昔から「しゃっくりが100回以上出ると、命が危ない」と言われています。たかがシャックリと思いますが、しゃっくりが2日以上続くのは、何かの病気の兆候かもしれません。
2日以上続くしゃっくりに加えて、吐き気や嘔吐があれば、「視神経脊髄炎」かもしれません。視神経炎と脊髄炎をくり返し起こす病気で、失明したり、四肢が麻痺したりします。
原因も病態も、まだよくわからないことが多い病気です。30~35歳の女性に多く発症するようです。
視神経脊髄炎の起こる仕組みや症状、診断法、治療法について、お伝えしますね。
視神経脊髄炎とは?
視神経脊髄炎(neuromyelitis optica)は略してNMOと呼ばれます。
再発と寛解(症状が収まっている状態)をくり返し、視神経炎と脊髄炎が起こり、視力障害や四肢に感覚障害や強い脱力が生じる疾患です。中枢神経の組織破壊が強く行われるため、症状も重く、回復が難しくなる場合が多いようです。
以前は、多発性硬化症の1種である「視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)と考えられていましたが、現在では、全く違う病気とわかっています。
[多発性硬化症との混同]
視神経脊髄炎は、多発性硬化症(multiple sclerosis 略してMS)の1種と考えられていました。
東洋人特有の多発性硬化症とされ、日本では「視神経脊髄型多発性硬化症OSMS」と呼ばれました。
多発性硬化症とは?
「多発性硬化症MS」とは、脳・脊髄・視神経の中枢神経に、くり返し炎症が起きる病気です。
白人種に多く発症するようです。日本人にも1万人程度の患者さんがいます。10~20代に発症することが多く、50歳を過ぎて発症することは、ほとんどありません。女性患者さんは男性患者さんの3倍もいます。
(多発性硬化症の症状)
視力障害(視力が低下する・視野の真中が見えない)、複視が起きます。
四肢、特に下肢に感覚障害(しびれや痛みなど)や運動麻痺が生じます。片側に生じることが多いようです。眼球の運動障害、記憶障害、排尿困難が起きます。平衡感覚が失われて、歩く時にふらつきます。話す時に、言葉がもつれることがあります。
症状が改善しても再発しやすく、寛解期(症状が収まり、安定している状態)と発症期をくり返し、進行性になることもあります。
詳しくは、多発性硬化症の症状とは?治療法や病気の予後を紹介!原因は何?を参考にして
(多発性硬化症の原因)
まだ不明です。ウィルスなどの感染症でも遺伝病でもないようです。自己免疫疾患と関係があるようです。
(多発性硬化症の治療)
ステロイド剤の投与で、症状が改善しますが、完治することはなく、しばしば再発します。
再発予防と、病気の進行抑制には、現在は、インターフェロン・ベータ治療が有効です。発症した早期にインターフェロン・ベータ治療を開始すると、かなり効果があります。昔は、発症して20年ほどで脳が委縮し、認知症や重度の運動障害が起きましたが、インターフェロン・ベータのおかげで、劇的に改善されています。
ただし、早期から治療を開始する必要があります。
[視神経脊髄炎NMOは、多発性硬化症MSとは別の病気]
視神経脊髄炎は、10年前までは、東洋人特有の多発性硬化症、視神経脊髄型多発性硬化症OSMSと考えられていました。それは、日本人など東洋人の多発性硬化症の症状が、重度の視神経炎による強度の視力低下と、横断性脊髄炎による下半身不随が多かったためのようです。
デビック症候群
1894年、フランスの神経内科医ユージン・デビックが、視神経脊髄炎MNOを「デビック病・デビック症候群」として発表しました。
数週間以内に、両側の視神経炎と横断性脊髄炎が連続して発症する疾患です。
日本では、単発性の場合をデビック症候群、再発がくり返される場合を視神経脊髄型多発性硬化症OSMSと区別していました。
視神経脊髄炎の診断基準の変化
1999年、アメリカのメーヨー・クリニックの研究により、視神経脊髄炎の診断基準が改められました。
- ➀視神経炎と脊髄炎があって、脳症状がない。
