排尿障害の種類や症状を紹介!女性が排尿障害になるのは膀胱炎の可能性が高いかも?

ある程度の年齢を重ねると、どうしても若い時に比べて尿の切れがわるくなったり、残尿感を感じたりする人が少なくないようです。そのような症状は、もしかしたら排尿障害の症状の始まりかもしれません。

男性であれ女性であれ理由は異なりますが、年齢を重ねると排尿障害になりやすいとされています。男性であれば加齢で前立腺が肥大しやすく、女性であれば出産や運動不足などにより排尿に関連する筋力が緩んでしまいやすいのです。排尿障害になると、日常生活にも大きな影響を及ぼします。

そこで今回は、排尿障害についてまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。

排尿の仕組み

brussels-1818803_960_720

排尿障害について知るには、その前提として排尿の仕組みを理解しておくことが不可欠です。そこで、まずは排尿の仕組みと正常な排尿の状態についての基礎知識を、おさらいしておきたいと思います。

排尿の仕組み

尿は、腎臓で血液を濾過することで生じる老廃物などから作られます。腎臓で生成された尿は尿管を通じて膀胱に送られ、膀胱に一時的に溜められます。膀胱が尿を貯留できる量の8割程度まで尿が溜まると、神経の信号が大脳まで伝わって尿意として知覚されます。

尿意を知覚すると、腹圧を上げることによって膀胱の内圧を高め、尿道括約筋を緩めることで膀胱に貯留された尿が尿道を通じて体外に排泄されます。

このように排尿という行為は、大きく分けると尿を膀胱に一時的に貯留する蓄尿機能と尿を体外へ排泄する排尿機能から構成されていると言えます。そして、腎臓から尿管、膀胱、尿道に至る排尿に関連する器官を総称して尿路と呼び、特に膀胱から尿道を下部尿路と呼びます。

排尿に関わる神経路

排尿を司る排尿中枢は、大脳に存在する高位排尿中枢と脊髄(仙髄)に存在する下位排尿中枢があります。

膀胱や尿道への開閉を担当する尿道括約筋は下位排尿中枢によってコントロールされています。また、膀胱に尿がある程度溜まると、その信号が下位排尿中枢を通じて高位排尿中枢までもたらされ、尿意として知覚されます。

尿意が無いときは、高位排尿中枢が排尿抑制を命令して、下位排尿中枢が尿道括約筋を緊張・収縮させて蓄尿させます。そして尿意が生じると、高位排尿中枢が排尿抑制の命令を随意的に一時解除することで、下位排尿中枢が尿道括約筋を緩めて排尿します。

正常な排尿の状態

膀胱は主に筋肉によって構成されていて、蓄尿量によって筋肉が伸縮します。そのため、尿意が生じてからも多少の我慢が可能で、意図的に排尿を遅らせることができます。

人が蓄尿できる量は平均すると成人で500ml程度とされていますが、個人差が大きく250ml~600mlと幅があります。成人平均の500mlと仮定すると、約8割の400ml前後まで蓄尿量が達すると尿意を生じるのが通常です。

また、正常な排尿行為では尿意が生じると、いつでも排尿できて、排便の際にいきむような特別な努力は必要としないことも特徴です。

1日にトイレに行く回数は概ね4~7回程度が正常範囲とされていて、また1日の総排尿量は1000ml~2000mlとされますが、気温・摂取水分量・発汗量などによっても変動します。

排尿障害とは?

man-1337750_960_720

このような仕組みで排尿という行為が成り立っているわけですが、それでは排尿障害とは、どのような障害のことを言うのでしょうか?

排尿障害の定義や種類について、ご紹介したいと思います。

排尿障害とは?

