養素は母乳に影響します。その為、バランスのよい食事をすることが母乳をつくるのに重要です。一般的にバランスのよい食事とは、野菜・果物・豆類・イモ類・肉・魚・乳製品などを十分に摂る食事を指します。脂っこいものや甘いものを全く食べないということはしなくていいですが、もちろん食べすぎは良くありません。
妊娠が発覚してから、授乳が終わるまでは、バランスのよい食事を心がけましょう。
水分を多く取る
母乳の99%以上は水分で出来ていると言われています。その為、水分補給はとても大切です。毎日1.5~2リットルほどの水分補給が必要で、授乳中は2~3リットルの水分量が必要だと言われています。また、夏場に授乳が必要な方の場合は、4~5Lの水分補給が理想だといえます。
マッサージをする
乳腺や入菅が詰まると、母乳が出ません。マッサージをすることで、乳腺を発達させて母乳の出をよくしたり、乳頭や乳輪を柔らかくすると、赤ちゃんが吸い出しやすくなります。マッサージをはじめる時期は産婦人科によって勧められる時期が異なります。
産婦人科によっては安定期16週目頃の場合もあれば、35週目など様々です。また、産婦人科によってはマッサージを勧めないところもある為、始める時期や方法については、かかり付けの産婦人科に相談してみることをおススメします。
また、マッサージをしすぎると、オキシトシンが分泌されます。このオキシトシンは子宮収縮を促す効果がある為、早産の可能性のある方は注意が必要です。マッサージは継続することで効果がでてくるので、短期間うちにたくさんマッサージを行わず、毎日少しずつ行うのが適切です。また、痛みを感じた場合はすぐにマッサージを中止しましょう。
赤ちゃんに頻繁に吸わせる
産後に赤ちゃんに母乳をあげ、赤ちゃんの吸いだす刺激によりホルモンが増加して、母乳を作る指令が脳に届きます。その為、初めは母乳が出なくても頻繁に吸わせるようにしましょう。赤ちゃんの吸い出す力が弱く刺激が足りていないという場合は多くの方に発生するので、根気強くあげ続けることも大事です。
産後1ヶ月経過しても、なかなか母乳が出なかった方が、母乳外来を受診して吸わせ方を変えただけで母乳が湧き出るように出るようになったという話もあります。
上記の紹介した内容を試してみても、母乳の出が悪いと感じた場合は、一度母乳外来を受診することをおススメします。
貧乳の方の体験談
実際に貧乳の方でも母乳がきちんと出ているか、どんな悩みがあるのか、体験談を通してご紹介します。
胸がぺったんこのAさんの場合
生まれてから、胸が大きくなったことがなく、サイズはAカップもなく、胸がぺったんこです。妊娠すると胸が大きくなると聞いていたので、期待していましたが、体重は12キロ増えたのにも関わらず胸の変化は、ありませんでした。もしかしたら、多少は変化があったのかもしれませんが、自分で実感するまでには至りませんでした。
その為、母乳が出ないのではないかと私を含めて親たちも心配していましたが、母乳はしっかりと出ました。ぺったんこの胸ですが、ミルクに頼らずに授乳を続けています。
貧乳で妊娠して良かったことはブラジャーのサイズを変えずに済んだことですが、困ったことは添い寝をしながら授乳することの難しさです。添い寝をしながら授乳が出来れば、赤ちゃんが授乳中にそのまま寝かしつけることが出来ますが、貧乳だと添い寝をしながら授乳ができない為、赤ちゃんを動かす必要があり、その度に赤ちゃんが起きてしまい苦戦しています。
このような事に悩みは抱えていますが、母乳の出方では悩んでいません。
根気強く子供に吸ってもらった超貧乳のBさんの場合
私は、自他認めるほど超貧乳ですが、子供が1歳半になるまで母乳で育てました。妊娠前は、母乳がでるか心配していましたが、母乳が問題なくでたので、胸の大きさは、母乳の出方には影響しないと知りました。
母乳が終わった後は、妊娠前よりも胸が小さくなり悲しくなりましたが、母乳で育てるメリットを考えると、しょうがないと思いました。出産前から産婦人科の先生推薦の基、乳首のマッサージをしたり、食事に気をつけたり、出産後は母乳の出が悪くても、根気強く飲ませ続けました。特に効果を感じたのは、ミルクは最小限にして何度も子供に吸ってもらうようにしたことが一番効果があったと思っています。
食事に気をつけた貧乳Cさんの場合
胸はぺったんこですが、母乳は出ました。特別なことはあまりしませんでしたが、唯一食生活には気をつけていました。バランスのよい食事をこころがけようと、和食中心の食生活に変えて、油っこい食べ物はとり過ぎないように気をつけました。
甘いものは好きなので、取りすぎにだけは気をつけて、たまにのご褒美に食べるようにしました。
おわりに
胸が貧乳の方の中には、母乳が出ないのではないかと悩んでいる方も多いと思います。しかし、胸の大きさは母乳の出方には関係ないので安心してください。貧乳の方でも十分母乳は出ます。
もし、貧乳の方で母乳が出ないという方は、他のことが原因となって出ていない可能性があります。今回ご紹介したケア方法を試しても母乳が出ないと悩んでいる方は、母乳外来を受診することをおススメします。母乳外来を受診して母乳が湧き出るように出たという方もいるので、諦めずに様々な方法を試してみましょう。
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