「何かを飲み込んだ訳ではないのに、どうも喉のあたりに、何かが詰まっているような気がする」という経験はありませんか?身近によくあるこの症状、一見すると何でもないようですが、実は、別の病気のサインである可能性があるのです。
そのままにしておくと、予想もしない大きな病気に悩まされることにもなりかねません。そこでここでは、「喉が詰まる感じがする」という症状が現れる、主な病気を幾つか紹介します。
◆喘息
喘息とは、気道が常に炎症を起こしている状態のことです。
健康な人と比較すると、気道が狭くなって空気が通りにくくなっており、しかも気道が敏感になっています。そのため、健康な人の気道ならなんともないホコリやタバコ、ストレスなどのわずかな刺激でも、気道が狭くなり、喉が詰まる感じの発作が起きてしまいます。
日本では喘息が増加しており、患者数が人口の1%前後だった1960年代と比べると、最近の調査では全体で400万人を超え、子どもで約6%と6倍、大人で約3%と3倍になっています。
これは、アレルゲンの増加や大気汚染、食品や住宅建材などの化学物質、長時間勤務による過労やストレスの増加、清潔すぎる環境などが原因と考えられています。
喘息の症状としては、喉が詰まる感じの他にも、咳や痰(たん)に加え、息苦しさや「ゼーゼー」「ヒューヒュー」というあえぎなどがあります。
このような症状が続いている方は、一度病院・診療所を受診しましょう。
喘息の対処法
喘息の治療薬には、「発作治療薬(発作をしずめる薬)」と、「長期管理薬(発作がおこらないように毎日継続する薬)」の2種類があります。
ちょうど、虫歯が起きた時に虫歯を治療しますが、虫歯にならないように毎日歯磨きを継続するようなものです。
まず発作をしずめる薬には、喘息の薬には、内服薬や吸入薬、貼り薬、注射薬などさまざまなタイプがありますが、中でも気道にじかに届いて、少ない量で効果が得られる吸入薬タイプが用いられることが多いようです。
発作が起こらないように毎日継続する薬には、ステロイド薬などがよく使われます。これは強い抗炎症作用があり、効果が出始めるまでに3日~1週間ほどかかります。
一方、起きた発作をしずめるには、気管支を広げる作用のある、β2刺激薬などがよく用いられます。
これらで症状が改善しない場合は、医師を受診しましょう。
◆狭心症
狭心症とは、心臓の冠動脈が動脈硬化などによって狭くなり、心筋に送り込まれる血液が不足して心筋が酸素不足に陥った状態を言います。
胸の痛みなどの症状に加え、歯や顎・左腕や左肩の痛みや、喉が詰まる感じがするなどの様々な症状があり、5分以内に痛みが消失するのが特徴です。
狭心症の対処法
血管の緊張をできるだけ緩め、血液を固まりにくくする薬を用いて、心臓の負担を減らす治療を行います。
また、病状が深刻な場合には、冠動脈内の狭くなっている部分に針金を通し、針金にそってバルーン(風船)をふくらませることで、血管を押し広げる方法や、体の別の部分の血管を使ってバイパスを作る手術などの方法を取ることもあります。
◆逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃から食道へと胃液が逆流する病気です。
胃はご存じのように、食べたものを腸で吸収しやすいように、消化する器官です。胃液の主な成分は塩酸という強い酸で、これにより、細菌の殺菌も行っています。
では、胃もタンパク質でできているのに、なぜ溶けないのでしょうか?
それは、胃粘液があるからです。胃の表面を薄く覆っている胃粘液には、胃酸の働きを中和する働きがあり、体の組織を守っているわけです。
ですが、胃とつながっている食道の粘膜には、強い胃酸に対しての防御機能がありません。そこで、胃と食道の間にはゲートがあり、通常は、胃に入ったものが逆流してこないようになっています。
ところが、なんらかの原因でこのゲートがゆるくなったり、外れてしまうと、胃液が食べ物とともに逆流して、症状が起こってしまうのです。
特に暴飲暴食の人がなりやすいようです。また、加齢や肥満も関係があると言われています。
逆流性食道炎の対処法
逆流性食道炎の治療には、「胃酸の分泌を抑える薬」「胃酸を中和する薬」「食道の粘膜を保護する薬」「食道の運動を活発にする薬」の、4種類の薬が効果的です。
胃酸の分泌を抑える薬
胃壁の細胞には、「塩酸」をつくる部分があります。この働きを抑えて、胃酸の分泌を抑える薬です。
食道の粘膜を保護する薬
食道の粘膜の傷んでいるところにくっついて、胃酸の刺激を防ぎつつ、炎症を鎮める作用のある薬です。
胃酸を中和する薬
胃酸を中和することで、胃酸の働きを弱める薬です。胸焼けなどの症状に効きます。
食道の運動を活発にする薬
食道と胃のつなぎ目にあるゲートの動きを活発にしたり、食道の働きを高めたりすることで、逆流を減らす薬です。
これに加えて、暴飲暴食などが原因となりますので、普段の食生活習慣を改善することが重要です。
