一酸化炭素中毒は実に起こりやすい中毒です。特に、暖房器具を使うことが増える冬場には増えます。しかし、よく耳にするわりには、どうしてそうなるのか、あまり理解されていないのが実情かも知れません。「うちにはストーブはないから大丈夫」と言う方がいます。本当に大丈夫でしょうか?
一酸化炭素中毒は、酷い場合には死に至るものです。助かっても、後遺症に悩まされる方もいます。良く知られている病名なのに、正しい知識が周知されていないこの病気、もう一度振り返ってみませんか。思わぬところに危険が潜んでいないか、見てみましょう。
この記事の目次
一酸化炭素中毒とは
何らかの理由で空気中に一酸化炭素が充満した場合などに、それを吸い込んでしまったり、他の原因で血液中に一酸化炭素の濃度が高くなると、血液中の酸素を運ぶ役割が邪魔されてしまいます。
体のすみずみに酸素が行き渡らなくなり、酸素が届かなくなったわたしたちの細胞は働けなくなり、死にいたります。これが一酸化炭素中毒です。
一酸化炭素に毒があるのではなく、一酸化炭素を吸うことで、酸素を体内で供給できなくなってしまう状態なのです。
酸素を運ぶヘモグロビンと酸素貯蓄のミオグロビン
少し話しはそれますが、一酸化炭素とその中毒のことをより知っていただくために、予備知識として知っていてほしいことがあります。血液中のヘモグロビンとミオグロビンの働きです。
通常、わたしたちの体の中に酸素を運ぶ役割をしているのは、赤血球の中にあるヘモグロビンという色素たんぱく質のひとつです。ヘモグロビンは酸素と結びついて血液中を流れることで、細胞のすみずみまで酸素を行きわたらせます。
一方、ミオグロビンは筋肉の中にあり、普段は酸素を運びません。取り込んだ酸素を必要な時まで貯蔵する緊急貯蔵庫のような役割をしています。外部の酸素の濃度が低くなった場合や、筋肉の欲する酸素量がヘモグロビンの運ぶ量を超えた場合などの緊急時に、ミオグロビンが酸素分子を放出するのです。
このヘモグロビンも、ミオグロビンも、色素は赤を持っています。わたしたちの血が赤いのは、ヘモグロビンの色です。ちなみに、イカやタコなどの体液の中にある呼吸色素たんぱく質はヘモグロビンではなく、ヘモシアニンという銅を含むたんぱく質なので、酸素と結びつくと青色になります。だからイカやエビの血は青いのですね。
人だけでなく、牛肉やマグロ、くじらなども色素たんぱく質のひとつであるミオグロビンをもっています。生きている間は、ヘモグロビンのおかげで血や筋肉は赤い色をしているわけです。でも、スーパーにならんでいる肉やマグロは生きていないのに、赤い色をしていますよね。死んで血抜きなどされた処理肉が赤いのは、一体なぜでしょうか。
実は、ミオグロビンの色なのです。一酸化炭素がこのミオグロビンと結びつくことで、鮮やかな赤い色になるのです。
自然な状態では、ミオグロビンには酸素が結びつき、オキシ ミオグロビンとなり、鮮やかな赤色になります。その後、長く空気に触れ、酸素と接触することで、オキシ ミオグロビンの中に含まれるヘム鉄が酸化しメト ミオグロビンとなり、茶色っぽくなるのです。これが、自然のなりゆきと言えます。買ってきたお刺身やお肉がだんだんと茶色くなったり黒ずんだりするのは、ミオグロビンが酸化するからなんですね。
しかし、酸素ではなく、一酸化炭素がミオグロビンと結び付くと、オキシ ミオグロビンではなく、カルボキシ ミオグロビンになります。メト ミオグロビンより安定した物質であるため、赤く鮮やかな色が茶色に変色することなく、長い間鮮やかな色を保つことができるのです。この性質を利用して、一酸化炭素はマグロの処理法に使われ、大活躍した時期がありました。さて、この一酸化炭素とは何者なのでしょうか。
一酸化炭素とは
一酸化炭素は炭素の酸化物のひとつで、無色透明、匂いもなく、常温の気体です。化学式ではCOと記され、水に溶けることはほとんどありません。この一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンと結びつく力が強く、その力は酸素の200倍以上なのです。
