ファイファー症候群はどんな病気?症状や原因、診断方法を紹介!どれくらいの割合で発生する?

ファイファー症候群という病気をご存知ですか。あまり聞きなれない病名かもしれません。

いったいどのような病気なのでしょうか。この病気は先天性の病気で、国の難病に指定されています。まだはっきりと原因がわからない、非常に珍しくまた治療などが大変な病気と言えるでしょう。ファイファー症候群の症状や原因と考えられていること、その診断方法、また現在行われている治療法などについてご紹介します。

ファイファー症候群とは?

病院検査

ファイファー症候群について知りましょう。

ファイファー症候群は先天性の病気です

まずはファイファー症候群について説明します。この病気は先天的に、つまり生まれつき生じる疾患です。具体的には頭蓋骨や顔面骨の形成や、手や足の指に異常が起こり、そのため様々な症状が現れる病気です。出現は6万人から18万人に1人という割合ですが、日本での正確な患者数は不明のようです。

そもそも赤ちゃんの頭蓋骨というのは、大人と違っていて骨が何枚かの板のように分かれています。この骨と骨の間のつなぎ目のことを「頭蓋骨縫合」と呼びます。頭蓋骨縫合は急速に大きく成長する赤ちゃんの脳の成長に伴って、大きく広がっていきます。そして成長していくに従ってこの縫合部分には骨が出来て自然にくっついていき大人の頭蓋骨となるのです。脳は生後およそ6か月で生まれた時の2倍に、そして2歳までには4倍になると言われています。そして2,3歳までには頭蓋骨の成長が完成するのです、

しかし何らかの原因で、脳が大きくなっていく途中で頭蓋骨縫合が早期に起こってしまうことがあります。そうなると頭蓋骨の形成に異常が生じ、変形してしまいます。そうなると脳の発達にも影響が出てしまいます。またこの早期の縫合は顔面骨にも生じてしまいます。顔面骨に早期癒合が生じた場合、眼球が飛び出た感じになったり噛み合わせに異常が生じたり、また後鼻腔が塞がったりすると呼吸に影響が出てしまいます。

後鼻腔とは「こうびくう」と読み、左右の鼻の穴が奥で一つになり喉につながるところを指します。頭蓋骨のつなぎ目が早く縫合されてしまうことは頭蓋縫合早期癒合症と呼び、ファイファー症候群以外の先天的な病気もあります。ファイファー症候群では他に、手や足の指が癒合や形成不全などの合併症があることが特徴です。こうしたいろいろな症状を合わせて「症候群」と呼びます。

ファイファー症候群の原因は?

ファイファー症候群は遺伝子の変異が原因と考えられます。その遺伝子はFGFRという遺伝子で繊維芽細胞増殖因子受容体(せんいがさいぼうぞうしょくいんしじゅようたい)と呼ばれています。

繊維芽細胞増殖因子受容体とは血管の新生や胚の発生、傷の治癒に関わる「成長因子」の一種です。ファイファー症候群ではこのFGFR1,2の変異が関連すると考えられています。親が罹患者の場合は50パーセントの割合で受け継ぐと言われていますが、一部の重症型では突然変異であると考えられてます。しかしながらまだはっきりと解明されたわけではないのが現状です。

発症時期は様々ですが多くの場合は1歳以内に発症するようです。

遺伝子の変異、突然変異とは?

ここで少し遺伝子の変異や突然変異について説明します。難しい用語が出てきますができるだけわかりやすく説明したいと思います。

遺伝子は染色体の中で一定の順序で配列されていて、それぞれ一つずつの遺伝形質というものを決めています。親から子、そして孫へとまた細胞から細胞へと伝えられていく因子というのが遺伝子なのです。遺伝子はDNAから成り立っています。DNAは「デオキシリボ核酸」と言いDNAにはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という名の4つの塩基があります。この4つの塩基配列の順序に遺伝の情報があるのです。

この配列が何らかの原因で違ってしまうことで突然変異が起こってしまいます。設計図のミスのようなものと言えるでしょう。それによって遺伝子の情報から本来作られるべきものが作られないということが起きてしまい、正常とは異なった、つまり病気ということが体に生じてしまうのです。

ちなみに遺伝子の変異は、実は人間は誰でも幾つか持っていると言われています。ですから誰にでも「遺伝子変異」による疾患にかかる可能性はあると言えます。

ファイファー症候群の症状にはどのようなものが?

遺伝子

ファイファー症候群の症状について説明します。

ファイファー症候群に見られる症状とは?

