乾癬性関節炎の治療方法は?症状や原因を知って対処しよう!

乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)とは、その名の通り「乾癬」という皮膚症状に「関節炎」も生じる病気のこと言います。腫れや痛みを伴う自己免疫疾患です。

日本国では「難病」(厚生労働省が特定疾患治療研究対象疾患に指定し、公費補助する疾患)に指定されており、「膠原病(自己免疫疾患)」に含まれます。更に、この病気について詳しく述べていきます。

乾癬性関節炎とは

関節 手 

乾癬性関節炎(Psoriatic arthritis)は、乾癬という皮膚症状にリウマチの様な関節痛といった関節症状が現れる病気です。

皮膚表面が赤くなってカサブタの様に硬くなり、白いフケの様なものがボロボロと剥がれてくるような症状が見られたら発症している可能性があります。下記に乾癬性関節炎とは一体何なのか、発症年齢や原因などについても説明をしていきます。

膠原病(自己免疫疾患)の一種

膠原病には乾癬性関節炎の他に多くの疾患が含まれており、その内のほとんどがリウマチ性疾患です。

ちなみに、リウマチ性疾患は膠原病全般に共通症状の1つとして、全身の関節の痛みが高頻度に見られることが挙げられており、これのことを指しておりリウマチ疾患と同じ症状が見られることを言っています。

乾癬性関節炎もリウマチ性疾患を含んでおりますが、リウマチ疾患とは異なるため、注意をして下さい。

自己免疫疾患とは?

そもそも、自己免疫疾患とは何なのか。膠原病患者の血液中は自身の身体を構成する成分と反応をしてしまうリンパ球(自己反応性リンパ球)や抗体(自己抗体/蛋白質)があります。

これらが、自身の身体を構成する成分に膠原病を引き起こす原因となっています。

発症率と好発年齢

乾癬性関節炎は全人種にみられますが、頻度は人種により異なります。欧米では約7%が発症し、特に欧米の白人系人種に多いと報告され、人口の1%~2%に発症します。

日本人の場合は、約0.01%~0.1%に発症します。厚生労働省の平成20年の調査では約10万人と言われており、発症は稀です。

好発年齢は若年層です。20歳代がピークと言われています。30~50歳代では発症はゆっくりになります。発症数に男女比はほとんど見られず、1:1とほぼ同数です。

乾癬性関節炎の原因

原因は不明ですが、炎症の病気であり、免疫の異常により、自己の免疫系が自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患によるものと考えられています。

もともと発症しやすい体質の人に外からの様々な要因が加わることで発症するとも考えられています。また、家族や親戚などの血縁関係者に乾癬性関節炎を発症している人がいる場合に発症しやすいと言われていますが、遺伝性の疾患ではないです。

乾癬性関節炎の症状

皮膚疾患 乾癬

皮膚疾患である乾癬の症状が先行して発症することが多いと言われています。その後に、関節症状が生じます。

皮膚の症状と関節炎の進行は直接的な関連はなく、皮膚症状があるものの関節炎を合併する患者は約4%とも言われています。

皮膚症状

特徴は、赤い皮疹とその上に白い角質細胞が増えてボロボロ剥がれ落ちる状態です。

皮膚の表面を占める表皮は約28日間の間隔で作られ、垢として剥がれていきます。しかし、乾癬の皮膚はこの期間が約4~7日間と顕著に短期間となっています。これにより、先ほど述べた特徴の様に水虫の様な症状を呈します。皮膚が剥がれ落ちるだけでなく、剥がれた皮膚の一部が白く付着するといった状態もみられます。

その他、痒みを伴う場合や頭部、肘、膝、殿部といった摩擦などの刺激を受けやすい箇所にこういった症状がみられやすいです。もちろん、頭皮や臍周囲、肛門周囲などの隠れた箇所にも乾癬は生じます。隠れた場所では発覚もしにくいので見落とさないようにしましょう。