排尿障害は、何らかの理由によって正常な排尿をできない状態のことを言い、別名で下部尿路症状とも呼ばれます。

前述のように正常な排尿行為は、膀胱に尿を蓄尿した後に尿意を知覚して排尿に至りますが、排尿障害は蓄尿と排尿という一連の行為のいずれかに障害が生じることで、結果として正常な排尿ができなくなることを言うのです。

そのため、障害が起こる部位によっても、現れる症状は様々かつ大きく異なりますので、排尿障害は正常な排尿をできない状態を総称する言葉と言うことができます。

排尿障害の種類

排尿障害は、障害が起こる部位や原因によって分類する場合と症状によって分類する場合があります。

排尿障害の原因による分類

排尿障害を障害が起こる部位や原因によって分類する場合、蓄尿の段階で膀胱などに障害が発生する蓄尿機能の障害と蓄尿後の排尿の段階で尿道などに障害が発生する排尿機能の障害とに分類することができます。

排尿障害の症状による分類

一口に排尿障害と言っても、現れる症状は様々です。したがって、排尿障害の症状の種類も多岐にわたります。主な排尿障害の症状は、次の通りです。

  • 頻尿、夜間頻尿
  • 多尿
  • 尿失禁
  • 尿閉(にょうへい)
  • 残尿感
  • 無尿、乏尿(ぼうにょう)

排尿障害の症状

urinary-incontinence-103063_960_720

それでは、排尿障害の症状としては、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか?

そこで、排尿障害の具体的な症状について、ご紹介したいと思います。

頻尿・夜間頻尿

頻尿は、排尿回数が正常な状態に比べて多くなること、つまりトイレに行く回数が通常時より多くなることを言います。具体的な回数が定義されているわけではありませんが、概ね1日に8回以上の排尿回数になると頻尿と判断されることになります。

夜間頻尿は、夜間の睡眠中に睡眠から途中覚醒して排尿に起きる回数が複数回になると夜間頻尿と判断されることになります。

頻尿や夜間頻尿は、多尿の症状と併発することが多いとされています。

多尿

多尿は、1日の総排尿量が正常な状態に比べて多い状態のことで、概ね2500mlを超えてくると多尿と判断されることになります。

尿失禁

尿失禁は、自分の意思に反して尿が排泄されてしまう状態のことで、いわゆる尿漏れ(尿もれ)と呼ばれる状態のことです。尿失禁は、その態様によっていくつかの種類が存在します。

腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、咳・くしゃみ・大笑い時・運動時・重い物を持ち上げる時など腹筋に力が入って腹圧が高まる際に、意思に反して尿が排泄されてしまう状態のことを言います。腹圧性尿失禁は、出産を経験した経産婦の女性に多く現れる傾向にあります。

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁は、尿意が切迫してから意思に反して尿が排泄されてしまう状態で、いわゆる尿意切迫感から我慢しきれずに尿もれするという状態のことを言います。切迫性尿失禁は、70歳以上の高齢者に多く現れる傾向にあります。

混合性尿失禁

混合性尿失禁は、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁とが併発したタイプの尿失禁です。

溢流性尿失禁

溢流性(いつりゅうせい)尿失禁は、尿が膀胱に入りきらず膀胱から溢れてしまうことで、意思に反して尿が排泄されてしまう状態のことです。溢流性尿失禁は、奇異性尿失禁とも呼ばれ、50歳以上の男性に好発する傾向にあります。

機能性尿失禁(機能性失禁)

機能性尿失禁は、尿路以外の身体障害で排泄動作が間に合わなかったり、精神障害でトイレまでたどり着けないことが理由で生じる尿失禁のことです。

反射性尿失禁

反射性尿失禁は、神経系の障害で信号が高位排尿中枢のある大脳まで伝わらないことで尿意が生じず、下位排尿中枢のある脊髄が膀胱が一杯になった信号から脊髄反射で膀胱括約筋などを刺激して尿が排泄される状態のことです。

尿閉

尿閉は、膀胱に蓄尿されているものの、尿道が何らかの要因で詰まるなど物理的に尿を排泄できない状態のことです。

尿閉は、高齢の男性に多く現れる傾向があります。詳しくは、尿閉とは?治療には透析が必要?原因となる病気や症状も紹介!産後のママも可能性がある?を読んでおきましょう。

