今年も風邪の流行る季節がやってきましたね。この時期、体調を崩して寝込むことは仕事にも勉強にも影響するためできたら避けたいところです。
この風邪を予防する食材として昔からにんにくが重宝されてきたのをご存知ですか?その効果は2000年代初頭から科学的な研究の成果としても実証されています。
果して、にんにくには風邪を予防するどんな効果があるのでしょうか?そしてどうやって調理して食べればもっとも効果的なのでしょう?
本稿ではにんにくと風邪予防の関係を詳しく見ながら、美味しくそしてしっかりと身体に効くニンニクの効果的な摂り方について学んでいきましょう。
ニンニクの免疫力を高めるその特徴
真っ白で半月状の形、そしてあの特有の匂いはニンニク(garlic:ガーリック)の最大の特徴でもあります。そんなニンニクには非常に強い抗酸化・殺菌作用と抗ガン作用があることをご存知でしたか?
ニンニクは滋養強壮剤として古くから古代文明を支える貴重な食物、そして薬としても重宝されてきました。
ニンニクの歴史
中央アジア、現在のキルギス共和国の辺りがにんにくの原産地と言われています。そこから東西に伝わり紀元前3200年頃には古代エジプトで栽培され食されていたとの記述があります。
古代エジプトでは紀元前2900年頃クフ王のピラミッド建設にあたった労働者の貴重な栄養源として食されていた歴史があり、実際ピラミッドの内部には労働者がにんにくを食べている絵とその食した全総量が記されています。
またツタンカーメンの墓からも「にんにく」が発見されていて、かのクレオパトラも自身の滋養強壮剤としてまた美容・健康効果も高いことから好んで食していたといった説もあり、身体への効果が絶大な食物として古よりその高い効果が認められていたのです。
実は食材としてだけでなくその高い薬果作用に注目していた歴史もあり、なんと現存する最古の医学書「エーベルス・パピルス」にその効果が掲載されています。
にんにくの成分
ニンニクはハーブ等と同じ香味野菜の一種です。野菜なので元々カロリーはほとんどありません。水分を除くと主成分はタンパク質と炭水化物で構成されています。
にんにく(生)には100gあたり換算でビタミンB6、ビタミンB9(葉酸)、モリブデン(ミネラル類)、その他ビタミンB1、カリウム、銅、アルギニン、水溶性食物繊維が非常に多く含まれています(「日本食品標準成分表2010文部科学省」参照)。
ビタミンB1は疲労回復に効果的なビタミンです。ニンニクの「非栄養性機能物質」のひとつ「アリシン」がこのビタミンB1と結びついて身体を動かすエネルギーを生産します。ニンニクが夏バテや冬場の免疫力アップに欠かせない要素ということも頷けますね。
様々なニンニクの効果
栄養素そのものとしての効果もさることながら、ニンニクは調理・加工処理する段階で生まれる成分にも様々な効能があることをご存知でしょうか。ニンニクを食すことで起こる身体への効果をみていきましょう。
疲労回復・滋養強壮
ニンニクを語る上で欠かせない形容が「精力のつく・・・」という言葉ではないでしょうか。精力とはいわば粘り強さであり、疲れないこと、あるいは早期の疲労回復を意味しますが、ニンニクにはこの疲労回復を促進するための成分がふんだんに含まれています。
あの独特の臭いの成分である「アリシン」が、ニンニクの栄養素であるビタミンB1と結合することでできたアリチアミン(活性持続性型B1)と言われる物質がそのひとつです。
B1単体よりさらに体内に取り込まれやすく、いわゆるハイブリット型ビタミンB1といってもいいでしょう。また血中に留まる時間も大幅に長くなり、糖代謝が格段に高まることで疲労回復やスタミナアップが望めます。
このアリシンには他に殺菌・抗菌・抗ウィルス作用があり風邪の予防効果だけでなく、近年は複数のインフルエンザウィルス予防としてもその効果が認められています。
精神安定の担い手
ビタミンB1のもう一つの役割として「鎮静・精神安定化」作用に効果があることが立証されています。アリシンと結合してアリチアミンとなったハイブリット型ビタミンB1はその鎮静・安定化作用がさらに高められることから多忙でストレスフルな毎日を送る現代人にとっては欠かせない栄養素といえるでしょう。
