朝、目が覚めると、お腹が痛い。お腹がパンパンに張って苦しくて、痛い。朝から下痢・・・腹痛は、いつの間にか治まってしまうことが多いのですが、なんとなく「やる気」がなくなってしまいます。
寝起きの腹痛は、病院で検査しても「特に悪いところが見つからない」ことが多く、ストレスや寝不足、心因性などで起きるようです。でも、大腸ガンなど重篤な疾患が起きていることもあります。また、寝起きに腰痛が起きて困っている人も多いですね。
子供の場合、寝起きの腹痛のために不登校になるケースもあります。寝起きに生じる腹痛の原因と対処法、また、子供さんの場合についても、お伝えしますね。
寝起きの腹痛の原因は?
腹痛は、たいていの場合、あまり心配要らないものです。もちろん、細菌やウィルスに感染して大腸炎が起きた場合などの腹痛は、すぐに病院へ行く必要があります。
朝、目が覚めた時、お腹が痛いのは不愉快なものです。下痢や便秘、お腹がパンパンに張る腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)を伴うこともあります。腹痛のために学校や会社を休むことが多くなったりすると、日常生活にも支障をきたします。
知恵袋や知恵コレなどのサイトの質問も「寝起きの腹痛」についてが多いようです。
寝起きの腹痛はストレスなど心因性が多いのですが、大腸ガンや卵巣腫瘍、骨盤腹膜炎など重篤な疾患の可能性もあります。
[腹痛には、いろいろある]
腹痛といっても、急激に差し込むような疝痛があるもの、しくしくと鈍痛のあるもの、一過性のもの、反復性や慢性的なものまで、いろいろあります。緊急治療を要する、生命に関わる腹痛もあれば、内臓に何の異常もない場合もあります。
胃腸など消化器疾患だけでなく、血管疾患・婦人科疾患・泌尿器疾患など、いろいろな内臓疾患で腹痛が生じます。
腹痛には、①内蔵痛 ②体性痛 ③関連痛があります。
①内蔵痛
胃や腸などの管腔臓器が伸縮・拡張・痙攣する刺激で腹痛が生じます。肝臓などの実質臓器が腫脹して、臓器を覆う被膜が伸展して、痛みが生じます。
「なんとなくお腹が痛い」という鈍痛から、キリキリする激痛まで、幅広い痛みです。
②体性痛
腹腔内臓器が炎症を起こし、壁側腹壁や腸間膜が刺激されて、腹部に痛みが生じます。痛む部位が限られていて、持続的な鋭い痛みがあります。
腹膜炎が起きて「腹膜刺激症状」がある時は、緊急に医師の診療を受ける必要があります。
③関連痛
臓器の痛みを伝える神経が、皮膚の痛みを伝える神経と合流して生じる腹部の痛みです。痛みの原因となる臓器から離れた部位に痛みが生じます。膵臓や十二指腸の異常で背中が痛くなったり、心筋梗塞で左肩や腹部が痛くなったりします。
[朝は腹痛が起きやすい]
ヒトの身体は睡眠中は活動が低下します。目覚めが近い午前4時頃になると、身体の臓器が活発に働き始めます。胃腸も活動し始めます。
自律神経と体性神経
ヒトの身体は、自律神経と体性神経の2系統の神経により機能します。
体性神経は、刺激を脳に伝達する感覚神経や、脳から指令を伝える運動神経などで、ヒトが意図的に働かせたり、制御したりできます。
自律神経は、ヒトの生命活動全般に関わり、ヒトの意志で制御することはできません。血液の循環や体温調節、心臓の拍動など、生命を維持する働きをします。
交感神経と副交感神経
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経は興奮と活動、副交感神経は鎮静と休息を、司ります。
昼は交感神経が働き、胃腸など臓器の機能も活発になります。夜は副交感神経が働き、胃腸など臓器を休ませます。交感神経と副交感神経がバランス良く働き、スムーズに交代している時は、問題ありません。
自律神経系の乱れ
しかし、不規則な生活や栄養不足、ストレス過多、ホルモン分泌の異常などで、自律神経系が乱れると、交感神経と副交感神経の交代がスムーズに行われなくなります。
朝になっても、胃腸がなかなか活動を始めないようになります。そのため、寝起きに腹痛が生じやすいのです。
[過敏性腸症候群 IBS]
寝起きの腹痛は「過敏性腸症候群(IBS)」の可能性があります。
