保存性が高く、手ごろな価格で使いやすい玉ねぎ。血液サラサラというイメージが強い野菜ですが、その所以は、玉ねぎに含まれるイオン化合物という成分にあります。
実際の効果や食べ方のちょっとした注意点、イオン化合物だけでない玉ねぎの薬効についてご紹介します。
生でよし、加熱してよしのオールマイティな玉ねぎをもっと活用して、毎日の食事をもっと健康的にしましょう。
玉ねぎに含まれるイオン化合物のすごい効果
玉ねぎは、ビタミンやミネラルといった栄養素が特に多い野菜ではありません。しかし特筆すべきなのはイオン化合物を含むこと。玉ねぎ独特のツンとした香りや辛み、切ったときに涙が出る原因となる刺激物が、イオウ化合物と呼ばれる成分です。
イオウ化合物は玉ねぎの他に、ニンニクやニラなど一部の野菜に含まれ、抗菌作用や血栓を溶かして血行を促進するなどの働きなどで知られています。
また、肉や魚料理の臭み消しに玉ねぎが効果的なのは、このイオン化合物が加熱によりメルカプタンという物質になり、肉や魚と反応してにおいを消してくれるからです。
イオン化合物にはいろいろな種類がありますが、玉ねぎに含まれるものは主に硫化アリルと硫化プロピルの種類です。
血液サラサラ効果で成人病予防! 硫化アリル
硫化アリルには、血液が固まるのを抑制したり、血中の脂質を減らしてくれる効果があります。血液が固まるのを防ぐことで血液動脈瘤や動脈硬化などを予防し、血中の脂質が減少することで血管の老化を防ぎ、高血圧や糖尿病を予防します。
さらに硫化アリルは、消化液の分泌を促して代謝を促進させます。玉ねぎがダイエットにもよいとされるのは、この代謝促進効果によります。
また、ビタミンB1の吸収をよくする働きがあります。ビタミンB1は疲労回復効果のあるビタミンです。硫化アリルがビタミンB1の吸収をよくすることで、ビタミンB1不足による疲れや食欲不振、不眠などの症状を予防することができます。
夏バテなどのときには、ビタミンB1が多く含まれる豚肉やうなぎなどと、玉ねぎをいっしょに食べるようにすると効果が高まります。
硫化アリルは水溶性の成分なので、水にさらすと溶け出してしまいます。玉ねぎの辛味をやわらげるために、よく水でさらすことがありますが、硫化アリルの効果を十分に得たい場合は、切ったらそのまま食べるのがおすすめです。
代謝を促進、さらに血液サラサラ効果も! 硫化プロピル
玉ねぎの辛みは硫化プロピルという成分によっています。硫化プロピルは糖の代謝を促進し、血糖値の上昇を抑制する効果があり、糖尿病や高血圧などの予防に効果があるといわれます。
硫化プロピルは変化しやすい成分で、空気に触れて酸化するとトリスルフィドという成分に、さらに長時間加熱することでセパエンという物質に変化します。
硫化プロピルを多く摂りたい場合は、生の玉ねぎを切ってすぐにサラダなどにして食べるようにしましょう。硫化アリルと同様に水溶性の成分なので、水にさらさないことも大切です。
硫化プロピルが酸化したトリスルフィドを長時間加熱した際に出来るセパエンは、血中の中性脂肪やコレステロールの値を低下させてくれる働きがあります。それにより動脈硬化や糖尿病、高血圧、血栓の予防に効果があります。
他にもあります 玉ねぎの有効成分
抗酸化作用があるケルセチン
ポリフェノールの一種で、抗酸化作用が非常に強いことで知られています。呼吸によって体内に取り入れられる酸素のうち一部が活性酸素となって、健康な細胞を攻撃し炎症や老化の原因になりますが、抗酸化作用により活性酸素を除去することができます。
また、肝臓や腎臓の機能を高めてくれたり、花粉症や喘息などのアレルギー症状を抑制する働きがあるともいわれています。
ただ、ケルセチンは玉ねぎの身よりも皮の部分に多く含まれています。無農薬栽培の玉ねぎが手に入ったら、よく洗って皮ごとスープのだしをとったり、市販されている外皮の粉末などを利用してもいいでしょう。
紫玉ねぎにはアントシアニンが豊富
紫玉ねぎには、ブルーベリーやナスに豊富に含まれるポリフェノールの一種であるアントシアニンという色素が多く含まれます。アントシアニンは眼精疲労に効果があることが知られていますが、強い抗酸化作用もあります。
普通の玉ねぎと同じように紫玉ねぎにもケルセチンが含まれていますので、さらに強い抗酸化作用が期待できます。
また、アントシアニンには脂肪の蓄積を抑えたり、花粉症の原因となるヒスタミンを減少させるなど、さまざまな効果が期待されています。
カリウム
生の玉ねぎ100gに含まれるカリウム量は150mg。野菜の中で高いほうではありませんが、幅広い料理に使え、加熱すると一度に大量に食べられるので、身近なカリウム摂取源として期待できます。
カリウムは、ナトリウム(塩分)の排泄を促し、体液濃度のバランスを調整することで、血圧の上昇を抑える働きがあります。
