S状結腸癌について!症状や原因、手術方法や生存率を知っておこう!

S状結腸癌は、大腸癌の一種です。大腸癌は癌の腫瘍が発生する部位によって分類されます。S状結腸は、直腸の直ぐ上に位置します。

日本人の大腸癌の中では直腸癌に次いで多いと言われています。では、このS状結腸癌について詳しく述べていきます。

S状結腸癌について

大腸 解剖

そもそも、S状結腸とは身体のどこに位置するのか、どういった構造で身体の内部にあるのかが疑問ですね。まず、構造を捉えてなぜS状結腸癌が発症するのか、日本人に多いのかなどについて述べます。

S字結腸とはどこにある?

大腸は小腸に続く右下腹部にある臓器です。盲腸から始まり、上に向かう上行結腸、右から左へ向かう横行結腸、そこから下に向かう下行結腸、S字状に曲がっていくS状結腸、真っ直ぐいく直腸、肛門の流れで構成されている管腔臓器です。

S状結腸は自由度の高いS字状の結腸になります。

発症率

大腸癌は解剖学的に言うと直腸癌と結腸癌の2つに分類されています。S状結腸癌はこの内、結腸癌に含まれます。S状結腸癌は日本人の大腸癌全体の約35%を占めており、直腸癌は約40%を占めています。この2箇所で大腸癌の全体の7割以上を占めています。いずれも肛門に近い部位になります。

罹患率は男性4位、女性3位、死亡率は男性4位、女性2位と発症し易く、死亡率も高いものになります。S状結腸癌は結腸癌の中では最も多いとされ、好発年齢は50~70歳代に多いとされています。

S状結腸癌の原因

食の欧米化 ベーコン 牛肉

S状結腸癌の原因は、未だ明確に解明されておらず、これが原因だ!というよりも多くの原因が重なりに重なって発症しているものと考えられています。

どういった原因が考えられるかを挙げていきます。

食生活の欧米化

原因の一つとして、不適切な食生活が挙げられます。過剰な飲酒や、肉は肉でも牛肉や羊肉、豚肉といった赤肉やハム、ウインナーやソーセージ等の加工された肉などの過剰摂取に加え、野菜などの食物繊維の摂取不足が原因とされています。飲酒は特に粘膜へ刺激を与えてアルコールで荒らししまう可能性があります。これにより癌に進展することがあります。

また、欧米の食文化がながれこんで上記で述べたようなお肉をよく摂取する食生活が送られやすくなっています。解剖学的に日本人の消化器がその食文化に対応しにくい状態なため、消化不良も起きやすくなり、これにより更に便秘や下痢を引き起こしやすくなります。

遺伝性の可能性

そもそも大腸の癌というのは、親から子供へ遺伝する可能性があります。その遺伝子変異が発覚する割合は40~80%と極めて高いです。遺伝的な原因としては、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群を呈している人が直接の親族に存在する場合に、発症する可能性が高くなります。

家族性大腸腺腫症(FAP/ポリポーシス)の症状としては、数えきれない量の腺腫が出現します。癌を発症する可能性も極めて高く、40歳代までに半数が発症します。リンチ症候群は、50歳よりも若年で発症し、大腸以外の部位でも癌を発症する危険性があります。

家族にこれらの病気を有する人がいる場合には、その当人は若年の時期(だいたい10歳前後)から定期的に大腸がん検診などで精密検査を受けることをお勧めします。

S状結腸癌の症状

トイレ

S状結腸は直腸癌と同様、比較的肛門に近い位置にあるため主な症状は血便と下血になります。こういった症状がみられてもS状結腸癌であると早期に発覚することが少ないです。

どういった症状がみられるようになるか、説明をしていきます。

血便(便に血が混在する)

S状結腸癌は肛門と直腸に続く臓器です。そのため、便に癌細胞からの出血がそのまま付着して排泄されます。このように、大腸内で便がほとんど出来上がった状態で血液が混在するため、目視で血便だと分かるケースが多いです。

しかし、痔と間違えられることも多く、正しい鑑別が必要になります。特に、元々この痔を呈している患者は「また痔の症状だ」と自己判断して癌を見過ごしてしまうことも多いため、注意が必要です。

下痢と便秘を繰り返す

癌細胞が大きくなると、便が通る内腔が狭窄されてしまうことや、大腸の動きがスムーズではなくなるといった状態になります。そうなると、排泄機能が低下して便秘を引き起こしたり、便が排泄されたとしても残便感が残ってしまったり、下痢と便秘を頻繁に繰り返すといった排便に関わる症状が多く出現し易くなります。

この下痢と便秘を繰り返す原因は、癌細胞が原因で便の通り道が狭窄され、便秘状態になった便を何とか押し出そうとするための腸の蠕動運動が更新され、水分が十分に吸収されていない便が押し出されるためだと考えられています。

こういった症状が見られたとしても、その他の大腸癌と同様、初期の自覚症状はほぼ見られません。先ほど述べたように、痔と区別がつかず野放しにされることが多いです。このまま放置されることで、気づいた時には癌が進行してしまい手遅れになってしまうケースも少なくはないです。生活習慣を変えた・変えていないに関わらず排泄機能の変化に気づいた際には検査を受けるようにしましょう。

便の形に変化が出る

S状結腸癌の癌細胞が大きく、硬くなるにつれてS状結腸癌の内腔が狭窄していきます。これにより、内腔を通ることができる大きさに便の形状が変化していきます。

これまでとは形が異なっていたり、細い便しか出てこないことや、自力での排便が困難になってきて強い腹痛が生じる場合があります。

S状結腸癌の治療

手術

S状結腸癌では、第一の治療として行われるものが外科手術です。

この病気の進行状態によって化学療法や放射線治療、抗癌剤による薬物治療が併用されていきます。

外科手術 (開腹手術)

