私の職場では、にんにくブームが起きています。
健康に気を使う上司の影響で、朝から黒にんにく、昼食もにんにく入りのラーメンや丼、夜になると、にんにくがたっぷり入った餃子とビールで乾杯……と、3食にんにくずくしです。
確かに、体にいいと言われるにんにくですが、実は食べ過ぎると逆効果で、健康を害することがあることを知っていましたか?ここでは、にんにくの食べ過ぎによる害を紹介します。
◆こんなにすごい!にんにくの効果とは?
にんにくは、はるか昔から体に良い食べ物として知られており、エジプトや中国など、人類の文明発祥の地とされる場所でもにんにくが用いられています。
ピラミッドの中からもにんにくの模型が発見されていますし、日本でも「古事記」ににんにくの記載があるというから驚きです。まさに、人類と深い関係にあるのがにんにくだと言えるでしょう。
このにんにくの主成分は、「アリシン」と「スコルジン」という成分です。そこで、この2つの成分の効き目を見ていきましょう。
○アリシン
ニンニク特有の、あの強い刺激臭を発生させている硫黄化合物で、にんにくに多く含まれている「アリイン」という物質が、細胞を破壊することで分解されることで作られます。
このアリシンは、エネルギー代謝を行うビタミンB1と結合し、疲労回復に効果があるとされています。
また、血液中のコレステロール値の上昇を抑える働きや、そのコレステロールを酸化させてしまう、活性酸素の発生を抑える働きがあります。
さらに、アリシンには、ビタミンB1と一緒に働くことで、インシュリンというホルモンの出を良くするため、血糖値が上がるのを防いでくれます。
これらの働きによって、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防に効果が期待できます。その他、殺菌効果による感染症の予防や食欲を促進する働きがあります。
○スコルジン
スコルジンは、アリシンと同じく硫黄化合物ですが、ニオイはありません。同様に、ビタミンB1を体内に取り込むために有効な成分です。
また、スコルジンには血管を拡張させる働きがあり、血管を詰まりにくくしたり、高血圧や動脈硬化を防ぐのに効果があります。にんにくが冷え性に効くとされるのも、この成分のおかげです。
さらに、スコルジンは新陳代謝を活発にする働きを持っているため、体内の脂肪分を代謝に使うのに有効に働いたり、肌のターンオーバー(再生)を促進するという効果があるとされています。
これらの2つの主成分のおかげで、にんにくには、風邪や冷え性、水虫、腰痛・神経痛などの身近な症状だけでなく、生活習慣病の予防にも有効という効果が報告されています。
その他、アメリカでは、にんにくによって、脳の萎縮が抑えられ、学習能力がアップしたという論文も学会で発表されているようです。
ちなみに、にんにくを摂取してから、これらの効果が現れるまでの時間は、女性なら6時間後、男性なら12時間後と言われています。
◆胃がんを予防するにんにくの働き
日本では、肺がんに次いで死亡率の高いがんと言われる胃がんは、胃の老化が原因と言われます。
胃の老化が進むと、粘膜が薄くなって傷ができやすくなり、胃がんのリスクは、健康な胃の人の100倍にもなると言われるのです。
その胃の老化は、実は食べ過ぎや運動不足が原因で引き起こされるのではありません。その原因は、ズバリ、ピロリ菌。ピロリ菌がいないと、胃は老化しないのです。
このピロリ菌の抑制を効果的に行うのが、にんにくだと言われます。
◆にんにくの食べ過ぎは逆効果?
ここまで述べてきたように、絶大な効能のあるにんにくですが、食べ過ぎは体によくないようです。
ここで、にんにくの食べ過ぎとはどれぐらいの量を言うのか、という問題がありますが、にんにくの1日あたりの適切な摂取量は、成人の場合、生にんにくなら1片、加熱したものなら3片が妥当と言われます。
子供の場合、摂取量を半分にしておいたほうが無難でしょう。それでは、にんにくを食べすぎると、どのような副作用が現れてしまうのでしょうか?
