「尿閉」と見ると、やはり尿が出にくいのかなと感じがしますが、字が意味を表している通り、排尿が困難な状態になることをいいます。この病にかかる人は結構いて、泌尿器科にはかなりの診察を受ける人がいるようです。
さらに、これもいろいろ種類がありますが、似た症状に乏尿という病もあります。実はこの尿閉は尿が出なくなるという、非常に苦痛を伴うものなので、少しでもおかしいなと思ったりした場合は、速やかに医師の診断を受けることをお勧めします。
この病にかかると、少し恥ずかしい気もしますが、他の病を併発してしまうこともありますので、そのような感情は抑えて、診察を速やかに受ける注意が必要です。
今回はこの尿が出ない、出にくいという尿閉についてお伝えいたします。
尿閉の症状
尿閉の症状について紹介します。
完全尿閉
これは、全く排尿ができない状態のことです。尿はトイレで排尿するまで、膀胱という器官に溜まっています。そして、トイレに行きたくなるという尿意を催すと、いわゆる用を足すという排尿行為をする訳ですが、この完全尿閉は、膀胱の中に尿が溜まって尿意があるにも関わらずに排尿できない状態をいいます。
つまり全く出ない状態をいいます。単純に尿が出ないということではなく、出したくても出せない状態をいいます。
不完全尿閉
尿意があり、膀胱に尿が溜まっているのですが、トイレにいっても、少ししか出ない状態を不完全尿閉といいます。この少しというのが不完全尿閉で、全く出ないというのが完全尿閉ということになります。
急性尿閉
この急性というのは、尿が溜まっているのですが、突然に尿が出なくなる状態をいいます。排尿する際の尿を押し出す筋肉に異常はないのですが、何らかの原因で突然に尿が出ない状態を指します。
急性尿閉の場合は、膀胱近辺の痛みや冷や汗が出てくることが多く、主な原因として前立腺肥大による尿管の圧迫の影響と思われます。
慢性尿閉
徐々に尿路が狭まってきて、その閉塞が進行し、その影響で膀胱の残尿感を感じたり、実際に尿が少しずつしか出てこないことがあります。
さらに進行すると、尿意を感じなくなり失禁といって、尿が漏れて来ることもありますし、また尿が逆流し腎臓に悪影響を与えることもあります。
尿が出る仕組み
尿は身体中の不要になった水分が排出される訳ですが、最後に腎臓でろ過されて膀胱に少しずつ溜まってきます。この量がある程度になると、中枢神経を通して脳が尿意を催したことを感知します。この溜められる量は人により、また気温や体調により増えたり減ったりします。
夜の寝ている間はかなりの量を溜め込めますが、普段はそれほどでもありません。また、過去に行きたくても行けない状態の体験を多くしていると、それほどの尿が溜まっていないのに、尿意を催す時間が早くなる傾向にあります。
膀胱
尿を排出する機能として一番重要なのが、この膀胱です。尿をある程度までため込み、適度のところで排出します。この膀胱がいっぱいになったという知らせが神経の中枢を通り、脳へと伝わるのです。
先に書いた、脳梗塞などで神経が働かなくなることで、排出もできなくなることもあります。膀胱は伸び縮みし、ある程度尿を溜める我慢ができます。普通の人でだいたい300~500ccぐらいとのことです。女性や子供はやはり容量は少なくなります。また、女性は尿路が男性に比べ短いので、量の問題意外にも早めに尿意を感じる傾向にあります。
さらに尿を溜め過ぎることを何度も繰り返すと、膀胱炎が起きます。これは、大腸菌が尿道を通して膀胱に入り込み炎症を起こしてしまうものです。尿を溜め過ぎることが主な原因で、特に女性は膀胱炎にかかる人が多い傾向にあります。
放っておくと治ることもありますが、抗生物質で早い段階で対応したほうがいいかと思います。
この膀胱炎は、尿路が痛くなったり、尿の色が白っぽく濁る、排尿時に痛みを感じるなどの症状があります。我慢しすぎが主な原因とされていますが、最近はビデの使い過ぎで粘膜の状態を荒らさないようにすることも重要といわれています。