大腸癌において、最も有効とされている治療法が外科手術になります。癌の進行状況にもよりますが、内視鏡検査では対応ができない大きさの癌に適応されます。

また、S状結腸癌が便の通り道を塞いだ場合にも緊急処置として外科手術が適応されます。外科手術で癌細胞や所属リンパ節を切除することにより根本的に治癒される可能性があります。この際には、癌細胞を中心とした範囲の腸を約30cm切除し、所属リンパ節の切除後に腸を継ぎます。切除する腸の量が多いとしても、術後の機能障害はほとんど生じないとされています。

手術の際には、術後の痛みの状態を管理するために背中から管を入れます。更に、心拍数や脈、血圧など心臓の状態も把握するため心電図を装着します。麻酔が作用するまでに30~60分間要します。その後、手術に目安、開腹で2~3時間、腹腔鏡に3~5時間要します。癌の進行状態により切除する範囲やリンパ節郭清の状態も異なり、手術時間もそれにより異なります。

手術後から退院するまでは約2週間の入院が必要ですが、個人差があります。

内視鏡手術・腹腔手術

大腸癌がリンパ節に転移していない、癌細胞が粘膜内や粘膜下層に溜まっている早期の状態(stage0~stage1)では、開腹手術は施行されず、内視鏡手術や腹腔手術が施行されることがあります。腫瘍が小さく、約2cmの場合に施術可能です。

内視鏡手術は大腸内視鏡を用います。粘膜内や粘膜下層の比較的浅層の範囲に溜まっている癌細胞は、内視鏡による切除によって治療をすることが可能です。但し、癌細胞の深達度によっては、癌細胞が大きすぎたり、腸の屈曲部やヒダの陰に隠れているといった場合には安全で確実な内視鏡切除術が困難な場合もあります。

内視鏡手術の術式には、内視鏡的ポリープ切除術、内視鏡的粘膜切除術、粘膜下層剥離術があります。内視鏡的ポリープ術はポリペクトミーという物を使用します。内視鏡的ポリープ切除術は、ポリープの下に生理食塩水などを注入してポリープを浮かせ、スネアと呼ばれる器具を締めて切除する方法です。粘膜下層剥離術は、スネアでは締めきれない広範囲の癌細胞に対して施行されます。

術後には、切除した部位や出血の可能性を考慮して入院とする場合があります。切除された組織は病理検査に出し、癌細胞が切除しきれているかを確認します。結果次第では再度治療が施されることもあります。

近年では、腹腔鏡手術が多く施行され、創部を小さくすることで患者の術後のストレス負荷が低減されています。早期発見・早期治療が可能であればこのような対応で治癒が可能であり、手術のストレス負荷や傷跡が残るといったこともなく済みます。

放射線治療

放射線治療は、S状結腸癌を根本的に治癒させる効果はなかなかありません。再発のリスクを低くするためと再発した際に化学療法と併用して施行されます。

S状結腸癌がリンパ節や骨、他臓器に転移して痛みが出現した場合に、症状の緩和治療として施行されることもあります。その他、放射線治療とCCRTを組み合わせた治療も行われることがあります。

S状結腸癌の予後

大腸癌は進行状況をstage分類で見ます。「全癌協部位別臨床病気別5年相対生存率」からも確認できます。

このstage分類でstage0(粘膜内に癌が溜まっている状態)~1(粘膜下層から固有筋層まで癌が溜まっている状態)は早期の癌であり、5年生存率が90%を超えています。転移する可能性は極めて低く、この段階で癌細胞を完全に切除することができればほぼ100%完治するとも言えます。stage0~1では癌の自覚症状もみられにくいため、定期的に注腸や内視鏡検査などの検査を受けることが大切です。

stage2では癌細胞が大腸壁や固有筋層を越えていたとしても、所属リンパ節に達していない・転移していない状態であり、この場合も5年生存率が80%を超えています。癌のサイズは大きくなり転移の可能性も高くなってくるため、手術後の病変を確認して状態によっては再発予防の抗癌剤治療などが処方される可能性があります。

stage3からはリンパ節に転移している状態であり、ここまでくると生存率が低くなります。癌は更に大きくなり、固有筋層を超えて広がり、所属リンパ節や他の臓器に転移をしていく状態になります。こうなると、手術では癌細胞を切除しきれず、この術後に抗癌剤治療や放射線治療も必要になる場合があります。生存率は転移したリンパ節の数が3個以下のa期では約77%、4個以上のb期では約60%です。現在では、抗癌剤治療の効果が発揮されてきており、生存率が高くなる可能性がでてきています。

stage4は他の臓器に転移が確認されている状態です。この段階では5年生存率は15~18%と低くなっていきます。stage4までになると、癌の大きさがどうこうというよりも離れた部位にある臓器や器官に転移が生じ、これは多くの場合、手術等による治癒が困難となり、再発の可能性も極めて高くなります。対応も、看護・介護、緩和ケア病棟での症状緩和治療が施されます。

stage4では5年生存率が低いですが、転移の場所やどのぐらいの癌細胞が切除可能なのかなど状態によっては完治することも可能と言われています。

まとめ

医学 病気 病院へ行く

S状結腸癌は鑑別されずに進行してしまう恐れのある癌であり、進行してしまうと難治困難であることがわかります。

stage4に達して完治する可能性もあるとは言えど、身体と精神、経済的な負担はとても大きいです。消化器系の癌の中では比較的予後は良いと言われていますが、後々の事を考えると定期的に癌検診を行うことが大切になってきます。

特に血が混在した便が出るなど排泄機能に異常を感じた際には、しばらく様子をみるのではなく早期に受診をするようにしましょう。

  
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