モルヒネと聞いてどの様な事をイメージされるでしょうか?モルヒネ→麻薬などとイメージを、なさる方も多いのではないでしょうか?
このモルヒネは医療麻薬ですが、この麻薬は注射薬がんとして、がん患者の疼痛の痛みを緩和する薬剤として、その他にも痛みを抑制する、薬として広く利用されています。
モルヒネについて今回見てみたいと思います。
モルヒネとは
ドイツの薬剤師ゼルチュルナーから1805年に、アヘンから単離されてアヘンアルカロイドとなりました。
塩酸モルヒネが塩酸塩であり、医薬品として鎮痛剤に使われています。
モルヒネについて
モルヒネとは強い痛みを和らげる、鎮痛の作用を緩和する医療用麻薬です。モルヒネは麻薬性鎮痛薬です。モルヒネは代表的なオピオイドであります。
医療用麻薬治療に疼痛治療薬として、ガン患者や手術後などに投与されています。モルヒネ注射剤は鎮痛効果は高いです。
オピオイド
中枢神経や末梢神経にあるオピオイドは、特異的受容体(オピオイド受容体)を通じて、強い鎮痛作用を示します。オピオイド系鎮痛薬として、モルヒネは使われています。
モルヒネの吸収、代謝、排泄
経口投与されたモルヒネは、胃腸管から吸収され、吸収されたモルヒネは、肝初回通過効果により代謝され、生体内利用率は平均約25%です。
全身循環に到達したモルヒネは、グルクロン酸配合により44~55%がM3G、9~10%がM6Gに代謝されます。残った分は尿中や腎臓から排泄されます。
投与
モルヒネはがん性疼痛痛み治療として、がん余命を宣告された患者にも、第一選択薬として、癌性疼痛の注射を医師は使用します。
モルヒネが投与できるのは、経口や静脈内、皮下、直腸内、硬膜外、クモ膜下腔内などに投与できます。
モルヒネの特徴
特徴としては水に溶けやすく、光によって変化して、においは無く、白色の結晶か血症性粉末になっています。
オピオイド鎮痛薬として、主に鎮痛目的で用いられる医療用の麻薬で、強力な鎮痛作用は持続する鈍痛などに効果が高く、がん疼痛治療などにも用いられ、有効限界が無いのが特徴です。
鎮痛効果は強力で、末期がんのがん患者さんには、疼痛を抑える痛み止めの薬として、無くてはならないものになっています。
規制
取り扱い規制されている毒薬で、麻薬及び向精神薬取締法で規制されています。
モルヒネの鎮痛作用は中枢神経系に作用して、その特徴は多幸感を睡眠に陥る前、または睡眠に陥らなくても味わう事ができます。
モルヒネの量
モルヒネの量を増やすと、傾眠状態、嘔吐、悪心、呼吸抑制などの症状が見られて、また抗利尿ホルモンの分泌を、促進して尿量が減少したり、瞳孔の収縮や高血糖の発現が見られます。
通常成人は1回5~10mg、1日15mg経口投与が可能です。年齢や症状により、量は加減していきます。
モルヒネの使い方
モルヒネの使い方の基本は以下のようになります。
WHO方式がん疼痛治療法
WHO方式がん疼痛治療法とは鎮痛補助薬、副作用対策、心理社会的支援に加えて、非オピオイド鎮痛薬、オピオイドの使用を加え包括的に用いた鎮痛法の事をいいます。
WHO方式の基本使用は、段階的にモルヒネを使い、また痛みが出る前に使うのが基本です。
生命予後で使わない
がん余命などの様に、生命予後で使うのではなく、痛みの強さに応じて使用することが大切です。患者の個別的な症状に合わせて使う。
単独で使わない
モルヒネ単独で使うのではなくて、NSAIDなど組み合わせて使います。
副作用対策
副作用対策は最初から十分に行います。時間を決めて規則正しく使用します。
モルヒネの最高量
モルヒネは天井がないので、鎮痛効果が出るまで使い続けますが、モルヒネに効きにくい痛みもあるので、十分な情報や知識を取得しておこないます。
120㎎/日使用して効果が薄いなら、鎮痛補助薬の使用や、神経ブロックなどの治療も考慮に入れて、注意をもって治療することが必要です。
鎮痛薬
モルヒネは耐性があるので、繰り返し使うことにより、身体性依存や禁断症状が現われてきます。しかし末期がんなどの鎮痛剤としては、痛みを和らげるにはなくてはならない鎮痛剤で、がん性疼痛の鎮痛剤として用いられています。
モルヒネはオピオイド神経を興奮させて、痛みを感じる受容器の侵害受容器で発生した、興奮の伝達を遮断します。そして中枢鎮痛作用を示すのですが、それは上行性疼痛を止めるからなのです。
鎮痛薬の種類
ガンなどの疼痛の痛みを緩和する鎮痛薬には、どのような種類のものがあるのでしょうか?
