ヤニクラという言葉をご存知ですから?タバコを吸う方にとっては、一度は聞いたことのある言葉でしょう。それに対して、タバコを吸わない方にとっては、もしかしたら一度も聞いたことが無い言葉かもしれませんね。
ヤニクラとは、タバコを吸うことによって頭がクラクラする症状のことを言います。お酒を飲んで酔っ払うのと同じと簡単に考えている方は、それは大間違いです。
そこで、今回はヤニクラについての概要とその危険性について、まとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
ヤニクラとは?
ヤニクラとは、どのようなことを言うのでしょうか?また、ヤニクラでは、頭がクラクラするだけなのでしょうか?
ヤニクラとは?
ヤニクラは、タバコを喫煙した際に、頭がクラクラするような症状を呈することを言います。
ヤニとは、タバコに含まれている成分のタール(タール植物樹脂)の俗称であり、転じてタバコの俗称でもあります。タバコの俗称であるヤニによって、頭がクラクラするような症状になることから、ヤニクラと言うのです。
ヤニクラの症状
ヤニクラの症状で最も代表的な症状は、頭がクラクラする症状です。その他にも、次のような症状が現れます。
- 頭がクラクラする
- めまいがする
- 頭痛がする
- 吐き気がする、気持ちが悪い
- 倦怠感や脱力感
ヤニクラになりやすい場面
タバコ初心者は、ニコチンに慣れていないため反応が大きくなる傾向があります。同じ理由で、しばらく禁煙した後に再喫煙した場合や、その日最初の一服目などもヤニクラの症状が現れやすいと言えます。
また、睡眠不足だったり、体調不良の場合もヤニクラになりやすいとされています。
タバコを吸わない人もなる可能性
タバコを吸わない人にも、ヤニクラの症状が現れる可能性があります。
例えば、駅の喫煙室やオフィスビルなどで喫煙場所に指定された一角などは、喫煙者が集中するためにタバコの副流煙が非常に多くなっています。喫煙者が一つの場所に集中するだけに、副流煙に含まれる有害物質の濃度も高く、タバコを吸わない人が副流煙を吸い込む受動喫煙によってヤニクラの症状が現れることがあります。
喫煙マナーや分煙が進んだことで、逆に副流煙に含まれる有害物質の濃度が上昇するのは皮肉な結果と言えますが、非喫煙者はそのような場所に近づないようにしましょう。
タバコについての基礎知識
ヤニクラの原因を探る前に、タバコについての基礎知識をおさらいしておきたいと思います。
タバコについて
タバコの煙には、約4000種類の化学物質が含まれていることが、研究によって明らかにされています。その中でも、約200種類の化学物質が人体に有害な物質とされています。さらには、約60種類が発がん性物質とされています。
タバコの煙の成分で代表的なものが、タール、ニコチン、一酸化炭素です。
タールとは?
タールは、タバコの葉に含まれている有機物質が熱によって分解されて発生する黒褐色の油状の液体のことです。タバコに火をつけると、熱によってタールが細かな粒子となってタバコの煙に含まれてます。
タールは油状で粘り気があるため、タバコのフィルターや歯に付着しやすいのです。タールが付着するとフィルターや歯が茶褐色に変色するため、タールの存在を確認することができます。
そして、タールには、ベンゾピレン、アミン類といった発がん性物質が多数含まれています。
ニコチンとは?
ニコチンは、タバコの葉に含まれている有毒物質のことです。無色の油状液体ですが、熱によって揮発しやすい性質があります。ニコチンには、タールと異なり、発がん性物質は含まれていません。
しかしながら、ニコチンには神経系に対して非常に強い毒性を発揮することがわかっています。そして、この神経毒性には、中枢神経を興奮させたり、血管を収縮させたり、心拍数を増加させたりする作用があります。また、ニコチンには依存性もあるので注意が必要です。
このようにニコチンとタールは、全くの別物ではありますが、人体に悪影響を及ぼすという点では共通しています。
一酸化炭素
一酸化炭素は、炭素の酸化物の一種で、無色・無臭の気体です。一酸化炭素には、赤血球の中のヘモグロビンと結合しやすい特徴があります。
そのため、一酸化炭素を吸入すると、酸素と結合して酸素を全身に運ぶべきヘモグロビンが一酸化炭素と結合してしまうため、全身の細胞が酸欠状態になり一酸化炭素中毒の症状を呈することになります。
一酸化炭素中毒については、一酸化炭素中毒の症状とは?原因や治療法、後遺症について理解しよう!危険な濃度はどれくらい?を参考にしてください!
