みなさんは「追伸」あるいは同じ意味の英語「P.S.」という言葉を使っていますか?
LINEやTwitterなど短文系のSNSが登場したことで使われる機会が減少しているとはいえ、まだまだ手紙やメールなどで「追伸」や「P.S.」という言葉を使う人も多いと思います。「追伸」や「P.S.」という言葉は、家族や友達に本文で伝え忘れたことを最後に付け加えることができるので、とても便利な言葉ですよね。
とはいえ、便利だからと言って、相手や場面を問わず使って良いわけではありません。実は、「追伸」や「P.S.」という言葉には意識すべき用法上のマナーが存在するのです。
そこで今回は、「追伸」の意味や書き方を再確認した上で、「追伸」を用いる上でのマナーについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
「追伸」の意味や書き方
そもそも「追伸」の意味や書き方について、調べたことのある人は少ないのではないでしょうか?「追伸」を用いる上でのマナーを知る上でも、その前提として「追伸」の意味や書き方を知っておくことは必要不可欠です。
そこで、まずは「追伸」の意味や書き方について、ご紹介したいと思います。
「追伸」の意味は?
「追伸」という言葉の意味を国語辞典で調べてみると、次のような意味が記されています。
- 手紙などで本文の後に、さらに書き加える文章のこと。
- 手紙などで本文の後に、さらに書き加える文章の頭に書く語のこと。
ですから、「追伸」とは、手紙やメールなどで本文が書かれた後で、さらに付け加えられた追加文のことを言うのです。
ちなみに、「P.S.」とは、英語で「追伸」や「あとがき」を意味するpostscriptの略語であり、日本語においては「追伸」とほとんど同じ意味として用いられています。さらに付け加えるならば、「P.S.」とピリオドを付けるのがイギリス風(イギリス流)で、「PS」とピリオド無しなのがアメリカ風(アメリカ流)ですが、意味に違いはありません。
「追伸」の必要性
そもそも「追伸」や「P.S.」が用いられるようになった理由は、現代のようなテクノロジーが発達する以前に通信の主要手段であった手紙において、書き忘れた事柄や内容が簡単には本文に追加できなかったからです。手書きの手紙であれば紙面の余白が少なかったり、タイプライターによる手紙であればマシン性能の問題で追記が難しかったわけです。
現代になってテクノロジーが発達すると、パソコン上で動く「ワード」に代表されるワープロソフトや電子メールソフトなどでは簡単に文章の修正や加筆ができるようになりましたが、それでも一旦完成した文章を修正するとなると表現の見直しなど意外と面倒だったりします。
そのような時に、「追伸」や「P.S.」として、本文とは別に追加の文章を書き加える必要性や有効性があるのですね。ですから、「追伸」や「P.S.」は、最初から文章を書き直したり、文章を加筆・修正するといった手間を省く上で、とても便利な言葉なのです。
「追伸」の書き方
手紙において追伸を書く際には、頭語と結語(拝啓~敬具)・時候の挨拶・本文・日付・宛名(宛先)・差出人名(署名)を一通り書き終えた後の末尾余白に、「追伸」あるいは「P.S.」と頭に記してから追加文を書き足します。
メールの場合も基本的には手紙と同じですが、差出人名(署名)が末尾に自動的に挿入されるように設定している人も多いので、本文の文章末と差出人名(署名)の間に「追伸」・「P.S.」と記して別途書き足したことが分かるように追加文を付け加えます。というのも、これは特に決まったルールではありませんが、メールの場合は差出人名(署名)があると、そこが最後だと相手方が勘違いしやすく、書き足した追伸の内容が読まれない可能性があるからです。
「追伸」を用いる上でのマナー
このような「追伸」の意味や書き方を踏まえた上で、それでは「追伸」を使うにあたって、どのような用法上のマナーが存在するのでしょうか?