過敏性腸症候群は、強いストレスが原因で起こると考えられています。ストレス耐性の弱い20~30代の人に多く発症します。消化器内科医を受診する患者さんの1/3が過敏性腸症候群ですから、決して珍しい病気ではありません。
過敏性腸症候群の原因とメカニズム
腸は、「第二の脳」というほど、脳と同じようにストレスの影響を強く受けます。
身体的・精神的ストレス過多(事故・ケガ・過剰な音や光・過労・悩み・不安など)、昼夜逆転などの不規則な生活、ホルモン分泌の異常(更年期障害など)で、自律神経の働きが乱れます。
自律神経の働きが乱れると、腸を中心とする消化管運動(腸運動・胃腸運動)の異常や消化管(胃腸)の知覚過敏が起こります。
過敏性腸症候群の症状
病院で検査を受けても、腸に何の異常も認められません。
さし込むような痛みのある腹痛が急に起きたり(疝痛)、お腹がしくしく痛む鈍痛が持続的に起きたりします。便通があると、痛みは改善します。下痢をする人、便秘をする人、下痢と便秘を交互に起こす人、3タイプあります。
腹痛は下腹部、左の腹部に起きやすいようですが、部位は特定しません。腹痛とは言えない腹部不快感を生じることもあります。
腹部が張る腹部膨満感、オナラが出やすい、お腹がゴロゴロ鳴る腹鳴が生じます。疲労感・倦怠感・不安感・抑うつ・集中力欠如・頭痛・頭重感など心理症状を伴うことが多いようです。
寝起きだけでなく、満員電車の中や大事な会議や面接試験の寸前など、緊張する場面で腹痛や便意・腹鳴が起きやすくなります。
1日を始めることがストレスになる
過敏性腸症候群の人で、寝起きに腹痛が起きるのは、1日を始めることが憂鬱でストレスになっているのです。寝ている間も、学校や職場、仕事、抱えている問題について考え、プレッシャーを受けています。そのため、目覚めると、お腹が痛くなるのです。
寝起きの腹痛は「心身ともに、これ以上のストレスには耐えられない」というSOS信号です。
過敏性腸症候群の治療法
過敏性腸症候群は、消化器内科で胃腸など内臓に何の異常もないことをしっかり確認してから、診断されます。過敏性腸症候群と診断されると、心療内科で治療することを勧められるようです。
ストレス性の病気ですから、治療方法は、ストレスの解消と腸内環境の改善です。
しかし、ストレスを完全に解消することはできません。多少のストレスは「やる気」の源になるくらいです。ストレスを気にしないようにするのが、一番良い方法です。
①ストレスになっていることを、人に話す
人に話すことで、何がストレスになっているのか、何を悩んでいるのか、など問題を整理てきます。心理カウンセラーなど専門家に話すといいですよ。
②適度な運動をする
身体を軽く動かすと、ストレス発散になります。水泳でもストレッチでも、ジャズダンスでも、好きなことをします。朝陽を浴びながら散歩やスロージョギングすると、幸福ホルモンのセロトニンの分泌を促すので、一石二鳥です。
セロトニンは過敏性腸症候群に効果があります。
③良質な睡眠をとり、心身をゆっくり休ませる
良質な睡眠を十分にとり、頭と体を休ませます。できるだけ規則正しい生活をするようにします。
④食事の習慣を改善する
水分を十分とり、腸内の善玉菌を増やす野菜をたっぷり食べます。ヨーグルトや乳酸菌飲料も腸内環境を整えます。
コーヒーや紅茶によるカフェインの摂りすぎ、香辛料の多い料理、油っこい料理は、控えるように注意します。
⑤心療内科医に相談する
心療内科では、必要に応じて薬を投与します。
[睡眠不足]
寝起きに、お腹がキリキリ痛くなり、胃もキューッと痛むならば、睡眠不足が原因かもしれません。
自分でも、「睡眠時間が短い」「身体を横にしているだけで、熟睡できない」「夜中に何度も目が覚める」「全身倦怠感がある」などと感じているはずです。
睡眠不足だと胃酸が分泌過多になる
寝不足になると、胃酸の分泌が多くなります。胃酸から胃壁を護る粘液の分泌も減少します。胃腸が荒れるので、寝起きに胃痛・腹痛が起きるのです。
睡眠不足による寝起きの腹痛の対処法
対処方法は、痛みの緩和と睡眠不足の解消です。
(寝起きの痛みを鎮める)
朝、起きたら、ぬるいほうじ茶か牛乳を、ゆっくり飲みます。30分ほどでおさまります。
(睡眠不足の解消)