◆咽頭炎・扁桃炎
咽頭炎とは、口や鼻腔の奥にある咽頭が炎症を起こしている状態です。
また扁桃腺とは、口を大きく開けた時に舌の付け根の両脇にある、こぶのような部位で、体内に入ってくるさまざまな細菌やウイルスなどが体内に侵入するのを防ぐ免疫器官として機能しています。
この扁桃腺が腫れれば、扁桃炎となります。
ほとんどがウイルスによる影響で、いわゆる風邪の症状ですが、刺激性のガスを吸入したり、カラオケなどで声を使いすぎたりしても、症状が発生します。合わせて、鼻水、のどの痛み、発熱などを伴うことが多いようです。
炎症を起こしていますので、食道も腫れ気味となり、喉の詰まるような感じも出てきます。また、咽頭炎を繰り返すと慢性咽頭炎となり、食べ物を飲み込む時に痛みを感じる場合もありますので、早い完治を目指しましょう。
咽頭炎・扁桃炎の対処法
抗生剤や、熱や腫れを抑える鎮痛薬を服用することによって治療します。症状が重くならないうちに医師の診断を受け、早めの治療を心掛けましょう。
また、ウイルスが喉に進入するのを防ぐため、日頃から手洗い、うがいをこまめに行うよう心がけ、室内の温度、湿度調節に気をつけましょう。
詳しくは、扁桃炎はうつるの?症状や種類について!を参考にしてください。
◆慢性甲状腺炎(橋本病)
橋本病とも言われる慢性甲状腺炎は、九州大学の橋本策博士が1912年に発表した病気で、甲状腺全体が腫れてきて首が太くなる病気で、自分の甲状腺に対する抗体ができてしまう、自己免疫疾患です。
甲状腺は、喉仏の下、気管の前あたりにあり、血液の中にホルモンを分泌して、エネルギーの代謝を正常に保つという大事な機能があります。この甲状腺が腫れると、喉仏の下あたりが腫れて、喉が詰まる感じが症状として現れます。
他の症状としては、甲状腺ホルモンの分泌が不足してしまう、「甲状腺機能低下症」によって、疲れやすくなる、体が冷える、便秘になる、などの症状が現れます。
慢性甲状腺炎(橋本病)の対処法
残念ながら治る病気ではありませんが、甲状腺ホルモン剤を服用すれば症状を抑えることができます。薬にも副作用はありませんので安心してください。
甲状腺がかなり大きくなり、気管や食道を圧迫し、日常生活に支障を及ぼす場合には、手術を行う必要があります。
甲状腺が急に大きくなった場合には、速やかに専門医の診察を受けるようにしましょう。
◆食道ガン
食道は、口と胃をつなぐ長さ25cmほどの管状の臓器で、口から胃へ食べ物を送る働きがあります。この食道にガンが発症していると、喉が詰まるような感じがあります。
また、食道の内側が狭くなっていると、食べ物がつかえるようになります。特に肉、すしなど丸のみしがちな食べ物を食べたり、よくかまずに食べると食べ物が詰まりがちです。
その他、食道がしみるような感覚や、体重の減少、咳、声のかすれなどがあれば、要注意です。
食道ガンは、40歳後半以降に増加する傾向にあり、男性に多い病気です。主な原因として、喫煙や飲酒がリスクを高めると指摘されています。
食道の周囲には、気管やリンパ管、肺、大動脈、心臓など、重要な臓器が多く、ガンが大きくなるとこれらに入り込み、全身に転移しやすいので早急な対処が必要です。
食道ガンの対処法
他のガン治療と同じく、手術によるガン細胞の切除や、放射線治療、抗ガン剤による化学療法などがあります。いずれにしても、医師の診断を仰ぎ、適切に治療を行うことが必要です。
◆咽喉頭異常感症(ヒステリー球)
咽喉頭異常感症は、別名「ヒステリー球」とも呼ばれ、ストレスや過度の疲労など、精神的な原因によって引き起こされる病気で、喉に何かが詰まっているかのように感じる症状が現れます。
通常、食道は、食べ物が入ってきた時だけ、下にある胃の方へ送るために蠕動運動が起きます。ところが、ストレスや精神的な原因によって、食べ物がないときでも蠕動運動が起こってしまうのです。
その際、食道内が狭くなり、食道同士が触れ合うことで、喉に何かが詰まったように感じてしまうのです。
咽喉頭異常感症(ヒステリー球)の対処法
根本原因となっているストレスを解消することが重要です。十分な睡眠や適度な運動を心がけ、30分以上、ぬるま湯に浸かるなど、リラックスした生活を心がけましょう。
また、アルコールを控え、食べ物を改善することによって、気持ちが安定すると、徐々に症状も収まっていきます。
◆まとめ
今回は、喉が詰まる感じの原因について紹介いたしましたが、いかがでしたか?
一口に喉が詰まる感じがするといっても、いろいろな原因があります。身近な原因から、深刻なものまでありますし、また、部位についても胃や食道そのものが原因になっている場合もあれば、呼吸器系が原因の場合もあります。
判断に迷う場合もありますので、気になる場合には、早めに医師の診断を受けてくださいね。
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