誰でも社会人となって年齢を重ねれば重ねるほど、ビジネスシーンにおいてビジネスパートナーやその身内あるいは仕事を一緒にした取引先の人たちなどの訃報に接することが多くなります。そのような知り合いに不幸があった場合に、お悔やみの言葉を伝えることも誰もが行うことだと言えるでしょう。
そして、お悔やみの言葉というと「この度は、ご愁傷様です(御愁傷様です)」というフレーズを頭に思い浮かべる人が多いと思います。とはいえ、お悔やみの言葉の意味や使い方について体系的に知る機会は決して多くはありませんから、お悔やみの言葉を使う場面で困ってしまう人もいるでしょう。
そこで今回は、「ご愁傷様です」という言葉の意味を確認しつつ、お悔やみの言葉の使い方や注意点について、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
「ご愁傷様です」の意味
そもそも「ご愁傷様です(御愁傷様です)」という言葉は、どのような意味なのでしょうか?お悔やみの言葉として代表的なフレーズであるが故に、改めてその意味を調べようという人は少ないでしょう。
そこで、まずは「ご愁傷様です」の意味について、ご紹介したいと思います。
「ご愁傷様です」の本来的な意味
「ご愁傷様です(御愁傷様です)」というフレーズは、不幸があった人に対して悲しみや同情といった気持ちを込めて呼びかける言葉遣いであり、不幸があった人に対する一種の挨拶といった意味合いを有しています。
そもそも「愁(しゅう)」という漢字は「悲しみ、物寂しさを感じて心が沈むさま」を意味し、「傷」は「キズ・怪我」の意味から転じて「心の痛み、悲しみ」という意味も有しています。また、「ご〇〇様・お〇〇様(御〇〇様)」という表現には敬意が込められており、例えば「ご馳走様(御馳走様)」や「お疲れ様(御疲れ様)」は相手への敬意を込めた挨拶の言葉です。
ですから、「ご愁傷様です(御愁傷様です)」は、不幸があった人に対して悲しみ・嘆きといった感情と敬意を込めた挨拶のフレーズと言えるでしょう。加えて、不幸があった人に対して、大切な人を失って気の毒であるという同情や慰めの意味合いも含まれると言えます。
「ご愁傷様です」には別の意味も
このように「ご愁傷様です」というフレーズは、本来的には不幸があった人に対して悲しみや同情を伝える意味を有しています。
しかしながら、「ご愁傷様です」というフレーズが人の死とは関係のない場面で使われると、別の意味になることがあります。例えば、恋人とデートをする予定があったにもかかわらず、急に上司から接待への同行を命じられデートをキャンセルせざるを得なかった会社の同僚に対して、軽い言い方で一言「ご愁傷様です」と声をかけるケースです。
このように同僚や友人といった親しい人が思いがけず大変な場面に直面した際に「ご愁傷様です」が使われると、同情や慰めの意味合いがある点では本来的な意味と同じですが、そこには一種の冗談やからかいといった意味合いも含まれているのです。
ですから、「ご愁傷様です」というフレーズが人の死とは関係のない場面で使われると、冗談やからかいといった意味を有していると言えるでしょう。
「ご愁傷様です」以外のお悔やみの言葉
このように「ご愁傷様です」には二つの意味があります。それでは、「ご愁傷様です」以外に、どのようなお悔やみの言葉があるのでしょうか?
そこで、「ご愁傷様です」以外のお悔やみの言葉について、ご紹介したいと思います。
「お悔やみ申し上げます」
「ご愁傷様です」以外のお悔やみの言葉の一つとして、「お悔やみ申し上げます」というフレーズを挙げることができます。
「お悔やみ申し上げます」の「お悔やみ」は、「悔やみ」に敬語表現の接頭語である「お」がついたものです。「お悔やみ」の意味は、次の通りです。
- 悔やむこと
- 後悔
このような意味から、人の死に際して「お悔やみ」を使うと、「故人の死を悲しみ惜しむこと」を意味します。
ですから、「お悔やみ申し上げます」とは、亡くなった人の遺族に対して故人の死をを悲しみ惜しんでいることを伝えるフレーズなのです。
「哀悼の意を表します」
「ご愁傷様です」の他のお悔やみの言葉の一つとして、「哀悼の意を表します」というフレーズも挙げることができるでしょう。
「哀悼の意」とは、次のような意味を有します。
- 死をいたむ気持ち
- 人の死に際して嘆き悲しむ心持ち
ですから、「哀悼の意を表します」とは、故人の死に際して悲しみ心をいためていることを表明します、という意味のフレーズなのです。
「ご冥福をお祈りいたします」
「ご冥福をお祈りいたします」も、「ご愁傷様です」以外のお悔やみの言葉の一つと言えるでしょう。
「ご冥福をお祈りいたします」の「ご冥福」は、以下のように分解することができます。
- 「ご」…敬語表現の接頭語
- 「冥」…死後の世界、いわゆる「あの世」を意味する漢字
- 「福」…幸運、幸せ、幸福を意味する漢字
ですから、「ご冥福をお祈りいたします」とは、故人に対する死後の幸福をお祈りします、という意味のフレーズになります。
お悔やみの言葉の使い方や注意点
それでは、ここまでにご紹介した様々なお悔やみの言葉は、同じように使っても良いのでしょうか?それとも、それぞれ使うべき場面が限定されているのでしょうか?
