腸腰筋膿瘍とは?原因や症状、検査方法やリハビリの方法を紹介!

腸腰筋膿瘍という症状をご存じでしょうか?聞きなれない名称だと思いますが、この病気にかかると腰が痛い、背中が痛いなどの腰痛のような症状や、発熱、全身の倦怠感などが引き起こります。

また、この病気の発症には様々な原因がありますが、そのうち糖尿病や肝硬変などの病気が原因になっている場合、その病気が重篤な症状に発展する可能性があり、場合によっては死亡することもある怖い病気なのです。

今回の記事では腸腰筋膿瘍の症状や原因、診断・治療・リハビリ方法を紹介します。

腸腰筋膿瘍とは?

背中、腰

腸腰筋膿瘍は様々な症状が引き起こるとされています。

また、発症する原因も一つではありませんが、一般的に多かったとされる症状や原因を紹介します。

腸腰筋膿瘍について

「腸腰筋」とは腰椎と呼ばれる腰の位置にある背骨と大腿骨と呼ばれる太もも部分にある骨を結ぶ筋肉群で、脚を根元から持ち上げる場合などに強く働く筋肉です。

「膿瘍」とは皮膚や皮下などの限られたスペース内に膿汁が溜まっている状態のことで腸腰筋に膿瘍が起きると様々な症状を引き起こし、不調を生じます。

この病気の患部は右側の方がやや多いと言われており、また女性よりも男性、年齢も中高年の方が発症しやすいと調査で報告されています。

腸腰筋膿瘍の症状

●発熱・全身倦怠感

腸腰筋膿瘍の多くの患者の方が発熱を伴ったり、また全身倦怠感があったとされています。風邪のような症状ですが、その他にも背中や腰に違和感を感じたのであればすぐ病院で診察してもらうようにしましょう。

●背中や腰、下腹部の痛み

腸腰筋膿瘍を発症すると、背中や腰に痛みが生じる場合があります。また、中には下腹部や太ももの付け根部分に痛みを感じる方もいるようです。

●股関節の屈曲変形

股関節が屈折変形することにより歩行時に痛みを生じることがあります。歩行以外にも足を曲げたり、上げたりする行動で太ももに痛みを感じます。

●播種性血管内凝固症候群(DIC)と敗血症

腸腰筋膿瘍は腸腰筋あたりに膿が溜まるため、それが血管に進入することにより尿路感染や菌血症を起こしやすく、また播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血症を発症することがあります。それらによって最悪の場合、死に至ることがあるので注意が必要です。

・播種性血管内凝固症候群(DIC)とは…本来、血管内皮の抗血栓性や血液中の抗凝固因子のはたらきによって血液が凝固しないような仕組みになっていますが、播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症すると、血液が凝固する力が強くなってしまい、全身の細小血管内で微小血栓ができる状態のことを指します。

この状態になると乏尿や無尿、呼吸困難、急性潰瘍による下血、意識障害などの様々な臓器不全を生じ、悪化すると多臓器不全で死に至ることもあります。

・敗血症とは…肺変や腎盂腎炎など生体のある部分で菌血症や他の感性症を起こしている場所から血液中に病原体が入り込み、重篤な全身性の反応を引き起こす症候群です。

発症すると悪寒やふるえを伴う発熱や心拍数、呼吸数の増加、血液低下がみられ、意識障害を起こしショック状態になることもあります。(敗血症性ショック)

敗血症については、敗血症は死亡率が高いので注意!症状や治療法について!を参考にしてください。

腸腰筋膿瘍の原因とは

女性 ハテナ

栄養状態の不良

腸腰筋膿瘍の原因には栄養状態の不良によるものだとされてきましたが、明確にはされておらず近代では他の原因が主流となっています。

合併症、起因菌

腸腰筋膿瘍は原発性と続発性の2種類に分かれています。原発性はと、疾患そのものが別の病気によって引き起こるものではなく、その臓器自体の病変によって引き起こる状態のことです。「最初の」「第一の」という意味があります。

原発性による腸腰筋膿瘍の原因となる感染源は明確にはされていませんが、起因菌として大腸菌、結核菌、嫌気性菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)によるものだと言われています。

また、続発性とは二次性ともいい、ある疾患に関連して発生する病気、症状のことです。この続発性による腸腰筋膿瘍の原因の背景には肝硬変や糖尿病、透析あるいはステロイド使用による合併症があげられています。

筋骨格感染症

脊椎カリエスや椎骨骨髄炎などの筋骨格感染症が原因で腸腰筋膿瘍が発症することがあります。

・脊椎カリエスとは…肺から肺結核や腎結核などの結核菌が血行性に運ばれ脊椎へ感染した病気で、主に腰椎と胸椎に多く発症するとされています。

呼吸時に背中や腰に痛みを感じたり、腰椎や胸椎に鈍痛や違和感、強い倦怠感などの症状があらわれます。悪化すると激しい痛みや下半身の麻痺、排尿障害などが引き起こります。

・椎骨骨髄炎とは…マイコバクテリウム属などの細菌や真菌(カビ)が骨に感染することで炎症を起こす状態のことで発症すると発熱や骨の痛み、体重減少といった症状があらわれます。悪化すると筋肉や脂肪が壊死することもあります。

主に年少児や高齢者に多く発症しますが、どの年齢層にも起こりうる病気です。特に免疫力が低い状態の方、関節リウマチや臓器移植など、免疫を抑える薬を飲んでいる方は注意が必要です。

