「突然耳が聞こえにくくなった」「頻繁に耳鳴りがする」その症状、もしかしたら難聴かも知れません。
一時的なものから長い治療が必要になるものまで、難聴には沢山の種類があります。また、難聴の原因は老化だけではありません。高齢者だけでなく、実は若者にも難聴を患う人が多いのです。
今回は難聴となる主な病気と症状、また、聴力の回復方法についてもご紹介したいと思います。
難聴の主な病気
難聴が見られる病気にはどんなものがあるのでしょうか。
突発性難聴
近年増加傾向にある突発性難聴は、その名前の通りこれまで正常な聴力がある人が、突然聞こえにくくなってしまう病気です。
全く聞こえなくなってしまう訳ではなく、耳の奥に何か詰まったような聞こえ方となり、多くの患者が耳鳴りや閉塞感伴い、発症の際に激しいめまいに襲われる場合もあります。
通常の音が聞こえにくくなるものの、大きな音に対しては強く耳に響いてしまうというリクルートメント現象と呼ばれる現象が現れることもあります。
ほとんどの場合、片耳のみに発症しますが、稀に両耳に発症する場合もあります。
実は突発性難聴の原因ははっきりと明らかにはされていません。現在考えられている原因としては、ストレスや疲労等の心的要因、または循環障害、ウイルス感染等です。
発症に多いのは40~50代に多いのですが、子供から高齢者まで年齢に関係なく発症します。
老人性難聴
多くの人が難聴と聞くと老人性難聴が浮かぶと思います。
老人性難聴は老化により聴力が低下し、音が聞き取りにくい又は聞こえない状態となります。
特に突然起こる音に対しての反応が悪くなり、急に話しかけられたり電話の音が鳴ったり、車のクラクションや警報等に対して聞こえないということが特徴です。
最初は高音から聞こえにくくなり、次第に音の大きさや高さが分からない、会話自体が聞き取れず理解できない、と症状が進行していきます。
とはいえ個人差が多く、老化してもしっかり聞き取ることができる高齢者もたくさん居ますが、高血圧、糖尿病を患っている方は老人性難聴を患いやすいと言われています。
騒音性難聴、音響外傷
騒音性難聴とは、パチンコ店や工場等の騒音の中で過ごすことが多い方によく見られる、いわゆる職業難聴とも呼ばれる難聴です。
原因としては強い音を大音量で聞き続けることにより、聴覚が破壊されていくことで起こります。
片耳ではなく両耳の聴力が低下し、最初は日常生活で困ることはありませんが、進行すると会話が聞き取れない等、生活に支障が起こり始めます。
音響外傷
コンサート等で大きな音を聞いた後、耳が痛くなったり、一時的に音が聞きづらくなった経験はありませんか?
これは音響外傷、別名ヘッドホン難聴と呼ばれる、若者に多く見られる難聴です。
ヘッドホンで音楽を大音量で聞いたり、コンサートやクラブの大音量の中で過ごすことで蝸牛と呼ばれる内耳の器官に障害が起こります。
多くは一過性のもので、軽症であれば時間と共に蝸牛の細胞が修復され回復します。
しかし強い耳鳴りや翌日以降も聞こえにくさ、痛みを伴う場合は細胞の損傷が激しい可能性があり、治療が必要となります。
心因性難聴
精神的なストレス等、心因的要因により起こる難聴を心因性難聴と言います。ヒステリーによって引き起こされるヒステリー難聴もあります。
聴覚系器官に障害が無く、日常会話における聴力についても基本的に問題が無い為、本人が難聴に気付かない場合が多々あります。
しかし聴力検査では異常が見られ、両耳において聴力が低下し聞こえにくい状態です。子供から大人まで年齢に関係なく発症しますが、特に女性に多く見られます。
家庭や学校、職場等の環境によるストレスがかかり、そのストレスから逃避するために難聴の症状が起こると言われています。
メニエール病
めまいの印象が強いメニエール病ですが、進行すると難聴を引き起こします。
メニエール病とは内耳のリンパが増加することで水腫ができてしまう病気で、原因としてはストレスや疲労、神経質な性格、気圧の変化等が考えられます。
珍しい病気ではなく、女性に非常に多い病気です。
薬剤性難聴
難聴ではなく他の病気の治療として使っている薬の副作用により起こる難聴です。
主にこの副作用を持っている薬は、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナイマイシン等の抗生物質、シスプラチン(抗がん薬)、フロセミド(利尿薬)です。