爪の状態も様々であり、爪が剥がれたり、分厚くなったり、くぼみができるなどの症状があります。これらは、乾癬の症状が先行して発症している場合にみられ、約70%の患者が先行すると言われています。皮疹と関節の症状の進行は必ずしも一致するとは言えませんが、約15%の患者は皮膚症状と関節症状が同時に発症しています。残りの約15%の患者は、関節症状が先行して発症しています。皮膚症状が先行して出現する場合は極めて診断が難しく、自覚症状の発覚も遅れます。また、子供に多いとされています。

関節症状

主に手指の腫脹と痛みが出現します。第2関節に生じやすい関節リウマチとは異なり、第1関節に関節炎が出現します。また、手首や肩、股関節や膝、足首、足趾(足の指)にも生じます。この関節炎が続くと骨の破壊が引き起こされ、続いて新たな骨の形成が起きます。X線写真では手を写した場合に特徴的な変化をとらえることがあります。

症状の特徴から5つのタイプに分類されます。

多関節炎型、ムチランス型、対称性多関節型、寡関節型、強直性脊椎炎型があります。多関節炎型は主に手指の先に症状が出現し、爪の変形も高確率で出現します。ムチランス型では手の甲の骨が破壊されて変形が生じます。対称性多関節炎型は、複数の手指の関節に症状が出現します。手指に限らず様々な関節部位で症状がみられます。寡関節型は大きな関節で症状が出現します。

強直性脊椎炎型は、脊椎や仙腸関節(骨盤)に症状が発症し、背中や腰に痛みが生じて動かしにくくなり身体を捻じる動作や曲げる動作が阻害されます。

指炎、腱付着部炎

手指全体がパンパンのソーセージの様に腫脹することがあります。それが、指炎です。

腱付着部炎は、腱や靭帯が骨に付着している部位に炎症が生じた状態を言います。特に踵やアキレス腱の付着部に起こることが多いです。

その他の症状

爪の変形や眼症状(結膜炎やブドウ腸炎)などもみられます。眼症状では、眼の炎症により眼の痛みや視力の低下といった症状が見られます。

腰痛も生じ、動かずにいると痛みますが、動かすと楽になるといった一見おかしな症状になります。これは、動かずにいると同じ箇所の関節や骨に継続的に負荷がかかってしまうことで痛みが生じやすくなるからです。

逆に動いていれば重心も移動し、負荷も同じ箇所ではなくいろんなところに短時間でかかるため、一つの骨や関節にかかるストレス負荷が減るために楽に感じるのです。

乾癬性関節炎の検査・診断

検査 レントゲン X線

乾癬の皮疹のみの場合は、自覚症状を捉えることができる患者は少なく、ほとんどの場合が気づかずに症状が進行していくため早期に発見できないことが多いです。皮疹出現前の患者では病気が明確ではなく、診断に時間を要することがあります。

しかし、既に皮膚の乾癬症状が出現しており、典型的な関節炎も出現している場合には比較的診断が容易です。

診断基準

診断基準は、2006年の乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR)を用いることが多いです。炎症性関節疾患の関節炎、脊椎炎、付着部炎を有する方で、以下の5項目の内、3つ以上が当てはまった場合に乾癬性関節炎と診断されます。各項目を1点として計算し、現在乾癬を患っている場合には2点とします。

  • 現在乾癬にかかっている、または過去に乾癬があった。または祖父母、両親や兄弟・姉妹に乾癬の人がいる。
  • 典型的な乾癬の爪病変(爪剥離症、陥凹、過角化)がある。
  • リウマトイド因子という血液検査が陰性
  • 指全体が腫れる指炎がある(あった)。
  • 手、足のX線検査では特徴的な所見(関節近傍の新骨形成)がある。

X線検査

特徴は、関節の骨が壊れて削られている箇所と、逆に骨が増殖して白く厚くなるような状態が両方同時にみられます。

この変化はX線では主に手、足、仙腸関節(腰の部分)に見られます。特徴的な変形としては、ペンシル・イン・キャップ変形と言われる鉛筆にキャップを付けた様な、指の関節の隙間が極端に狭くなった様な変形になります。