消化器疾患、尿路感染症

腸腰筋膿瘍の原因に虫垂炎や憩室炎、クローン病といった消化器疾患、尿路感染症があげられています。

・虫垂炎とは…虫垂と呼ばれる盲腸の先に突き出た5~10cmほどの先端が閉じた突起物に化膿性の炎症が起きた状態のことをいいます。糞便(糞医師)や異物、リンパ組織の過形成、腫瘍などで虫垂の入り目がふさがったり、狭くなったりすることにより虫垂の内圧が上昇します。それにより血行が悪くなり細菌が進入することで感染を起こすとされています。

症状として腹痛や食欲不振、発熱、吐き気、嘔吐などがあげられます。

・クローン病とは…炎症性腸疾患のひとつで、小腸、大腸を中心とする消化菅に炎症や潰瘍を生じる慢性の疾患です。20代に発症することが多く、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが原因のひとつとされています。

症状として下痢や腹痛、発熱、体重減少、全身倦怠感などがあげられます。クローン病については、クローン病の症状とは?原因や遺伝との関係も紹介!を読んでおきましょう。

腸腰筋膿瘍の診断方法と治療方法、リハビリについて

CT検査

腸瘍筋膿瘍の予防には原因疾患を良好にコントロールすることが大切です。ここでは2つの診断・治療方法と腸腰筋膿瘍に効果的なリハビリについて紹介します。

腸腰筋膿瘍の診断方法とは?

腰や背中が痛いなどの症状で検査をする場合、血液検査や単純X線撮影が行われることがほとんどですが、この2つによる検査では腸腰筋膿瘍の発見が難しいとされており、診断するにはMRI検査や造影CT検査が有効です。この二つの検査により、腸瘍筋に膿汁があることを確認できれば腸膿筋膿瘍の診断が確定されます。

・MRI検査とは…強い磁石と電波を使って体内の様子を画像化する検査のことです。磁石の埋め込まれた大きなトンネルの中に入って、電波を身体に当てることによって脳や脊髄、内臓、筋肉、関節、血管などのあらゆる内部の様子がわかります。

・造影CT検査とは…CTとは身体に多方面からX線を照射し、コンピューター処理によって身体の内部を画像化する検査のことです。ヨード造影剤を腕の静脈から注入しスキャンを行う検査を造影CT検査といい、造影剤を使用しないCT検査は単純CT検査と呼ばれています。

この検査により肝臓がんや血管腫の状態をよりはっきりと診断することができます。

腸腰筋膿瘍の治療方法とは?

腸腰筋膿瘍が疑われる場合、まず大事なのは「安静」にすることです。特に合併症により発症した腸腰筋膿瘍の場合は安静臥床を原則とされ、局所安静を保つように言われることがあります。他の感染症や症状の悪化を防ぐためにも、無理は禁物です。

症状が重い場合は医療による治療方法があります。

●抗菌薬と抗生剤の投与

抗菌薬や抗生剤の投与により、腸腰筋膿瘍の症状を改善します。副作用もあるので医師の指示に従い、容量・用法を守るようにしましょう。

●ドレナージ

ドレナージとは溜まった膿を取り除く装置のことで排液法、排膿法、誘導法ともいいます。膿を取り除く以外にも原因となっている細菌や真菌(カビ)などを見極め、効果的な抗菌薬を決定するという役割もあります。

ドレナージの方法は局所麻酔下で超音波やCTを用いて皮膚から膿瘍に向けて針を刺し、体内の液体を採取します。膿瘍から皮膚外からチューブを膿が出てこなくなるまで留置し、同時に抗菌薬治療を行います。このドレナージは抗菌薬や抗生剤の投与だけでは十分な効果が出ない場合に併用して行う方法になります。

腸腰筋膿瘍に効果的なリハビリについて

腸腰筋膿瘍に効果的なリハビリとして、腸腰筋を鍛えるトレーニング方法があります。腸腰筋は太ももを持ちあげたり、股関節を屈曲させ、骨盤を前傾させたりと重要な働きをしている筋肉です。歩行や走行、姿勢の保持と日常生活をするうえで重要な役割を果たしています。

<腸腰筋を鍛えるトレーニング方法>

  1. 背筋を伸ばし、腰に手を当てる
  2. 片足を一歩前に踏み込み、息を吐きながら深く腰を沈め数秒キープする
  3. 沈めた腰をゆっくり元に戻しながら踏み出した足を元の位置に戻す
  4. 反対の脚でも同様に交互に行う(10回ずつ)

日常生活の中で腸腰筋を意識して簡単な階段昇降や太もも上げなどを行うだけでも効果があるので是非実施してみて下さい。

まとめ

ストレッチ2

・腸腰筋膿瘍とは、腸瘍筋に膿が溜まることによって様々な症状を引き起こす疾患のこと

・主な症状は発熱や全身倦怠感、背中や腰、下腹部の痛み、股関節の屈折変形があげられ、場合によっては尿路感染や菌血症を伴うことがある

・原因は栄養状態の不良や基本疾患による合併症、起因菌、筋骨格感染症、虫垂炎、憩室炎、クローン病などがあげられる

・腸腰筋膿瘍はMRI検査と造影CT検査によって診断される

・腸腰筋膿瘍は安静にすることが基本で医療治療では抗菌薬と抗生剤の投与、ドレナージの2つがある

・効果的なリハビリとして腸腰筋トレーニングがよいとされる

以上が今回記事のまとめになります。腸腰筋膿瘍の症状や原因は様々で決して一様ではありません。大切なのは感染症や合併症を防ぐため、原因疾患をしっかりコントロールをしていくことです。今回紹介した腸腰筋トレーニングもリハビリだけが目的ではなく、普段から行うことにより腸腰筋が鍛えられ他の不調や疾患の予防になります。

是非今回の記事を参考にして下さい。

  
/* */
  
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする