小脳失調症の症状とは?その種類や原因を知ろう!他の脳疾患との違いはなに?

SCD(SpinoCerebellar Degeneration、脊髄小脳変性症)は、運動失調を主症状とする原因不明の神経変性疾患の総称です。

日本語では、脊髄小脳変性症と小脳失調症が同意として使用されることもありますが、英語でもSCDからSCA(SpinoCerebellar Ataxia、脊髄小脳失調症)と呼ばれるケースが増えてきています。

小脳を中心とした脊髄や脳幹などの神経細胞が徐々に障害されていく進行性の病気です。後述いたしますが、遺伝性の有無や障害される神経の系統によって、複数のタイプに分類されます。

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小脳失調症とはいったいどんな病気なの?

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小脳の機能が損なわれると

小脳の重要な機能は、知覚と運動機能を調整することです。歩行などの際に必要となる平衡感覚や、腕の振りや足の運びなど、筋肉の細かなコントロールなどを司っています。

よって小脳が損傷すると、意識や知覚には異常がないのに通常の歩行が困難になりふらふらしたり、シャツのボタンをはめる、文字を書くなどの精密な動作が困難になります。目まいや頭痛を訴えたり、非常に稀ではありますが、発言や行動、性格が変化してしまうケースも報告されています。

SCDと診断されるまでには

医学的には、腫瘍(脳腫瘍、脳血管腫瘍などの腫瘍)、血管障害(脳出血、脳梗塞などの血流を阻害する病気)、炎症(多発性硬化症、小脳炎、ウイルス性脳炎などの炎症性疾患)、栄養障害(ビタミン不足、低血糖など欠乏性の障害)などを除外したうえで、原因不明の中枢神経障害をもって変性症と呼びます。はじめは障害される部位の名前をつけて、小脳変性症と呼ばれていましたが、小脳だけではなく脊髄まで症状が広がるケースもあることから、脊髄小脳変性症(以下、SCD)と呼ばれるようになりました。

SCDは単一の病気ではなく、様々な原因で発症する運動失調症状を呈する病気の総称です。筋肉を動かすこと自体は可能でも、思ったとおりに動かせないことが特徴で、筋肉そのものが損なわれる麻痺とは異なります。病状は10年以上かけてゆっくりと進行していきますが、ウイルス感染などが原因となる急性小脳失調症は3歳以下の子供が発症しやすいといわれています。急性小脳失調症は、原疾患(小脳が失調を起こす原因となった病気)が治れば自然治癒することがほとんどなので、積極的な治療は行われないことがほとんどです。

残念ながら、SCDには根本的に有効な治療法は存在しません。最終的には寝たきりとなって死に至ります。ただ対症療法は研究がすすんできており、症状を緩和させたり、進行をゆるやかにすることは可能になってきました。症状の経過には個人差があるので、発症後5年程度で寝たきりになる方もいれば20年以上も元気に活動している元気な方もいらっしゃいます。

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他の神経疾患とは何が違うの?

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脳や神経系が侵される病気の中で、最も患者数が多いのが「アルツハイマー病」、次いで「パーキンソン病」となり、3番目に患者数が多いといわれているのがこのSCDです。思っているよりも多いと感じませんか?確定診断がされておらずに治療されていない症例も含め、患者数は3万人以上といわれています。

アルツハイマー病

この病気もSCD同様に明確な原因はわかっていません。記憶や思考能力がゆっくりと障害されていき、最終的には日常生活も困難になる認知症に区分される疾患です。

病気の特徴として、老人斑と呼ばれるアミロイドβタンパクが脳内に沈着することと神経原線維変化と呼ばれる神経細胞へのタウタンパクの蓄積、脳内ニューロンの変性・脱落があります。アミロイドβの沈着がアルツハイマー病の原因なのか、それとも結果なのかについては現在も研究が続けられています。

記憶や思考能力が障害されることが、小脳変性症と大きく異なるところです。

パーキンソン病

安静時に手足が震える「静止時振戦」、手足がこわばる「筋固縮」、動きが遅くなったり減少する「無動」、バランスをとれなくなる「姿勢反射障害」の4つの特徴的な症状があらわれる脳神経系の疾患です。