昼間の活動が尾を引いて、神経が興奮状態にあると、なかなか眠れませんし、熟睡できません。心身ともにリラックスして、神経を鎮めることが良質の睡眠を得る方法です。
①寝る前にストレッチ体操などで、身体の筋肉をほぐします。
②寝る前にお風呂にゆったりつかり、全身を温めます。リラックスできる香りの入浴剤も効果があります。
③寝る前にホットミルクを飲みます。牛乳には、眠気を促すトリプトファンという成分があります。身体も温まります。
④寝る1時間くらい前から、寝室の照明を落とし、リラックスできる音楽を小さな音でかけます。
⑤寝る1時間前には、パソコンやスマートホンなど強い光刺激を受ける物の使用をやめます。
[お腹にガスが溜まる]
お腹にガスが溜まると、腹部がパンパンに張って苦しく、痛みや不快感が生じます。オナラやゲップでガスが出てしまえば、改善します。
お腹にガスが溜まる原因は、いろいろありますが、主なものは、便秘と呑気症です。
便秘すると、腹痛が起きる
便秘は、胃の機能が低下して、胃の内容物が十分に消化できず、腸の動きが悪くなって、腸の内容物が停滞して起こります。
便秘すると、便が詰まってガスの出口を塞ぎます。腹部がガスで張り、他の臓器を刺激して、腹痛や吐き気が生じます。便秘が重症になるほど、腹痛が起きやすくなります。排便していても、腹痛がある時は、便秘している可能性があります。
(便秘の解消方法)
便秘は腸の動きが悪くなっているので、腸運動を改善します。
手を温めて、おへその周囲を時計廻りにマッサージして、排便を促します。温めると腸運動も活発になります。
便秘が重症の時は、便秘薬や浣腸を使用します。
普段から、ヨーグルトや乳酸飲料、食物繊維を十分に摂り、腸内環境を整えて、便秘を予防することが大事です。暴飲暴食や運動不足も、便秘しやすくなりますから、要注意です。
呑気症
飲食する時に、必要以上に空気を呑み込んでしまい、胃腸に空気が溜まって不快感を生じることを、「呑気症」といいます。20~50代の女性に多いといいますが、男性にも発症します。「空気嚥下症」ともいいます。不安感やストレスが原因のようです。
お腹の上部に膨満感があり、おへそを中心に腹部全体に鈍痛が生じます。
(呑気症の治療方法)
飲食の時に、空気を呑み込みやすいだけなら、よく噛んで、ゆっくり食事するようにします。炭酸飲料は控えるようにします。
うつ症状などが伴う場合は、心療内科の専門家による治療が必要です。詳しくは、空気嚥下症の治療方法とは?症状や原因を知って対策しよう!を読んでおきましょう。
[お腹の冷え]
寝起きの腹痛に下痢が伴う場合、「腹部の冷え」が原因の可能性があります。
お腹は冷えると、下痢を起こしやすくなります。腸が動くので、腹痛も生じます。眠っていると、身体の冷えを感じません。寒さを感じないので、「寝冷え」してしまうのです。
慢性的に身体が冷えていると、冷えに気づかないこともあります。寝る前に冷たい飲み物を大量にとり、身体がよけい冷えてしまいます。
朝、目が覚めても、身体の冷えが続いているので、下痢と腹痛が生じます。
お腹の冷えによる腹痛の対策
寝起きの腹痛と下痢がよく起きる人は、次の対策をオススメします。
- 寝る前に冷たい物を飲食しない
- 寝る前に、お風呂にゆっくり入って身体を温める
- 締め付けないタイプの腹巻を着けて寝る
- 朝起きたら、一枚上に着て、身体を温める
- 寝起きには冷たい水ではなく、ぬるま湯を飲む
[前夜の食事が悪い]
寝起きに腹痛が起きるのは、食習慣が原因のこともあります。夕飯に油っこい物、刺激の強い料理や強い酒類を多量に摂ると、胃腸に負担がかかります。消化不良を起こしたりして、寝起きに腹痛や下痢が生じます。
夜遅く食事をするのも、胃腸の負担が大きくなります。食習慣を改善すれば、寝起きの腹痛も改善します。
食中毒・感染症の可能性
腹痛と下痢に、吐き気や嘔吐、発熱が伴う時は、食中毒・感染症の可能性があります。すぐに病院に行く必要があります。入院することもあります。
[便秘と腹痛は重篤な疾患の可能性がある]
しばしば、便秘と寝起きの腹痛が起きる場合は、心因性の病気と限らず、ガンなど重篤な疾患の可能性があります。
大腸ガン・卵巣腫瘍・腸閉塞・大腸憩室症・骨盤腹膜炎・巨大結腸症・全身性強皮症などが考えられます。