日本で生まれた一酸化炭素処理法というものは、刺身をいつまでも鮮やかな赤色に見せる画期的な技術でした。おかげで世界中に広まりましたが、1994年に、消費者の鮮度の判断を狂わせる、また食中毒の原因になりかねない、などの理由から食品衛生法で禁止されてしまいました。
しかし、現在でもこの処理法を利用する海外の業者は無くなってはおらず、現在でも、輸入加工食品の中にこの処理をした食品が見つかることがあります。一酸化炭素処理されたマグロは「COマグロ」と呼ばれたりしています。
また、少し前まで、都市ガスにも一酸化炭素の含まれるものを使っていました。案外、身近にありますね。
二酸化炭素とどう違うのか
通常、物が燃えるには酸素が必要です。炭素や、炭素を含んだ有機物を燃やした場合には、二酸化炭素が発生します。これを完全燃焼といいます。しかし、酸素が足りない状況で物を燃やすと、不完全燃焼となり、一酸化炭素が発生してしまいます。
実は、わたしたちの呼吸でも二酸化炭素は排出されています。人は息を吸うことで酸素をとりいれ(外呼吸)、血管の中でヘモグロビンなどが酸素を体中の組織から細胞へ運びます。外から取り込んだ酸素を使い、細胞が有機物を分解してエネルギーを作り出します。そして残ったかす、二酸化炭素を吐きだしているのです(内呼吸)。酸素をとりいれ、体の中で燃焼し二酸化炭素を吐きだす。有機物の完全燃焼と同じですね。
ここまで聞くと、なんだか、一酸化炭素は悪もので、二酸化炭素は悪ものじゃないように思えて来るかもしれません。けれども、二酸化炭素も、一酸化炭素と同じ危険もあるのです。
二酸化炭素はCO2と表記され、一酸化炭素と違い、水に溶けやすい性質を持っています。固体になるとドライアイスとして利用され、水溶液は皆さんよくご存知の炭酸や炭酸水として利用されています。そのものに毒性はないのですが、空気中に二酸化炭素の濃度が増えると、人は危険な状態に陥ります。二酸化炭素中毒です。一酸化炭素も、二酸化炭素も、わたしたちには危険にもなる半面、便利な工業製品でもあるということですね。
動物の殺処分に使われる二酸化炭素
高濃度の二酸化炭素を吸うと、哺乳類は呼吸中枢が麻痺するため、動けなくなり、呼吸できなくなります。
現在、食用以外で小・中型の動物が処分される場合、この二酸化炭素のみを使用して処分するこの方法が多くとられていますが、これは実際は、酸素欠乏による窒息死なので、窒息するまで長く苦しい思いをして死んでゆくとも言われ、「安楽死」には程遠いのも事実です。
ただ、麻酔効果と鎮痛効果もあるともいわれ、どのくらい苦しいかは不明のままです。
一酸化炭素中毒の原因になるもの
炭や練炭などを燃やすと、一酸化炭素が発生することは良く知られています。具体的にどんなものなのか、また他にもありますから、知っておきましょう。
一酸化炭素中毒を含むもの、あるいは一酸化炭素を発生するものをあげてみます。以外と知らないものにも含まれています。
一酸化炭素を含む燃料
- 七輪(炭火)や練炭 燃やすと一酸化炭素が発生します。
- 昔の都市ガス
以前の都市ガスには石炭ガスが使われていたことがありました。このガスには一酸化炭素が含まれていて大変危険だったのですが、2010年を最後に、日本国内では一酸化炭素を含まないガスを年ガスとして供給されるようになりましたので、その危険は減りました。けれども、ガスの不完全燃焼によって一酸化炭素が発生することもあります。
現在の都市ガスでも、ガス漏れは思わぬ事故につながりますから、人がすぐ気付けるように、あえて臭いをつけてあります。臭いがないと人は気付けないためです。一酸化炭素には臭いがありません。ちょっと怖いですね。
暖房器具などの不完全燃焼で一酸化炭素が発生します
直接一酸化炭素を発生しない燃料や暖房器具でも、不完全燃焼を起こすことで、一酸化炭素は発生します。そのため、ガス器具や暖房器具の定期点検は必要なのです。
- 石油を使った暖房器具
- ガス燃料のストーブなどの暖房器具
- ガス湯沸かし器
- ガス風呂釜
古いタイプのお風呂で、追いだき機能つきで横にボイラーがついているタイプ、煙突式のお風呂や、大型の湯沸かし器を使う際には、隣接する台所の換気扇などを使用しないようにしましょう。