鎮痛作用の強いものは、鎮痛効果も高く、副作用も強いので、躊躇する人もいますが、疼痛の痛みを抑えるにはやはり、モルヒネの様な麻薬性鎮痛薬は、欠かすことが出来ません。
モルヒネ鎮痛薬の種類
モルヒネには注射の他に、錠剤、顆粒剤、液剤などがあります。特にがん性疼痛のコントロールに多く使われているのが、特効製剤です。
特効製剤には徐放、錠剤、カプセル、細粒などが内服薬用として使われています。
- 呼吸抑制・・・・・麻薬拮抗剤のナロルフィン、レバロルファン、ナロキソン
- 分泌液の増加・・・硫酸アトロピン配合したモルヒネアトロピン注射
- モルヒネ誘導体・・ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)
ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)は効力も、副作用も大きいので、医薬用には用いられていません。
製品名としてオプソ、プレペノン、アンペック、カディアン、モルペスなどがあります。
拮抗性鎮痛薬
モルヒネはどの受容体にも作用しますが、モルヒネの作用を邪魔する、モルヒネ受容遮断薬があります。モルヒネの作用を邪魔するすなわち拮抗する鎮痛薬を、拮抗性鎮痛薬と言います。
この拮抗性鎮痛薬でよく使われるペンタゾシン、レペタン、スタドール等があります。その中の拮抗性鎮痛薬のペンタジンは、長期モルヒネを使用している患者に、ペンタゾシンを使用すると、オピオイド受容体拮抗作用が起こります。
オピオイド受容体拮抗作用により、鎮痛低下効果や離脱症候などの可能性があり、不安、幻覚などの精神症状が発現したりします。嘔吐はモルヒネよりは少ないです。
ペンタジン
ペンタジンには注射薬と、経口薬があり、この薬剤は麻薬指定されてないので、事務手続き上使いやすく、癌性疼痛以外にも使用できるので使いやすいですが、ただモルヒネの作用を邪魔するので、モルヒネと同時に使うことはありません。
モルヒネの副作用
モルヒネの副作用は長く使うことで依存性や耐性が起こります。またその他に悪心嘔吐、眠気、便秘、血圧低下、呼吸抑制等の症状が見られます。
眠気は1週間ほどの間にモルヒネを使用してから見られますが、そのあとは自然に改善していきます。また便秘は100%おこり、悪心嘔吐は40~50%の患者に症状が出ています。
毒性
薬物でヒトで、LD50:120~500mg/kg(非常に強い塩酸モルヒネの場合)乳児・小児は感受性が強く、数量にすると人に6~25グラム使用すると2時間程度で死亡します
モルヒネの作用
モルヒネの主成分はモルヒネ塩酸塩水和物です。下記の作用があります。
▼オピオイド受容体の、身体全身に痛みが起こる物質と結合する作用があり、抑制する効果を併せ持っています。
▼脳にある咳中枢の興奮を、抑制して咳を止めます。咳のコントロール部の咳中枢と、脳幹の延髄にある部分で、喉や気管支の刺激を受けて咳を起こさせるので、モルヒネはその部分を抑え込むことで、鎮咳作用を発揮しています。
▼消化管の運動や分泌を抑制し、下痢止めが起こりますが、これは便秘の副作用と表裏一体となっています。
副作用の便秘の対策
モルヒネを使って便秘になったら、まずカマグ、プルゼニド、ラキソベロンなどを2日間利用します。最初から緩下剤を併用して使うことが必要です。
これでも出なければ、レシカルボン、テレミンソフト座薬、それでもだめならグリセリン浣腸を最低3日に1回は行います。
吐き気嘔吐の対策