B1の不足はイライラ感を高め時にはパニックを引き起こす場合もあります。また疲労感・倦怠感、そして記憶の低下や抑うつ症状を呈する場合もあり、人間が生活する上で悪影響を及ぼします。
こういった精神症状は実は近年少なからず報告されており、その原因が過度のアルコール摂取やジャンクフード等の栄養過多によるものです。特に辛抱しきれずにすぐキレる行動や家庭内暴力等への影響が懸念されています。
冷え症・血行改善
温まりやすい身体、あるいは元々体温が高い身体は免疫機能が高く風邪も引きにくいと言われています。冷えや血行不良は免疫力が低下する原因ともなるため是非、しっかりした体温調節ができ保温効果の高い身体を維持したいものです。
この冷え症に効果的なのがニンニクの「非栄養性機能物質」のひとつである「アリイン」です。アリインはB1と結合してハイブリット型B1を形成する硫黄化合物成分「アリシン」の素となる物質です。
肝臓での脂肪代謝を高めると共に脂肪燃焼効率を上昇させます。抗酸化・抗菌・殺菌作用の他、血液をサラサラにしたり、末梢血管を拡張させ発汗作用も促します。
アンチエイジング
ニンニク成分であるジアリルジルスフェイドが老化防止に役立つことは近年大変注目されています。老化の原因とされるフリーラジカル(活性酸素)は喫煙・日常ストレス・紫外線等で細胞が酸化する現象と言われていますが、ジアリルジルスフェイドを筆頭とする硫黄化合物が細胞の酸化を防いでくれます。
ニンニクにはこの硫黄化合物の他にポリフェノール等を含む15種類以上の抗酸化物質も含まれていることから高いアンチエイジング効果が期待できます。
風邪に効果のあるニンニクの非栄養性機能物質
ニンニクは生のままだとほとんど匂いません。ニンニク特有のあの独特の匂いは切ったりすり潰したりしたときに出てくるものです。
実はこの匂いや辛み成分はニンニクを調理・加工処理する段階で科学的成分変化が起こり「非栄養性機能物質」と呼ばれる成分が生成されることでニンニクの栄養価を最大限に高めてくれるのです。
ニンニクのこの成分は免疫機能を大幅に向上させ体内に入ってくるウイルスへの対抗性を高める働きがあります。昔から「ニンニクは風邪に効く!」と言われる所以がそこにあります。
ニンニクに含まれる「非栄養性機能物質」には【アリイン・アリシン・アリチアミン・アリイナーゼ・メチルアリルトリスルフィド】の5種があります。
アリイン
アリインはアリシンの素となる含硫アミノ酸の一種で「メチオニン、システイン、シスチン」と同様、すぐれた抗酸化作用を持ち健康な体づくりや、風邪のウイルス等の様々な病気予防には欠かすことができない成分です。またニンニク特有あの匂いの大素ですが、アリイン自体には匂いはありません。
体内に有害物質があればそれを排泄し、解毒することで美肌効果も認められています。さらに脂肪燃焼効果、糖代謝をアップするビタミンB1を吸収する働きや、食欲増進、抗酸化・抗菌作用等にも効果があります。
アリシン
ニンニクが「精力がつく」とか「パワーの源」等と言われる所以はこの「アリシン」にあります。ニンニクには特有の匂いがありますがその成分が「アリシン」という物質です。にんにくパワーはこのにおいの中に含まれているのです。
辛味有用成分でもあるアリシンは強い殺菌力があり免疫力を格段に高めてくれます。がん予防、スタミナ補給、血栓予防の効果も期待できます。
アリシンを加熱してできる「スコルニジン」には特に強力な強壮効果があり、特に体内へ取り込まれた栄養素を完全燃焼させてエネルギー効率を高めたり、ホルモン系に働きかけてさらなる精力の増進を促す効果が認められています。
アリチアミン
おそらく多くの人が知っている○○ドリンク、「タウリン1000mg配合!」等と謳われている商品ですが、あのスタミナドリンクに含まれているのがこの「アリチアミン」という成分です。
アリチアミンはニンニクの匂いの素となるアリシンとビタミンB1が結合してできる物質です。ビタミンB1単体では水溶性で熱に弱いため、加熱処理すると1/3から半分が失われてしまうのに対し、このアリチアミンは損失が最小限に抑えられるだけでなく、その吸収率が大幅にアップします。