ヤニクラの原因
では、タバコについての基礎知識を踏まえて、ヤニクラの原因が何なのかを探っていきたいと思います。
ヤニクラが起きる原因は、タバコを吸うことによって、次のようなことが体内で生じるからです。
- ニコチンによる血管収縮
- 血管収縮に伴う脳の血流低下
- 一酸化炭素とヘモグロビンの結合による脳の酸素不足
ニコチンによる血管収縮
ニコチンの神経毒が肺に入ると、交感神経系を刺激して中枢神経を興奮させるとともに、末梢血管の収縮と血圧の上昇をもたらします。
一般的に男性よりも女性の方が、女性ホルモンの血管拡張作用により、血管が拡張して血圧が低いとされています。ですから、ニコチンによる血管収縮と血圧上昇の影響は、男性よりも女性のほうに大きく影響しやすいとされています。
血管収縮に伴う脳の血流低下
ニコチンによって血管が収縮してしまうと、必然的に脳や手足への血流が減少します。血流が悪くなると、身体が必要とする栄養素や酸素の供給が滞ることになりますので、身体の細胞の働きも低下することになります。
タバコを吸うと、手足の末端が急に冷たくなることがありますが、これは手足の末梢血管が収縮して血流が低下していることを示しています。
特に脳は、どの臓器よりもエネルギーと酸素を消費する器官です。そして脳のエネルギー源は、血液によって供給されるブドウ糖のみです。そのため、脳への血流が低下すると、すぐに脳がエネルギー不足と酸素不足に陥ってしまうのです。
ですから、タバコを吸うことによって、頭がクラクラしたり、頭痛がしたり、めまいが起こったりというヤニクラの症状が現れるのです。
一酸化炭素とヘモグロビンの結合による脳の酸素不足
ニコチンによって脳への酸素供給が少なくなっているところに、一酸化炭素によって更に脳は酸素欠乏状態に追い込まれます。
というのも前述の通り、一酸化炭素は、赤血球の中のヘモグロビンと結合しやすい特徴を有しています。一酸化炭素のヘモグロビンとの結合の強さは、酸素の約250倍とされています。ですから、喫煙量が少なくて、わずかな一酸化炭素の量でも、ヘモグロビンによる酸素運搬を邪魔してしまうのです。
このように血管収縮による血流低下と一酸化炭素の影響で、喫煙者の脳は酸素欠乏状態になることによって、頭がクラクラしたり、頭痛がしたり、めまいが起こったりというヤニクラの症状が現れるのです。
継続的に喫煙する影響
また、継続的に喫煙していると、ニコチンによる血流低下が常態化してきます。血流が低下した状態が続くと、身体の各細胞から生じた老廃物や二酸化炭素を体外に排出することができなくなります。老廃物や二酸化炭素が排出されずに、体内に留まったままだと疲労の原因となる疲労物質になります。
したがって、このような疲労物質によってヤニクラの倦怠感や脱力感などが現れます。
ヤニクラを放置していると
このようなヤニクラの症状は、喫煙によって身体が危険にさらされている徴候です。ヤニクラを何度も経験しても、タバコを止めずに放置していると様々な悪影響が身体に及びます。
ヤニクラ放置による悪影響
ニコチンなどの影響で血管が収縮し血流が低下すると、末梢血管まで血液を届けようと血管内の圧力を上昇させます。つまり、喫煙は高血圧をも生じさせるのです。
また、タバコの煙に含まれる化学物質が、中性脂肪の合成を促進するとともに、悪玉コレステロールを増加させることも分かっています。
したがってヤニクラを放置すると、このような高血圧や悪玉コレステロールの増加を招き、血管に負担をかけることになります。そして、この高血圧や悪玉コレステロールの増加が、連鎖的に様々な悪影響を引き起こすのです。
動脈硬化
喫煙の影響で高血圧が続くと血管内膜が傷つき、その傷口から血管内膜の下に入りこんだコレステロールが白血球に捕食され、その死骸が溜まり血管内に蓄積していきます。この白血球の死骸が蓄積したものが血管内に隆起部分を生じさせ、次第に動脈を狭くしていきます。
この隆起部分は性質的に壊れやすく、喫煙による血圧上昇や心拍数増加などをきっかけに破裂します。この隆起部分が破裂すると血管が傷つき、血管を修復しようと血液が凝固して血栓が生じます。このように血栓ができると、血管のしなやかさや弾力性が失われて動脈硬化に至ります。
したがって、ヤニクラを放置していると動脈硬化に至るリスクがあるのです。
脳血栓症・脳梗塞
動脈硬化が進行することで脳血管の血栓が大きくなり、血管を詰まらせてしまうこともありえます。血管が詰まってしまえば、その先の血管に血流が届きませんから、脳組織を壊死させてしまいます。
このように脳血管に血栓ができ血管を閉塞させてしまう状態を脳血栓症といい、脳血栓症が進行して脳細胞の壊死が現れると脳梗塞になります。脳梗塞が生じると、脳細胞の壊死した部位が担当していた機能に応じて、認知障害、知覚障害、運動障害、感情障害など様々な障害が現れる可能性があります。
このようにヤニクラを放置していると、動脈硬化が進行して脳梗塞にまで至る可能性もあるのです。
狭心症・心筋梗塞
