相手方を訪れる際に、ちょっとした手土産を持参する人は少なくないと思います。プライベートなシーンであれビジネスシーンであれ、訪問先に手土産を持参することは日本社会に定着した文化であり基本マナー・ビジネスマナーと言えるでしょう。
もちろん、手土産を持参することが必ず必要というわけではありませんが、訪問を受け入れてくれる相手方に対しての気遣いを目に見える形で示すことは、人間関係を良好に保つ上で非常に大きな役割を果たします。
とはいえ、実際に手土産を持参して相手方を訪れた時に戸惑ってしまうのが、手土産の渡し方や手土産を渡すタイミングです。手土産を持参したものの、渡し方やタイミングに戸惑ったことで、一時的に変な空気を感じた経験を持つ人も少なくないはずです。
そこで今回は、手土産の渡し方や手土産を渡すときに添える言葉について、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
そもそも手土産とは?
そもそも手土産には、どのような意味合いがあり、どのような品物を持参すれば良いのでしょうか?手土産の渡し方や手土産を渡すときに添える言葉に触れる前に、まずは手土産の意味合いについて考えてみたいと思います。
手土産とは?
「手土産」という言葉を国語辞典で調べてみると、
- 人を訪問する際に持参する、ちょっとした品物。
- 挨拶がわりの簡単な土産。
と書いてあります。ですから、手土産とは、人を訪問する際に持参する簡単な品物のことで、高価で値がはるようなプレゼントではなく、相手方が受け取るにあたって遠慮や気遣いをしない程度の贈り物だと言えるでしょう。
そして、手土産には、訪問を受け入れてくれる相手方に対しての配慮を目に見える形で示すことによって、人間関係を良好に保つ効果もあるのです。
手土産として適切な品物は?
それでは、手土産として適切な品物は、どのような物でしょうか?
相手方が受け取るにあたって遠慮や気遣いをしない程度の贈り物と考えると、ビジネスシーンでもプライベートシーンでも、お菓子が無難かつベターと言えるでしょう。
取引先企業を訪問する場合には、相手先の職場で分け合える個包装のお菓子が良いかもしれません。夏場はゼリーや水ようかんなど清涼感のあるもの、冬場なら焼き菓子など季節感のある品物だと、なお良いでしょう。
一方で、プライベートシーンでは、さらに相手方の好みや日持ちの有無などのポイントも考慮すると良いでしょう。親しい間柄であれば、生鮮食料品や日用品などでも喜ばれるかもしれません。
手土産の渡し方
たしかに、実際に手土産を持参して相手方を訪れたものの、手土産を渡すタイミングがつかめなかったり、手土産を渡す時にまごついてしまった経験が誰にでもあるのではないでしょうか?
手土産を持参すること自体は常識として知っていても、手土産の渡し方や渡すタイミングなどは意外と多くの人が見落としがちなのですね。
そこで、手土産の渡し方について、ご紹介したいと思います。
いつ、どこで渡すべきか?
相手方を訪問した際に、いつ、どの場所で手土産を渡せば良いのでしょうか?
結論から言えば、手土産の渡し方について絶対的なルールは存在しません。しかし、基本的な慣習として、お互いに正式な挨拶を交わしてから手土産を渡すことが訪問マナーとされているようです。ただし、時と場合によっては臨機応変さも求められます。以下、ビジネスシーンとプライベートシーンに分けて、具体例を紹介してみたいと思います。
ビジネスシーン
例えば、取引先企業を訪れる場合には、基本的には相手先の応接室や会議室などに通されてから、正式な挨拶と名刺交換をした後で仕事の本題に入る前に、手土産を渡すのが最もベストだと言えるでしょう。というのも、相手先の受付やロビーでは簡単な挨拶にとどまり、正式な挨拶や名刺交換は応接室や会議室に通されてから行うのがビジネスマナーだからです。
一方で、ビジネス上の会食・接待のような場合は、接待や会食が一通り終わった後の帰り際に渡すと、取引相手方も受け取りやすく手土産を忘れられることもないのでスマートだと言えます。
プライベートシーン
例えば、プライベートで知人の家にお邪魔する場合も、基本的には部屋に通された後に、招待された御礼の言葉とともに渡すべきでしょう。ただし、プライベートの場合は生鮮食料品を手土産とするケースもありますので、その場合は早く冷蔵庫に入れたほうが良い旨を伝えて、玄関先で渡してしまうほうが好ましいでしょう。
一方で、玄関先で失礼する場合には、もちろん玄関先で渡す必要があります。
誰が、誰に渡すべきか?