そこで、お悔やみの言葉の使い方や使う上での注意点について、ご紹介したいと思います。
故人に対する言葉か、遺族に対する言葉か
前述した4つのお悔やみの言葉は、故人に向けられたフレーズと遺族に向けられたフレーズに分類することができます。
故人に向けられたフレーズは、「ご冥福をお祈りいたします」です。
一方で、遺族に向けられたフレーズは、以下の3つです。
- 「ご愁傷様です」
- 「お悔やみ申し上げます」
- 「哀悼の意を表します」
ですから、遺族の前で「ご冥福をお祈りいたします」を使う場合には、故人に対する言葉であることが明確わかるように「〇〇様のご冥福をお祈りいたします」と言う必要があるでしょう。
「哀悼の意を表します」は書き言葉
前述した4つのお悔やみの言葉の中で、実は「哀悼の意を表します」だけが書き言葉とされています。そして、「哀悼の意を表します」が書き言葉であるということは、基本的に手紙や電報などの文章の中で用いられる必要があるということです。そのため、葬儀・葬式の場で遺族に対して「哀悼の意を表します」と話すことは間違いだということになります。
例えば、テレビのニュース番組などで、コメンテーターなどが「哀悼の意を表します」と話しているのも本来的には間違った使い方ということになります。一方で、ニュースキャスターが故人と親交のあった有名人のメッセージを代読するようなケースでは、そのメッセージは書き言葉として記されていますから正しい使い方であることになります。
ですから、「哀悼の意を表します」を使う場面は、基本的に遺族宛となる手紙や電報などの文章中でなければならない点には注意が必要です。
「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」
「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」の2つのフレーズは、いずれも遺族に向けられたものであり、話し言葉としても書き言葉としても使える点で共通します。それゆえ、葬儀・葬式の場に限らず、仕事で縁のある人の家族や親族の不幸に際して気遣いを示す場合などでも、「ご愁傷様です」か「お悔やみ申し上げます」のいずれかを使えば間違いはありません。
ただし、前述のように「ご愁傷様です」には、本来的な意味の他に冗談やからかいといった意味もあることには注意が必要です。もちろんコミュニケーションは言葉だけでなく、表情・ジェスチャー・声の調子(声音)・その場の雰囲気といった様々な要素が絡みますから、面と向かって「ご愁傷様です」と言う際に意味を取り違えることは滅多にあることではないでしょう。しかし、遺族にとっては身近な人をなくしたばかりで精神的な余裕がないことも考えられるため、周囲の人は誤解を生じる可能性にも配慮をする必要があるでしょう。
メールにおけるお悔やみの言葉
近年はテクノロジーの発達によって、メールやSNSを通じて訃報に接することが増えています。とりわけビジネスシーンにおいては、この傾向が顕著となっているようです。そのため、遺族に対するお悔やみの言葉をメールで伝えるケースもあるでしょう。
その場合、「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」については、なるべくなら「ご愁傷様です」の使用は避けて「お悔やみ申し上げます」を使用すべきでしょう。その理由は、前述のように「ご愁傷様です」が冗談の意味も有しており、言葉だけのコミュニケーションであるメールにおいては誤解を生じる可能性が高まるからです。
また、メールにおいて「哀悼の意を表します」を使うことは、特に問題ありません。例えば「△△様のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します」というような書き方です。
さらに、「ご冥福をお祈りいたします」も故人に対する言葉であることが分かるように書けば、特に問題とはならないでしょう。例文を挙げるならば、「この度は、心よりお悔やみ申し上げます。△△様のご冥福をお祈りいたします」と書くと、シンプルでいて遺族と故人の双方に配慮したバランスの良い内容の言葉と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?ご愁傷様です」という言葉の意味を確認しつつ、お悔やみの言葉の使い方や注意点について説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
お悔やみの言葉には「ご愁傷様です」以外にも、いくつかの種類があります。そして、お悔やみの言葉を使う場合には、遺族に向けられた言葉か故人に向けられた言葉か、あるいは話し言葉か書き言葉か、といったポイントに注意を払う必要があります。
知り合いの不幸に際しては、相手方に配慮する気持ちが必要であり、それを言葉として示すことが一般的なマナーであり、ビジネスマナーでもあります。本記事を参考にして、改めてお悔やみの言葉における言葉自体の意味を知り、適切な表現ができるようにしましょう。
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