また、妊娠や性交渉でも細菌が入り込むことで膀胱炎になることがあります。
尿の成分
尿は血液を腎臓で濾過して作られるのですが、この際に不要なものを体外に排出する役目を負っています。色が透明に近いほど、体内の不純物が少ないということになり、逆に色が濃い黄色になると、不純物が多いということになります。
あまり水分を取らないでいると、必然濃い色になりますが、これは特に身体に異常が発生している訳ではありません。
中には腎臓が悪くなっていて、ろ過がうまくいかず血液が血尿として出る場合がありますので、濃い茶色や赤っぽい場合は医師の診断を仰いだほうがいいと思います。
尿閉の原因
続いて尿閉の原因について紹介します。
尿路の障害
膀胱から尿管を通して流れる際の管に何らかの圧力やできものなどがある場合に起こります。がんなどの腫れものの可能性はあります。
この場合の検査で尿路もしくは膀胱かとわかると思います。また胆石が出来ていて、尿路を塞いでいる場合もあり、その障害の範囲は多岐に及びます。いずれにせよ、詳しい検査ですぐに判明します。
前立腺肥大
前立腺肥大は、股間の上部にある前立腺が何らかの影響で肥大してしまう病気です。悪化するとがんに進行することがわかっています。主に男性に多い症状です。
その前立腺が肥大することにより、尿管が圧迫されるために排尿困難になることです。年を取るごとにこの病気になる可能性は高まるようで、合併症として血尿、細菌による感染症、結石ができるなど厄介な症状を併発いたします。
妊娠、産後での影響
妊娠をすることにより、子宮と尿道が近い関係もあり塞がれて、尿が出にくいこともあります。産後は通常通りになることがほとんどなので心配することはないと思います。
脊髄障害
脊髄に障害等がある場合、その神経の伝達がうまくいかずに排尿の行為自体が阻害される場合があります。
この場合、尿意が伝わらないと、膀胱が一杯になっても気づかないケースと、尿意はあるのに、尿を排出するための筋肉が動かせないケースに分かれます。この他、別の障害も引き起こすことがあり速やかな対応が必要となります。
脳梗塞
この脳梗塞も、脊髄障害と同様で血管が詰まることにより、神経が正常に働かずに普段できる行為ができなくなってしまいます。俗に言われている主な症状は、手足の麻痺などといわ、腕が動かないとか、足の動きがスムーズでないなど、多方面に渡っての障害を引き起こします。
その以外に結構多いのが、排尿障害になりやすいということで、その症状が出ることは多いと報告されています。
薬の影響
排尿が困難になる原因に、何かの病気の治療に飲んでいる薬が影響している場合があります。いわゆる副作用なのですが、そのような薬は、胃腸薬や抗うつ薬、風邪薬などで市販の医薬品に見られることもあります。
これらの薬を使用する場合、特に抗うつ薬にはコリンという成分が入っているもので、この成分が排尿障害を引き起こしていると考えられています。
薬を服用した時に、排尿困難の症状が見られたら、医師などへの相談を行うことが望ましいと思います。
精神的な影響
例えば入院中の患者が、尿瓶などを使って排尿するなど、普段とは違った環境の場合に起こる尿閉です。あくまでも一過性のものが多く、時間や慣れで問題を解決することが多いようです。
ぞの他、尿に関連する病気
無尿
腎臓の機能が衰えることにより、尿を作り出すことができないため排尿もほとんどないという状態です。尿閉の場合は、尿道へカテーテルの管を差込むとその管を通して排出されます。これは排尿しやすいように、女官の管を通すことで管が尿管の代わりになり、溜まった尿が排出されます。
ところが、この無尿は尿自体がないために尿意すら催さないということです。では、本来の排出されるであろう尿はどこの行ってしまったのかというと、リンパ管などを通して全身を巡ります。