様々な原因で脳神経が障害されることで起きる「パーキンソン症候群」と「パーキンソン病」は別の病気です。

パーキンソン病

大脳基底核にある黒質が変性することで神経伝達物質のドーパミンの産生量が減ってしまうことで発症します。基底核は運動に関わる情報伝達に重要な働きをしており、ドーパミンの減少によってスムーズな情報伝達が行われなくなります。そのため、上述のように様々な運動障害が起き、動きがぎくしゃくしたものになります。発症のプロセスはわかっていますが、どうして黒質が変性するのかはわかっていません。

小脳失調症でもパーキンソン症状が現れることがよくありますが、大脳は正常なのでパーキンソン病の症状とは明らかに異なります。

パーキンソン症候群(パーキンソン症状)

上述したパーキンソン病の4つの典型的な症状のうち、2つ以上が該当する病気を「パーキンソン症候群」と呼びます。パーキンソン病の原因はドーパミンの減少によるため、ドーパミンを補う薬で症状の改善が見られますが、パーキンソン症候群には効果がありません。

脳血管の障害、脳神経の変性、薬剤の影響という3つが原因のほとんどであると考えられています。身体機能を制御しているシステムが何らかの理由で障害されることで、ドーパミン量が正常であっても身体機能を抑制する働きが強くなります。そのため、手足がこわばったり、動作が遅くなるパーキンソン症状があらわれます。

小脳や脊髄が侵されるSCD患者でも、「パーキンソン症候群」が現れることがよくあります。

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SCDになる原因は?

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SCDには、原因不明の「孤発性SCD」と遺伝による「遺伝性SCD」があります。

日本では、約30,000人のSCD患者がいると推定されていますが、そのうち1/3が遺伝性で残り2/3が孤発性と言われています。

両親からの遺伝による遺伝性SCD

人間は46本・23ペアの染色体(遺伝情報の元となります、ヒストンと呼ばれるタンパク質の周りにDNAが2重に巻き付いた構造をとっています)を持っていますが、その内訳は常染色体が22ペアと性染色体が1ペアです。性染色体にはXとYがあり、XXの組み合わせになると女性、XYになると男性となることがよく知られています。

SCDの原因となる遺伝子は常染色体上にあることが分かっていますが、その遺伝の仕方によってさらに区分されます。遺伝子は2本で1ペアとなっています。子どもは、父親と母親からそれぞれ1本づつ引き継いで1ペアを形成します。その引き継いだ遺伝子のうち、1本の遺伝子だけからでも形質が遺伝されることを「優勢遺伝」、2本ともに同じ情報を持つ遺伝子がないと形質が遺伝されないことを「劣勢遺伝」と呼びます。

つまり、遺伝性SCDは性別に関係なく発症する可能性があり、両親ともにSCDの原因遺伝子を持っている場合にのみ発症する「劣勢遺伝」と両親どちらかがSCDの原因遺伝子を持っていれば発症する「優勢遺伝」に分類されます。詳細は後述します。

原因不明の孤発性SCD

孤発性SCDの2/3を占めるのが多系統萎縮症(Multiple System Atrophy、以下MSA)です。中枢神経系の多系統が変性することで発症するためにこのように呼ばれるようになりました。40代以降に発症することが多く、男性患者が女性患者の2倍と性差があることも特徴のひとつです。

同じ孤発性SCDでも、変性が小脳に限定される場合には「皮質性小脳萎縮症」として区別されます。病気が進行しても、パーキンソン症状や自律神経症状などの小脳以外を原因とする症状が出ないことも特徴です。

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実際の病名とその症状の特徴について

SCD
↓遺伝性あり ↓遺伝性なし
遺伝性SCD 孤発性SCD
↓常染色体優勢遺伝 ↓常染色体劣勢遺伝 ↓障害部位が小脳に限定 ↓障害部位が多系統の神経
SCA1 フリードライヒ失調症 皮質性小脳萎縮症 MSA

多系統萎縮症

SCA2 ビタミンE単独欠乏性失調症 オリーブ橋小脳萎縮症
SCA3

(マシャド・ジョセフ病)

