黄斑上膜という病気をご存知でしょうか?目の視力が低下したと感じたり、ぼやけて見える、霞がかかって見えるなどの目のある部分が何らかの原因で発症する目の病気です。
現代では遠いものや人がぼやけて見えづらくなる近視や、ものが二重に見えたり、かすんだり見える乱視になっている方がとても多いかと思います。原因は遺伝によるものだったり、近くで見すぎることで起こること(テレビを近くで見る、DSなどのゲームを何時間もやる、長時間スマートフォンを操作する等)で次第に悪化していくケースが多いものですが、この黄斑上膜はいきなり発症するわけではないので、自覚症状が無かったり(すぐ気付く場合もあります)、症状の発見が遅れることがあるので早期発見、早期治療が必要です。
今回の記事では黄斑上膜について、その症状と原因、治療法を紹介します。
黄斑上膜とは何か?どんな症状が起こるのか?
視界がぼやけたり、物や人が見えづらくなったらまず視力低下を疑う方が多いかと思います。
では黄斑上膜とは眼にどのような症状が起こるのでしょうか?詳しく調べてみました。
黄斑上膜とは
眼球の内側に張り付いた神経でできた膜で、ここで光を感じ取ることができます。それを網膜と言って、カメラのフィルムの役割にあたる部分です。
その網膜の中でも高精細な中心視野で物体を鮮明にはっきりと感じることができる部分が黄斑です。黄斑は網膜の中心部分の中心窩を囲むように色が濃くなっているところにあります。黄斑は直径1.5~2ミリメートルあり、中心窩と同様に物体を見るときに重要な範囲となります。
黄斑部網膜の上にある後部硝子体皮質が、半透明のセロファン状の膜の組織になったものが黄斑上膜です。
黄斑上膜は黄斑前膜や網膜前膜とも呼ばれています。
黄斑上膜の症状
黄斑上膜は症状の現れ方が一様ではなく、多様な病気とされています。主な症状は物が視力低下により物が見えづらくなる、また歪んで見える(変視症)、霧がかかったように見える(霧視)などです。
物を見る時に重要な中心視野である黄斑の上に膜が出来るため、この膜を通して物を見ることによって視力低下が生じ、見えづらくなります。また、その黄斑の上の膜が収縮することによってを網膜が引っ張られ、網膜にしわができたり黄斑が浮腫んだりします。すると物が歪んで見えてしまうのです。
しかし、このように黄斑上膜の全ての方が見えづらくなったり歪んで見えたりするわけではなく、自覚症状のない黄斑上膜もたくさんあるようです。それは黄斑上膜の厚みや委縮の度合いによっては症状が変わってくるからだそうです。
突然失明に至るケースはないため、手術を急ぐ必要はありません。
黄斑上膜の原因は?
黄斑上膜は自覚症状がない場合、そのまま気付かず放置してしまいがちです。失明の危険性はないとされていますが、物が見えづらい、歪んで見えるなどの症状がすすんでしまうと日常生活に支障を起こしてしまいます。
まずは黄斑上膜になる原因を知っておきましょう。もし、症状が出てきた場合の診断方法や治療法も紹介します。
黄斑上膜の原因とは
黄斑上膜には原因が2つあり加齢によって生じる特発性のものと、糖尿病網膜症や網膜剥離、ぶどう膜炎などの他の目の病気から引き続いて生じる続発性のものがあります。黄斑上膜になる多くの方は加齢によって生じる特発性がほとんどのようです。
加齢といっても発症する年齢はさまざまでほとんどが40歳~60歳の間に引き起こるとされています。加齢によって眼球の大部分を占める硝子体に自然と変化が起こることによって硝子体が網膜から離れていってしまいます。(後部硝子体剥離)この時に黄斑に硝子体の一部残ってしまうことによって硝子体皮質を土台としてさまざまな細胞が蓄積し、これが分厚くなって黄斑上膜となるのです。
黄斑上膜の診断方法や検査方法は?