- ②発症時のMRI検査で、脳の異常がない、もしくは少ない
- ③3椎体以上の長い脊髄病変が見られる
- ④髄液細胞の増加が、強く認められる
これらの診断基準は、日本の視神経脊髄型多発性硬化症に、ぴったり当てはまりました。
自己抗体「アクアポリン4抗体」の発見
2004年、同じメーヨー・クリニックで、視神経脊髄炎の患者さんの血液中に、特殊な自己抗体があることが、わかりました。翌年、2005年には、その自己抗体が「アクアポリン4抗体(抗アクアポリン4抗体)」とわかりました。
ここで、視神経脊髄炎が発症する仕組み(病態)がわかってきたのです。
(自己抗体)
「抗体」とは、自分と異なるタンパク質(異物)、つまり細菌やウィルスなどが身体に侵入した時、このタンパク質に反応し、攻撃して身体の外に追い出すためにできる対抗物質です。インフルエンザウィルスに対する抗体をつくるために、予防注射をします。
「自己抗体」とは、身体に侵入した異物ではなく、自分自身の細胞、または自分の組織細胞を敵とみなして反応する対抗物質です。免疫システムが異常を起こしているのです。
[視神経脊髄炎の発症する仕組み]
視神経脊髄炎の病態は、まだよくわかっていません。「病態」とは、その疾患の原因や発生機序(どのようにして発生するか)のことです。
しかし、視神経脊髄炎の患者さんが、アクアポリン4抗体という自己抗体の検査で陽性となることがわかると、その病態機序が少し解明されたようです。
アクアポリン4抗体
ヒトの血液中には、水チャンネルというタンパク質があり、全身に分布しています。水チャンネルとは、水分の通り道です。水チャンネルの1つにアクアポリン4というタンパク質があります。
このアクアポリン4を敵とみなして反応する自己抗体がアクアポリン4抗体です。
アクアポリン4抗体ができると、中枢神経を構成するアストロサイトという細胞が障害されるため、視神経脊髄炎が発症すると考えられます。
自己免疫と関係がある
(免疫システム)
ヒトには、体外から侵入したウィルスや細菌などのタンパク質(異物)や、体内で発生する癌のような異形細胞を発見して、攻撃・排除する能力があります。免疫作用とか免疫システムとかいいます。免疫力とか抵抗力ということもあります。
この免疫作用が過剰に働くようになると、アレルギーが生じます。
(自己免疫疾患)
免疫システムが狂ってしまうと、敵か味方か区別できなくなり、自分自身の細胞や組織を攻撃するようになります。これを「自己免疫疾患」といいます。「自己抗体」ができるのも、その1つです。
自己免疫疾患には、特定の臓器を攻撃する「橋本病(慢性甲状腺炎)」「バセドウ病」「悪性貧血」などと、特に攻撃する臓器が定まっていない「全身性エリテマトーデス」や「関節リウマチ」などの膠原病があります。
視神経脊髄炎の患者さんの多くが、重症筋無力症・橋本病・シェーグレイ症候群など自己免疫疾患を併発しています。そのため、自己免疫と病態が関係していると、考えられます。
多発性硬化症よりも中枢神経系の破壊が大きい
多発性硬化症では、中枢神経系の髄鞘やオリゴデンドロサイトが障害されます。視神経脊髄炎では、髄鞘とともにアストロサイトが障害されるために、中枢神経系がより強く破壊されます。
そのため、多発性硬化症より重症化することが多く、難治性傾向が強くなります。
視神経脊髄炎の症状
視神経脊髄炎の初期症状は、しつこいシャックリと吐き気、嘔吐です。それに続いて、視神経炎と脊髄炎が起こります。
視神経炎は両眼に起こりやすく、脊髄炎は横断性脊髄炎が多くなります。
30代の女性に発症することが多く、患者さんの男性:女性の比率は1:9とか1:10とか言われます。35歳頃が発症のピークですが、高齢者に発症することもあります。
寛解と再発をくり返しますが、再発すると、重篤化する傾向があります。
[視神経炎の症状]
視神経は眼球の後ろにあり、眼が捕らえた情報(光刺激)は、視神経を通じて大脳の視覚中枢に伝えられます。視神経炎とは、この眼球後方の視神経に炎症が起き、視覚機能障害が生じる疾患です。