同時使用することで、本来外に出るはずの風呂釜などの排気が逆流してしまい、入浴中に一酸化炭素中毒を起こしてしまう事故の報告があります。
新品の暖房器具でも油断しないで
新品の暖房器具だったら大丈夫、というのは少し危険です。最近の建築物は密閉性が高いため、暖房を長時間使っていると、部屋の中の酸素は減って行きます。酸素が足りなくなるのです。酸素が足りなくなると何が起こるか覚えていますか?不完全燃焼です。
どんな立派な暖房器具でも、燃やし続ければ酸素が不足し、一酸化炭素は発生するのです。そのときには、煙もなく、臭いもなく、色もありません。決して油断しないでください。
さほど危険ではないけれど一酸化炭素が含まれるもの
実は、煙草の煙にも、一酸化炭素は大量に含まれています。ですから、直接吸い込む先である、循環器系には大きな負担になりますが、煙に含まれる一酸化炭素の濃度では、中毒症状は発症しません。
車の排気ガス
車の排気ガスには一酸化炭素が含まれています。自殺に使われることもありますが、思わぬことで車内に排気ガスが入ってきてしまうことがあります。大雪などで、マフラーが雪に埋もれている状態でエンジンをかけてしまい、一酸化炭素が車の中に逆流してしまうといった場合です。
また、積雪量の多い地域では、エンジンをかけたまま車を停車することも多いと思いますが、マフラーが雪に隠れてしまっていないか、常にチェックするようにしたいものです。旅行などで普段積雪しない地域から積雪量の多い地域へ行ったときなど、要注意です。
火事での一酸化炭素発生
火災では、いろいろなものが燃えます。また、部屋の状態によっては酸素が不足した状態で燃え続けることで、一酸化炭素は大量に発生します。火災での死亡原因は、この一酸化炭素中毒がやけどと同じくらい多いのです。
一酸化炭素中毒の症状
一酸化炭素には、臭いも色もありません。一番怖いのは、おかしいと気付いたときには、体に酸素が供給されず麻痺したような状態で動けなくなっていることです。
窓をあけにゆくこともできないわけです。まずは、2つに分けられる医学的症状から見てゆきましょう。
急性一酸化炭素中毒
通常の一酸化炭素中毒のことを言います。一酸化炭素中毒は意識していないと、自覚症状を中毒としてとらえにくいものです。後で述べる軽い症状の場合は、風邪の症状にも似ているため、気付かないでいる内に体が動かせなくなってしまい、急性症状となることがあります。ヘモグロビンが一酸化炭素と結び付くことで、顔色が良く見えたりもします。
また非常に高い濃度の一酸化炭素を吸った場合には気付く間もなく昏睡状態に陥り、そのまま一酸化炭素を吸い続けてしまい死に至る場合もあります。こういった場合は、生存しても、高度の脳の障害が後遺症として残る場合があります。
間欠型(遅発生神経症状)一酸化炭素中毒
一度、急性一酸化炭素中毒になった人が高圧酸素療法で一度は回復したケースで、数日から1か月たって、認知機能に障害が出てくることがあります。時間をおいて中毒の影響が出ることから、後遺症ではなく、間欠型一酸化炭素中毒と呼び急性と区別します。急性に対し、慢性一酸化炭素中毒と呼ぶこともあります。
意志の疎通が困難になったり、行動異常があったりなどするのですが、時間がたっていると一酸化炭素中毒と結びつかないこともあり、認知症と誤診されてしまうこともあります。高圧酸素療法で回復しても、予後の経過をきちんと見ることが大切です。
また、認知機能の障害らしきものが出た場合で一酸化炭素中毒の治療を受けた経験がある方は、まずは同じ病院へ行くことをお勧めします。
危険な状態
一番重篤な症状は、中毒による死です。一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結び付きやすいと言いました。空気中に一酸化炭素があると、それが少量でも吸いこまれると、酸素より先にヘモグロビンと結びついてしまうのです。結果的に、血液中の酸素を運ぶ能力が低下してしまい、酸素が欠乏した状態を作り出してしまいます。
吸いこんだ量、または一酸化炭素の濃度などで、症状は様々ですが、自覚できる症状もあります。
気をつけたほうが良いサイン
