鍼灸の効果はある?その仕組みや概念を知ろう!それぞれの違いはなに?

鍼治療・灸治療は、長い歴史を持つ伝統的な治療法です。主に中国を中心としたアジア諸国で、数千年前から施術が行われていました。

日本では独自に進化してきたため、中国や韓国と比べた場合に治療法が異なることもあります。

東洋医学の基本概念

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西洋医学では、病気の原因を特定(診断)して、その病気に対して投薬や外科的処置など(治療)を施します。よって同じ病気であれば、治療方法は誰に対してもほとんど変わりません。

一方東洋医学においては、症状は同じでも、原因はひとりひとり異なることがあると考えます。その考え方の違いはどこにあるのでしょう?

陰陽二元論

宇宙のあらゆる事象が、「陰」と「陽」の対立する属性から成り立っているとする概念です。太陽と月、男と女、昼と夜、天と地などがバランス良く調和することで、最良の状態が成り立っていると考えます。この陰陽の究極は「陽極めれば陰となり、陰極めれば陽となる」という言葉に集約されています。「陰」と「陽」は、お互いに影響しあいながらバランスを取ることが重要とされています。

東洋医学では、本来、健康な人間の身体はバランスが取れているもので、そのバランスが崩れることによって様々な病気を引き起こすと考えられています。バランスがマイナス側に偏れば「陰」、プラス側に偏れば「陽」とされます。この「陰陽」のバランスを、病気だけではなく、身体全体でとらえて整えていくのが治療となります。ポイントは、病気だけを治療するのが目的ではなく、身体のバランスを元通りにすることが病気の治療に繋がるということです。よって、ひとりひとりが本来持っているバランスによって、治療方法や処置が大きく異なる場合があります。

医学的な要素を、この陰陽に当てはめてみるとどうなるでしょうか?

  • 体温が低下傾向(陰)、上昇傾向(陽)
  • 血流が不足傾向(陰)、過剰傾向(陽)
  • 血圧が下降傾向(陰)、上昇傾向(陽)

どの要素も、どちらかに偏りすぎると様々な症状が起きることがわかりますよね。「陰」と「陽」のバランスが取れていることが重要なのです。

経穴(けいけつ)と経絡(けいらく)

陰陽二元論を人間の身体に当てはめた時に、「気」が「陰」で「血」が「陽」として考えられます。「気」は「血」がなければ分散して力を失い、「血」は「気」がなければ固まってうまく流れなくなってしまいます。この「気」は、身体の決まったルートを一定のリズムで循環している1種の生命エネルギーと考えられています。この「気」の循環ルートの事を「経絡」と呼びます。そしてその「経絡」の上に存在する、「気」へのアクセスポイントのことを「経穴」と呼びます。

この「気血」のバランスを取ることが病気にならないためには重要です。バランスが崩れてしまった際に、整えるための方法はいくつかあります。呼吸や身体の動きで気の流れを整える「気功」、生薬の薬効によって整える「漢方」、そして今回のテーマでもある「鍼」や「灸」は「経穴」に刺激を与えることでバランスを整えます。

ただし現時点において、「気功」だけは医学として認められていないため、東洋医学といった場合には「漢方」「鍼」「灸」のことをさします。

鍼治療とは?

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人体に361個あるとされる「経穴」に、細い金属製の鍼(直径約0.2mm、全長約50mm程度)を刺入することで「気血」のバランスを整えます。

鍼を刺入する「経穴」や刺激の強さによって効果が異なりますので、資格を持った施術者による適切な処置が必要です。日本では、「はり師」は国家資格となっていますので技術は一定の水準にありますが、国によっては無資格での施術が可能です。特にアメリカ・ヨーロッパでは医療行為として認められていないため、無資格で施術している「はり師」もいますので注意してください。

鍼を身体に刺すという行為は危ないように思われますが、ひと昔前に比べて、術者の技術レベル・衛生管理レベルの大きな向上が図られています。鍼治療による副作用報告や事故報告は、他の伝統医療に比べれば低いと言えます。

鍼を刺す方法

鍼を刺す方法は日本と中国では異なります。金属や樹脂製のガイドを使用して、指先で慎重に刺入する「日本式」と、指でつまんでそのまま刺入する「中国式」があります。

東洋医学全般で言えるのですが、「中国式」は「痛み」よりも「効果」に重きを置いていますので、「痛み」が強い傾向にあります。

鍼治療の名称

鍼の刺し方や、刺した鍼に施す処置によってそれぞれ名称があります。

単刺

目的の深さまで刺し、刺した鍼に振動や上下・旋回などの刺激を与えてからすぐに抜きます。一般的には、急性症状に用いられます。

置鍼

目的の深さまで刺し、そのまま5~最大30分程度留置します。一般的には、慢性症状に用いられます。

パルス鍼

目的の深さまで刺し、微弱の電流を流すことで、目的の筋肉に刺激を与えます。外部からの刺激では届かない筋肉の部位にまで刺激を与えることができます。鍼治療と電気パルス治療の両方の効果が得られます。