○腹痛
特に多い症状は、腹痛です。
にんにくを適度に食べている時には、上記のような健康増進効果が得られるのですが、にんにくの殺菌作用は刺激が強いため、胃腸の粘膜を荒らしてしまいます。
また、食べ過ぎると胃腸の中で悪玉菌だけではなく善玉菌をも殺菌してしまうのです。
トッピングが無料だからといって、ラーメンに、ついついすりおろしたにんにくを大盛りで追加したり、お酒を飲みながら、ついついガーリックチップをたくさん食べてしまう、なんてことはありがちですが、食べ過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
○下痢・便秘
私達の腸の中には、数百兆の菌が住まいしており、これらの細菌たちの生態系を、「腸内フローラ」と言います。この中には、ビフィズス菌などの善玉菌と、ウイルシュ菌などの悪玉菌がいます。これらの善玉菌と悪玉菌のバランスによって、健康が維持されているのです。
善玉菌は、おおよそ20%ほどいればいいのですが、年をとると、徐々に悪玉菌の割合が増えてきてしまいます。
にんにくに含まれる「アリシン」という成分は、適度に取れば腸内のビフィズス菌を活性化させるため、健康増進効果があります。
ところが、たくさん摂り過ぎると、悪玉菌と善玉菌の両方を殺菌して、腸内フローラを破壊してしまうため、腸内環境が悪化して、下痢になったり、逆に便秘になってしまうことがあるのです。
詳しくは、にんにくで下痢が起きる原因とは?成分や食べ方を紹介!を参考にしてください。
○出血しやすくなる
にんにくには血流をサラサラにして良くする効果がありますので、動脈硬化などにはプラスに働くのですが、一方で、血小板という、出血を止めるための成分を抑える働きがあるため、血が止まりにくくなってしまいます。
例えば、抗凝固薬と言われる薬を医師から処方されている場合には、にんにくを同時に摂取すると、血液が固まりにくくなりすぎて、危険な場合があります。
例えば、外科手術の時ににんにくを摂ると、出血しやすくなってしまいます。また、歯茎や鼻の粘膜は、血管が切れやすいため、出血しやすくなってしまうのです。
○貧血
にんにくは、食べると血のドロドロを改善し、血管の詰まりかけているところを溶かす働きがあります。ただ、一方で、たくさんにんにくを食べ過ぎると、正常な働きをしている赤血球まで溶かし始め、破壊してしまうのです。
これによって、血液中の酸素を運ぶ働きをしているヘモグロビンが減少し、貧血になってしまい、めまいや眠気が発生することがあります。
○口内炎ができる
にんにくを食べすぎると、腸内フローラが悪化してしまいます。腸内の細菌には、ビタミンを作る働きを持っているものもいるのですが、食べ過ぎると、これらの菌まで殺してしまうのです。
このビタミン不足が、肌荒れや口内炎となって現れる場合があります。このように、健康になろうと思って食べたにんにくがあだとなり、余計に健康を害することがあります。何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」、食べ過ぎには注意しましょう。
◆にんにくを食べ過ぎたらどうすればいいの?
それでも、やはりあの、にんにくならではの独特の香りと味に病みつきになってしまい、つい食べ過ぎてしまうことがあるもの。
それでは、にんにくを食べ過ぎてしまったら、どうすればよいのでしょうか?
○胃を守る食べ物を一緒に摂る
にんにくは、胃腸を荒らしてしまいますので、同時に胃を守る働きのある食べ物を摂るといいでしょう。
例えば、キャベツは、胃の粘膜を保護したり、胃を修復してくれたりする働きのあるビタミンUを多く含んでいますのでおすすめです。
また、消化酵素のジアスターゼを含む、だいこんや株などもいいでしょう。
さらに、山芋、納豆、オクラ、モロヘイヤなどのネバネバした成分は、胃の粘膜を保護したり、証果を促したりしてくれます。
これらの食べ物を一緒に摂ることで、にんにくの刺激から胃を守ってくれます。
○腸内環境の改善にはヨーグルトがおすすめ
にんにくの食べ過ぎから破壊されてしまう、腸内フローラを改善するため、腸内の善玉菌を増やすヨーグルトやチーズ、納豆、キムチなどの発酵食品を摂るよう心がけると良いでしょう。
ヨーグルトを食べる時には、注意点が一つあります。それは、「腸まで届く」と書かれている機能性ヨーグルトを選ぶことです。
そうしなければ、せっかく食べてもヨーグルトに含まれる善玉菌が胃酸で死んでしまい、意味がなくなってしまうからです。
表示をよく見て、目的にかなうものを選ぶようにしましょう。
○日頃から、腸内フローラを整える
上で述べた腸内フローラは、病気の他にも、ダイエットや美容などに大きな関係があると言われています。また、うつ病との関連や、花粉症を抑える効果も期待されているのです。
にんにくの食べ過ぎは慎むべきですが、日頃から、この腸内環境を整えておくことが大切です。
この腸内環境を整えるのに良いのが、「食物繊維」と「オメガ3系脂肪酸」です。
食物繊維は、「バクテロイデス」という腸内細菌のエサとなります。この菌が食物繊維を食べると、脂肪を溜め込むのを抑制する作用のある物質を出すのです。
また、オリーブオイルや亜麻仁油、えごま油、ココナッツオイルなどは、腸の動きを滑らかにしてくれます。
一方で、肉類のような高脂肪の食事は悪玉菌が好む食べ物であるため、量を控えめにしたほうが良いでしょう。
◆まとめ
ここまで、にんにくの効能と、食べ過ぎによる副作用の両方を紹介してきましたが、いかがでしたか?
古くから効能が認められているにんにくは、適度に摂取すれば健康を大いに増進することができますが、一方で、食べ過ぎるといろいろな症状が出てしまうことが分かりました。
ニオイも強い食べ物ですから、あまりたくさん食べ過ぎないよう、心がけていきたいと思います。
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