吸いこんだ量が少なかったり、一酸化炭素が充満している場にいた時間が短いなど、血液中の一酸化炭素濃度が薄い場合でも、次のような症状が現れることがあります。風邪と似ているので見逃しがちですが、知っておきましょう。
- めまいのように頭がくらくらする
- 顔がほてる
- 軽い頭痛がある
- 吐き気がする
- ぼうっとして集中できない
このような症状が出た場合で、暖房器具など使っている場合には器具を止め窓をあけて換気をする、入浴中の場合は火を止め、浴室から出て新鮮な空気をすうようにしましょう。一酸化炭素の比重は空気とほぼ同じなので、上のほう、下のほうといった区切りは対してつけられません。
ただ、ほんの少しだけ、一酸化炭素のほうが軽いため、火事のときなど、姿勢を低くして口にハンカチやタオルをあてて逃げなさいというのは、一酸化炭素中毒を防ぐためでもあるのです。
他にも、次のような症状が一酸化炭素中毒の特徴です。
- 呼吸が苦しくなる
- 錯乱状態になる
- 知覚が鈍感になり、麻痺したような感じになる
- 失神する
- 発作を起こす
- 高血圧になる
- 昏睡状態
- 呼吸不全
最後のほうは、自分では分からないうちに中毒になってしまう場合です。ただ、家族や友人として発見したときには、すぐに火気を止める、窓を数か所あける、救急車を呼び、状況をしっかり伝え、一酸化炭素中毒の可能性もあることをはっきりと伝えたほうがよいでしょう。
空気中の一酸化炭素の濃度と症状の変化
吸いこんだ量だけでなく、一酸化炭素の濃度もその症状に深くかかわります。濃度は通常ppm(百万分率)という単位で表されます。
1ppmは、0.0001%のことで、ここでは分かりやすく、%(百分率)で書きますね。
濃度0.01%ほど
数時間いて呼吸を続けても、特に変化や作用は起きなません。
濃度0.02%ほど
1時間~1時間半ほどで軽い頭痛などが起きるようです。
濃度0.04~0.05%ほど
1時間前後で頭痛や吐き気がしてくる。耳鳴りが起きることも。
濃度0.06~0.1%ほど
1時間から1時間半で意識を失う
濃度0.15~0.2%だと
30分から1時間で頭痛やめまい、吐き気がひどくなり、意識を失ってしまう。
0.3~0.6%ほど
たった数分でめまいや頭痛、酷い吐き気が起きる。10分~30分で、中毒死となる。
濃度1%
直ちに意識不明となり、死亡する濃度です。
どれだけ、空気中に少なくても、吸い込むと酸素欠乏になるかということがわかりますね。空気中にこれだけの濃度の一酸化炭素があるだけで、人は体の中で酸素を運べなくなってしまうのです。
思い当たる症状や環境がある場合には、自己判断で片付けず、念のために病院へいって検査することをお勧めします。
一酸化炭素中毒になるとこんな後遺症が
ひどい場合には死に至ることもある一酸化炭素中毒ですが、日々気をつければかなりの確率で防げることも分かっていただけたかと思います。しかし、前述した間欠型のように、治療をしても、数日~数年後にまた同じ症状に悩まされたりすることもありますし、軽度の中毒で治癒した場合でも、後遺症に悩まされるケースもあります。
恐ろしいのは脳の障害
遅発性の後遺症として慢性的な頭痛に悩まされるようになったり、重い場合は記憶障害や行動異常が現れるケースもあります。さらに重症化してしまうと、植物状態になってしまった例もあるようです。
これらのケースでは、脳内スキャンなどで検査すると、脳の主に大脳皮質が傷つけられていることが多く、その障害をうけた部位により、その部位が司っていた部分の働きがうまくゆかなくなると考えられます。
- 記憶力の低下
- 手、足がうまく動ごかせない
- 視力に障害が出る
などが報告されています。
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)
一酸化炭素中毒は体中の細胞に酸素が行き届かなくなることが原因です。脳にも沢山の細胞があり、体の細胞とはまた違う、「司令塔」の役割を果たす高性能の細胞がつまっているのです。この脳にも酸素がゆかなくなることで、色々な障害が起きます。これを、高次脳機能障害といいます。
*脳の構造と働きについては http://hapila.jp/symptomatic-epilepsy「てんかん」もご参照ください。