両眼に起きやすく、進行性・再発性があり、重篤化する傾向が強いようです。失明する可能性があります。再発すると、いきなり失明することもあります。
髄鞘(ミエリン鞘)
視神経を取り囲む髄鞘に炎症が起きて、視神経機能に障害が起こります。髄鞘の炎症を「脱髄」「脱髄疾患」「髄性疾患」と言います。
髄鞘とは、神経細胞を取り巻く脂肪性の絶縁物質です。ミエリン鞘ともいいます。髄鞘はグリア細胞によって形成されています。グリア細胞は、神経に栄養を与えたり、神経を保護したりしています。髄鞘のおかげで、神経伝達を高速で行うことができます。
髄鞘が障害されて、髄疾患を起こすと、神経細胞が損傷されます。神経伝達速度が遅くなり、いろいろな神経症状が引き起こされます。
眼球運動痛
眼球を動かす時に、眼の奥に痛みを感じます。あるいは、眼球の後ろの方に、いろいろな程度の痛み(チクチクする、ジンジン痛む、ズキズキするなど)が生じます。
眼に圧迫感を感じることがあります。
視力低下
眼の奥の痛みが生じてから、数日後、片目あるいは両眼の視力が急激に低下します。視力の低下は、数日から1週間くらいの間に急速に進行します。視神経脊髄炎の場合は、両眼の視力低下が同時に進行することが多いようです。
視野の中心部が見えなくなります(中心暗点)。視野の下半分あるいは上半分が見えなくなります(水平性半盲)。視野全体が霧がかかったようにぼやけて見えることもあります。また、視野の1部からだんだん欠けていくこともあります。
髄鞘炎(脱髄)しているため、入浴したり、運動したりして、体温が上昇すると、よけいに見えにくくなります。
重篤化すれば、失明する可能性があります。
視神経乳頭の変化
多発性硬化症や視神経脊髄炎の初期症状として、視神経炎が起きます。その時は、眼底検査をしても、視神経乳頭(視神経の眼球に近い端)は正常で、腫脹(腫れ)は認められません。しかし、病変は、視神経から脊髄、大脳の神経線維組織(白質)にまで及ぶので、重症化することが多く、再発を繰り返します。
他の原因で起こる視神経炎では、急性期には視神経乳頭の腫脹、慢性期には視神経に乳頭の萎縮が見られます。
[横断性脊髄炎の症状]
脊髄の一部が横の方向(横断面)に炎症を起こします。脊髄の炎症のため、髄鞘(ミエリン)が損傷・破壊されます。中枢神経系が損傷し、脊髄内の神経と身体の他の部分(主として四肢)との連絡が途絶えてしまいます。脱髄疾患です。
痛みと感覚異常
突然、背中や腰が痛くなります。腰や腹部の周囲に帯状のこわばりを感じます。
その後、数時間~数日以内に、爪先や脚に「チクチクする・しびれる」という異常な感覚が生じます。同時に、腕や脚に脱力感・筋力低下が起こります。両足に起こることが多いようですが、両腕に生じることもあります。
脊髄機能の喪失
尿意切迫感(尿意を強く感じる)がありますが、排尿が困難になります。
その後、重症化が進むと、両足が麻痺します。車椅子が必要になることもあります。両足や両腕の感覚が消失することもあります。強いしびれがあります。
膀胱と腸管の制御機能が失われます。尿閉・排便制御ができなくなります。
鋭い痛みがある
腰の周りに集中して鋭い痛みがあります。胴体や脚・腕の先に鋭い突き刺すような痛みが続きます。患者さんによっては、衣服がこすれたり、指が触れたりするだけで、疼痛や非常な不快感が生じます。
こむらがえりなど有痛性筋痙攣(きんけいれん)・有痛性強直性痙攣が生じます。
[脳性症状]
中枢神経系に損傷が及ぶので、視床下部障害や意識障害が起こります。
視床下部障害
過眠症が起き、夜の睡眠時間に関係なく、日中眠り込む時間が長くなります。
SIADHが起きます。下垂体からの抗利尿ホルモンの分泌調節機能が失われ、血液中の水分が多くなっても、排尿が十分に行われなくなります。血液中に水分が貯留され、血中ナトリウムの濃度が低下して(希釈性低ナトリウム血症)、意識障害が起きます。
下垂体から分泌されるプロラクチンというホルモンが分泌過多になり、乳汁分泌が起きます。
意識障害