モルヒネを使って、吐き気や嘔吐が続く場合は、短期間で耐性ができます。2週間ぐらいすると、薬がいらなくなるようになります。使われる薬はペリンペラン、ナウゼリン、ノバミン、セレネース等が使われます。
セレネース1.0~1.5㎎を眠る前に飲むのが最も効果があります。吐き気が激しいときは、非経口投与を一時的にしたり、薬剤を変更したりします。
傾眠の対策
モルヒネ投与を始めて、痛みの為寝れなかったために、痛みが取れて安心して傾眠状態になる事があります。
モルヒネ投与開始時に多い症状の傾眠ですが、その対策としては、2~3日様子を見ます。痛みが軽減されれば、量を減量します。もし痛みが軽減されない様であれば、リタリンの併用で覚醒を測りますが、5日ぐらいで耐性ができます。
投与の注意、中止
モルヒネを使って量が多すぎたりして起こる危険水域は
- モルヒネ投与の注意は睡眠時呼吸回数が10回/分・瞳孔径3mmで要注意です。
- モルヒネ投与の中止は呼吸回数5回/分・瞳孔径2mmで中止します。
モルヒネの国別規制
- 日本では麻薬及び向精神薬取締法により、モルヒネは麻薬に指定され規制されています。
- イギリスでは1971年に薬物誤用法の、クラスA薬物に分類されているモルヒネです。
- アメリカでの分類は規制物質法の、スケジュールII薬物に規制されているモルヒネです。
- オーストラリアでは医薬品法の、スケジュール8薬物としてモルヒネは分類しています。
モルヒネの副作用の症状
モルヒネの副作用の症状について見てみたいと思います。病気による痛みなどはとても耐えられないものがありますが、モルヒネにより痛みが緩和できれば、患者としても助かります。
しかし依存性や耐性がある為、モルヒネを使う場合でもどうしても躊躇してしまいます。そのようなモルヒネを、使った場合の副作用についてみてみました。
耐性とは反復投与することにより、効果がだんだんと薄れてくることです。
薬物依存症
モルヒネを大量に使用すると、モルヒネは依存性が強く、依存度が増して長く使い続けることで、体を衰弱させてしまう可能性があります。
モルヒネの投与を急にやめると、イライラ、強い不安感、不眠、震え、痙攣、幻覚などの症状が出ます。徐々に薬を減らすことが大切です。
退薬症候
発汗がある、あくびが出る、悪心がある、くしゃみをする、流涙がある、腹痛、嘔吐、下痢、散瞳がみられる、不安になる、不眠、頭痛、せん妄がみられる、全身の筋肉痛、振戦がみられる、関節痛、呼吸促拍などの症状です。
呼吸抑制
頭痛、めまい、動悸、息切れ、不安感がある、判断力の鈍化がみられる、呼吸しにくい、息苦しい、呼吸が浅く速い、呼吸が弱く少ない、不規則な呼吸、異常ないびき、意識がうすれるなどの症状です。
錯乱
頭の中がこんがらがっている状態で、外部と意志疎通ができなく、話にまとまりがなく、何を言っているのか理解ができません。
混乱、もうろう状態、取り乱す、意識不明な言動などの症状です。
譫妄(せんもう)
強い倦怠感、イライラ感情が高ぶる、疲れが取れない、下痢をする、動悸がするなどの症状が現われます。
体に現れる症状
無気肺
胸の痛みがあり、チアノーゼが見られます。呼吸困難などの症状が現われます。
胃腸副作用
悪心、嘔吐、腹部の痙攣、便秘等の症状がでます。
気管支痙攣
呼吸困難、喘鳴が聞こえる、胸が詰まる感じがする症状が現われます。
喉頭浮腫
息苦しくなる、息を吸い込むときにヒューヒューと音がする、喉が詰まる、呼吸困難、声が出にくい、かゆみ、痺れ、吐き気、嘔吐、鼻水が出る、腹痛になるなどの症状が現われます。
