頭が痛い、お腹が痛いなどはカラダによくあらわれる症状ですが「これは何か重い病気かもしれない」と異常に心配してしまい不安でしょうがないということはありませんか?もし当てはまった場合、「心気症」といわれる病気の疑いがあります。
心気症になると日常生活にも影響を及ぼしてしまうこともあるため、適切な治療を受ける必要があります。そんな心気症はどのような病気なのか、原因や克服方法などについて書いていきたいと思います。
心気症とは
心気症はカラダにちょっとした症状が現われたり、ほんの些細な出来事でも自分は重い病気にかかってしまっているのではないか、治らないのではないかと異常に心配してしまう病気です。何か大きな病気にかかっていると思い込んでしまう状態が6ヶ月以上続くことがあり、精神障害やノイローゼと言われることもあります。
病院で検査をして異常なしと判断されても納得することができずに、病院をいくつも受診し検査する人もいます。心気症は20代以上の人に多くみられますが年齢は関係なく、男女比も変わらないため誰にでも起こりうる可能性があるのです。
心気症の原因
心気症の発症の原因として考えられているのは、身近な人が大きな病気にかかったことがある、過去に自分が病気にかかったことがあるといった実際に起こった経験が関係していることもあるとされています。
うつ病などの病気にかかっている場合にも心気症の症状があらわれたりもします。また過度にストレスを感じていたり、仕事や家庭で何か問題が生じた、身近な人が亡くなったなどの出来事、環境の変化、自身の性格など様々なことが起こることで発症するのではないかといわれています。
心気症の症状
心気症の人にあらわれる主な症状として、倦怠感、頭痛、めまい、胃痛、睡眠障害、食欲不振などです。これらの症状は一般的な風邪などの症状でも現われ、誰でも一度は経験したことがあり「何かの病気かな」と心配することも誰にでもあることです。
しかし心気症の人は異常なほどに心配をしてしまうのです。頭痛がすると「脳梗塞、脳腫瘍かもしれない」胃痛がすると「胃がんかもしれない」などのように大きな病気にかかっていると思い込んでしまうのです。
通常の人だと気にしないような症状でも過敏になり不安が募ってしまいます。心配や不安から常に病気のことを考えてしまい、精神的な面でも異常があらわれたり仕事や日常生活にまで影響を及ぼしてしまうのです。考えれば考えるほどストレスが原因となりカラダや心に症状があらわれてきますが、心気症の人は症状があらわれるほど「病気が悪化している」と感じてしまうようです。
心気症の診断
心気症の診断にはまず、患者が訴えているような病気があるのかどうかをきちんと検査を行います。
検査で異常が見られず問題ないということを伝えても納得しない、より不安が募っているという状態が6ヶ月以上続いているという場合に心気症であると診断されます。
心気症の治療法
心気症は心の病気であるため主に精神療法や薬物療法が行われます。それぞれの症状にあった治療を行うことが大切です。ただ患者によっては心の病気であるということを認めずに治療を拒むこともあるため、ゆっくりと慎重に治療を進めていくことが大切です。
精神療法
まず精神療法を行うことはとても困難なことが多いです。困難な理由として、患者自身が心の病気であるということを認めていないために、精神科や心療内科での診察を拒否することが多いのです。診察を受けてもらうためにはどうしたらいいのかという点から考える必要があり、患者と医者の信頼関係も治療には必要といえます。精神療法には認知療法、支持的精神療法、行動療法、集団療法など様々な方法がありますが、患者にあった方法で行います。
心気症の治療で大切なことは、患者が抱いている不安や考えを否定しないということです。初めから「あなたは重い病気ではなく心の病気です」と伝えても納得する患者は少ないでしょう。まずは患者の話を聞きながら少しずつ心の病気であるということを自覚させていきます。そして徐々に仕事や趣味などに関心を持つように変えていくのです。
薬物療法
心気症の薬物療法では抗不安薬や抗うつ薬が多く使われます。抗不安薬は心気症にみられる不安症状を緩和するためにとても効果があります。ベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬物が主に使用されますが使い続けてしまうと、依存症状や離脱症状が現れてしまうことがあるため使用するには注意が必要とされています。また症状の緩和は一時的なものですが効果は高いようです。
また抗うつ薬は主にうつ状態がみられる人に用いられますが、パニック障害を起こしている人にも効果があります。パニック障害の人が心気症を発症することもあるためその場合には抗うつ薬が用いられるようです。ただし抗うつ薬を使用して2~6週間は効果が現れないため、効果を感じるまでに時間がかかってしまいます。
薬物療法は不安やうつ状態の症状を緩和する効果は高いですが、どれも一時的なものであり使用したからといって完全に治らないこともあります。また吐き気や不整脈などといった副作用が起こる可能性もあり、良い点・悪い点を理解した上で使用することが大切です。
リラックス法
治療法として精神療法や薬物療法について書きましたが、薬を使用せずにリラックスをすることも良いとされています。方法として呼吸法、漸進的筋弛緩法、自律訓練法などがありますがこの中でも呼吸法はすぐに実践することができ、とても効果がある方法です。
その呼吸法とは腹式呼吸です。お腹を大きく膨らますように息を吸い、お腹をへこませるように息を吐き切ります。普段からできているように感じるかもしれませんが、お腹を意識して呼吸している人は少ないのです。また意識していないとすぐに腹式呼吸ではなくなってしまうので自然とできるようにマスターしましょう。
この呼吸法を行うことで、リラックス効果があると同時に不安や緊張状態をほぐす効果もあります。気持ちを落ち着かせカラダをリラックスさせることはカラダにとっても心にとっても良いことばかりなのです。
心気症の特徴は?