物事を正しく理解したり、外部からの刺激に対する反応が鈍くなったり、反応しなくなったりします。
[しゃっくりに要注意]
視神経脊髄炎の初期症状、あるいは、再発の前兆とも言えるのが、しつこいしゃっくりと吐き気、嘔吐です。しつこいしゃっくり・吐き気・嘔吐が48時間以上続くことを、「難治性吃逆(きつぎゃく)・嘔気(おうき)(intractable hipcup and nausea )IHN」といいます。
IHNとともに、異常な食欲不振が起こります。
視神経脊髄炎特有の初期症状・再発の前兆
このしゃっくり・吐き気・嘔吐・異常な食欲不振は、視神経脊髄炎の前触れまたは初期に起こりますが、多発性硬化症では、まれです。
視神経脊髄炎は再発を繰り返しますが、再発する時の前兆として生じます。しゃっくりが起きる時は、上位頚髄や延髄に再発病変が起きています。
しゃっくりから急性呼吸不全へ
視神経脊髄炎が進行すると、脳幹脊髄炎を起こします。病変が脳幹から延髄まで広い範囲に起こります。
再発してしゃっくりが起きると、延髄嘔吐中枢に病変が広がっている可能性が高くなります。延髄嘔吐中枢の近くには呼吸中枢があるので、急激に呼吸不全が起きることがあります。
脳や脊髄はバリア機能が強く、簡単にウィルスや細菌など異物が侵入できないようになっています。しかし、延髄の嘔吐中枢は比較的バリアが弱く、アクアポリン4抗体などが侵入しやすくなっています。しかも、嘔吐中枢にはアクアポリン4が多く存在するので、アクアポリン4抗体が攻撃を開始し、炎症が起こります。炎症が広がって、呼吸中枢まで巻き込んでしまうのです。
しつこいしゃっくりは、お医者さんに相談する
しゃっくりがしつこく、食べたり飲んだりすることが難しく、吐き気や嘔吐があったら、できるだけ早くかかりつけのお医者さんを受診することをオススメします。
視神経脊髄炎の患者さんは、しつこいしゃっくりに注意する必要があります。
視神経脊髄炎の診断と治療
視神経脊髄炎は、10年ほど前までは多発性硬化症の1種である視神経脊髄型多発性硬化症と考えられていましたので、今でも、識別が難しいようです。
視神経脊髄炎は中枢神経系の疾患ですから、完治することは極めて難しく、後遺症も軽いものではありません。難治性疾患の1つです。寛解と再発をくり返し、再発すると重篤化します。そのため、治療も症状緩和とともに、再発抑制が主になります。
[視神経脊髄炎の診断]
かかりつけのお医者さんに相談して紹介状を書いてもらい、脳神経内科など脳神経系の専門医のいる総合病院・大学病院を受診します。
国立の専門病院兼研究所として、多発性硬化症センターや神経医療研究センターがあります。
MRI検査と髄液検査
多発性硬化症は、中枢神経系にくり返し炎症が起きる脱髄疾患です。脱髄斑という病変が多発します。MRI画像に2つ以上の病変が認められます。1ヶ月ほど空けてから、再度MRI画像でダメージを確認します。そして、その神経のダメージが他の脳神経疾患に由来するものではないことを証明した後、多発性硬化症と診断します。
視神経脊髄炎では、MRI検査で、脊髄に長い病変が見られますが、脳に病変が見られることは少ないようです。
髄液検査をして、オリゴクローナルバンドの測定をします。視神経脊髄炎では、オリゴクローナルバンドは陰性です。多発性硬化症では陽性になります。
アクアポリン4抗体の検査
視神経脊髄炎では、アクアポリン4抗体は陽性になります。アクアポリン4抗体が陽性とわかった段階で、視神経脊髄炎の治療を開始します。
[視神経脊髄炎の治療]
治療は急性期・回復期・再発抑制に分けて考えます。視神経脊髄炎は、多発性硬化症と違って、進行性になることはありませんが、再発すると重篤化し、生命に関わる危険な状態になります。疾患活動性(疾患の進行・症状の変化など)をよく観察しながら、治療を進めていきます。
急性期
視神経脊髄炎が発症し、急激に病状が進行悪化する時期(急性増悪期)は、ステロイドを投与します。水溶性ステロイドを点滴で静脈に注入します。1日1回3日~5日を1クールとして行います。これを、「ステロイドパルス療法」と言います。