残尿感

残尿感は、れっきとした排尿障害の症状の一つで、トイレで通常通り排尿した後にもかかわらず尿が残っている不快感のことです。

膀胱内に尿が残っているか否かという事実は関係なく、尿が残っている不快感が感じられる場合は排尿障害の症状である残尿感と判断されます。

無尿・乏尿

無尿は、1日の総排尿量が正常な状態に比べて極めて少ない状態のことで、概ね100ml未満の場合を無尿と判断します。

同様に乏尿(ぼうにょう)は、1日の総排尿量が正常な状態に比べて少ない状態のことで、概ね400ml未満の場合を乏尿と判断します。

排尿障害の原因

brain-1845940_960_720

このように排尿障害では様々な症状が現れますが、実は排尿障害を引き起こす原因についても非常に多岐にわたります。

そこで、排尿障害の原因にについて、ご紹介したいと思います。

蓄尿機能の障害を引き起こす原因

排尿行為のうち、尿を膀胱に一時的に貯留する蓄尿機能が障害されると、頻尿・夜間頻尿・尿失禁といった症状が現れやすくなります。そして、蓄尿機能の障害をもたらす病気・疾患は多岐にわたります。

神経因性膀胱

神経因性膀胱は、排尿に関わる神経路の障害が原因となって膀胱機能が低下したり、異常を生じたりする病気です。つまり、神経因性膀胱は、排尿を制御している神経路に問題が生じることで排尿障害を引き起こす疾患なのです。

神経因性膀胱は、高位排尿中枢の障害による過活動膀胱と下位排尿中枢の障害による低活動膀胱に分類されます。

過活動膀胱(痙性神経因性膀胱)

過活動膀胱は、大脳に存在する高位排尿中枢が何らかの要因によって障害されることで、下位排尿中枢への制御ができなくなってしまい、主に頻尿・夜間頻尿・尿失禁(切迫性尿失禁・反射性尿失禁)などの症状が現れます。また、過活動膀胱には、高位排尿中枢と下位排尿中枢をつなぐ脊髄が障害される場合も含まれます。ちなみに、過活動膀胱は、痙縮(けいしゅく)性膀胱や痙性神経因性膀胱とも呼ばれます。

過活動膀胱の原因は、脳梗塞・脳出血・パーキンソン病・アルツハイマー病・多発性硬化症など脳神経の変性に影響を与える病気であり、また脊髄損傷・椎間板ヘルニアなどで脊髄が障害されることも過活動膀胱の原因となります。

低活動膀胱(弛緩性神経因性膀胱)

低活動膀胱は、下位排尿中枢や末梢神経が何らかの要因によって障害されることで、尿意を感じられなくなるなど、主に尿失禁(溢流性尿失禁)・残尿感などの症状が現れます。低活動膀胱は、弛緩性膀胱や弛緩性神経因性膀胱とも呼ばれます。

低活動膀胱の原因は、仙髄の損傷・糖尿病による神経障害・直腸癌や子宮癌の手術療法における骨盤神経などの末梢神経損傷が考えられます。

排尿機能の障害を引き起こす原因

排尿行為のうち、尿を体外へ排泄する排尿機能が障害されると、頻尿・夜間頻尿・尿閉・残尿感などの症状に加えて、場合によっては無尿・乏尿などの症状が現れやすくなります。

排尿機能の障害をもたらす病気・疾患も多岐にわたります。

前立腺肥大症

前立腺は男性のみに存在する生殖器の一つで、膀胱の下で尿道を取り囲むように存在しています。前立腺は精液の一部となる前立腺液を分泌しますが、加齢とともに生殖能力が必要なくなるので、前立腺は萎縮か肥大のいずれかとなるとされています。

前立腺肥大症は、その名称の通り前立腺の細胞数が増加して肥大する病気です。そして、前立腺肥大症となると、尿道が圧迫されて排尿障害の諸症状が現れます。

詳しくは、前立腺肥大の原因とは?症状や治療法、検査方法を紹介!を参考にしてください。

膀胱炎・尿道炎

膀胱炎や尿道炎は、下部尿路である膀胱や尿道に細菌が侵入して炎症が生じる尿路感染症です。膀胱炎や尿道炎では、頻尿と排尿痛が主症状として現れ、場合によっては血尿が現れることもあります。

その他の原因

前立腺肥大症や尿路感染症の他にも、膀胱腫瘍(膀胱癌)・前立腺癌・膀胱結石・尿道結石子宮筋腫などによっても尿道が圧迫あるいは詰まる可能性があり、尿閉など排尿障害の諸症状が現れることがあります。

筋力の低下

蓄尿機能や排尿機能に障害がなくとも、筋力が低下することで尿道が緩んで尿失禁・頻尿という症状が現れることもあります。

特に女性は、出産・加齢・運動不足などが重なり、尿道や膣を締める筋肉である骨盤底筋・外尿道括約筋などの筋力が低下することが原因で、尿失禁の症状が現れやすいとされています。

