特定の場所でなく、全身の関節が同時に痛む・・・この症状を経験しないまま成人になる方はほとんどいないと思います。
虫歯と同じくらい誰もが体験するにも関わらず、そのメカニズムは知られていません。久しぶりに発症して、遠い記憶を紐解いているうちにいつの間にか解消されることが多く、しっかり病院で検査することが無いためにしっかりとデータが取れていないことが大きな原因です。
今回は、節々の痛みを伴ういくつかの症状と、関節の痛みを初期症状として発症する病気の可能性について紹介していきたいと思います。
身体の節々が痛いという苦痛は、健康であっても体験するものです。原因と対策を知って、今後のお役に立てば幸いです。
発熱を伴うケース
ただ身体の節々が痛いだけでなく、熱もある。こんなケースに当てはまるのが熱の症状になります。日常、よくある風邪の諸症状ですが、油断できない場合もあります。
特に関節や節々の痛みを発生させやすい症状や風邪の原因について見ていきましょう。
免疫細胞が原因
ウィルスの侵入を認めると、身体はウイルス撲滅のために戦い始めます。サイトカインというウィルス破壊物質を出して戦い始めるのですが、このサイトカインが問題で節々の痛みを発生させます。
身体にとっては究極のテロ対策であり、心強い傭兵であるサイトカイン。実は破壊力が大きすぎる上にターゲットを限定できません。外的であるウィルスや菌だけでなく手あたり次第に細胞を破壊してしまうのです。
このサイトカインは悪玉菌だけでなく身体にとって重要で決して傷つけてはいけない臓器に対しても容赦しません。
サイトカインの分泌量を制限できれば害も少ないのですが、ウイルスを早急に撲滅したいのでのんびりしていられません。ついつい、過剰なサイトカイン召喚になってしまうのです。殺傷能力には秀でているが、ブレーキの利かないサイトカインに命令できる上官が必要になります。そこでサイトカインに抑えの効く、PGE2を同時に分泌することになります。
PGE2、プロスタグランジンE2といいます。暴れん坊のサイトカインを抑制する能力を持っているだけあって、これもなかなかの強面です。熱を出して関節痛を出してしまうのは、このPGE2の働きです。
つまり、ウイルスが侵入した際に発熱と全身の関節痛が出るメカニズムは、サイトカインが臓器を傷つけることなくウイルスを撃退できている証なのです。
風邪をひいた場合
風邪、とは風にのって邪気(ウイルス)がやってきて身体を侵襲する、という古来からの言葉です。過労や栄養不足で風邪に似た衰弱を引き起こす、感冒とは違います。
同じウイルスに感染しても、何も発症しない人もいます。体力に秀で免疫力がもともと高い人はウイルスをはねのけます。しかし、疲れていて免疫力が低下すると身体の各所の検問を破壊してウイルスが攻め込んできます。
ここで先ほどのサイトカインとPGE2がペアで出動し、発熱と痛みがやってきます。ウイルスが死滅するまで能力を如何なく発揮して戦います。
これは身体にとって正常な防御機能ですから、苦痛な期間を過ぎれば終わります。発熱によって失われた水分や電解質の補給に留意して、充分な安静を保てば無くなる苦しみです。
問題は、その後の養生でしょう。ウイルスの侵襲を許すほど低下した身体の中で、サイトカインとPGE2が暴れまくったのです。体力は更に低下しています。特に胃腸機能は弱っているので、発熱と関節痛が去った後は消化に良い、温かい食事を心がけてください。
ここで無理をして風邪をこじらせた場合、それこそ万病の元になって、どんな病気を引き起こすか分かりません。風邪は後々の養生が肝心です。
詳しくは、風邪による関節痛が起きる原因とは?対処方法も紹介!を読んでおきましょう。
インフルエンザの場合
ただの風邪とちがってインフルエンザに罹ったら強烈です。いきなり、高熱と強い関節痛に襲われます。関節痛だけでなく、筋肉痛、頭痛も伴います。
予防接種していても罹ることがありますが、全く予防接種していない人よりは若干、症状が穏やかなようです。それでも解熱鎮痛剤は必要です。
いつもの風邪と違う!と思われるインフルエンザの流行期は、迷わずに病院で受診しましょう。免疫細胞が頑張っていると思って、普通に生活されたら感染力の強いウイルスをまき散らしてしまいます。
回復期に入ったら、普通の風邪以上の養生をしてください。
これらのウィルスが原因の症状は免疫力が下がっている場合に発生しやすい問題になります。寝不足や栄養不足、疲労の蓄積やストレスの蓄積、ホルモンバランスの乱れ、腸内環境の悪化、体の体温の低下など多くの問題が原因で感染症になりやすい症状ですので、特にこれらの病気が流行する季節の変わり目、冬場乾燥が起きやすい時期には注意しましょう。
発熱のないケース
平熱で特に熱も発生していないのに全身の節々が痛い、このような場合に考えられる症状をご説明します。様々な症例の中から、最も多い実例を挙げました。
自分の症状に当てはまるかどうか、症状や原因などを参考に診断してみましょう。
ウイルス感染の初期症状
サイトカインと同時に召喚されるPGE2が、人体を守りながらウイルス撃退のために、サイトカインを抑制しつつ関節痛と発熱をもたらすというメカニズムについては既に述べた通りです。
この関節痛と発熱が同時にやってくるとは限りません。関節痛が先にきて、少し後から発熱することもあります。
風邪が原因ですと、時間的なズレが大きい場合があります。例えば、朝方からどうも身体の節々が痛いと思っていたら夕方から熱が上がってきた、というように半日くらいのズレは珍しくありません。
それに比べてインフルエンザの場合、時間的なズレはそうありません。明らかな関節痛が急にやってきて、すぐに発熱しなくても数時間後には発熱します。
風邪はとにかく、インフルエンザは受診して治療、特に自宅で待機しないと感染させるリスクがあるので注意が必要です。インフルエンザでありながら、関節痛があるものの発熱しにくい条件をご紹介します。
- 発熱しにくいインフルエンザB型だった。
- たまたま、発症前に下熱鎮痛剤を服用していた。
- 体力の強い人がインフルエンザの予防接種を受けていた。
等の場合、発熱に至らずインフルエンザに気が付かない可能性があります。しかし、発熱がなくても全身の関節痛と共に出現する諸症状として、全身の倦怠感・筋肉痛・悪感・咳・鼻水・喉の痛みがあれば、ぜひ受診してください。
膠原病の可能性について
関節の痛みの原因が膠原病による症状の可能性があります。
膠原病はよく耳にする病気の一つではありますが、その詳しい症状などについては知らない人が多い病気でもあります。
膠原病は単一の病気を指す名称ではなく、似たような特徴を持っている病気を総称する病名になります。膠原病についての詳しい症状や原因などについて見ていきましょう。
膠原病の特徴について
膠原病は関節の症状を発生させる点で共通している病気になります。
膠原病に含まれている代表的な病気としてはシェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、全身性硬化症、ベーチェット病などの病気があります。
膠原病の病気が発生してしまう原因は免疫機能の異常によって引き起こされることで発生し、自身の体の細胞を異物として認識してしまって攻撃を開始し、関節や内蔵などの細胞を破壊してしまうことが原因となり発生します。
初期症状として軽い発熱や、関節痛、体重の減少、皮膚の赤らみ、湿疹、関節の腫れなど、風邪やインフルエンザなどの症状に似ている症状から発生することが多くあります。
いくつか代表的な膠原病の病気について詳しく紹介していきたいと思います。
慢性の関節リウマチ
まず始めに膠原病の代表的な病気である関節リウマチの症状について紹介していきます。
関節リウマチの初期には発熱が見られますが、慢性期に入ると局部の熱感はあっても体温は上がりません。
関節リウマチは膠原病の一つで、非化膿性の慢性関節症を主症状とします。女性に多い疾患で発症年齢が30~50代をピークとし、ホルモンと大きな関係があるのではないかとされています。
左右対象に症状が現れますが、全身の関節に激痛をもたらします。節々の強烈な痛みと、関節組織の破壊で変形していきますが、全員が悪化するわけではありません。大半の方は良くなったり、悪くなったりを緩やかに繰り返す方と、すっかり治った方です。
遺伝性の病気として知られているので、身内で関節リウマチを発症された方がいれば、全身の関節痛には敏感に対応してください。
難治性といわれた関節リウマチも、最近では早期発見で予後が大変良いものになりました。この早期発見とは、関節の炎症を認めてから3ヵ月~6ヵ月といわれています。リウマチ専門医によって強い免疫抑制剤や生物学的製剤治療を開始する必要があります。
初期で有効な対応ができず、長引くと発熱はしないものの全身の関節に痛みが流れていく、それが慢性の関節リウマチです。専門医から根気強い治療を継続することで、将来的な生活の質をキープすることができます。
詳しくは、リウマチの初期症状をチェックしよう!指のしびれに要注意!を参考にしてください。
多発性筋炎
多発性筋炎は原因不明の症状で、筋力が低下し皮膚や筋肉などに炎症が発生する難病にも指定されている症状になります。
関節の痛みなどとともに、筋肉の痛み、全身の怠さ、食欲不振、手足の痺れ、体の運動能力の低下などの症状を発生させますが、初期症状ではなかなか症状を感じにくい病気でもあります。
毎年1000人以上の人にこの病気が発生しており、現在でこの病気を抱えている人は2万人以上に登ると推測されます。
女性の患者数が男性に比べて3倍多く発生している病気で、60代の高齢者と、幼稚園程の年齢の小児に多く発生しています。
主に、二の腕、腰、太もも、首などの関節に症状が感じられやすく、最終的には食事などで、物を飲み込むことが困難になり、気管に食べ物が入り込みやすくなることで肺炎などの症状に繋がることも多い症状です。
関節炎について
こちらは膠原病でも発生する症状で、細菌による症状、ウィルスによる症状、無菌性のもの、関節の変形性のもの、神経性のものなどがあります。
関節炎が認められる場合には、関節の痛みの他に発熱、関節の腫れ、体重の減少、可動域の制限、全身の倦怠感などの症状が同時に現れる特徴があります。
この症状と間違われやすいのが、腱鞘炎などの腱から発生している痛みです。腱鞘炎の場合は
自分で意図的に動かした場合には痛みが強く現れますが、他人に動かしてもらった場合には痛みが発生しないと言う特徴があります。
全身症状の発熱や倦怠感などの症状が無く、関節のみが腫れていたり熱を持ってる場合は形成外科や整形外科などを受診し、全身症状が発生している場合には内科をまず受診し、血液検査などの精密な検査を行った後、膠原病科などを紹介してもらって専門家のいる病院を受診すると良いでしょう。
繊維筋痛症の可能性について
この名前は知名度が低く、医療従事者にも浸透していないと聞きます。筋症、とありますが実際には関節も含め、全身の節々に強い痛みをもたらせます。
原因不明が特徴
この症状の定義は、全身の関節、骨、筋肉が広範囲に痛む、というものです。痛み方で一番、似ているのは関節リウマチです。しかし、関節リウマチに見られる血液検査でも異常、患部の腫れ、変形は認められません。
中高年の女性に多く、一般医の25%が「筋繊維痛症」という名前を知らなかったというデータが日経新聞に掲載されています。
現代医療の検査に全く反応しない、というのが特徴です。血液検査はもちろんのこと、尿検査、レントゲン、CT、MRI、触診による患部の特徴などもありません。
それでも身体の節々が痛く、場所も一定せず、長期化すると社会活動はおろか日常生活にも大きく支障をきたす病気です。
伴う痛みの諸症状
全身の節々が痛いだけでも十分、苦痛なのに筋繊維痛症にはたくさんの症状を伴うことが多く、痛みの質を厳しいものにしています。
長引く原因不明の痛みによるストレスで、睡眠障害、抑うつ、過敏性腸症候群が加わります。そのためにストレスに敏感になり、気候の変化や過労によって全身の痛みが更に酷くなるという悪循環に陥るのです。
原因不明の痛みに加え、具体的な病名のつく痛みも併発します。手根管症候群、胸郭出口症候群、レイノー現象などを訴える方が多いのです。
手根管症候群とは、手根管(手首の関節にある、神経と筋肉の通り道)が狭くなって神経を圧迫し、手指にしびれと痛みを出すものです。
胸郭出口症候群とは、鎖骨付近で手の方へ行く神経や血管が圧迫されて、腕から手指にかけてだるさ、しびれ、痛みを出す症状です。
レイノー現象とはリウマチ患者によくある症状で、血流不足から指先が白や紫になり、冷え感や痛みが出るものです。全身の移動性の痛みとレイノー現象によって、当初はリウマチ科に通院される繊維筋痛症が多くおられました。何科に行っても、相手にされない時代があったので無理ないことかもしれません。
改善法として
原因が分からないので治療法も確立していません。それでも少しでも痛みを軽減しようと、様々な試みがなされています。
抗炎症剤や精神安定剤などの薬物療法、物理療法や運動療法などのリハビリ、心理療法、鍼灸・マッサージ、ライフスタイルの改善・・・と枚挙に暇がありません。
手探りながら、医療従事者と患者双方で出口を求めている状況が浮かび上がります。痛みと人間との闘いはテーマを変えて今も終わることがありません。
関節の症状に関して、基本的に自己で応急処置を行う場合は、患部が腫れていたり熱を持っている場合は冷やす、それ以外は温める事で血行を良くし症状を改善することが出来ます。
症状が6週間以上続いている場合には慢性の症状になりますので、1週間様子を見て収まらなければ病院に行くことを検討しましょう。
まとめ
少し前の時代でさえ、リウマチは不治の病で患者は全身、節々の痛みに耐えるしかありませんでした。しかし昨今、急激な医療の発達によってリウマチの解明は進み、多くの方が痛みと変形から解放されています。
人間の正常な機能がもたらす一時的な痛みから、原因不明の痛みまで、人間は神経あるかぎり「痛み」はテーマです。痛みと向き合い、改善できることを信じて工夫し続けることで必ず克服できると信じています。
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