診断方は視力検査、眼底検査、眼底三次元画像解析検査の3つがあります。
視力検査
視力の異常は近視や乱視、遠視の度合いが分かる水晶体の屈折異常と、白内障を調べる水晶体のにごり、黄斑上膜や眼底出血、網膜剥離などの網膜の異常、角膜炎や角膜ヘルペスなどの角膜異常の変化などを調べることによって分かりますが、一般的な視力検査でわかるのは水晶体の屈折異常(近視、乱視、遠視)のみで、他の異常や病気はこの診断で判断することはできません。
眼に異常を感じたら最初にこの視力検査を行います。その後で他の検査を行い、眼の異常や病気を診断することになります。
【検査方法】
視力検査用の眼鏡枠をかけ、ランドルト環と呼ばれる太い円形の一部が切れている輪やひらがな、英数字などの文字が並んだ視力検査表を5mほど離れたところから片目ずつ見て、どの大きさまで見えているかを調べます。
この検査で裸眼視力(肉眼で見た視力)と眼鏡やコンタクトを付けた状態の視力(矯正視力)の両方を測定することになります。
【疑われる病気】
近視、乱視、遠視、老眼、白内障、緑内障、角膜炎、眼底出血、網膜剥離、視神経炎など
眼底検査
眼底検査では、網膜の異常(黄斑上膜や網膜剥離)や緑内障だけではなく、動脈硬化の進み具合などを調べることができます。眼底には脳と繋がっている視神経の出入り口があり、脳の異常や病気の診断にも繋がるため、脳ドックで眼底検査を実施することもあるようです。
【検査方法】
眼底カメラや眼底鏡という器具を使い、レンズを通して瞳孔の奥にある眼底の血管や網膜、視神経を調べます。眼底検査は3つの検査方法がありますが、いずれも散瞳薬を点眼して瞳孔を広げてから行ったり、無散瞳カメラを用いて検査します。数分で診断できる検査で痛みもありません。
①直像検査法
瞳孔に光を入れて検眼鏡で眼底を観察する検査方法です。この検査では網膜の中心部しか観察することができません。
②倒像検査法
瞳孔に光を入れて、反射してきた網膜像を凹面鏡に映してみる検査方法です。この検査では網膜全体を見ることができます。
③細隙灯顕微鏡による眼底検査法
この検査では直像検査法と倒像検査法を合わせて行います。点眼麻酔をしてからレンズの付いた三角錐の三面鏡を使って眼底を映し、それを細隙灯顕微鏡で観察する検査方法です。眼底とその周辺を鮮明に映し出すことが出来ます。
【疑われる病気】
網膜剥離、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、緑内障、眼底出血、眼内腫瘍、視神経萎縮、乳頭浮腫、脳腫瘍、くも膜下出血など
眼底三次元画像解析検査(OCT検査)
眼底三次元画像解析検査(OCT検査)では網膜のむくみ、出血の範囲、深さ、視神経の状態を網膜の断層画像を観察することで網膜疾患や黄斑部病変の有無が正確に診断できます。
【検査方法】
光干渉断層計という検査機器を使って、網膜の断層画像を撮影することで網膜や黄斑部の異常や病気を検査します。専用の台に顎を乗せて機械内部の青い光を見るだけなので散瞳する必要は無く、解析時間を入れても10分程度で診断することができます。
【疑われる病気】
黄斑上膜、黄斑円孔、黄斑浮腫、加齢黄斑変性症、糖尿病性黄斑症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜前膜、網膜硝子体界面症候群、中心性漿液性脈絡網膜症、緑内障など
また自己による診断方法もあるので紹介します。
まず、障子の桟やアムスラー表などの格子状になっているものを用意して下さい。この格子状のものを右目、左目と片目ずつ交互に見て、見え方の確認を行います。そのとき、中心が暗く見えたり物がゆがんでみえるなど日常の見え方に対して、はっきりとした変化があるようなら眼科受診をおすすめします。
黄斑上膜の治療法
黄斑上膜の治療法についてですが、黄斑は網膜の中心部分にありそれがセロファン状の膜になっている状態なので眼薬や眼鏡などでは治すことができません。この黄斑上膜の膜を取り除くには手術しか治療法はありませんが、患者の状態(視力低下、歪みなど)の程度によって治療の必要がない場合もあります。
失明に至るわけではないため視力障害や変視症の具合、発症期間などさまざまな条件を考慮してから治療すべきか医師と相談し、最適な方法を選択しましょう。物が歪んで見えたり、視力低下などの自覚的症状が強くなった時が手術を受けるタイミングです。黄斑上膜の治療は硝子体手術を行います。
- 手術の準備段階で麻酔薬を点眼し、手術開始時にテノン嚢注射を投与します。
- 後部硝子体(透明なゼリー上の組織)が眼球の中を占めているので専用の機器で取り除きます。
- 小さなピンセットのような専用の器具で黄斑部にあるセロファン状に張った膜を丁寧にはがしていきます。
手術時間は25分から40分程度で通常はそれだけで手術が終了しますが、術後の網膜状態によっては眼球内にガスを入れる処置が施されます。これは網膜のしわを伸ばしたり、網膜裂孔や黄斑円孔を閉鎖させる、網膜復位を得るなどを目的としています。
また、手術の傷口の大きさは0.5mmほどであり結膜(白目)を切ることなく無縫合で行われることが多いため手術後の眼のごろつきや異物感、不快感などを感じることは少なく、回復も早いとされています。術後は抗生物質を3日間点眼します。また、術後の経過にもよりますが日帰りで手術できる病院もあるようです。
しかし、黄斑上膜にに対する硝子体手術には合併症を引き起こす場合があり、眼内炎、駆逐性出血、紡織硝子体網膜症、一過性高眼圧症、一過性底眼圧症、硝子体出血、網膜裂孔、網膜剥離、黄斑円孔などがあります。
この場合、症状によりますが点眼や内服、レーザー治療を行ったり再度硝子体手術をすることもあります。手術前に医師から手術を受ける上でのリスクや術後について話しを聞くようにしましょう。
まとめ
普通、人や物を認識したり風景を楽しんだり、ドライブをするなど日常生活をする上で「見える」ことは当たり前に感じているかと思います。現代では視力が低下しても眼鏡やコンタクトでカバーできますが、眼のトラブルはなるべく回避したいものです。
視力低下や歪みなど眼に違和感を感じたらすぐ眼科で診察を受けるようにしましょう。病状を悪化させないためにも早期発見と早期治療が大切です。
是非、今回の記事を参考にしてください。