「追伸」や「P.S.」が便利だからと言って、相手や場面を問わず使って良いわけではなく、実は意識すべき用法上のマナーや注意点が存在するのですね。
そこで、「追伸」や「P.S.」を用いる上での用法上のマナーについて、ご紹介したいと思います。
「追伸」を使ってはならない場面
「追伸」を使ってはならない場面は、いくつかあります。基本的に大切な要件を「追伸」のような追加文で伝えるのは、相手方に対して失礼にあたります。
そこで、具体的に「追伸」を使ってはならない場面について、いくつかご紹介したいと思います。
お礼や感謝の気持ちを伝える場面
相手方にお礼や感謝の気持ちを伝えることは、人間関係を良好に保つ上でも礼節という面からも、とても大切なことです。それゆえ、手紙やメールなどの文章で感謝などの気持ちを伝える場合には、本文で伝える必要があるでしょう。
にもかかわらず、本文とは別に「追伸」として「先日は、ありがとうございました」と書いてしまうと、相手方としては他の物事のついでに感謝の気持ちを表明されたように感じられてしまいます。書き手に相手方を軽んじる意図がなくとも、相手方としては書き手から軽んじられたように感じてしまうのですね。
ですから、お礼や感謝の気持ちを伝える場面では、「追伸」を使ってはならないのです。
謝罪の気持ちを伝える場面
謝罪の気持ちを伝える場面も、お礼や感謝の気持ちを伝える場面と同様です。
「追伸」として「先日は、申し訳ありませんでした」と書かれていても、相手方としては他の物事のついでに謝られているように感じられ、書き手が心から謝っているようには思えないのですね。
ですから、謝罪の気持ちを伝える場面では、「追伸」を使ってはならないでしょう。
結婚のお祝いを伝える場面
結婚のお祝いを伝える場面でも、「追伸」を使ってはいけません。
その理由は二つあり、一つ目は感謝や謝罪の場合と同じく、相手方が書き手から軽んじられたように感じてしまう可能性があるからです。
二つ目の理由は、追伸を書くということは本文に「重ねて」追加文を書くことですので、結婚祝いの禁句とされる再婚を連想させる「重ね言葉」にあたりかねないからです。
見舞いの気持ちを伝える場面
災害や病気などの見舞いの気持ちを伝える場面でも、「追伸」を使ってはならないとされます。
それは、結婚祝いの二つ目の理由と同じく、「追伸」が「重ね言葉」にあたりかねないからです。つまり、「重ねて」書くことが、災害や病気といった不幸の繰り返しを相手方に連想させることになるからです。
「追伸」を使ってはならない相手
「追伸」を使ってはならない相手も、いくつか存在します。
そもそも「追伸」の必要性について前述したように「追伸」や「P.S.」は、最初から文章を書き直したり、文章を加筆・修正するといった手間を省く上で、とても便利な言葉です。しかしながら、相手によっては手間をかけてでも最初から文章を書き直したり、文章の加筆・修正をしなければならないケースがあるのです。
そこで、具体的に「追伸」を使ってはならない相手について、いくつかご紹介したいと思います。
目上の人に対して
目上の人に対しては、礼節をもって接するのが社会的な常識であり基本マナーです。とすれば、目上の人に対して手紙やメールなどを書く際に、内容の間違いや不足があっても手間がかかるからといって、「追伸」として追加文を付け加えて済ますことは礼儀を欠く行為だと言えるでしょう。
なぜなら、目上の人に対して礼儀を重んじ誠意を持って接するならば、手間を惜しまずに最初から文章を書き直せばいいからです。つまり、自分の手間を惜しむあまりに「追伸」で済ますことは、相手方の目上の人に対して失礼な行為にあたりマナー違反となるのです。
加えて言えば、相手方の目上の人としては、書き手から伝達事項を付け足しされる程度の軽い扱いをされたものと感じられてしまいます。書き手側にそのような軽い扱いをする意図がなくとも、結果として書き手の印象も悪くしてしまいます。
ですから、目上の人に対して「追伸」を使うことは、避けなければならないのです。
ビジネスシーンにおける取引相手や上司に対して
ビジネスシーンにおいては、今や大部分の情報やビジネス文書がビジネスメールとして電子メールでやりとりされます。そうは言っても、自分の会社の上司に対しては目上の人として接するのが社会的な常識ですから、前述のようにビジネスメール上で「追伸」を使うことは避けなければなりません。
また、取引先企業・取引相手に対しても、丁寧な対応をしなければならないのはビジネスマナーとして基本中の基本です。それゆえ、取引相手に対しても基本的には「追伸」を使うことは避けなければなりません。
ただし、長年の取引から相手先の担当者と親しい間柄になっている場合には、「追伸」として担当者の体調への気遣いなどを付け加えても許されるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?「追伸」の意味や書き方を再確認した上で、「追伸」を用いる上でのマナーについて説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、「追伸」や「P.S.」という言葉は、手紙やメールなどで相手方に本文で伝え忘れたことを最後に付け加えることができるので、とても便利な言葉です。実際に、手紙やメールなどで「追伸」や「P.S.」という言葉を使う人も多いと思います。
しかしながら、「追伸」や「P.S.」が便利だからと言って、相手や場面を問わず使って良いわけではないのです。実は「追伸」や「P.S.」という言葉には、意識すべき用法上のマナーが存在するのです。
ですから、「追伸」や「P.S.」を使う場合には、押さえておかなければならないポイントがあるのですね。本記事を参考にして、改めて「追伸」や「P.S.」の使い方について見つめ直してみてはいかがでしょうか。
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