いま「塩風呂」健康法がネットで話題になっています。ダイエット効果や体内の毒素を排出する効果を期待して取り組んでいます。アトピー性皮膚炎が改善したという報告まであります。塩が入った入浴剤も多く販売されています。
医者のお墨付きがついた健康法ではありませんが、これだけ大騒ぎしているのをみると、何か期待させるものがあります。塩風呂の情報をまとめました。
塩風呂の作り方
塩風呂がこれだけはやっているのは、家庭の浴槽で簡単に作れるからです。代表的な作り方を紹介します。
一般的な食塩
塩風呂の最も簡単な作り方は、家庭の浴槽に一般的な食塩を投入する方法です。一般的な食塩はとても安く、1kgで100円ほどです。ただ入れ過ぎには注意してください。
最初は、1人用の浴槽にたっぷりお湯を張った状態で、50g程度から始めましょう。きっと、何も感じないはずです。しかし開始から1カ月はこの量を守ってください。塩はとても強い成分なので、体を慣らす必要があります。刺激が強いと感じたら、塩の量を減らすか、塩風呂自体を中止してください。
また体調に改善がみられ継続する場合でも、あまり増やしすぎないでください。100gが上限でしょう。
バスソルト
おカネに余裕がある人は、市販のバスソルトをおすすめします。一般的な食塩による塩風呂は、しょせんは素人健康法です。食塩メーカーは塩風呂に使われることを想定していませんから、食塩を含むお湯が体にどのような影響を及ぼすかといった実験は行っていません。
一方、バスソルトは、塩の強すぎる効果をマイルドにして、さらにリラックス効果が期待できる成分も配合しています。また、浴槽に入れるお湯の量と、バスソルトの投入量もしっかり指示しています。それさえ守っていれば、健康に大きな障害のない人ならば気軽に安心して塩風呂が楽しめます。
ただ値段の高さが最大のネックになります。200gで1000円もするバスソルトもあります。1gの値段で考えると、この商品は一般的な食塩の50倍もします。
塩風呂はアトピーに効く?
子供のアトピー性皮膚炎を塩風呂で治したというお母さんがいます。次にその様子を紹介します。ただこの方法は皮膚科の医師がおすすめしているわけではありません。医学的根拠はまったくない状態ですので、試すときは十分注意してください。
海水浴を再現
このお母さんは、夏にアトピーの子供を海水浴に連れて行くと、一時的に症状が軽くなったことに発見しました。それで「海水の力」を調べたところ、殺菌力、ミネラル、リラックス効果があることが分かったのです。そこで「子供を苦しみから解放するには、自宅で海水浴を再現すればいいんだ!」と思い立ったわけです。
食塩はNG
一般的な食塩による塩風呂も多くの人が提唱していますが、このお母さんは最初から、一般的な食塩を使うことはありませんでした。それは「一般的な食塩には体に良い成分が入っていない」と考えたからです。確かにそうです。一般的な食塩の成分は、塩化ナトリウムだけです。
もちろん、塩化ナトリウムは体になくてはならない成分で、海水にも塩化ナトリウムは含まれています。しかしお母さんが注目したのは、海水に含まれるそのほかの成分だったです。
瀬戸のほんじお
そこで海水に近い成分が含まれていると期待して購入したのが、味の素が販売している「瀬戸のほんじお」という塩です。この商品も、食用であることは一般的な食塩と同じです。
味の素のホームページによると、「瀬戸のほんじお」は瀬戸内海で採取した海水のみを使っています。海水の水分を蒸発させて作っています。この作り方は「イオン膜透析+立釜」製法といいますが、原則、室町時代の製法と同じです。現代の製法は、大量生産ができるだけでなく、海水中の汚染物質を除去できる長所があります。
肝心の成分ですが、「瀬戸のほんじお」も多くは塩化ナトリウムです。しかしそれ以外にも、カリウム、マグネシウム、カルシウムが含まれています。それぞれの含有量の比率は不明でした。
価格は1kgで300円ほどです。一般的な食塩に比べて3倍もしますが、バスソルトよりは格段に安いです。
こさじ2杯
この家庭で作っている塩風呂は、一般的な浴槽に「瀬戸のほんじお」を小さじで2杯程度入れるだけです。この量の算出方法は「お母さんの感覚」です。小さな傷がある場合にしみない程度、ということです。
38度に30分
湯温は38度と大人にはややぬるめです。これも子供が30分近く塩風呂につかっていられるようにと設定しました。
ジュクジュクがはがれた
効果は絶大で、2週間ほどで子供のアトピーの症状が、それまでのジュクジュクから、カサカサに変わったそうです。そしてカサカサした皮膚がはがれ落ちて、その下には新しい皮膚ができていたそうです。
ただ、あくまでこの家庭での出来事ですので、ご注意ください。
ダイエット効果?