そして、毒素など排出するべくものも体内に滞っているので、当然身体によくありません。この場合の原因は明らかに腎臓の異常です。腎臓の検査を行った上で、治療を行います。
乏尿
ほぼ無尿と同じなのですが、一日の尿の量が400ミリリットル以下になる状態をいいます。トイレに行く回数も一日に一回か二回程度ということになります。これも無尿と同様、非常に危険な状態です。やはり、尿を作り出す機能が衰えることが原因と考えられます。
ちなみに400ミリリットルというと通常に人の一回の量が500ミリリットルでそのを7~8回ほど行きますから、相当の少ない量といえます。
こちらも同様に、腎臓に異常が原因となります。治療は腎臓を重点的に診ますが、尿管など胆石が詰まってしまい、この症状が出る場合もあります。
頻尿
逆に無尿や乏尿と違って、頻繁に尿意を催すことです。主に多い例として夜間頻尿といって、夜中に何度もトイレに行くことです。特に50歳以上の年齢になると、夜間に1回は行くケースがほとんどです。この場合は頻尿とはいいませんが、3回以上いく場合を夜間頻尿といいます。
さらに高齢になると、夜中にトイレに行くケースはかなり増えます。そのほとんどが、加齢によるものなので、あまり気にしなくても大丈夫と思われます。
また、頻尿は糖尿病、心臓病、腎臓病などの持病がある人に多いという傾向にあります。これは逆に考えると、頻尿の傾向があるということはそのうちのどれかの病気にかかっているということの解釈もできますので、自分の体調も少し観察してみた方がいいかもしれません。
それと体調によるもの以外に、トラウマというと大げさですが、トイレに行けない環境があると行きたくなるという精神状態になることもあります。
過去の行きたくても行けない状況を何度か経験していると、行けるときに行くことで膀胱自体が縮まり、あまり尿をためられなくなってしまうのです。ですから、一回一回は少量しか出ないのですが、頻繁に行くたくなるという状態になってしまうのです。
これなどはある程度尿はためて、膀胱の柔軟性や容量なども可能な限り大きくしておくことも重要です。行けるときに行かない訓練も必要かもしれません。
尿毒症
腎臓の働きが低下し、機能が失われることにより、全身にさまざま症状を引き起こすことです。主に頭痛、めまい、手足のしびれなどが起こり、尿の量が減ったり、進行すると腎不全など命にかかわる病気へと進展します。さらに疲れやすい、だるくなることも特徴の一つです。
このような症状はよくあることなので、尿毒症と本人は気がつかないケースがほとんどです。このような疲れやすいとか、だるいという症状は肝炎にも見られることも多いので、多少長く続くようでしたら、それらの病気を疑った方がいいかもしれません。
これらの症状のうち、頭痛、めまいは血中の老廃物などがきちんとろ過されず、排出されないことが原因です。
さらに血圧が高いとか疲労の蓄積などの体調不良、アルコールの過剰摂取、タバコなども原因となります。このような習慣は、ただでさえ、血中の老廃物を増やしてしまう状況になりますので、生活習慣をきちんとすることが改善のポイントになります。
腎臓の機能が多少おかしくなっても、腎臓自体に痛みを感じないので、進行してもあまり症状が出る訳でもありません。ですが、出たら最後とはいいませんがそれはかなり進行していることになります。
尿失禁
膀胱には尿がたくさん溜まっているのですが、尿意を感じない時に、少しずつ尿が漏れてしまう症状です。これは、膀胱から排尿する時に緩める筋肉が、弱まることにより、溜まった尿をコントロールしながら排尿できないことです。
それと知らない間に尿が漏れてしまいますが、だいたいは高齢者の方の独特の症状です。高齢者は、全体的に筋肉が衰えがちです。尿を我慢する際に使われる筋肉も、弱まるためにこのような漏れが生じてしまうのです。