アプラタキシン欠損症

(EAOH/AOA1)

線条体黒質変性症
SCA6 セナタキシン欠損症

(AOA2)

シャイ・ドレーガー症候群
SCA31 シャルルボア・サグネ型痙性失調症

(ARSACS)

DRPLA

(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)

など など

各疾患を図式化すると上記のようになります。

遺伝性SCDは原因となる遺伝配列の存在が明らかになっています。特定の領域に、”CAG”塩基の繰り返しの増大があると発症します。

この繰り返し配列のことを「アレル」と呼びますが、各疾患において、それ以上存在すると異常と見なすアレルの基準があり、遺伝性SCDのひとつの診断基準となっています。

病気の犯人はグルタミン?

遺伝子の塩基配列は、3つの塩基で1つのアミノ酸を示しています。CAGが示す配列はグルタミン酸となるため、多量のアレルによって異常に伸長したグルタミン鎖が病気の原因と考えられています。

この伸長したグルタミン鎖が病気の原因であるということまではわかっていますが、どのようにして病気が引き起こされるのかについては諸説あり、現在でも世界中で研究が進められています。グルタミン鎖による病気の発症プロセスが解明されることによって、SCDの発症予防や進行抑制が可能になると期待されています。

ポリグルタミン病

この、グルタミン鎖の増大によって引き起こされる病気を「ポリグルタミン病」と総称します。遺伝性疾患として知られている「ハンチントン舞踏病」や「球脊髄性筋萎縮症」と「遺伝性SCD」の3つがこれに該当します。

ポリグルタミン病は、CAGのアレルが多ければ多いほど低年齢で発症し、症状も重症化することが知られています。そして、SCA6を除いて、世代を重ねる毎に重症化する「表現促進現象」が起こることも明らかになっています。

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常染色体優勢遺伝性SCD

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遺伝性SCDの90%以上が優勢遺伝SCDです。

患者数が多い順に、SCA3、SCA6、DRPLA、SCA31となりこの3つでおよそ優勢遺伝SCDの約80%を占めます。

SCA3(MJD: Machado-Joseph Disease)

もともとはポルトガルの島に由来する稀な遺伝性疾患として報告されました。その際に調査をおこなった、Machado家とJoseph家から病名がとられました。はじめのうちは稀な疾患とされていましたが、その後の調査で世界中に普遍的に存在する疾患であることが判明しました。

10代から30代で発症する1型と、20代から50代にかけて発症するⅡ型で患者のほとんどを占めます。小脳失調を主症状として、錐体路兆候(反射の亢進など)、錐体路外兆候(パーキンソン症候群など)の両方が見られるのが特徴です。

SCA6

40~50代にかけて発症します。ほぼ純粋な小脳失調症を示すことが特徴です。

DRPLA(DentatoRubural PalLidoluysian Atrophy: 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)

日本人に比較的よく見られます。「歯状核・赤核」「淡蒼球」「ルイ体」などが萎縮することで発症します。30歳前後での発症が最も多く報告されていますが、1歳~60歳まで幅広い年齢で発症します。発症年齢によって典型症状が異なることが特徴です。

若年発症では、てんかんや知能低下がみられます。老齢発症では、認知症や精神障害が見られますが、小脳失調症は共通する症状です。

SCA31

50~70代にかけて発症します。小脳失調症を中心とした症状を示します。特に歩行障害などが顕著なこと以外はSCA6と似た症状を示します。

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常染色体劣勢遺伝性SCD

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遺伝性SCDの中でも10%以下という非常に稀な疾患です。フリードライヒ失調症は国内では確認されておらず、各疾患毎の患者数にもそれほど大差はないとされています。その中でも国内では、アプラタキシン欠損症の頻度が比較的高いといわれています。

アプラタキシン欠損症(EAOH: Early-onset Ataxia with Ocular motor Apraxia and Hypoalbuminemia /AOA1: Ataxia-oculomotor Apraxia 1)

眼球運動失行(自分の意志で眼球を動かすことができずに、頭を動かして物を見る「Head Thrust」と呼ばれる動きが特徴)を伴う劣勢遺伝性の小脳失調症です。眼球運動失行は症状が進行するのに伴って減少していき、低アルブミン血症と末梢神経障害が顕著になってきます。

幼児から25歳くらいまでに発症し、知能に全く問題ない軽度な症例から日常生活が困難な重症例までがあります。アプラタキシンはDNAの修復に関連しており、欠損によってDNAが修復されないことによって発症するのではないかと推測されています。

欧米を中心に発症報告されていた「AOA1」と、日本を中心として発症報告されていた「EAOH」が最近になって同一疾患であることが判明しました。そのため病名を2つ併記しています。

皮質性小脳萎縮症

SCDの中でも、小脳を原因とする小脳性症状のみが強く現れる疾患です。

立ち上がれなくなる起立障害や、上手く歩けなくなる歩行障害があらわれます。小脳性症状は重症なのに、パーキンソン症状や自律神経症状があらわれないことが特徴です。

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多系統萎縮症(MSA)

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MSAは、好発年齢が40代以降となる進行性の細胞変性・脱落を伴う進行性の疾患です。発病時から病気の前半期の症状が異なるために3つに分類されていましたが、現在ではその3つをまとめてMSAと総称しています。

症状に特徴がある前半期とは異なり、後半期では似たような経過をたどります。小脳性の運動失調により歩行が困難となって寝たきりになり、パーキンソン症状で手足がこわばり、自律神経障害で失神・失禁・便秘・下痢・低血圧となって、10年経たずに亡くなる方がほとんどです。

MSAは、神経組織内に存在する「α-シヌクレイン」というタンパクが神経細胞に蓄積されることで発症すると考えられています。そして、「α-シヌクレイン」を原因とする1つの疾患群を「シヌクレイパチー」と総称します。シヌクレイパチーには、「α-シヌクレイン」が凝集することで形成される「レビー小体」を原因とする「レビー小体病」と「MSA」が含まれます。

オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA: Olive PontCerebellar Atrophy)

日本国内では最も患者数が多く、MSAの約70%がこのタイプといわれています。歩行のふらつきなどの小脳症状から発症して、そのまま小脳症状を主症状として病状が進行していきます。

小脳だけでなく、「オリーブ核」や「橋」の下部の萎縮によって症状が起きるため、この名前となりました。

線条体黒質変性症(SND: Striato-Nigral Degeneration)

MSAの約20%がこのタイプだといわれています。初期症状として、パーキンソン症状がみられるためにパーキンソン病と間違われることもあります。

抗パーキンソン薬の効果がないことでMSAと判明するケースもあるそうです。主として「線条体」や「中脳黒質」が変性するため、この名前となりました。

シャイ・ドレーガー症候群(SDS: Shy-Drager Syndrome)

MSAの中でも稀なタイプで、全患者の10%以下といわれています。起立性低血圧(座ったり寝ている状態から急に立ち上がった際に、目まいやふらつきを起こす)と排尿障害からMSAと判明するケースが多いとされています。

「シャイ」医師と「ドレーガー」医師が報告したことで、この病名となりました。

レビー小体病(Dementia with Levy Bodies)

レビー小体を原因とする病気のことです。レビー小体型認知症とも呼ばれます。症状は一見してアルツハイマー病に類似していますが、典型症状として幻覚や妄想などの症状があらわれることが大きく異なります。

症状が進行していくと、パーキンソン病との共通点が多くなり、病状も類似してきます。そのため、パーキンソン病と同じグループであると考える説と、別の病気であるという説があり、研究は進んでいますが結論はでていません。

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まとめ

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ここまで見てきたように、脳神経の病気の多くが原因不明です。しかも、似たような部位が障害されていることが多いことも特徴です。患者数が比較的多い病気なので、研究は進んでいますが、現在でも解明されていない事象が数多く存在しています。

難病認定されている病気がほとんどで、残念ながら予後もそれほどよくありませんが、前向きに生活している方も多くいらっしゃいます。悲観的にならずに対症療法を続けることで、進行を遅くすることができる可能性もあります。

近い将来には、進行を遅らせる薬剤が開発されるのではないかと言われていますので期待しています。

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これらを読んでおきましょう。

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