玉ねぎの種類と旬
玉ねぎの種類は大きく分けて2種類あります。一般的に流通している辛い玉ねぎは、黄玉ねぎと呼ばれます。もうひとつはサラダオニオンとして知られる甘味が強く、辛味の少ない白玉ねぎです。
その他に紫玉ねぎや小ぶりなペコロス、フランス料理などでおなじみのエシャロットも玉ねぎの一品種です。
黄玉ねぎは、収穫の後に乾燥させてから出荷されますが、収穫の後乾燥させずにすぐに出荷されるものが新玉ねぎと呼ばれます。葉玉ねぎは、春ごろに若い黄玉ねぎの葉を落とさずに出荷されるものです。
玉ねぎは日本全国で栽培されており、ぞれぞれに種まきと収穫の時期が異なるのに加え、乾燥後に出荷されるものがあるので、店頭には1年を通して旬の玉ねぎが並んでいるといってもよいでしょう。ただし、新玉ねぎは春が旬になります。
玉ねぎの選び方と保存方法
玉ねぎは表面の皮がしっかりと乾燥して、カビなどのついていないものを選びましょう。持ったときに、しっかりと重みのあるものが新鮮でみずみずしい玉ねぎです。新玉ねぎも持ったときに、しっかりと重みがあり締まっているものが新鮮なものです。
一般的な黄玉ねぎは乾燥されて保存性を高めた状態で売られています。湿気を防ぐために冷蔵庫には入れずに風通しがよい光の当たらないところで保存しましょう。ただし、新玉ねぎは、保存性が一般の玉ねぎに比べて悪いので、冷蔵庫で保存するのがおすすめです。
半分に切ったものや皮をむいたものも、やはりラップか保存袋に入れて冷蔵庫で保存しましょう。
玉ねぎのおいしくて体によい食べ方
どんな食材ともよく合って、幅広い調理法がある玉ねぎ。いつも作っている料理でも、栄養素を意識してちょっとしたコツを覚えるだけで、さらにおいしくて体にもよい料理になります。
サラダやマリネに
硫化アリルを効率的に食べたい場合は、やはり生のまま、水にさらさずに食べるのがおすすめです。水にさらさずにしばらく置いておくだけでも辛味がやわらぎます。
サラダに利用する場合は、コーンなどの甘味の強いものといっしょに食べることで辛味の苦手な人でも食べられる工夫をしましょう。
また、魚などといっしょにマリネにするのもおすすめです。酢やレモン汁の効果によって辛味が気にならなり、さらにかさも減るので生の玉ねぎをたっぷりと食べることができます。
辛味が気にならない人は、もっと生の玉ねぎを活用しましょう。みじん切りにした玉ねぎをカレーなどのトッピングなどに使うのもひとつの手。また、生のまますりおろしたものをドレッシングに加えると、風味とうまみが増します。
豚肉といっしょに
野菜炒めなど、豚肉と玉ねぎをいっしょに炒めることは結構ありますね。これは実は、田面木の薬効を活かすために、とても効果的な食べ方です。
玉ねぎに含まれる硫化アリルはビタミンB1の吸収をよくする働きがあるので、豚肉に豊富に含まれるビタミンB1を余さず吸収することができます。
さらに玉ねぎにはプロテアーゼと呼ばれる酵素が含まれており、肉のたんぱく質をやわらかくする効果があります。生の玉ねぎをすりおろした中に肉を1時間程度漬けてから焼き、すりおろした玉ねぎもソースに利用しましょう。プロテアーゼは消化を助けてくれるので、肉を食べても胃もたれしにくくなります。
飴色玉ねぎをスープやカレーに
玉ねぎは硫化アリルなどの辛味成分のため、辛い野菜というイメージがありますが、実は糖分もたっぷりと含まれています。弱火で焦がさないようにじっくりと炒めた飴色玉ねぎは、カレーの隠し味として人気がありますが、加熱によってかさが減り、たっぷりと玉ねぎを食べることが出来る点からも、おすすめの方法です。
飴色玉ねぎは、うまみが凝縮されているので、カレーだけでなくいろいろな料理に利用できます。オニオンスープやシチューにはもちろん、ハンバーグやミートソースなどに加えることで、おいしさと栄養の両方がアップします。
飴色玉ねぎを手早く作るためには、薄切りにした玉ねぎを一度冷凍してから使うのがおすすめです。冷凍によって玉ねぎの水分が失われるので、時間をあまりかけずに飴色玉ねぎを作ることができます。さらに飴色玉ねぎは冷凍できるので、一度に作って小分けにして冷凍しておけば、いつでも料理に利用することができます。
まとめ
あまりにも身近で、日ごろ意識せずに利用している玉ねぎですが、独特の辛味と風味のもとであるイオン化合物には、体によい効果がたっぷりと含まれています。
血栓を予防し、血中の糖や脂質を減らすことで血管を守り、動脈瘤などの危険な病気や糖尿病、高血圧といった活習慣病を予防してくれます。さらに代謝を促進し、疲労回復効果のあるビタミンの吸収を助けてくれるので、いつも元気で若々しくいるためにも、毎日たっぷりと食べたい野菜です。
生や加熱など、調理法の違いによって効果的に摂れる成分が異なるので、調理の際の参考にしてください。