心気症にはいくつかの特徴があります。それぞれについて書いていきたいと思います。
現れている症状に似ている病気を探す
頭痛がしたり熱が出たりといった症状があれば「風邪だろう」と思う人がほとんどだと思います。
ですが心気症の人は風邪だとは思わず、何か大きな病気なのではないかと思い込んでしまいます。例えただの風邪のような症状であっても、いつもと違うようなことがあればすぐに調べます。医療本で調べたり、最近ではスマートフォンの使用が増えたことでインターネットで簡単に検索ができたりなど様々な方法で似ている症状の病気を探す人が増えているということもいわれています。
少しでも当てはまる重い病気があれば「もしかしたらこの病気かもしれない」と思い込んでしまうのです。胃が痛くなれば「胃がんではないか」ホクロがあったら「皮膚がんではないか」など考えだします。そしてその病気について症状などを詳しく調べることで、より心配したり不安になってしまうのです。
次々と症状が現れてくる
強い不安を常に抱いていることから、初めに現れた症状の他に次々と症状が現れてしまいます。カラダや精神状態に異常が起こり日常生活に支障が出てしまうこともあります。主に吐き気、腹痛、頭痛、うつ病などが起こります。常に病気のことを考えてしまい不安に思ってしまうことから、ストレスが溜まり症状が出てしまうのだと思われます。
心気症が酷くなってしまうとうつ病を発症してしまう可能性があります。うつ病になってしまうと精神状態が不安定になってしまうために、自分は治らない病気だと思い込んだり、死を意識してしまったりすることもあるのです。
病院をいくつも受診する
心気症の人は少しでも体調が悪いなどの症状があれば病院を受診します。ほとんどの場合が異常はないという診断になりますが、「自分は重い大きな病気にかかっているかもしれない」と思い込んでいるために、異常がないという結果に納得することができません。そのためもっと精密な検査を望んだり、更には病院を変えてまで診察を受けることもあるのです。
しかし、大きな病気にかかっているというのは思い込みのため、どこで検査をしても異常がないと診断されてしまいます。それにもかかわらず「自分は病気である」という考えは変わることはなく、むしろ異常がないと診断する医者に対して、きちんと検査を行わない、良くない病院だと悪く言う人もいるのです。
心気症の人は自分が納得いくまで、きちんと病気を見つけてくれる医者を求めて複数の病院を転々とするのです。このような行動を「ドクターショッピング」といいます。病気であると診断してくれる医者に出会うまで、ドクターショッピングを繰り返してしまう人も少なくありません。
症状を訴え続ける
心気症の人の特徴として、病気であるという思い込みなどが6ヶ月以上続くということがありますが、現れている症状から「自分はこういう重い病気かもしれない」と医者だけでなく家族など周囲の人にも訴えることがあります。
病院で検査を行っても異常がないといわれることから、周囲の人たちからは「仮病」や「気にしすぎ」と言われてしまうことが多いです。それでもなお診断を受け入れず訴え続けてしまうことで、医者や周囲の人を困らせてしまうことも多くみられます。
心気症と関係のある病気
心気症には合併して起こる可能性のある病気がいくつかあげられます。関係のある病気について書いていきたいと思います。
うつ病
心気症の患者にはうつ病を発症してしまう人も多くみられます。うつ病は環境の変化や人間関係でのトラブル、過度なストレスなど様々なことが原因で起こる可能性があります。心気症でうつ病を発症してしまうのは、病気に対しての強い不安からストレスを常に抱いていることが関係していると考えられます。
うつ病を発症すると気持ちが沈んだり、やる気がなくなってしまったり、考えもマイナス思考で正常な判断ができなくなるというような症状が現れます。今までは「重い病気かもしれない」といった思い込みだったものが「このまま死んでしまうのかな」と死を考えるようになってしまったりすることもあり、心気症を克服するためにもうつ病に対して適切な治療を行うことが必要です。
不安障害