それでは、相手方を訪問した際に、誰が誰に対して手土産を渡せば良いのでしょうか?もちろん、自分と相手方が1対1であれば、特に戸惑うことはありません。しかし、訪問者側あるいは相手側が複数人であるときには、戸惑ってしまうこともあるかもしれません。
結論から言うと、ビジネスシーンにおいてもプライベートシーンにおいても、訪問者側の中で最も立場や地位が高い人が、相手側の中で最も立場や地位が高い人に対して手土産を渡すのが基本です。以下、ビジネスシーンとプライベートなシーンに分けて、具体例を紹介してみたいと思います。
ビジネスシーン
例えば、取引先企業を自分と上司の2人で訪れた際に、相手先の取引担当者も上司を伴って現れたケースです。この場合、訪問した側である自分は上司の顔を立てて、上司から手土産を渡してもらいます。そして、日常的に連絡をしているのは取引担当者でも、相手先の会社内の立場にも配慮して、取引担当者の上司に対して手土産を渡すことになります。
このように相手先の人たちの立場にも配慮する必要性があることからも、名刺交換後に手土産を渡すべきなのですね。
プライベートシーン
例えば、プライベートで知人の家にお邪魔する際に知人が夫婦で在宅していれば、世帯主である可能性が高い夫のほうに手土産を渡すのが基本です。というのも、長年の慣習から年齢が高い層では、世帯主の男性を立てることが多いからです。
逆に言えば、男女が対等であるとの考え方が広がっている若い世代では、そこまで配慮しなくとも招待に感謝している気持ちが伝われば、夫婦のどちらに渡しても良いのかもしれません。
どのようにして渡すべきか?
手土産を持参する時は、手土産の品物を汚れから守るためにも、携帯するための利便性からも、風呂敷に包んだり紙袋に入れるのが普通でしょう。
しかしながら、相手先で手土産を渡す際には、風呂敷や紙袋から手土産の品物を出して渡し、風呂敷や紙袋は畳んで持ち帰るのが基本となります。また、手土産の品物に包装紙やのし紙で正面や表裏が存在する場合は、正面かつ表側を相手に向けて両手で渡すことも基本です。このように手土産を渡すときには、風呂敷や紙袋の持ち帰りと手土産の品物の向きには十分に注意する必要があります。
ただし、ビジネスシーンでは会食後に手土産を渡す場合など、相手の利便性にも配慮して紙袋のまま渡すほうが好ましいケースもあります。この場合は「紙袋のままで失礼致します」と言葉を添えれば問題ないでしょう。
また、プライベートシーンで相手との関係性が親しい場合などは、紙袋の処理をお願いしても問題ないでしょう。
手土産を渡すときに添える言葉
このように手土産の渡し方については、絶対的なルールが存在するわけではありませんが、基本となるマナーがあり、時と場合によっては臨機応変な対応が求められます。
そして、ただ単に手土産を相手方に渡せばよいというものでもありません。手土産を渡すときには、ちょっとした言葉を添える必要があるのですね。そこで、手土産を渡すときに添える言葉について、ご紹介したいと思います。
手土産を渡すときに添える適切な言葉の必要性
前述のような手土産の渡し方の通りに実施していても、無言で渡されれば相手方も変な印象を抱くでしょう。だからと言って、「これは手土産です」と率直すぎる言葉も、相手方に与える印象は良くありません。
ですから、手土産を渡すときには、相手に気持ち良く受け取ってもらうためにも、適切な言葉を添える必要性があるのです。
適切な言葉は?
手土産を渡すときに添える言葉として、長らく定番とされていたのが「つまらないものですが、…」という言葉です。この「つまらないものですが」という言葉には、謙遜の意味が含まれています。
しかしながら、あまりにも謙遜しすぎであるとの意見や、近年は謙遜の意味が伝わらずに言葉通りに受け取られるケースも見られます。そのため、近年は「つまらないものですが」という言葉を添えることは、避けられる傾向にあるようです。
その代わりに台頭してきたフレーズが、次のような言葉です。
- ・「心ばかりのものですが、…」
- ・「ほんの気持ちですが、…」
- ・「お気に召すと嬉しいのですが、…」
- ・「お口に合うと良いのですが、…」
- ・「ありきたりのものですが、…」
いずれも、ちょっとした謙遜と相手先への心配りのバランスがとれた表現であり、今の世の中でも違和感のないフレーズだと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?手土産の渡し方や手土産を渡すときに添える言葉について説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
プライベートなシーンであれビジネスシーンであれ、訪問先に手土産を持参することは日本社会に定着した文化であり基本マナー・ビジネスマナーと言えます。この点、手土産を持参することが必ずしも必要というわけではありません。しかし、訪問を受け入れてくれる相手方に対しての気遣いを目に見える形で示すことは、人間関係を良好に保つ上で非常に重要な効果を発揮します。
ですから、社会人としては良好な人間関係の形成のためとマナー違反にならないためにも、改めて手土産の渡し方や手土産を渡すときに添える言葉について、押さえておかなければならないでしょう。本記事が、その参考となれば幸いです。
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