ではファイファー症候群にはどのような症状があるのでしょうか。多岐にわたる様々な症状がみられます。早期に癒合する頭蓋骨の異常によりどのような症状があるのか調べてみました。

頭蓋骨の形の異常は癒合してしまう縫合の場所によって形が変わります。名称としては「冠状頭蓋」「矢状頭蓋」「短頭蓋」「クローバー様頭蓋」などが挙げられます。

早期に融合してしまうことで、頭蓋骨が変形すると頭蓋内圧(脳圧とも言います)が高くなってしまいます。

頭蓋内圧が高くなるというのはどういうことなのでしょう。頭蓋骨が狭くなった結果、脳の容積が増えてしまいます。そうなると脳の逃げ場がなくなってしまい様々な症状や障害をきたすことになるのです。ただし、早期に頭蓋骨が融合してしまっても必ずしも頭蓋内圧が高くなるかといえば、そういうわけでもなく、その理由ははっきりわかっていないのが現状です。

頭蓋内圧が高くなってしまうと頭痛や嘔吐が起きます。また精神運動の発達に障害が出てしまうことも少なくありません。その他視力障害が起こることもあります。

ファイファー症候群では顔面骨の形成の異常も見られます。顔面骨の異常により眼球が突出してしまったり、噛み合わせに不良が生じてしまったりします。眼球が突出してしまうのは、頭蓋骨や顔面骨の変形のため眼球が入る穴(眼窩と言います)が小さくなるためです。呼吸器官の異常があるときは睡眠時無呼吸など呼吸に影響が出てしまうこともあり、そうなると生命に関わるので大変深刻な状況となってしまいます。

またファイファー症候群では合併症として手指や足指の癒合、四肢の癒合や手足の指が短いなど、形態の異常が生じることがあります。

ファイファー症候群は3つに分類される

ファイファー症候群をもう少し詳しく調べてみましょう。ファイファー症候群は遺伝子の関与の仕方によって1型、2型、3型の3種類に分けられます。

1型は先ほど述べてFGFRの1が、2,3型ではFGFRの2がともに関わっています。

1型では知能の発達は正常または軽い発達遅延がみられます。顔面の異常は中程度から重症であることが多いようです。また指が短いなどの症状、親指が幅広く内側に偏位しているなども見られます。その他水頭症や難聴が見られます。頚椎の異常もあります。FGERの変異の違いはFGFR1が5パーセント、FGFR2が95パーセントです。

2,3型の多くは突然変異であると考えられています。また重症であることが多いのです。

2型では頭蓋骨の形が「クローバ様頭蓋」(クローバーの葉の様な形に変形する)で、眼球の突出があります。また発達遅滞があります。肘や膝の関節拘縮もみられます。拘縮とは「こうしゅく」と読み、肘や膝の関節が硬直して曲がらないということを指します。その他咽頭器官の異常、後鼻腔が狭くなったり塞がったりということもみられます。四肢の異常や水頭症、けいれん発作など様々な症状がみられます。幅広くまた短く外側に沿ってしまった親指(手足とも)も見受けられます。

3型ではやはり発達の遅滞が多く、頭蓋骨の形は「尖短頭」で眼球の突出も同じようにみられます。水頭症やけいれん、肘膝の関節拘縮、咽頭器官異常、後鼻腔のが狭い、塞がっているなどがみられます。2型と同じく手足とも幅広で短い、外側に沿った親指がみられます。2型も3型もFGFR2が100パーセントで、死亡リスクが高めのようです。

ファイファー症候群の診断方法は?

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次に、ファイファー症候群の診断方法を知りましょう。

ファイファー症候群の診断方法や検査は?

ファイファー症候群の診断方法はどのように行うのでしょうか。最近は出生前に診断ができ、出産後の治療についての方針を立てる病院もあるようです。心配な時はそういった病院を調べたり紹介してもらったりするという方法もあります。

ファイファー症候群が疑われた時は、頭蓋骨の早期癒合についてはレントゲン検査、CT検査、MRI検査、脳血流シンチグラフィー検査行われます。

「CT検査」とはコンピュータ断層診断装置(Computed Tomography)のことで略してCT検査といます。X線を360度回転させながら臓器を輪切りにしたような状態で画像を撮ります。

「MRI検査」とは磁気共鳴画像診断(Magnetic Resonance Imazing)といい、強力な磁気の力を利用して臓器や血管の状況を診断する検査です。

また「脳血流シンチグラフィー検査」とは「脳シンチ」と略して呼ばれることもあります。放射性同位元素(ラジオアイソトープ)で標識された薬剤を体内に入れ、それがどのように体内に放出されるかを画像で診断します。脳の血流を調べることができます。

顔面の様々な異常に関しては、耳鼻科や眼科での検査、CT検査、オルソパントモ、ポリソムノグラフィーなどの検査が行われます。オルソパントモとは、顎の全体を一度に見ることができるX線検査のことです。またポリソムノグラフィーは睡眠時無呼吸症候群の検査のことです。呼吸器官の形態異常で呼吸が困難になり睡眠時に呼吸ができなくなったりすることがあるためにこのような検査が行われるのですね。

呼吸困難などに関連して脊椎や咽頭の検査も行われます。その時もX線検査やCT検査、MRI検査で診断をします。

頭蓋骨が早期に癒合する病気は他の病気もあります。そのため遺伝学的検査を行い、FGFR1,2の変異も調べます。FCFRが関与していることがわかったらそれでファイファー症候群だと判断を下せるのです。

ファイファー症候群の治療方法は?