腎機能の低下

腎臓が機能低下してしまうと、尿の産生がされなくなる場合があります。

すると、蓄尿機能や排尿機能に障害がなくとも、無尿や乏尿といった症状が現れることになります。

排尿障害の治療方法

the-test-1006795_960_720

それでは排尿障害の諸症状が現れた場合、どのような治療がなされるのでしょうか?そこで、排尿障害の治療方法・対処方法について、ご紹介したいと思います。

泌尿器科の受診と検査

排尿障害の諸症状が現れた場合、基本的には泌尿器科の病院を受診することになります。そして、排尿障害と診断するにあたっては、症状に応じて様々な検査を受けます。主な検査については、次の通りです。

尿検査

尿検査は最も基本的な検査で、尿を採取して尿に含まれる蛋白・糖・出血・細菌などを調べます。

尿流量検査(尿流測定)

尿流量検査は、専用機器のついたトイレに排尿することで勢い・尿量・排尿にかかる時間などを調べます。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、超音波で腎臓・膀胱の形を画像で検査する方法です。

残尿測定

残尿測定は、排尿後に超音波検査の膀胱の画像を見ながら残尿量を計算して測定します。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査は、尿道から内視鏡を挿入して膀胱内を観察する検査方法です。

膀胱内圧測定検査

膀胱内圧測定検査は、尿道にカテーテルを入れ膀胱内に造影剤を注入して、膀胱機能を調べます。

原因疾患の治療

排尿障害の諸症状は、基本的に何らかの他の病気・疾患が原因となっています。ですから、排尿障害の諸症状の治療法としては、原因疾患の治療をすることが挙げられます。

例えば、脳梗塞などによる高位排尿中枢の障害がある場合は、まず脳梗塞の治療が必要になるということです。

薬物療法

原因疾患の治療と並んで排尿障害の症状を緩和するために、患者に薬剤を投与することもあります。

蓄尿機能の障害に対しては、膀胱を拡大させる治療薬や排出路を収縮させ閉じる治療薬などが投与されます。

一方で、排尿機能の障害に対しては、膀胱を収縮させる治療薬や排出路を緩めて拡大させる治療薬などの内服治療薬が処方されます。

導尿法・自己導尿

導尿法あるいは自己導尿は、患者みずから尿道にカテーテルを入れて、尿を排泄する方法です。神経因性膀胱など神経障害による排尿障害の場合に、治療法の一つとして検討されます。

特に残尿感がある場合など尿が膀胱に残っていると、尿路感染症のリスクが高まりますので、尿路感染症の予防としての意味合いもあります。

排尿障害の予防方法

女性に多い筋力低下が原因の尿失禁・頻尿などについては、骨盤底筋訓練や膀胱訓練を実施することで、排尿障害の予防につながります。

骨盤底筋訓練は排尿に関わる筋肉を強化する体操で、この訓練・体操を継続することで筋力が回復して排尿障害の症状緩和・予防になります。

膀胱訓練は、自分の排尿について記録して排尿間隔をつかみ、徐々に排尿間隔を広げていきます。排尿の間隔を徐々に伸ばしていくことで、膀胱平滑筋が徐々に鍛えられ筋力が回復します。具体的な効果が出るには2ヶ月前後かかりますが、薬剤などを使いませんので身体に優しい解決策・予防法と言えるのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたか?排尿障害の概要を理解いただけたでしょうか?

一口に排尿障害と言っても、その症状は多岐にわたります。また、排尿障害をもたらす原因についても、非常に多くの病気や疾患から排尿障害の症状が現れることがあるのです。

そして、男女ともに加齢によっても排尿障害の症状が現れやすくなります。

ですから、排尿に関して何かおかしいなと感じたら、まずは泌尿器科の病院を受診して原因を把握することが必要です。排尿障害になると日常生活に多大な影響が及びますので、早期に対処することが大切と言えるでしょう。

関連記事として、

尿検査で蛋白にプラスマイナス反応が出る原因は?合わせて起こると危険な症状と対処法も紹介!

尿が出ない原因は病気かも?生活習慣やストレスが原因も場合も!予防するにはどうする?

これらの記事も読んでおきましょう。

  
/* */
  
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする