首が腫れると息苦しくて嫌ですよね?
首が腫れる原因は数多くあり、治療が必要なものとそうではないものがあります。風邪や肩こり、ストレスや寝違えなどが原因の場合には問題ありませんが、重大な病気が隠れている可能性もあります。どのような病気があるのかを詳しくみていきましょう。
首周囲の筋肉が原因のケース
デスクワークや長距離の自動車運転、スマホに夢中になってしまうなど、同じ姿勢を続けることで筋肉が硬直し血行が悪くなります。血行が悪くなることで、リンパの流れも悪くなります。リンパの流れが滞るとむくみや浮腫の原因となります。
最近では、ITベンチャーを含む大手企業でもスタンディングデスクを採用する動きがあります。集中力が高まり、足腰には適度な負担がかかるので健康にも効果があるようです。会議室がスタンディングだと、時間通りに会議が終わるといった効果も報告されています。座り続けることが最も寿命を縮める行為であるというのが定説になっている現在、立ったままデスクワークをするのも解決策のひとつです。
無理な方は、30分~1時間に1度のストレッチ、温かい飲み物をこまめに飲む、ホットタオルや使い捨てカイロなどで首まわりを暖めることなどで症状は改善されます。
リンパが原因のケース
リンパのトラブルが原因となり、首の腫れが発生している可能性があります。
そもそもリンパ節(リンパ腺)・リンパって何?
リンパ(リンパ液)とは、毛細血管から浸出した組織液のことです。血液から染み出した液で血漿成分に近く、心臓のポンプ機能によって循環するのではなく筋肉の収縮によって流れます。そのため筋力が低下したり、筋肉が硬直することにより滞留しやすくなります。
リンパ節は、骨髄で作られたリンパ球を一時的に貯蔵しておいて成熟させる働きや、リンパに含まれる病原体、老廃物、毒素などをろ過し、血液に戻す働きがあります。病原体が体内に侵入すると、それに反応してリンパ節が腫れることがあります。
首に関連して腫れるリンパ節は主に2つです。どちらが腫れているかで病気が異なるケースがあるので注意が必要です。
耳の下が腫れるケース(耳下腺)
耳下リンパ腺は両耳の下にあります。
ムンプスウイルスの感染による「おたふく風邪」、細菌性の化膿性リンパ節炎、結核菌による結核性リンパ節炎、原因不明の組織球性壊死性リンパ節炎などがあります。
おたふく風邪と組織球性壊死性リンパ節炎は無治療で治るケースが多く、発熱や痛みへの対処療法のみが行われます。症状がひどい場合にはステロイドも使用します。
化膿性リンパ節炎は抗生物質で治療しますが、ブドウ球菌やレンサ球菌など原因菌が数多く存在するために、菌を特定して薬剤効果の高い抗生物質を選択する必要があります。また、膿が大量になると、切開して膿を除去する手術が必要になるケースもあります。
結核性リンパ節炎は、特殊な抗生物質(抗結核薬)で治療しますが、結核菌の有無を調べるのが困難です。1か月以上腫れが引かない場合には、専門病院での受診をお勧めします。結核菌が肺にとりつくのが肺結核です。肺結核の症状がなくても、結核性リンパ節炎には感染する可能性があることを覚えておいてください。
数は多くありませんが、腫瘍性疾患のケースもあります。良性腫瘍が8~9割程度を占めますので経過観察でもよいのですが、腫瘍が大きくなると手術が難しくなるため、早めに摘出することをお勧めします。
顎の下が腫れるケース(顎下腺)
顎下リンパ腺は顎の両側直下にあります。
顎下腺が腫れる原因で最も多いのが唾石症です。顎下腺から分泌される唾液は粘性で石化しやすい成分を含んでいます。唾液を分泌するための管(ワルトン氏管)が長くてやや上向きになっていることや、排出口も狭いため管内に唾液が滞留しやすいのです。そのために、石が出来やすい状態になっています。
石が唾液の分泌を妨げるため、食事をすると唾液が溜まった部分が腫れあがり痛みがでますが、しばらくすると痛みが引くのが特徴です。治療は石を取り除くことです。口腔内からアクセスできる位置に石がある場合はよいのですが、顎の奥にある場合には顎を切開する全身麻酔の手術になります。
次に多いのは細菌性顎下腺炎です。耳下腺と同様に抗生物質による治療となりますが、口腔内にはもともと細菌が多く存在するため、免疫力が落ちている時に感染しやすくなります。
また、耳下腺の3~4分の一の頻度ではありますが、腫瘍が原因のケースもあります。痛みのないしこりがあり、食事によって腫れや痛みに変化がないのが特徴です。
耳下腺の腫瘍は9割程度が良性であるのに対して、顎下腺の腫瘍では良性は5割程度しかありません。早期発見・早期治療するために、しこりに気が付いたらなるべく早く専門機関で受診してください。
首の上部が腫れるケース
首の上部から顎にかけて腫れる場合は、嚢胞か細菌感染によるものです。ひどい場合には首のくびれがなくなってしまうほど腫れあがるケースもあります。
ガマ腫
舌下腺(大唾液腺のひとつで、下あごの骨の内面に接しています)が大きく腫れて、見た目がガマガエルの様になることからガマ腫と呼ばれます。舌下腺の一部に唾液が溜まることによってできる、薄い膜に包まれた嚢胞です。
小さいうちは痛みはありませんが、大きくなってくると口腔底の粘膜が腫れあがったり、顎の真ん中の下の部分(オトガイ)が膨れたりします。溜まった唾液を解放すれば腫れは治まりますので、主に手術で対応します。
甲状舌管嚢胞
胎児期に甲状腺が作られる際、舌の奥から形成されて、のどの真ん中を通り、気管のあたりまで降りてきます。その際に細い管がつながっています。本来は生まれる前までに退化して体内に吸収されますが、まれにこの管が残ってしまうことがあります。
この管に食物残渣が溜まったり、細菌感染などで腫れあがる症状です。良性なので、切除してしまえば再発もありません。
口腔底膿瘍
口腔内や口腔底に急性の化膿性炎症が発生し、膿溜まりを作り腫れあがる病気です。膿が拡散することによって、広範囲に炎症を引き起こします。
口腔内の傷、扁桃炎、歯科に由来する炎症(詳細は虫歯に由来するケースの章参照)、口腔内の腫瘍などが原因となります。
患部の強い痛みと腫れが特徴ですが、症状が進行すると呼吸困難や嚥下障害を引き起こすこともありますので、早めに専門機関で受診してください。
細菌感染症なので抗生物質で治療を行いますが、症状がひどい場合は手術で膿を排出することが必要になることもあります。
首の下部(甲状腺)が腫れるケース
甲状腺は、喉仏の下にある器官で、羽を広げた蝶の様な形をしています。甲状腺疾患の80%は女性と言われていますが、男性の場合には悪性度が高いという報告もあります。喉の腫れに自分で気がついたり、他の人から指摘されるケースもありますが、腫れるだけで痛みが少ないため放置されてしまうこともあります。
腫れと腫瘍の2種類に分けられますが、どちらも悪性のケースは少なく、血液検査やエコー検査などで診断が可能です。
甲状腺の腫れ
単純びまん性甲状腺腫
甲状腺がそのまま大きく腫れたもので原因は不明です。
バセドウ病
甲状腺機能が亢進する病気です。自己免疫疾患で、体内で甲状腺ホルモンが過剰に生産され、甲状腺の腫れ、動悸、眼球突出、異常に疲れやすいなどの症状が出る場合がありますが、治療によって回復します。
詳しくは、バセドウ病の初期症状とは?チェックする方法を紹介!を参考にしてください。
橋本病
慢性甲状腺炎とも呼び、硬くゴツゴツした腫れ方が特徴的です
甲状腺機能低下を起こすケースが3割程度ありますが、残りの7割は甲状腺機能は正常です。甲状腺機能が低下している場合、むくみ・皮膚の乾燥・寒がる・食欲がないのに体重が増加するなどの症状が見られます。
こちらも、橋本病は妊娠しくいの?症状や対処方法についてを読んでおきましょう。
亜急性甲状腺炎
甲状腺が腫れて発熱を伴います。鼻や喉の炎症から発症することが多く、ウイルスとの関連が推測されていますが、現在のところ原因不明です。
甲状腺から甲状腺ホルモンが漏出するため、一時的にバセドウ病と同様の症状がでますが、炎症が治まれば正常に戻ります。
甲状腺腫瘍
乳頭がん
甲状腺がんの8割以上がこの「乳頭がん」です。 進行が遅いため、首のしこりに気が付いた段階で受診すれば、すっかり治るケースも多い治療しやすい良性の「がん」です。
転移する可能性は低いですが、甲状腺周囲のリンパ節に浸潤することがありますが、リンパ節に浸潤した場合でも、進行が遅いため治療成績は良好です。
濾胞がん
しこりがあるだけで、他に異常がないケースもあります。
乳頭がんよりも転移する可能性が高いですが、進行が遅いため、早期治療で治せるがんです。
その他の腫瘍
低分化がん、未分化がんなどは進行が早く悪性のがんです。
甲状腺がんの中でも発症はそれほど多くありませんが、60歳以上の方に発症リスクが高い傾向があります。
虫歯が原因のケース
虫歯は細菌感染症です。Streptococcus mutans(ミュータンス菌)というのが最も重要な原因菌として有名です。S. sobrinusという菌も同様の働きをしますが、ミュータンス菌の方が活性が高いことが知られています。
通常の虫歯であれば問題ないのですが、症状が進行してしまうと炎症が酷くなり、耳下リンパ節や顎下リンパ節が腫れる原因になることがあります。虫歯治療を行えば、すぐにリンパ節の腫れは治まります。
まとめ
首の腫れの原因は、大きく分けると細菌やウイルスによる感染症と嚢胞や腫瘍などの塊です。
感染症であれば、日常生活に支障がでない限り様子見で問題ありません。痛みや腫れがひどい場合には抗生物質による治療で回復します。
問題は塊です。首に何かしこりがあるのを確認したら、すぐに専門機関で受診してください。問題ないケースも多いですが、治療を要する病気も多くあります。
ふだんからセルフケアを行っていれば異常に気付きやすくなります。特に甲状腺疾患は女性の20人に1人の割合で発症するとも言われていますので、男性よりも注意が必要です。
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