普段からウォーキングなどの運動で、この筋肉は鍛えることができますので、気になる場合はウォーキングにプラスして、下半身を強化する運動を行うことが尿漏れの予防にもつながります。
神経因性膀胱
弛緩型
膀胱の壁が厚くなり、その収縮がうまくいかないことにより、尿が適切に排出できないことを弛緩型の神経陰性膀胱と呼びます。これらは現在、投薬により改善されます。この症状は、前立腺肥大による影響が、膀胱壁を厚くしてしまうということが確認されています。
痙直性型
膀胱の壁が厚くなることにより、収縮がうまく行われず、少量で尿意を催すのが、痙直性型です。トイレに行く回数が増えることもあり、意外にやっかいな症状です。こちらの薬での治療で改善されます。
尿路感染症
尿が作られて排出されるまでの管が細菌に感染し炎症を起こすものです。尿路は腎臓、膀胱、と繋がっているので、細菌が奥へと入ってくる可能性があります。この尿路感染症の主なものが、腎盂腎炎や膀胱炎などになります。
腎盂腎炎
この病気は露骨に身体に反応がでます。尿路感染症の一つですが、尿路が痛み、膿が交じったりするのですが、さらに腰痛であったり、高熱を発症することもあります。
尿閉の治療法
尿閉の治療方法を知っておきましょう。
透析
腎臓が主な原因となっているものに関しては、血液を浄化する意味でも、透析を行うことが主な治療法となります。透析は本人の腎臓の働きが悪いために、血中の老廃物を浄化できないため、医療器具を用いることにより血液を浄化します。程度にもよりますが、週に一度程度の透析が一般的です。
この透析は、それこそ腎臓の機能が相当低下した際に行われます。ですがその費用は、保険が効くとはいえかなりの高額になるようです。そこまでならないうちの早い段階での気づきや発見が、透析にならないための予防法となります。早い段階では、透析にまでならないことが報告されています。
生活習慣の改善
不規則な生活は、特に尿閉にばかりでなく、他にも負担がかかっています。よって、生活を規則正しくすることは、改善の第一の条件となります。また、生活習慣が乱れてくると、いわゆるメタボ体質になり、内臓への負担などの影響が出ますので、気をつかうことを怠らないでください。
仕事に忙殺され、睡眠時間が少ない、寝る時間帯がまちまちとなると、体調の悪化につながり、生活習慣の管理も難しくなります。
抗生物質の投薬
尿道が細菌感染して起こる、尿路感染では投薬での治療が一般的です。抗生物質で最近の働きを弱めることにより、尿閉は改善されます。それと気を付かないといけないのは、風邪薬を飲むことによって、尿閉にかかることがあります。この場合は当然、風邪薬を止める事により改善されます。
前立腺肥大の改善
前立腺が肥大したことのより、尿閉が起こる場合は、抗男性ホルモン剤の使用、手術で前立腺を取る、投薬の3つの方法があります。抗男性ホルモン剤は、前立腺を縮小させることができます。手術は、最終的な方法ですが、尿閉が治まる代わりに尿閉漏れがひどくなる傾向にあります。
また、投薬による治療は初期の段階で効果を発揮しますので、その状況により判断を行うことが適切と思われます。
まとめ
いかがでしたか。あまり聞きなれない病気であり症状ですが、非常にかかやすい病気だということはお解かりになられたと思います。ただ、原因を確認するには結構大変かと思います。というのも、脳かもしれないし、膀胱かもしれないといろいろなところに閉尿の可能性があるからです。
医師はその症状から判断すると思いますが、症状が軽いとかご自身の判断をするのではなく、行く行くは重大な病気にもつながりかねませんので、くれぐれも注意を要することかと思います。
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