ビタミンB1は体内に取り込んだ糖がエネルギーに変わる際に使われますが、もしB1が不足してしまうと糖が不完全燃焼を起こし、余った分は体外に尿として出されます。
しかしアリチアミンになっていれば腸で再吸収された後、肝臓に貯蔵され、B1としてエネルギー転換のために再利用されるのです。アリチアミンはB1単体での摂取に比べ格段にエネルギー効率的を高めスタミナアップや疲労回復に役立つ成分といえるでしょう。
アリイナーゼ
生のニンニクに含まれる酵素をアリイナーゼといいます。酵素とは例えば体内で起こる物質Aと物質Bを組み合せてまったく違う物質Cを作るときに使われる触媒(生体で起こる化学反応を早める働きのある仲介役)のことです。
ニンニクを切ったりすり潰したりすると細胞が破壊されて出てきたアリイナーゼがアイリンに作用して辛み成分のアリシンがつくられます。アリイナーゼはニンニクの刺激成分であるアリシンを生成するための酵素なのです。
メチルアリルトリスルフィド
下を咬みそうな名前ですが、この生成物にもしっかりとした役割があります。
メチルアリルトリスルフィドはニンニクの匂い成分であるスルフィド類に属します。このスルフィド類は血小板機能抑制作用があり、脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化等の血管内での血液凝固予防に寄与する効果が期待されています。
また免疫細胞の一種であるリンパ球の働きを高め免疫力強化の一翼も担っているのです。ニンニクの免疫機能亢進はウィルスをただただ食べてしまうだけという「自然免疫」と、次回遭遇したときに生かせるようウィルスの特徴を記憶し適応させて沢山抗体を作らせる「獲得免疫」とに分けられます。
この自然免疫と獲得免疫の2つでウィルスを攻撃することで細胞の破壊を防いでいるのです。
なぜ風邪を引くのか?
冬になると風邪を引くのはどうしてなのでしょうか?その仕組みを知れば風邪にならない対策も立てやすくなります。
身体を温めたり、乾燥を防ぐと風邪になりにくいと言われ我々は予防法としてそれらを実践していますが、どうしてそうなるのか!を考えたことはあまりないかもしれません。
ウイルスを知ろう!
人が住む地球には空気がありますが、この空気中にはウイルスやバクテリア等の“病気のもと”がたくさん存在しています。我々が空気を吸って生きていることから、これらのウイルスやバクテリアは呼吸や食事によって簡単に体内に入ってきます。
実は風邪の原因のほとんどはウイルス感染によるものです。この時、過労や睡眠不足、ストレス、適切な栄養がとれていないと、体力が落ちて抵抗力が下がり逆にウィルスの増殖が勝ってしまうことから風邪を引くというわけです。
健康な時はどんなにウイルスが入ってきても身体にとっては問題になりませんが、免疫力が落ちている時はちょっとのウイルスでもその体内増殖によって風邪が広がってしまうわけですね。
免疫システム
風邪のウィルスは現在わかっているだけで200種類以上あります。200種類もあるのだからすべてのウィルスに身体が抵抗できるかと言えばそうはいきません。200種類もある別々のウィルスに対する抗体ができないわけですから、例え健康な人でも年に数回は風邪を引く、または風邪の症状がでてもおかしくはないのです。
因みに冬になると風邪を引きやすくなるのは、風邪ウィルスが低温・乾燥した環境を好み増殖しやすくなるからです。人間のほうも空気の乾燥や寒さで鼻やのどの粘膜の状態が変化し抵抗力が弱まり増殖したウィルスが入りやすくなるのです。
ウィルスが鼻で増えると鼻炎で鼻が詰まったり鼻汁がでたり、気管支で増えると気管支炎となり咳が止まらない等の症状を呈します。胃や腸で増えれば胃腸炎となりお腹の痛みを訴えたります。
ニンニクの調理法に一工夫
免疫力を高め風邪の予防策としてニンニクの効果を最大限に高めるためには、調理法にひと工夫を加えるとよいでしょう。
「免疫力アップ間違いなし」のニンニク調理法に迫ってみましょう!