寝起きの腹痛は、まず消化器内科を受診する
便秘と寝起きの腹痛が起きているならば、まず消化器内科医を受診します。そこで何の異常も見つからなければ、心療内科医に相談します。
子どもの寝起きの腹痛
子どもにも、寝起きに腹痛が起きることがあります。幼い子供にも便秘が起こります。内臓疾患や食中毒、消化不良で、腹痛が起こります。
小学生や中学生が寝起きに腹痛を起こすと、不登校になることがあります。病気とは言えないような症状の場合もあり、不登校と病気の判別が難しいこともあります。
子供でも心因性の疾患を発症することがあるのです。心因性疾患か器質性疾患かの診断は医師でも難しいほどです。
子供の病気は、医学だけでは解決できないことが多いようです。医師と家庭が協力し合って、子供の病気と向き合うことが必要です。
[便秘]
子供は便秘すると、寝起きに腹痛を起こすことがよくあります。子供は自律神経が未発達なために、目が覚めると、腹痛を起こしやすいのです。夜中に、目を覚まして腹痛を訴えることもあります。
子供の便秘による腹痛の対処法
子供に、下痢・嘔吐・発熱がないことを確かめます。
浣腸して排便させます。浣腸しても、腹痛が治まらなければ、小児科医に診せます。
子供が便秘している時は、仰向けに寝かせて、おへそを中心に円を描くようにマッサージすると効果があります。浣腸を常習的に使用すると、自分で排便する力が弱くなるので、注意が必要です。
[慢性反復性腹痛]
保育園児から学童期にかけて、寝起きや朝食前後、登園・登校前に、慢性的に反復性の腹痛を起こすことを、「慢性反復性腹痛」といいます。
慢性反復性腹痛の症状
慢性反復性腹痛は、数ヶ月から数年間続きます。
おへそを中心にさまざまなお腹の痛みを訴えます。全身性倦怠感・頭痛・嘔吐が生じることもあります。
安静にしていたり、排便したりすると、1~2時間で腹痛などの症状が治まります。
慢性反復性腹痛の多くは心因性
大部分が心因性で、器質性が原因の場合は5%程度です。器質性疾患の場合もあるので、小児科医によく相談することをオススメします。専門家の診断が必要なこともあります。
対処法は、まず「お腹が痛いこと」を認めてあげます。子供に「仮病」とか「嘘つき」と言うのはNGです。子供は、本当に、繰り返しお腹が痛くなるのです。「お腹が痛くても、心配することはないよ」と安心させます。
心因性の腹痛の場合は、精神的な安定性が何よりも必要です。
[起立性調節障害]
「起立性調節障害」とは、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、起立した時に血圧が低下し、脳血流や全身の血行が維持されなくなる病気です。
普通は、昼間に交感神経が働き、夜間に副交感神経が働きます。自律神経が乱れると、交感神経と副交感神経の交代が、朝に行われず、午後にずれ込むことがあります。
10~16歳、小学生から中学生にかけて発症することが多くなります。
起立性調節障害の症状
立ちくらみが起き、立っていると気分が悪くなります。失神発作が起きることもあります。
血流が悪いので、酸素が十分供給されず、全身性倦怠感・疲労回復の遅れ・頭痛・思考力集中力の低下などが起きます。横になってゴロゴロしていると、血流が回復し、症状が改善します。
交感神経と副交感神経の交代がうまくいかないので、朝に起きられず、午前中は元気がありません。午後になると、交感神経が働き始め、夜になっても興奮が続き、眠れなくなります。
知恵袋などの記事では、初めに、寝起きの腹痛が起きるようです。そのうち、立ちくらみやふらつき、食欲不振などが生じ、学校で失神発作が起きたりします。
起立性調節障害の治療法
起立性調節障害は自律神経の機能低下という身体疾患ですから、小児科医は身体的治療から始めます。規則正しい生活を送るように指導し、必要に応じて薬物投与を行います。
自律神経は心身のストレスでバランスが乱れますから、心のケアも必要です。子供がゴロゴロしていたり、朝、起きられなかったり、腹痛を訴えたりしても、怠けているとか、仮病とか考えず、「少し体調が悪くても、心配要らない」と、安心させるようにします。
[寝起きの腹痛から不登校にならないようにするには?]
寝起きの腹痛が、便秘や消化不良、胃腸の病気でなく、慢性反復性腹痛だったり、起立性調節障害だったりする場合は、きちんとケアしないと、ずるずると不登校になる可能性があります。医師とよく相談し、できるだけ登校・登園するようにします。
子供は、寝起きに生じるちょっとした腹痛で、保育園や幼稚園、学校を休む癖がつきます。休み癖がつくと、生活が昼夜逆転するなど不規則になり、自律神経系がさらに乱れます。
早期に、信頼できる医師と協力して、不登校にならないようにします。
寝起きの腰痛について
腰痛に悩む人は多いですね。高齢者だけでなく、若い人も、腰痛を持っています。知恵袋や知恵コレなどのサイトでも「寝起きの腰痛」の質問が多く、回答も自分の体験に基づくものが多く見られます。
寝起きの腰痛の原因は、大きく分けて4つです。①前日および寝る前の姿勢 ②腰周囲の筋肉疲労 ③寝方が悪い ④寝る前の食事 です。
[腰痛はなぜ起きるのか?]
ヒトの背骨は、24の椎骨と椎間板で成り立っています。椎間板は椎骨の間にあるクッションのようなものです。椎骨の下に仙骨と尾骨があります。仙骨は腰椎を支え、骨盤と連結しています。
背骨の中央には脊柱管という孔があり、脊髄神経が通っています。脊椎関節という関節があるので、背骨を曲げたり伸ばしたりできます。これらの骨を靭帯や筋肉が支えています。
脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア
脊柱管狭窄症や椎間板が飛び出す椎間板ヘルニアになると、神経を刺激して、腰痛・下肢痛・下肢のしびれなどが生じます。
仙腸関節障害・舟状骨骨折
仙骨と腸骨の連結部を仙腸関節といいます。仙腸関節に負荷がかかりすぎたり、捻挫したりすると、臀部・足の付け根・下肢に痛みが生じます。仙腸関節障害といいます。
スポーツ選手は足の舟状骨をよく骨折します。このような骨折などがあると、膝や腰に負担がかかり、腰痛が生じることがあります。
筋肉疲労による血液循環の悪化
骨を支える筋肉に疲労が溜まると、筋力が低下して血液循環が悪くなります。痛みを出す物質が産生され、筋肉が緊張して、腰痛や腰周囲の不快感が繰り返し起きるようになります。
[前日および寝る前の姿勢]
寝起きに腰痛が起きる人は、前日および寝る前の姿勢をチェックしてください。草むしりやパソコン、編み物など、前かがみの姿勢を長時間続けていると、翌朝、腰が痛くて起きられないことがあります。これは仙腸関節に負荷がかかり過ぎたのです。
起きたとたんにギックリ腰のような症状が出ることもあります。
[腰の周囲の筋肉疲労]
長期間、立ち仕事やデスクワークなど同じ姿勢を続ける生活をしていると、腰や股関節の筋肉が緊張し続けます。血流が悪くなり、疲労物質が溜まります。そのために、筋力が低下して、さらに血液循環が悪くなってしまいます。
眠っている間は、血液循環も低下しますから、普通でも、寝起きは、血液循環が悪い状態です。腰周囲の筋肉が硬くなっていると、血液が十分に行き渡らず、痛みが生じます。痛みをガマンして動いているうちに、血行が良くなり、痛みが軽減していきます。
椎間板ヘルニアや坐骨神経痛があると、椎間板や腰の筋肉に負担が大きくなり、腰や股関節の筋肉が、より疲れやすくなります。そのため、寝起きの腰痛が強く生じます。
筋肉疲労の対策
日常、仕事をする時に、正しい姿勢をとり、腰や股関節の筋肉に必要以上に負荷がかからないようにします。同じ姿勢を続けている時は、時々、ストレッチをします。
