「何だか、手のひらが黄色いな……」と思っているあなた。実は、手のひらが黄色いのには色々な原因が考えられます。
中には、大きな病気が原因となっている場合もあるようです。そこで、手のひらが黄色くなるいくつかの原因と、その対処法を紹介します。
◆手が黄色くなる4つの原因
手が黄色くなる原因には、主に、柑皮症(かんぴしょう)、貧血、黄疸(おうだん)、脂質異常症の4つが挙げられます。ここでは、それぞれの症状と、手が黄色くなる理由、そしてその対処法などを見てみましょう。
○柑皮症
みかんなどの柑橘類には、β‐カロテンという、ビタミンAの元となる物質が多く含まれています。このβ‐カロテンの色素が皮膚の角質や皮下脂肪などの部分に貯蔵され、黄色くなったのが柑皮症です。
手のひらや足の裏に症状が現れることが多く、ひどい時には全身にも現れます。
みかんだけでなく、カボチャ、にんじん、春菊、ホウレンソウ、小松菜、チンゲンサイなどの色鮮やかな緑黄色野菜にも、β‐カロテンが多く含まれています。
β‐カロテンは強力な抗酸化作用のある栄養素で、粘膜を健康に保ったり、がんを抑制したり、心疾患のリスクを下げてくれるなど、健康維持に役立つ成分です。また、ビタミンの場合は過剰に摂取すると健康に害がある可能性がありますが、β‐カロテンならば、体が必要とする分しかビタミンAに変換されないため安心です。
β‐カロテンは体内の脂質に溶けやすい性質があるため、高脂血症を患っている人の場合には、血液中のβ‐カロテンの量が増えてしまいます。また、肝臓に疾患があり、β‐カロテンからビタミンAを作る機能が低下している時も、皮膚にたまりやすくなります。
柑皮症は、β‐カロテンの多い食べ物を食べないようにすれば、症状が緩和します。ただし、肝臓の機能が衰えている場合にも似た症状が現れるため、食生活を変えても症状が変わらない場合は、内科を受診するとよいでしょう。
○貧血
貧血になると、血液に含まれるヘモグロビンが少なくなります。このヘモグロビンの色素は肌を赤く見せている元なのですが、貧血になると皮膚の色が黄色く見えるようになるのです。
軽い貧血の時には青白くなりますが、黄色く見える時は重度ですので、早めに内科を受診するようにしましょう。
貧血の理由は、鉄不足が主ですので、鉄剤などを服用して補うようにしましょう。
○肝機能の問題
肝臓の働きが低下すると、ビリルビンという成分が血液の中に増えてきます。
ビリルビンは、赤血球が破壊されると発生し、黄色い色をしています。本来ならば、ビリルビンは肝臓に運ばれ、胆汁の成分となるのですが、肝臓の働きが低下していると、手のひらなどに溜まってしまうのです。
例えば、お酒を飲み過ぎると、アルコールが肝臓に負担を強いることになり、肝機能が低下してしまいます。
肝機能に問題がある場合、白目の部分にもビリルビンが沈着し、黄色くなりますので、判断の基準となります。
○脂質異常症
脂質異常症とは、高脂血症とも言われ、血中のコレステロールや中性脂肪が基準を超えた状態です。
β-カロテンは脂質に溶けやすい性質をしているため、脂質異常症の人は、血液に含まれるβ-カロテンの量が多くなりやすいのです。
脂質異常症には、遺伝子異常が原因の場合と、肥満などが原因になる場合の2種類があります。
後者の場合であれば、運動や生活習慣を改善することによって症状が良くなることが期待されます。
◆黄疸の種類
黄疸とは血液に含まれるビリルビンが増えすぎて、手のひらなどの皮膚や白目の部分に沈着した状態をいいます。
黄疸には、以下の3つの種類があります。
- 溶血性黄疸:血液中のヘモグロビンを分解しすぎたために、ビリルビンが増えすぎた状態です。
- 肝性黄疸:肝臓の働きが低下しているため、ビリルビンを体外に出しにくくなっている状態です。
- 閉塞性黄疸:胆道が詰まっているため、ビリルビンを体外に出しにくくなっている状態です。
◆肝臓の病気・肝炎にはどんな種類があるの?