これらは蝸牛や前庭半規管に障害を起こす副作用があります。
症状は両耳に発症し、高音に対する聴力の低下から始まって徐々に低音も聞き取りにくくなり、めまいやふらつき、吐き気等も現れます。
進行すると歩行時に視界がぶれる為に歩行障害となったり、両耳がまったく聞こえなくなる場合もあります。
難聴の治療法
実は「一度傷ついてしまった有毛細胞(聴覚に必要な細胞)は再生することができない」と言われています。
その為、早期発見早期治療が非常に重要な鍵となります。難聴の治療法にはどのような方法があるのかをご紹介します。
薬物治療
難聴の治療は薬物治療が中心となるかと思います。
難聴の種類によりますが、主にステロイド剤、循環改善剤、代謝改善剤、ビタミン剤等を使用します。
中でも効果が高いと言われているのは副腎皮質ステロイドです。発症から2週間以内に治療を始めた場合、6~7割は聴力の回復を見込めると言われています。
しかしながら難聴は原因不明の場合が多く、必ず回復できるとは限りません。
また、薬物投与が長引く場合は副作用や依存を起こす場合もある為、約2週間程の治療で効果が現れない場合別の治療法を考える必要があります。
補聴器の利用
難聴による聴力の低下により、一番困ることは人との会話がスムーズにできなくなることではないでしょうか。
あるいは警報音が聞こえない等といった危険を伴う場合もあります。すぐに回復が見込めない症状の場合は、やはり補聴器を利用する必要があります。
ただし補聴器は聴力を回復をさせるものではありませんので、その他の治療を併行して行ったり、効果が見込めない場合の最終手段として利用することをお勧めします。
補聴器を利用する場合、販売店で直接購入する方法もありますが、自己判断ではなくまずは補聴器相談医と呼ばれる専門医に相談しましょう。
補聴器はその人に合った細かな調整が必要であり、治療によって治らないと判断された場合に利用をすることとなる為です。
鍼治療
効果がある方とない方がいるようですが、発症から早期の場合は鍼治療によって聴力を回復できることもあるようです。
その為、難聴治療を謳っている鍼灸院は多くあります。
試してみる価値はありますが、あくまで鍼は治療法の一つとして捉え、病院での診察や治療を併行して行う必要はあります。
聴力の回復と予防
軽症であれば日頃の心掛けにより聴力を回復させることは可能です。また、難聴にならない為の予防として意識することが必要です。
音量を下げる
大きな音は耳に負担をかけ、難聴を悪化させます。
音響外傷等でまだ軽症の場合は、大音量の環境からすぐに離れたり音量を下げる等をして耳を休ませる必要があります。
目安としては外部の会話が聞こえる程度の音量に留めましょう。ヘッドホンを使用する場合は雑音を軽減する”ノイズキャンセリング機能”がついているものがありますのでお勧めです。
また、耳が疲れてきたらすぐに10分程耳を休め、違和感がある時はすぐに病院に行きましょう。
ストレスを解消する
心因性難聴の場合は勿論ですが、ストレスや疲労は体だけでなく耳にも負担をかけます。よって心因性ではない難聴の場合もストレスは症状悪化の要因となる為、溜め込まないようにしないといけません。
体や心が疲れたら無理せずゆっくり休養をとりましょう。好きなことでストレス発散をこまめにすることがお勧めですが、中でも運動をすることはストレス発散にもなりますし、血流が良くなることで耳の細胞が働き、聴力の回復に繋がります。
積極的に会話をする
日頃から人と会話をしている人とあまり会話をしない人とでは、聴力に差があるという報告がされています。
人と会話をすることで「聞こう」とする意識が働き、聴力を回復することだけでなく難聴の予防にもなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
聴力の回復は簡単ではなく、一度難聴を発症させてしまうと治療が非常に難しい病気であることが分かりました。
もし聞こえにくい、耳鳴りがするといった症状が続く場合は早急に病院を受診し治療を開始することが回復への第一歩です。
聴力低下を甘く見ず、日頃から耳に負担をかけない生活を心掛けることを意識しましょう。
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