筋肉の緊張を解いて、硬さをほぐすためには、スロージョギングやヨガが効果的です。
目が覚めたら、横になったまま、手足を伸ばしたり、ゆっくり曲げたり、軽いストレッチをすると、腰痛が軽減します。
[寝る姿勢]
寝起きに腰痛が起きる人は、寝ている姿勢をチェックする必要があります。
うつ伏せで眠るのは、最も腰に負担がかかる寝方です。腰が反っているので、負荷が大きくなり、神経を圧迫したり、血流を悪くしたりします。そのため、寝起きに腰が痛くなります。
椎間板に負荷のかからない寝方は、仰向けです。ただ、背骨など身体にゆがみのある場合は、仰向けに寝ると、腰が安定しないので、身体のゆがみが大きくなります。仰向けに寝ると違和感があるならば、右向きか左向きか、心地よい感じの寝方を見つけてください。
腰痛が激しい時は、横向きになり、身体を丸めるようにして寝ると、いいようです。腰痛が安定したら、少しずつ、仰向けに寝るようにしていきます。
身体のゆがみは、整形外科医に相談しながら、ヨガやストレッチを行って改善します。
[寝る前の食事]
寝る前に食事をすると、内蔵、とくに胃腸に負担がかかります。眠っている時は、消化の機能も低下しますから、胃の内容物が十分に消化されません。
内蔵に負担がかかると、「内臓神経反射」により腰や背中の筋肉が緊張します。そのため、血液循環が悪くなり、寝起きに腰痛が生じます。
胃腸に負担がかかるので、寝起きに腹痛が起きやすくなります。
寝起きに腰痛と腹痛がダブルで起きる可能性があります。
食事は寝る2時間前までに済ます
寝起きの腰痛と腹痛を防ぐために、夜の食事は眠る2時間前までに済ませるようにします。油っこい料理・刺激の強い料理を避け、アルコール類を適量に抑え、腹八分目に食べます。
まとめ 寝起きの腹痛はストレスなど心因性のものが多い
寝起きに腹痛が起きることは珍しくありません。
胃腸など内臓は、自律神経によって機能しています。自律神経は、興奮と活動を司る交感神経と鎮静と休止を司る副交感神経です。昼間は交感神経が働き、夜間は副交感神経が働いて、生命活動を維持しています。
その自律神経のバランスが乱れると、交感神経と副交感神経の交代がスムーズに行われなくなります。朝になっても胃腸が十分に機能しないので、寝起きに腹痛が起きやすくなります。
自律神経系は、心身のストレス過多・不規則な生活・ホルモン分泌の異常などでバランスを崩しやすいのです。「過敏性腸症候群」というストレス性の病気が起きることもあります。ストレス過多や不安は、睡眠不足・便秘・呑気症などを引き起こし、そのために、寝起きの腹痛が起きやすくなります。
寝起きの腹痛の対策は、規則正しい生活・良質な睡眠・適度な運動です。ストレスを解消することが何より大事ですが、ストレスを全部解消するのは不可能です。多少のストレスは必要悪と考えて、気にしないようにします。
寝起きの腹痛は、ストレス性・心因性が多いのですが、下痢や便秘を伴う場合は、大腸ガンや卵巣腫瘍など重篤な疾患の可能性があります。寝起きの腹痛は、消化器内科医を受診し、原因を明確にする必要があります。何の異常もなければ、心療内科医に相談することをオススメします。
関連記事として、
・寝起きにめまいが起きる原因とは?血圧や病気との関係について
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