ビタミンB1を含む食品と一緒にたべよう
ニンニクは是非、ビタミンB1を含む食品と一緒に摂りましょう。ビタミンB1は体内で糖質をエネルギーに変える働きをしています。B1を効果的に吸収、そして体内にたくさん貯蔵するためにも、ニンニクと一緒にとることでハイブリットなビタミンB1である「活性持続性型B1(アリチアミン)に変化させてあげましょう。
B1の必要摂取量は一日あたり成人男性:1.4mg(成人女性:1.1mg)ですが、これを一挙に補えるのが豚肉やウナギなどです。その他レバー、玄米、大豆食品等にも多く含まれています。
潰す・すりおろし・みじん切り・スライス等
ニンニクはそのまま食べるより調理・加工することで科学的成分変化を起こし「非栄養性機能物質」のアリイン・アリシン・アリチアミン等を生成します。繊維を破壊してあげることで細胞からニンニクのくさみや辛み成分がでてくるためビタミンB1を含む食品と合わせるとさらに効果が高まるという仕組みです。
簡単おすすめレシピとして、豚肉と玉ねぎを炒めすりおろしニンニク添え等はいかがでしょうか?ニンニクと同様に玉ねぎにもビタミンB1の吸収を促進する硫化アリルが含まれていて冬の滋養強壮や免疫力アップに大いに貢献してくれます。
ラーメン屋さん等ではすりおろしたニンニクのボトルが卓上に置いてあり、ラーメンに自由に入れたりできるのもニンニクの効果を最大限に引き出すための方法といっていいでしょう。
加熱する
ニンニクを調理・加工することで生成されるアリシンは揮発性の硫化アミノ酸です。揮発性とはそのまま放置しておくと20分もしないうちに空気中に蒸発することを意味します。
せっかくすりおろしたり、みじん切りにしたニンニクをそのままにしておくことはアリシンの成分を逃がすことになるため、できればすぐに調理してしまいましょう。
最も有効な方法は油と混ぜてしまうことです。ドレッシングとしてオリーブオイル等と混ぜるのもそのひとつです。またフライパンや鍋に常温の油をひき、みじん切りやスライスのニンニクをいれてゆっくり加熱するといった方法が最適でしょう。高温の油での調理はニンニクに含まれるアリイナーゼが消失するためお薦めできません。
ニンニクの効能は免疫力アップによる風邪ウイルスの排除等、これまで数々の研究報告で証明されています。その絶対的な効果の反面、胃や腸にとっては刺激物となるため食べ過ぎには注意が必要なことも覚えておきましょう。
まとめ:風邪とニンニク
ニンニクは古来より滋養強壮作用があることで知られその絶大な効果が謳われてきました。
最近の研究成果によりニンニクの栄養成分が免疫機能を亢進しウィルスを撃退することも立証されています。特に風邪の予防には高い効果が期待され、同様の性質を持つビタミンCと一緒に摂取することで、さらにその抗酸化作用が老化防止や美肌効果、さらにインフルエンザ予防に役立つことも認められています。
あの特有の匂い成分は時として嫌われる傾向にあるものの、その殺菌・抗菌効果は絶大で体内に侵入した風邪等のウィルスを撃退しスタミナアップや疲労回復に貢献しています。ニンニクは疲労回復効果があるビタミンB1と一緒に摂ったり、すりおろしたり生で食べるとより一層その効果を高めることができます。
これから寒さもさらに本格化する時期、ニンニクのあの独特の風味と味わいで風邪のウィルスを撃退し充実したウィンターライフを過ごしましょう!
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