喫煙によって高血圧と心拍数の増加が続くと、それだけ心臓などの循環器にも負担がかかります。心臓を動かすための筋肉である心筋に酸素と栄養素を送り込むのが冠動脈ですが、この冠動脈に動脈硬化が起こると虚血性心疾患になってしまいます。
冠動脈が狭くなり血流が不足して胸が痛くなる病気が狭心症、冠動脈が動脈硬化などで閉塞して血流がなくなると心筋梗塞を起こします。
このような心疾患は突然死を招きますので、ヤニクラを危険信号と考えて対策を取ったほうが良いのではないでしょうか。
肺がん・肺気腫
ちなみに、喫煙による悪影響で最も代表的なものは、肺気腫や肺がんなどの肺疾患でしょう。これらの肺疾患は、ヤニクラに影響するニコチンや一酸化炭素などではなく、タールに含まれる発がん性物質や他の有害物質が原因となって生じます。
例えば、肺がんの場合は、タールに含まれる発がん性物質が肺に取り込まれることで、肺の細胞遺伝子が傷つけられて変異し、その結果として肺の細胞のがん化が生じるのです。
これらの肺疾患はヤニクラの症状放置による連鎖的な悪影響には含まれませんが、タバコの喫煙による悪影響には変わりありませんので、注意が必要でしょう。
ヤニクラの治療方法
このようにヤニクラは、喫煙によって身体が危険に直面している信号と言えますが、ニコチンには依存性があるので、タバコを止めることができない人も多いでしょう。
そこで、ヤニクラの症状が生じてしまった場合の治し方をご紹介したいと思います。
ヤニクラの応急措置
ヤニクラの症状が現れたら、当然のことながら、まずはタバコを吸うのを止めてください。そして、次のような応急措置を行います。
- 脳の酸素不足を解消する
- 血管が収縮した状態を解消する
- ニコチンの量を抑制する
脳の酸素不足を解消する
ヤニクラの症状は、ニコチンや一酸化炭素の影響によって脳に酸素が届かないことが原因でした。ですから、タバコを吸うのを中断して、深呼吸や市販の酸素補給缶などで酸素を取り込み、脳に酸素が届くようにしましょう。
まずは、酸素を取り込んで、安静にしているのが第一です。
血管が収縮した状態を解消する
ニコチンによる血管収縮と血流低下が脳に酸素を届けることを妨げることが、ヤニクラの症状が現れる一因になっていました。
ですから、酸素を取り込んで安静にして落ち着いたら、身体を温めることで血管を広げて血流を回復させるようにしましょう。たとえば、お風呂に入ったり、ウォーキングなどの軽い運動をしたり、食事をすることなどで身体を温めます。
ただし、ヤニクラの症状が現れた直後に運動をしたりすることは、避けたほうがよいでしょう。あくまでも、酸素を取り込んで脳の酸素不足が落ち着いてからにしてください。
ニコチンの量を抑制する
応急措置とは言えませんが、ヤニクラの症状が現れたら、ニコチン量の少ない銘柄のタバコに変えることを考えてみると良いかもしれません。
市販の紙巻きタバコは銘柄の種類も多く、ニコチン量やタール数も軽めのものから重いもの、メンソールの味など、さまざまです。ヤニクラの症状が頻繁に現れるならば、タバコを止めることが最善ですが、タバコを止められないのでしたら銘柄の変更を検討したほうが良いかもしれません。
根本的な治療はタバコを止めること
上述のような応急措置やニコチン量を抑制することは、ヤニクラの症状の根本的な治療にはなりません。
ヤニクラの症状は一時的な症状ではありますが、ニコチンが体外に排出されるまでに48時間から72時間はかかるとされています。とすると、毎日喫煙しているならば、常に体内にはニコチンが残留していることになります。
そこに、新たにタバコを吸うということは、ニコチンによる血管収縮や血流低下の影響を更に増大させようとしていると言えます。それだけヤニクラの症状が起きる可能性も増大しているのです。
そして、ヤニクラを危険徴候として受け取らずに放置した場合の悪影響や危険性については、上述した通りです。
以上から、ヤニクラの症状やヤニクラ放置による悪影響を無くすには、タバコを止めるしかないのです。
まとめ
いかがでしたか?ヤニクラについての概要とその危険性について、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、タバコもお酒も嗜好品の代表的な品物ですから、お酒を飲んで酔っ払うのと同じと簡単に考えてしまう方もいるでしょう。しかしながら、タバコを吸ってヤニクラの症状を呈することは、お酒を飲んで適度に酔っぱらうのとは比べものならないくらい危険なことなのです。
というのも、ニコチンや一酸化炭素によって、身体や脳が酸欠状態に陥るからです。その影響は酸欠にとどまらず、動脈硬化や脳疾患や心臓疾患のリスクも高めます。
したがって、ヤニクラの症状が現れた際には、たとえヤニクラが一時的な症状であっても、身体や脳への危険信号・危険な徴候と考えて禁煙に取り組むことを検討してみてください。
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