血液検査

上記で述べたように、リウマトイド因子が陰性を示します。関節炎が生じているため、赤沈やCRPといった炎症反応は陽性を示します。他の疾患と鑑別が困難な検査です。

乾癬性関節炎の治療 

薬物療法

治療は主に薬物療法が施行され、状態に応じて様々な処方がなされます。

しかし、状態がかなり進行して、重症な状態になっていた場合には手術が施行される場合もあります。メインとなる薬物療法を主に詳しく説明していきます。

薬物療法

受診先は、皮膚や爪の症状に対しては皮膚科が対応します。治療法としては、ステロイド剤やビタミンD軟膏、PUVA療法(紫外線)が挙げられます。

関節炎や腱付着部炎、指炎の治療は、炎症の痛みに対して痛み止めである非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を内服します。これを3~6カ月間使用して経過を診て改善が見られない場合や予後不良因子がみられる場合には重症患者とされ、メトトレキサートやシクロスポリン、サラゾスルファピリジン、レフルノミド等が用いられます。また、抗リウマチ薬を用いる場合もあります。これらは関節炎と皮疹に効果的であると言われています。

ここで言う予後不良因子とは、5週間以上の関節病変を有すること、病気の活動性のために日常生活に重度の支障が生じていること(日常生活障害、QOL/生活の質の低下)、関節破壊が生じている、過去にステロイド薬を使用したことがある、等が挙げられます。

最近では、腫瘍壊死因子(TNF)の阻害薬(生物学的製剤)であるインフリキシマブ(レミケード)、アダリムマブ(ヒュミラ)が保険適応されており、これらを併用して用いられるようになっています。この薬剤を使用する時は、重症患者が服用する薬を3~6カ月間複数使用した結果、関節炎などの症状の改善が不十分であった場合や、脊椎・骨盤の症状、重度の付着部炎があった場合です。なお、腫瘍壊死因子阻害薬を更に3~6カ月間服用しても効果が不十分であった場合は、更に別の腫瘍壊死因子阻害薬の処方を受けることになります。

これらの薬剤が、皮疹や関節症状に対してこれまで以上に効果を示してきていますが、感染症などの副作用が生じる場合もあるため、使用する際にはしっかり医師と相談をして決めましょう。副作用によっては生命予後を左右することがあります。

手術

関節の病変は滑膜炎によるものであり、関節リウマチと同様、人工関節置換術なども適応されます。この場合、皮膚の症状も考慮して最善の注意を払う必要があります。

予後

関節リウマチと同様の関節症状が出現している場合には、関節リウマチの症状と同様の関節の破壊や変形が徐々に進行していきます。これは、どこの部位が、というよりも全身に起こりうるため、この関節破壊や変形により関節を動かしにくくなり、あらゆる日常生活動作に影響を与える可能性がでてきます。

しかし、生活の質が低下するというだけで生命予後には変化はありません。関節症状の進行では生命予後に影響は出にくいですが、薬物療法では影響がでる可能性があります。薬物ではステロイド(副腎皮質ホルモン)剤を使用しており、これに関しては非常に身体への依存性が高いため、副作用によって内臓機能が低下する恐れはあります。服用の際には十分に医師と相談しましょう。

また、腫瘍壊死因子の阻害薬を使用して、関節の破壊や脊椎病変の進行を抑制し、関節変形や脊椎強直などを防止することも可能です。副作用として、重症感染症を引き起こすと生命予後を左右させる場合もありますが、正確な治療を受けていれば大丈夫ではあります。

まとめ

病院へ行く

乾癬性関節炎はいたって軽度の障害の様に思われますが、症状が進行してしまうと予後が悪くなり手術といった処置をとらざるを得ないような疾患になります。

ちょっとした皮膚炎だから、ちょっと関節が炎症しているだけだから、きっと大丈夫であろうと放置しておかず、何かおかしいと思ったら早期に病院へ受診し対応をしていくようにしましょう。

  
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