麻痺性イレウス
悪心が起こる、嘔吐、腸管麻痺が起こる(悪心、嘔吐、便秘、腹部膨満感、弛緩、腸内要物のうっ滞などの症状)激しい腹痛、吐き気がする、吐く、酷い便秘、お腹が膨れる、食欲不振、などの症状が現われます。
中毒性巨大結腸症
大腸動作の停止、大腸内に毒素やガスが溜まる、急速な大腸炎の悪化、大腸が風船のように膨らむ、全身の中毒症状、38℃以上の発熱、脈拍が120以上になる、白血球の増加、貧血、脱水、意識障害、電解質異常、低血圧になるなどの症状が現われます。
以上の副作用が出た場合は医師か薬剤師に、速やかに報告するとともに、対応の相談をすることが必要になります。
重篤、重大な症状はめったにあるものではありませんが、服用して初期症状にこのような症状の副作用が出る場合は注意してください。
その他の副作用
- 循環器・・・・・顔面が紅潮して不整脈が見られる、血圧の変動がみられる
- 精神神経系・・・興奮する、不穏になる、眠気、眩暈(めまい)、不安になる、視調節障害がおこる、発汗する
- 消化器・・・・・嘔吐、悪心、便秘、口が渇く
- 過敏症・・・・・発疹がでる、そう庠感がある
- 投与部位・・・・発赤が見られる、腫脹がみられる、硬結がみられる、疼痛がある
- その他・・・・・頭蓋内圧の亢進、排尿障害、尿閉がみられる、脱力感
過量投与
意識不明、痙攣、錯乱、呼吸抑制がみられる、血圧低下、重篤な脱力感、重篤な眩暈、心拍数が減少する、神経過敏、不安、縮瞳が見られる、皮膚冷感がある、嗜眠がみられるなどの症状が現われてきます。
モルヒネの副作用で使用してはいけない場合
次の人はモルヒネの副作用が死に至る事も、ありますので使用してはいけません。
気管支喘息発作中・重い呼吸抑制・痙攣状態(てんかん重積症、破傷風、ストリキニーネ中毒)重い肝機能障害・慢性肺疾患に続発する心不全・急性アルコール中毒・本剤の成分またはアヘンアルカロイドに対するアレルギー・出血性大腸炎
- 硬膜外投与またはクモ膜下投与の場合に、注射の部位や周辺に炎症のある時・肺血症
- クモ膜下投与の場合中枢神経系疾患(髄膜炎・灰白髄膜炎・脊髄ろうなど)脊髄・脊椎に結核・脊椎炎・転移性腫瘍などの活動性疾患がある人
- 呼吸の弱っている人は使用してはいけません。
- 細菌性下痢症の人は原則禁止です。
薬の飲み合わせ注意
脳の神経を鎮める安定剤や、睡眠薬などを併用すると、副作用が大きく出ます。呼吸抑制、低血圧、過度の鎮静、眠気やふらつきなどの副作用が出てきます。
胃腸薬(鎮痙症)抗うつ薬(三環系)一部の安定剤などの併用による副作用は、便秘、排尿困難などの症状がでます。
まとめ
如何でしたでしょうか?モルヒネの副作用について見てきました。副作用と疼痛とどちらをとるかの問題ですが、疼痛の痛みは我慢できないことが多いです。
まして末期がんの患者さんなどは、疼痛で苦しめられ、睡眠も十分にとる事もできなくなります。そのような患者さんを救うためにも、モルヒネの医療麻薬性鎮痛剤の必然性が、お解り頂けるはずです。
モルヒネは中枢系鎮痛薬として、痛みの治療法として多くの医療現場で使われています。モルヒネがなくなる事は、悲痛な痛みを抱えながら、生きなければならない事になります。
モルヒネで眠気を誘っても、痛みが緩和されるのであれば、患者にとっては幸せです。その為にもモルヒネは疼痛を抱える患者には、なくてはならないものです。
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