ここまで、手のひらが黄色くなる原因を見てきました。その中には、肝臓に問題があることが原因で、手のひらが黄色くなってしまうことがありました。
ここからは、肝臓の問題の中でも大きな肝炎について見ていきたいと思います。
肝炎とは、肝臓の細胞が炎症を起こしている状態で、アルコールの常用や自己免疫の疾患によるものもありますが、日本では、ウイルスによるものが多いとされています。
原因となるウイルスは、主に3つあります。
○A型肝炎
生食の牡蠣やシジミなどでウイルスに感染し、冬から春にかけてかかる人が多いようです。
肝臓が、触れて分かるほどに大きく腫れ、黄疸などの症状が出ます。その前に、熱が出たり、喉や関節が痛むなど、風邪に似た症状が起きます。
おおよそ、3~4週間で症状が消えて回復します。
○B型肝炎
血液感染や母子感染、性接触によって感染します。
悪化すると、短い期間で肝臓がダメージを受け、黄疸などが出る劇症肝炎になる可能性が、他のウイルスより高く、劇症肝炎になると、経過がよくないとされています。
○C型肝炎
血液感染や性接触によって感染し、注射器などの針の共用によって感染する場合があります。
症状が軽い場合が多く、気付かない人も多いため、知らないうちに慢性肝炎になってしまうことがあります。
慢性肝炎とは、肝臓の炎症が6か月以上続いている状態で、一度慢性肝炎に進行してしまうと、自然には治らず、おおよそ20年が経過すると肝細胞が破壊されてしまう肝硬変になってしまう可能性が高いといわれます。
肝硬変になると根本的な治療方法は肝移植以外にありません。ビリルビンを体外に排出する働きが低下してしまうため、黄疸が見られるようになります。
また、30年で肝細胞がんとなってしまう可能性が高いとされています。
◆手が黄色くなる恐ろしい病気は他にも!
手のひらが黄色くなる黄疸が現れる病気には、肝炎の他にもあります。ここでは、それらの病気を紹介していきます。
○胆嚢炎
胆嚢炎とは、肝臓で作られた胆汁を蓄えている胆嚢が、主に大腸菌などの細菌に感染することで炎症を起こした状態です。
慢性の胆嚢炎になると、熱が出るなどの症状は見られませんが、急性の場合には、熱が出たり寒気がしたり、上腹部に激しい痛みが起きます。
胆石を一緒に発症していることが多く、この胆石が、肝臓を胆嚢をつなぐ胆管をふさいでしまうと、胆汁が肝臓に溜まってしまいます。胆汁の原因は黄色い色素のビリルビンのため、黄疸が現れるとされています。
○胆石
胆石は、胆嚢や胆管などの中で、胆汁の成分が固まって石のようになった状態です。日本人の8パーセントは、胆石を持っているといわれます。
胆汁は、胆汁酸やコレステロール、ビリルビンなどでできていますが、脂肪分の多い食生活をしていると、胆汁の成分のバランスが崩れ、胆石ができる原因になると考えられています。
この胆石は、痛みを伴うことが多く、時には、絶えられないほどの激痛になります。
○胆道がん
胆嚢や胆管、乳頭部のがんを、合わせて胆道がんと呼ばれます。胆嚢は、胆汁を蓄えておくための袋状の臓器で、肝臓と十二指腸のあいだにあります。
胆嚢がんは還暦を過ぎたくらいの年齢の女性に多く、かかる割合は、男性の約2倍になるといわれます。
早期がんの場合では症状がないと言われており、気づきにくいがんです。
悪化すると、特に右側の上腹部からみぞおちにかけて、また背中あたりに慢性的な痛みを覚えたり、黄疸が出たりします。また、尿が濃い茶色に近い色になったり、全身の皮膚にかゆみをおぼえたりします。黄疸の症状が強いときには、便が白っぽくなることもあるようです。
肝臓で生成する胆汁は、胆管を通って胆嚢に運ばれます。この胆管にがんができると、胆管が塞がってしまって胆汁が流れにくくなり、胆汁が胆管へ逆流して血管に入りこんでしまうことがあるのです。
そうなると、血液に含まれるビリルビンの量が増加し、様々な部位が黄色くなる黄疸となって現れます。
胆管がんの場合は、黄疸と合わせて、便の色が白っぽくなることが特徴で、この症状が早期発見の鍵となるサインです。
さらに、十二指腸、胆管、膵臓の間にある小さな部位のがんを乳頭部がんと言います。
50歳~70歳代の男性がかかることが多く、黄疸や胆管の炎症、肝臓の働きの低下、膵臓の炎症などをきっかけとして見つかることがおおいようです。
2割から3割の人は自覚症状がありませんが、黄疸がでたり、上腹部の痛み、発熱や、全身のだるさなどが症状として出てきます。
このがんは、悪性腫瘍の中では比較的経過が良好とされていますが、付近にある臓器の膵臓にまで、がんが転移していると、その後の経過はよくないといわれます。
◆まとめ
いかがでしたか?
一口に手が黄色くなるといっても、その理由には、色々あることがお分かりいただけたかと思います。
特に肝機能の低下が原因の場合、肝臓は沈黙の臓器と言われますから、早めに対処しなければ体を大きく病に蝕まれてしまう、ということも考えられます。
「肝臓が悪い」と診断を受けると、好きなお酒や食べ物が制限されると思って、なかなか病院に足を運ばない人がいますが、手遅れになってしまわないよう、定期的に健康診断を受け、きちんと医師の指示に従って、早めに病院で対処するように心がけましょう。