眼瞼下垂をご存知でしょうか。読み方は『がんけんかすい』と読みます。漢字の通り『眼や瞼(まぶた)が垂れ下がる』病気です。歳を重ねていくうちに、目が開きにくい、目が細くなるということがありますが、これも眼瞼下垂の一種です。眼瞼下垂は、多くが目の筋力の衰えによって起こります。
一概に眼瞼下垂といっても、原因などによって治療法は異なります。また、ほかの病気によって眼瞼下垂が引き起こされることもあり、それもまた治療法が異なってきます。
ここでは、眼瞼下垂各種の原因や治療法などをお話ししたいと思いますので、どうぞ参考にしてくださいね。
知ってる?眼瞼下垂とは
眼瞼下垂について紹介します。
眼瞼下垂って?
眼瞼下垂という言葉自体、あまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。わたしも、この記事を執筆するにあたり、はじめて耳に(目に?)しました。
ですが、症状自体は至ってポピュラーなものですし、老若男女、誰もが患う可能性のあるものです。特に、パソコンやスマホなどを四六時中見て、目を酷使する現代人は、特に患う可能性が高いと言えるでしょう。
眼瞼下垂は、上まぶたが十分に上がらず、物が見えにくくなる状態をいいます。
もう少し詳しく説明すると、顔を正面に向け、瞳孔(どうこう。黒目の真ん中にある部分。光の量を調節する器官)にまぶたが覆いかぶさった状態のことをいいます。
あなたの目は大丈夫ですか?鏡で見てみてくださいね。
眼瞼下垂の種類と原因
ひとくちに眼瞼下垂といっても、種類があり、大まかには3つに分けられます。その種類と、それぞれの原因をお話しします。
●先天性眼瞼下垂(せんてんせいがんけんかすい)
先天性という通り、生まれつきのものです。眼瞼下垂の多くは、先天性とされています。
先天性眼瞼下垂の場合、遺伝的要素が絡んでいるのではないかと考えられています。
これは、瞼をあげる筋肉や、神経の働きに不良があるために起こります。視力障害などに直結はしませんが、幼い頃から片目で見る習慣がついてしまうと、乱視や弱視になる可能性があります。
●後天性眼瞼下垂(こうてんせいがんけんかすい)
先天性が生まれつきだったのに対して、後天性は、もともとは問題なかったのに、年を重ねるにつれて徐々に瞼が落ちてきてしまうことをいいます。
つまり、加齢による筋力の低下などが原因になるということです。
間接的な原因は、幅広くあります。ハードコンタクトの長期使用や、アレルギーやメイク落としなどにも影響を受けるとされ、また、パソコンなどを長時間使用することで結膜が炎症を起こして、眼瞼下垂になりやすくなるといわれますが、これらはすべて個人差があります。
ですが、原因になり得る可能性があるということは知っておいたほうが良いでしょう。
●偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)
眼瞼下垂と勘違いされやすいけれど、眼瞼下垂ではないもののことを偽眼瞼下垂といいます。
眼瞼下垂は、先ほどお話ししたように、筋肉の働きに問題があり、瞼が上がらないことを言います。対して、偽眼瞼下垂は、筋肉に問題はありませんが、まぶたのたるみにより視界が遮られる状態を指します。原因は違いますが、症状は同じです。
視界が悪くなりますので、無理にものを見ようとして変に力が入り、肩凝りや頭痛が引き起こされることがあります。これは、上2つも同様です。
●どうして頭痛や肩こりに?メカニズムをご説明!
眼瞼下垂による頭痛や肩こりを引き起こす鍵を握るのはミューラー筋という筋肉です。
ミューラー筋は、まぶたの上げ下げをするために収縮します。これが、損傷などをすると引き上げる力が弱まることになります。
ミューラー筋は、まぶたの裏にありますが、これは全身の筋肉に連動していく筋肉です。つまり、ミューラー筋に大きな負担がかかると、連動先の他の筋肉にも負担がかかってしまいます。
また、ミューラー筋は他の筋肉だけでなく、自律神経にもかかわる筋肉なので、そちらにも不具合が発生します。
では、身体の中ではどのようなことになっていくのか?順を追って説明すると、まず、まぶたを上げようとミューラー筋が緊張状態になります。この緊張は額や頭の筋肉を緊張させてしまいます。そして、首から肩、腰へというように緊張が広がることになるのです。
ここから、肩こりや頭痛、不眠、はては腰痛の原因にもなってくるといわれています。目の問題なのに、本当に全身に不具合が生じてくるのです。
また、自律神経も緊張状態になります。この状態が続くと、うつや冷え性、便秘などといった症状が発生することもあります。
たかが瞼の筋肉と侮るなかれ。ミューラー筋の働きは、身体だけでなく、精神面にも大きく作用するといえるでしょう。
眼瞼下垂の検査法は?いつから、がポイントになることも!