患者さんの様子を見ながら、もう1~2クール追加します。この時は、必ず数日間空けます。
ステロイドパルス療法が有効でない場合は、血液浄化療法の1種である血漿交換療法を行います。血漿交換療法とステロイドバルス療法の併用は、かなりの治療効果を上げます。
ステロイド剤を長期間投与すると、糖尿病を発症したり、感染症にかかりやすくなったり、いろいろな副作用が起きます。お医者さんの説明を聞いて、治療計画を相談することをオススメします。
回復期
急性期を過ぎ、回復期に入ると、リハビリテーションを開始するとともに、症状を緩和するような治療を行い、患者さんのQOL(生活の質)の向上を図ります。
視神経脊髄炎の患者さんは、多発性硬化症の患者さんより後遺症が重くなるようです。有痛性強直痙攣や手足のツッパリ感、排尿困難などを緩和する薬剤を投与します。しかし、痛みや強いしびれ、便秘などは、なかなか改善できないようです。
再発抑制
視神経炎が再発すると、急に失明することがあります。このように、再発すると、急激に症状が悪化し重篤になることが多いので、再発抑制に全力を挙げます。疾患の再発を抑制したり、進行を遅くしたりする働きをする薬剤を「病態修飾薬」といいます。
多発性硬化症の再発抑制には、インターフェロン・ベータが有効ですが、視神経脊髄炎には効果がはっきりしません。むしろ、インターフェロン・ベータを投与後、早い時期に大脳に広範な病変が起きることがあります。
アクアポリン4抗体という自己抗体が視神経炎や脊髄炎を起こすのですから、早くから免疫抑制剤を投与する免疫抑制療法を行います。また、経口ステロイド剤が再発抑制に有効です。
まとめ 視神経脊髄炎は再発抑制が大事
視神経脊髄炎は難治性の中枢神経系疾患です。重症の視神経炎と脊髄炎が再発をくり返し、中枢神経を損傷します。
男性より女性に多い疾患です。発症のピークは30代半ばですが、高齢者に発症することもあります。
原因など病態はまだ不明な点が多いようです。10年ほど前までは、視神経脊髄炎は多発性硬化症の1種と考えられてきました。しかし、視神経脊髄炎の患者さんの血液中にアクアポリン4抗体という自己抗体が存在することがわかり、別の神経疾患であると認識されました。
自己抗体ができること、他の自己免疫疾患を併発することから、自己免疫と関係があると考えられています。
症状は、しつこいしゃっくり・吐き気・嘔吐から始まります。続いて、眼の奥に痛みが生じ、急激に両眼の視力が低下します。視野にも異常が起きます。四肢にしびれや痛みが生じ、感覚が低下します。両足が麻痺したり、排尿困難になったりします。再発をくり返します。再発すると、失明したり、呼吸不全になったり、急速に重篤化することが多いようです。
比較的症状の落ち着いている寛解期でも、後遺症は多発性硬化症より重症のようです。
視神経脊髄炎も多発性硬化症も、髄鞘が損傷する脱髄疾患ですから、症状がよく似ていて、識別が難しいと言われます。血液中のアクアポリン4抗体の検査が陽性であれば、視神経脊髄炎と診断して、その治療を始めます。
急性増悪期は、ステロイドパルス療法を行います。その効果が不十分であれば、血漿交換療法を併用します。回復期は、できるだけ後遺症を緩和するようにします。
大事なことは再発抑制です。ステロイド経口薬と免疫抑制剤を投与すると、再発抑制に効果があるようです。
視神経脊髄炎は難治性の病気ですが、現在も、臨床研究が続けられ、新薬もできています。つらい症状が多いですが、決して諦めず、治療を続けることが、改善への道を拓きます。
視神経脊髄炎も早期発見・早期治療が何より大事です。しゃっくり・吐き気・嘔吐・食欲不振に眼の奥の痛みが加わったら、すぐにお医者さんに診てもらってください。かかりつけのお医者さんに紹介状をもらい、神経内科・脳神経内科など専門医のいる病院で診察を受けてください。しゃっくりは、脊髄炎再発の合図でもあります。
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