ストレスのせいか、何となく疲れやすい、体がだるくて食欲がない、胃が痛い・・・など感じることはありませんか?
腰や背中が重く、痛い!・・・ということはありませんか?なかなか治らないのは年のせい?ストレス?
それは、もしかすると肝臓の不調を知らせるサイン?かもしれません。
肝臓の働きや、肝臓にまつわる意外な痛みの原因や病気について、さぐってみようと思います。
肝臓の仕組みや働き
肝臓は、体の中で最も大きな臓器で、約1200g~1500g程度あります。3000億の肝細胞で成り立っていますが、一部が機能しなくなっても、ほかの肝細胞が再生するまでフォローするという素晴らしい機能を持っています。
小腸で吸収された糖分や脂肪を、エネルギーとして蓄えたり、たんぱく質、グリコーゲン、脂肪を合成分解し蓄え、エネルギーとして利用するために体内に送り出します。
体温を維持するのは、肝臓の代謝のおかげです。お酒などアルコールを分解し、解毒化する作用もあります。飲みすぎたときは、肝臓が頑張って分解しているということです。
「沈黙の臓器」肝臓
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。
肝臓には神経が通っていません。したがって肝臓がダメージを受けても自覚症状がないので、気づけば重症化してしまうことも少なくありません。
黄疸などの症状が出たときは、すでに肝機能が障害をうけ、肝細胞の多くがダメージを受けてしまっているかもしれません。
肝臓の痛みは他の部位の痛みかも?
肝臓の痛みとは、どのような痛みなのでしょう。またその痛みは、どのような病気につながる症状のサインなのでしょうか?
胃の痛み
肝臓のお話をしているのに、「胃の痛み」とは?・・・とお思いでしょう。しかし、病気などで肝臓の状態が悪いときに、その周辺が痛みとして感じることがあります。
胃と肝臓はすぐそばにありますので、肝臓に要因があっても”胃の痛み”として感じることがあるのです。
これは肝臓には神経がなく、肝臓が痛みを発することができないので、その周辺の筋肉や神経・臓器が影響を受け、痛むことがあるからです。
また、肝臓に影響を受ける臓器としては腎臓があり、悪化すると腎臓障害を引き起こすことがあります。肝硬変になると、胃炎、十二指腸潰瘍などを合併することもあるのです。
肝機能の悪化により、実際に胃炎を引き起こす場合もあります。
背中の痛み
ずっとパソコンの前に座っていたりすると、腰や背中が痛くなったりしますが、中には寝ていても痛むような、腰や背中の痛みがあります。弱っている肝臓からの黄色信号をこのような痛みとして教えてくれることがあります。
おなかの痛み
おなかが痛いのがしばらく続く、おなかが張ったり下痢をする。
日常、よく聞く症状なのですが、なかには、肝硬変、肝臓がんという病気が隠れていることも考えられます。
腰の痛み(右側)
肝臓が悪くなると、腰の右側に痛みをかんじることがあります。腰だけではなく、肩や背中おなかもどちらかといえば、右側に痛みがあるようでしたら、肝臓の機能が悪くなっているかもしれません。
肝臓の病気について
肝臓にまつわる病気は、自覚症状がなく気づきにくいといわれています。しかし症状が進行するにつれ特徴的な症状があらわれます。以下に代表的な肝臓の病気をあげてみました。
脂肪肝
肥満、糖尿病、アルコールの飲みすぎによる脂肪肝が、30代~40代にかけて増えてきています。
脂肪肝は健康診断などで発見されることが多いようで、肝臓に中性脂肪やコレステロールがたまり、動脈硬化や生活習慣病を引き起こします。脂肪肝の方の肝臓は、10%を脂肪が占めているそうです。(MRIなどの画像で確認すると白く映っている脂肪にびっくりします!)