鍼治療が効果を示す理由

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2002年にWHO(World Health Organization/世界保健機関)が、プラセボ効果は完全に否定することはできないが、効果はあると認めています。

「経穴」に刺した鍼による刺激で自律神経系・免疫系などが活性化することで、緊張の緩和・血液・リンパ液の代謝向上効果があるとされます。それによって身体機能の滞っている部分が活性化し、全身の自然治癒力を向上させる働きがあるのではないかと考えられています。

効果があると認められている症状を、分野別に記載します。

運動器系(筋肉・骨・腱など)

関節炎、関節リウマチ、肩こり、五十肩、腰痛、腱鞘炎、むちうち・捻挫などの外傷の後遺症など

神経系(中枢神経・末梢神経など)

頭痛、めまい、神経痛、自律神経失調症、痙攣、ヒステリーなど

循環器系(心臓など)

動悸、息切れ、高血圧症、低血圧症、動脈硬化など

呼吸器系(肺・気管支など)

喘息、気管支炎、風邪の予防など

消化器系(胃・腸など)

便秘、慢性胃炎、下痢、軟便、肝機能障害など

内分泌系(膵臓・甲状腺・脳下垂体など)

糖尿病・甲状腺疾患などの自己免疫疾患など

婦人科系(子宮・卵巣など)

生理不順、PMS、更年期障害など

泌尿器系(膀胱・腎臓など)

膀胱炎、慢性腎炎、性機能障害、前立腺肥大など

小児科系(小児特有の病気)

小児神経症(夜泣き、疳の虫、偏食など)、アレルギー、小児喘息など

眼科系(目)

眼精疲労、かすみ目、疲れ目など

耳鼻咽喉科系(耳・鼻・喉など)

中耳炎、蓄膿症、メニエール病、扁桃炎など

麻酔鎮痛効果

なかでも麻酔効果と鎮静効果については、古来より現在に至るまで最も有効な鍼治療のひとつです。諸説ありますが、効果がある理由として代表的なものを以下に示します。

  • 鍼の刺激によって痛覚が麻痺し、痛みを感じにくくなる
  • 鍼の刺激が抹消神経に作用して、痛みの伝達をブロックする
  • 鍼の刺激によってゲートコントロール作用(痛みの抑制作用)が起こり、痛みが抑えられる
  • 鍼の刺激によって、脳内で痛みを抑制するエンドルフィンの分泌が促進される

灸治療とは?

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灸は「お灸」「やいと」とも呼ばれる伝統的な代替・民間療法の一つです。「経穴」に温熱刺激を与えて生理状態を向上させる治療法です。

日本では、「はり師」と同様に「きゅう師」も国家資格になっているので、業として行う(他人に施術する)には資格を取得する必要があります。

灸の種類

直接皮膚にもぐさを乗せて着火させる「直接灸」が伝統的に標準法とされていますが、もぐさと皮膚の間をあけたり、もぐさと皮膚の間に熱を伝達する物質を置いたりする「間接灸」もあります。

透熱灸(直接灸)

本来の「灸」とはこの方法と言われています。もぐさを捻った艾炷(がいしゅ)を目的の「経穴」上の皮膚に立て、線香で火を付け焼き切ります。艾炷の大きさは様々で、米粒くらいから小指くらいの大きさのものまであります。灸痕がくっきりと残るため、現在では主流ではありません。

台座灸(間接灸)

既成の台座を皮膚の上に置いて行う間接灸です。「せ〇ね〇灸」や「長〇灸」などが有名です。台座と灸がセットで販売されていること、灸痕が残りにくいことから、現在では国内の鍼灸院で主流となっている灸です。

棒灸(間接灸)

棒状の灸を患部に直接近づけることで、温熱刺激を与える灸です。中国ではこちらが主流となっています。

隔物灸(間接灸)

艾炷と皮膚の間に灸点紙という紙を入れ、艾炷が直接皮膚に触れないようにするものや、薄く切ったにんにくや生姜、ビワの葉や味噌などを挟むものなどがあります。挟んだ物の薬効成分を得られることと、熱刺激がマイルドになるメリットがあります。

鍼と灸の効果の違いとは?

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鍼治療は施術後すぐに効果が現れるのに対して、灸治療はゆっくりと継続的に効果が現れます。原則論ですが、急性の症状(激しい痛み、緊張性のこりやこわばりなど)には鍼、慢性の症状(肩こり、関節リウマチ、冷え性など)には灸が適しているとされます。

しかし、鍼治療でも慢性症状に効果があったり、灸治療でも劇的に効果が現れたりするケースもあります。どちらが適しているのかは、治療を受ける患者の体質・症状・疾患などを考慮して、施術者が患者と相談しながら決めていきます。いくら効果があるからといって、鍼が苦手な方に無理やり施術しても、期待したような効果は得られません。その患者にあった治療法を選択することが重要です。

まとめ

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残念ながら、「鍼」や「灸」がどのような仕組みで人体に効果があるのかは明確にわかっていません。ただし、効果があることはわかっています。そうでなければ、最先端医療を行っている病院で「鍼」や「灸」が採用される訳がありません。

今まで避けていた方も、一度体験されてみてはいかがでしょうか?

  
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