塩風呂にダイエット効果があると発言している人もいます。それは発汗効果があるからです。一説には、塩を入れない湯につかるより、4倍ものの汗が流れるそうです。その秘密は「浸透圧」にあります。
中辛カレー
人の体の大部分は水でできています。その水は塩を含んでいます。塩分が薄い水と、塩分が濃い水を混ぜると、2つの水は濃度が同じになります。これは、甘口のカレーと辛口のカレーを混ぜて中辛のカレーができあがるのと似ています。成分が同じで濃度が違う2つの液体が混ざると、濃度が一定になるのです。
ですので、人という「塩分濃度が低い水」が、塩風呂という「塩分濃度が高い水」と混ざったときも、塩分濃度は一定になろうとします。ということは、人という水の塩分濃度が高くなるということです。そして塩分濃度が濃くなるということは、水が減って塩が増えることに他なりません。
つまり、塩が体内に入ることで、体内の水分が外に出るのです。
疑問の声も
ただ、塩風呂によるダイエット効果には、疑問視する声もあります。それは、汗として出た水分は、いつか必ず水分補給によって補われるからです。当然といえば当然です。これはサウナのダイエット効果でも同じことが指摘されています。
逆に、塩風呂やサウナで汗を流して1kgも2kgも体重が軽くなっているのに水分補給しないと、心臓や血液の病気を引き起こす結果になりかねません。ただ汗をかくことは、間違いなく健康維持に貢献しています。代謝が良くなるからです。
デトックス?
デトックスは健康だけでなく美容分野でも注目されています。体の中は、絶えず毒が発生しています。腎臓や肝臓や腸は、この毒を無毒にしたり体の外に出したりしています。しかし現代のストレス社会では、腎臓や肝臓や腸の処理能力を遥かに上回る毒を体内に溜め込む生活を強いられています。そこで、体内の臓器だけに頼らない「毒出し」=「デトックス」が注目を集めているのです。
立証されていない
デトックスの主なメニューには、ハーブティ、岩盤浴、マッサージ、絶食、鍼灸などがあります。そして塩風呂にもデトックス効果があると言う人がいるのです。しかしこれらにデトックス効果が認められたという医学的な報告はないようです。
ただ、食物繊維の摂取もデトックスのひとつに数える人がいて、これは医学的にも栄養学的にも効果は立証されています。
否定もされていない
しかし「デトックス効果が立証されていない」一方で、「塩風呂やハーブティなどに健康効果がない」という研究結果も存在しません。つまり、健康に良い効果を期待して実行した人が、実際に効果を実感できたら、それを試してみる価値はありありそうです。塩風呂はその1つとしてとらえてください。あくまで「お試し」レベルです。
まとめ
塩は古代から人類が生存のために頼りにしてきた食材です。塩分の摂りすぎは高血圧の原因になりますが、体内の塩分がゼロになれば人は生きていられません。また生き物はすべて海で生まれました。こうしたことから「塩信奉」が生まれ、塩風呂が流行していることは、辻褄があります。
しかし塩風呂だけに頼ったアトピー皮膚炎治療は典型的な「あぶない民間療法」といえるでしょう。「多少試してみる」程度にとどめ、きちんと医者にかかってください。