症状としては、先にのべたように自覚症状はほとんどありません。肝臓がはれてくると重苦しさを感じることがあります。脂肪肝は命にかかわる病気ということではありませんが、ほおっていると肝硬変になる危険性も十分にあります。
健康診断で脂肪肝と診断されたら、まず、食生活を改めることです!野菜や極力油を控えるなど調理の工夫により、1か月程度で改善されるかもしれません。
詳しくは、脂肪肝を改善する方法は?食事や運動、サプリを意識しよう!を読んでおきましょう。
肝炎
肝機能検査で異常がありと言われても、食生活や生活習慣を改めなければ、肝炎になります。
肝炎とは、肝細胞が破壊され炎症がおき、倦怠感、吐き気、発熱などの症状が現れます。早くに食生活や生活習慣を改善すれば、肝臓機能の回復が見込めます。
肝硬変
肝臓はもともと自ら修復する機能を持っていますが、肝炎などを繰り返すことにより血流が悪くなり、修復できなくなり肝臓が固くなることを肝硬変といいます。
すぐに症状がでないので、かなり進行して気づくことが多いです。初期はなかなか気づきませんが、進行すると腹水や黄疸、肝性脳症等の肝硬変の症状が出ます。
また、男性が女性のように胸が膨らんだり、睾丸が委縮したりという症状もあるようです。
気を付けなければならないのは、肝硬変による合併症です。発症すると大出血を引き起こし命を落とす危険のある食道静脈瘤や、行動の異常や精神症状が現れる肝性脳症などです。
詳しくは、肝硬変の余命は?原因や症状、治療方法を紹介!を参考にしてください。
肝臓がん
肝臓がんの原因は、肝硬変です。ほとんどの原因はウイルス性肝炎から肝硬変へという場合が多いようです。B型肝炎やC型肝炎は、肝細胞遺伝子が突然変異を起こし、それががん化したものと言われています。
肝炎ウイルス検査をし、早期に肝炎を発見することが重要です。
また、生活習慣の改善は言うまでもありません。
肝臓がんについては、肝臓がんの末期症状について!生存率や余命はどのくらい?を読んでおきましょう。
肝臓の病気の原因
肝臓の病気を引き起こすさまざまな原因のうち、「アルコールによる肝障害」、近年話題になっている「薬物による肝障害」について述べてみようと思います。
アルコールによる肝障害
毎日続けてアルコールの摂取することにより、そのアルコールの分解のために肝臓に負担をかけて起こる障害をアルコール性肝障害といいます。
アルコール性肝障害には以下のようなものがあります。
アルコール性脂肪肝
お酒などのアルコールが原因で発症する脂肪肝のことです。自覚症状はほとんどありませんが、体の疲労感、食欲がない、おなかの右側に痛みなどの症状がでることがあります。
アルコールを控えることで、改善される段階です。最近では、ノンアルコールのビールでもさまざまなものが発売され、のどごしや味なども、本物(?)のビールそっくりなものもあります。ぜひ、体のためにお試しください!
アルコール性肝線維症
アルコール性脂肪肝のまま、アルコールを摂取し続けることによって、このアルコール性肝線維症を発症してしまうことがあります。
”線維”というものが肝細胞の周りにでき、肝臓の血管を流れる栄養分が肝細胞の中に入ることができなくなってしまい、ついには肝臓の働きが悪化します。
ここでも、アルコールを控えることが第一の薬です。まだこの段階ではお酒をひかえることにより、肝臓は健康に戻る可能性は十分にあります。
アルコール性肝炎
アルコール性脂肪肝、アルコール性肝線維症でも、さらにアルコールを摂取し続けると、体の疲労感、食欲不振、嘔吐、発熱といった症状がでできます。これは、肝炎の症状です。
なかには、黄疸がでたり、肝臓自体が腫れてしまい、右の腹を押すと痛みを感じることがあります。さらに進むと、むくみや腹水がたまったり症状が悪化します。こうなると、病院で入院し治療が必要です。もちろんアルコールを絶たなければなりません。
アルコール性肝硬変
アルコール性肝炎により治療をしても、それでもアルコールをやめることができなければ、ついに肝硬変へ悪化してしまします。
線維がたくさんでき、それが結節となり血液の流れを止めてしまします。あきらかな自覚症状はありませんが、手のひらが赤くなったり、上半身に血管腫があらわれ、さらに重症化すると黄疸、腹水がたまるなどの症状も出てきます。
薬物による肝障害
いわゆる副作用と呼ばれ、薬物性肝障害といいます。薬の副作用として多いのは抗生剤です。さらに細菌を殺す抗生物質、中枢神経作用薬である鎮痛薬なども副作用を引き起こすとしてあげられます。この薬物性肝障害は「アレルギー性肝障害」「中毒性肝障害」に分類されます。
①アレルギー性肝障害
薬物性肝障害の多くは、このアレルギー性肝障害です。この障害は、特定の薬物に感受性の高い人が発症します。しかし、現在のところ、使用前に予測することは難しいとされています。
発症すると、発疹、かゆみ、黄疸、発熱などの症状が出ます。
アレルギー性肝障害がおこる原因としては、薬物が肝臓で代謝され、体内には存在しない物質と判断されることにより、アレルギー反応が起こり肝細胞障害を発症することにあります。服用する量には関係がなく、少量でも発症することがあり、以前服用していたものでも、何かの要因で発症することもあります。
②中毒性肝障害
安全基準が厳しい日本においては、近年ではめずらしくなっており、この障害を引き起こすのはまれです。
しかし、自然食品と言われるものの中には、最近問題視されているハーブなどもあり、安全性に問題があるものも多く出回っています。これらは、注意事項の表示などが義務付けられていないため大変危険です。もともと危険な成分や、あとから加えられた薬物により、重篤な中毒性肝障害を引き起こしたり、死亡する例なども問題になっています。
「やせ薬」「ハーブ」「サプリメント」を摂取するときは、細心の注意をはらい、肝機能の検査をしましょう。
まとめ
痛みのほかに以下のような症状が出ていれば、肝臓の障害かもしれません。一時的なものもありますが、長期化するようであれば注意が必要です。
- アルコールに弱くなった。二日酔いがひどい。
- 体がだるく疲れやすい。
- 風邪をひきやすくなった。
- 食欲がなく、吐き気がある。
- 白目部分が黄色くなってきた。
- 黄疸が出ている。
- 手のひらが赤いまだら。
一昔前は、治りにくい病気の代表とされていましたが、現在は新しい治療薬が開発されたり、超音波の熱で腫瘍を破壊する治療法等が取り入れられています。
なにはともあれ、健全な生活習慣が予防につながるということを忘れてはなりません。