不安障害とは何をするにも不安感が付きまとってしまうような過剰なほどに不安を感じてしまう病気です。誰でも不安を感じることはあり、それは正常な反応であるといえますが不安障害は「外出中に事故に遭うかもしれないから外に出ない」「何か言われるんじゃないかと不安で人に会うのが怖い」というように過剰に心配をしてしまうのです。
不安障害にはいくつか種類があり、パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害というものがあり、現れる症状によって分類されます。心気症は不安障害を併発することもあるとされています。不安障害の治療法は主に薬物療法が行われますが、起こっているそれぞれの症状にあった治療を行うことが大切です。
パニック障害
パニック障害は不安障害の1つとされています。何の前触れもなく突然動悸や吐き気、発汗、息切れなどの症状や激しい不安感が襲う病気でこのことをパニック発作といいます。パニック障害はカラダに異常はみられず、病院を受診しても異常がないと診断されてしまうことも少なくありません。しかしパニック発作は繰り返し起こり、次第に人混みや電車を避けるようになる「広場恐怖」や発作が起こったらどうしようという不安や恐怖を強く抱いてしまう「予期不安」が現れるようになります。
パニック障害が原因となり心気症を発症する人も少なくありません。またパニック障害が悪化するとうつ病になってしまう人もいます。治療法は主に薬物療法が行われますが精神療法を合わせて行うことが重要とされています。
パニック障害は100人に1人が発症するといわれており、珍しい病気というわけではありません。また男性よりも女性に多くみられるということも判明しています。パニック発作が起こると、このまま死んでしまうのではないかという恐怖心が現れますが、パニック発作で命を落とすことはまずありえません。適切な治療を続けていくことで改善、克服できる病気です。
心気症の克服方法とは
常に自分のカラダのことで不安を抱えていると、周囲の人はもちろん、自分自身も疲れてしまいます。できることならば心気症を克服したいですよね。
心気症を克服するために大切なことを書いていきたいと思います。
継続して治療を受ける
克服するには治療を受けることは大前提ですが、きちんと継続して治療を行わなければ改善することは難しいと言えます。心の病気のため薬物療法だけでなく精神療法を行い心の問題をなくしていくことが最も重要です。
関心をそらす
心気症はカラダへの不安から関心がカラダに向いてしまっているため、その関心を何か別のものへ向けることで、徐々にカラダのことを考えなくなり症状が改善されることがあります。趣味を見つけたり、仕事をすることでも関心をそらすことができます。
新しく趣味を見つけたことでその趣味に時間を使ったり、趣味のことを考えるようになり気が付いたら心気症の症状がなくなっていたという経験をした人も実際にいるのです。
家族のサポートが必要
心気症を克服するには家族や周りにいる人たちのサポートがとても重要になってきます。例え医療機関での治療を継続して行っていても、自宅に戻った時などに心気症の症状を煽るような行動をしてしまっていたら、効果はみられません。
心気症患者は自分が病気であるというようなことを繰り返し訴えてくることがありますが、その言葉を無視したり、気のせいだと否定をすることは逆に症状を悪化させてしまう可能性があるため、否定をしないように気を付ける必要があります。
家族や周りの人ができることとして、一緒に病院を受診したり、不安などの気持ちを同調したり、趣味など関心が持てることを一緒に探したりなどがあります。克服するまでに時間がかかってしまうこともありますが、焦らずに接することが大切であるといえるでしょう。
まとめ
心気症は過剰に病気に対しての不安を抱き、自分が重大な病気にかかっていると思い込んでしまう病気です。
何度病院で検査をしても異常がないと言われてしまい、周囲からは気にしすぎと言われてしまうこともあるでしょう。
適切な治療を行うことで改善へと向かうことができるため家族や周囲のサポートを受けながら心気症を克服しましょう。