まずはセルフチェック。鏡で見てみよう
単純に眼瞼下垂か知るには、先ほどお伝えしたように、顔を正面にむけて、まぶたが瞳孔にかかっているかを見ます。
どの程度まぶたが落ちているかで、軽度か重度か判断されます。
筋力の測定
眼瞼下垂は、これも先に述べたように筋肉の衰えが原因なので、その筋力を測る検査をします。筋肉の名前を上眼瞼挙筋といいます。
この筋肉が、どの程度機能し、動いているかを診断します。
方法は、以下の手順で行います。
- まゆげ付近をおさえ、おでこの力を使わない状態にする
- 最も下を見た時と、最も上を見た時の、まぶたの際の移動距離を測る
正常であれば、移動距離は15mmほどと言われています。
ある日、突然まぶたが上がらなくなったら?
ある日突然まぶたが下がったまま、上がらなくなった場合には脳梗塞、脳動脈瘤、糖尿病などによる動眼神経麻痺の可能性がありますので、血液検査や、CT、MRIなどを使うことがあります。
●動眼神経麻痺(どうがんしんせいまひ)とは?
動眼神経という神経が麻痺してしまうことです。動眼神経の働きは、眼球を動かすこと、瞳孔の調整などです。動眼神経麻痺になると、瞳孔が常に開いた状態(光を取り入れる状態)になるので、太陽の光が通常よりも眩しく感じられるそうです。
また、眼球の動きが制限されたり、ものが二重に見える複視といった症状などもあります。
朝は大丈夫だったのに、という時は……
朝はまぶたが上がっていたのに、夕方になって急にまぶたが上がらなくなった、というように1日の間に変動が激しい時は重症筋無力症が疑われます。これも血液検査を要します。
●重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)とは?
重症筋無力症とは、自己免疫疾患の一種といわれています。自己免疫疾患とは、自分の体の一部に対する抗体を作り出し、その組織を破壊してしまう疾患のことをいいます。
重症筋無力症の場合は、簡単にいうと神経と筋肉のつなぎ目の信号の接続を妨害されることで起きてしまいます。情報を運ぶアセチルコリンという物質を、コリンエステラーゼという物質が分解してしまうのです。
なので、コリンエステラーゼの働きを阻害する薬を投与することで改善が見込めるとされていますが、完治は難しく、また、完治するとしても年単位で時間を要するといわれています。
重症筋無力症の主な症状は、まぶたが下がる他にも、ものを噛むだけで疲れてしまう易疲労(いひろう)があります。重症化すると呼吸困難になる場合もあり、人工呼吸器が必要になることもあります。
各眼瞼下垂の治療法は?
眼瞼下垂の治療方法を紹介します。
●先天性眼瞼下垂の場合
視力や視能力に問題ないことが多いので、急いで手術を要することはないとされます。生活上、視界が狭くて不便などということであれば手術を行います。
手術方法は、太ももの靭帯や、腕の筋などを、後頭前頭筋という筋肉の作用を最も受ける、眉の皮と瞼板に移植する筋膜移植法を用いることが多いようです。
この手術はお子様でも行うことができますが、全身麻酔手術になり、4歳以上が対象とされています。これは、手術中じっとできないことを見越しての処置であり、成人の場合は局所麻酔で行います。ただし、目元をいじられるので煩わしさを感じるそうです。
また、片目だけの手術だった場合、左右で作用する筋肉が違うために、目の開き方やまばたきのスピードに差が出てしまうこともあるそうです。
●後天性眼瞼下垂の場合
現在、主流になりつつあるのは、挙筋前転法といわれています。
この方法は、上まぶたを切開し、挙筋や腱膜といわれる挙筋と瞼を繋いでいる部分を短縮するというものです。ただし、この方法は技術力が必要とされていて、どの医療機関でも受けられるわけではないようです。
それまで主流とされてきた、挙筋短縮法は、眼瞼挙筋を直接切除する方法で、効果は抜群です。しかし、交感神経と関わる筋肉、ミューラー筋を傷つけてしまうリスクが高いため、現在では最終的な方法とされています。
最近では、瞼の裏側から糸で修復する、切らない手術というものも出てきているそうです。こちらは傷も残らず、安心できるということで人気です。
●偽眼瞼下垂の場合は?
偽眼瞼下垂の治療は美容整形治療と見なされるため、保険が適用されない場合が大半です。
しかし、目の疲れというのは、体全体の疲労に繋がりますので、できるなら治療することをオススメします。
治療法はたるんだ皮膚の切除などなので、目元がスッキリして若々しくなり、一重が二重になります。費用はかかりますが、自分への投資と思うのも一つの手かもしれませんね。
まとめ
ひとえに、まぶたのたるみといっても、様々な原因があることがおわかりいただけましたでしょうか?
視界が悪いことで、いらない筋肉に負担がかかり、肩こりや頭痛を引き起こすこともあります。見えないわけじゃないから良いや…と思わずに、ちゃんと診断、治療をしてもらって快適な生活を手に入れましょう!
また、何かの病気により眼瞼下垂が引き起こされている可能性もあります。やはり、ちゃんとした検査を受けて、自分の身体を守ることが大切なのです。