ファイファー症候群の治療方法はいつ、どのように行われるのでしょうか。

まず頭蓋骨の早期癒合に関しては頭蓋や顔面骨を広げる骨延長術などの手術がまず主体となるようです。ただごく軽い症状の場合にはヘルメットを装着するなどの治療も行われるようです。

手術の適齢時期は1歳以下で手術をするのが望ましいと言われています。また成長過程で2,3回の手術が行われる場合もあるようです。多くの症例では6ヶ月から12ヶ月までの間に最初の手術をするようですが症例によっては3ヶ月で行う場合もあり異なると言えます。

手術には2種類の方法のどちらかが行われていることが多いようです。

1つは一時的に頭蓋骨形成を行う手術で、従来から行われてきたやり方です。この手術の利点は手術が一度で済むこと、入院期間が短くなること、手術の傷をしっかり縫合するので感染の危険性が少ないということが挙げられます。欠点は出血量が多いこと(輸血が必要になることも)と、手術時間が長時間になってしまうことです。また皮膚が伸びるには限度があるため長い延長はあまりできないということが挙げられます。

もう1つの手術方法は比較的新しい手術方法です。まず最初に癒合してしまった骨を切り、延長装置を用いて1日1ミリなど、少しずつ広げていく方法です。その後延長装置を取り外します。この方法の利点は出血量が少なくてすむこと、手術の時間が短くてすむことが挙げられます。これは小さい子供には負担が少なく大変良いことだと言えます。少しずつなので長い延長がやりやすいのも利点です。欠点は2度手術をしなければならないことと、延長装置の一部が頭皮出ているため、消毒が欠かせないということです。つまり感染の危険性があるということになります。入院期間はおよそ2,3か月です。

水頭症という症状が起こっている場合にはには「V-Pシャント術」という治療が行われます。水頭症とは簡単に説明すると脳に脳脊髄液が溜まっていく病気のことです。この脳脊髄液を体内の他のところに逃す治療をV-Pシャント術と言います。

顔面骨に対してはだいたい乳児期から4歳くらいまでに前頭眼窩前進術(Front-orbital advancement)という手術が行われます。さらに眼球突出など高度な顔貌の変形に対してはだいたい5-6歳あたりで中顔面前進術(midface advancement)という処置が行われます。呼吸障害がある場合も顔面の形成手術が行われます。

また歯の矯正を行うことを見越しての手術も行われます。歯の矯正治療は、歯が永久歯に生え変わる頃に開始します。生まれつきの顔の治療をする場合は顔面の骨の成長が終わる20歳くらいまでは段階的な治療が必要となるようです。

また手指の癒着しているところは切り離す分離手術が行われるなど頭蓋骨や顔面骨のの早期癒合のために出てくる症状に合わせた様々な治療が行われることがわかりますね。

こういった治療は一度では終わらず、複数回行われることが多いようです。また症状や兆候がない軽度な場合もあり、そのような時は経過観察をします。

予後やケアなど

手術をしたり処置をしたりした後はどのような経過をたどるのでしょうか。

軽い症状の場合は保存治療や、手術で良好な経過をたどることが多いようです。

ただし重症の人は手術を受けても呼吸の障害の合併などで予後はあまり良くないこともあります。食事が自分で取れない場合は経鼻チューブで栄養をとる、呼吸障害のある場合は痰の吸引が必要だったり気管切開を行って人工呼吸器の装着などが必要になります。

症状によって人それぞれの経過やケアが必要となっています。

まとめ

注射の用意

ファイファー症候群は最初に触れたように国の難病に指定されています。難病とは症例数が少なく、また原因がはっきりせず治療法が確立されていないなどの病気で様々な難病が指定されています。

難病の治療は難病指定医が行うこととなっているので、ファイファー症候群を診てくれる病院へ行くことが大切です。難病については病院や都道府県の難病相談センターなどでよく相談することも大切なことです。

もちろん担当の医師にはしっかりと相談し、納得がいかない場合はセカンドオピニオンを受けることも重要です。また個人のHPなどで治療のことや検査のこと、悩みを綴ったサイトもあるので参考にしたり、読んだりするだけでも励みになる場合もあります。一人で悩まずにいろいろなところで相談することや、看病で疲れている家族には気晴らしをしてもらうなどの配慮も必要です。

たとえ自分がこの病気でなくても、先天性で大変治療も難しいファイファー症候群という病気が存在し、その病気で大変な思いをしている小さな子供や大人、そして家族がいるということを知っておくのも大切なことです。特に外見で大変つらい思いをし苦労している方が多いので、病気が原因であるということを知るのも重要ですね。

一日も早く治療法が確立して、治癒率が向上することが望まれますね。

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これらを読んでおきましょう。

  
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