てんかん発作の場合も、発作中に脳に酸素が行かなくなることで、傷つけられた脳の部位によって様々な障害が残ります。一酸化炭素中毒の場合も同じことで、脳に酸素が行かなくなった時間や部位によって、様々な障害と障害の程度が決まります。脳卒中などでも、高次脳機能障害が出ることがあります。
記憶障害
新しいことが覚えられない、自分の言ったことを忘れてしまう、などです。わたしはてんかんの発作の後には、引っ越したばかりの住所を言えず、救急隊に古い住所をいってしまったことがあります。古いきちんとファイルされた記憶は残っていても、新しい記憶が覚えられないとは、このような状態から、もっとひどい状態です。
しかし、記憶障害だけの場合であまりにひどいもの(認知症など)でない場合は、細かくメモをとる、何度もくりかえすなど、行動の仕方を今までのやり方と変えることで、普通に生活出来る希望もあります。
注意障害
同時に2つのことができなかったり、2つの指示を取り違えてしまったりということで、日常生活であまり困らない場合もあるため、本人が気付きにくいのが特徴です。たとえ軽度な症状でも一酸化炭素中毒らしきものを経験している方は、「年をとったから忘れっぽくなっちゃったのかも」と思ったときには、すぐに病院での検査をお勧めします。放っておいて、加齢とともに重症化するおそれもあるからです。
認知障害
数年後にあとから出ることが多いのですが、本来の認知症とは違う病気とされています。ただ、症状が認知症とそっくりなため、認知症と誤診されてしまうことがあります。
認知症の原因はさまざまで、器質的なもの(水頭症や)などもありまだ解明されていない原因もありますが、一酸化炭素中毒の間欠型の場合には、中毒時に脳に酸素がゆかなくなったことや、解毒の治療(血液内の毒素を排除する)で毒素を取りきれずに体内に残ってしまった場合などに、酸素ではなく一酸化炭素と結び付いたヘモグロビンが脳のほうへ運び込まれ脳の細胞に障害を与えてしまうことなどが原因となります。ですから、認知症の場合は原因がどこにあるか突き止めるのに沢山の検査をします。一酸化炭素中毒であることをきちんと伝えることで、検査の時間を短縮することができると思われます。
一酸化炭素中毒にならないために
気がついたときには、すでに遅く助けも呼べない状態になっているかもしれない恐ろしい中毒ですが、火災以外は簡単なことで防げそうです。昔はガスそのものに一酸化炭素が含まれていたり、燃やすと一酸化炭素の出る練炭や炭の使用が多かったこともあり一酸化炭素中毒はとても多いものでした。
しかし、現代では便利な探知機などもありますし、ガス器具そのものに検知し自動停止する機能のついたものなどがあります。これらの設置にはお金がかかるものですが、自分でできることもあります。
とにかく換気をこまめに
暖房器具を使う時、それが一酸化炭素を出さないものでも、危険は潜んでいます。不完全燃焼によって一酸化炭素は発生しますから、部屋の中に充分な酸素がなくてはならないのです。換気も、ただ窓をあければいいというものではありません。換気にも、コツがあります。
窓は2方向開けましょう
一方の窓を開けただけだと、部屋の中に新鮮な空気が入るまでに時間がかかります。2方向あけて、空気の通り道をつくってあげることで、素早く換気が出来ます。
検知器の設置
ビルなど、換気がままならない建物の場合は、万が一に備えて一酸化炭素検知器を設置するのも1案です。
危険な濃度になったら警報がなる仕組みになっているので、警報機がなったら、考えられる熱器具がある場合にはそれをとめ、速やかに部屋の外、ビルの外に出ましょう。こういったときのためにも、避難路は確保し、避難訓練もしておきましょう。
古すぎる給湯器やガス器具は交換を
最近のものには、ガスや熱が危険な状態になると自動的に火をとめたり、作動が止まる仕組みのついたものがほとんどですが、旧式の物の場合にはそういった機能がついていないものがほとんどです。
出来ることなら、交換をしましょう。すぐに交換できない場合でも、定期的な点検をすることで、危険を減らすことができます。
一酸化炭素中毒になってしまったら
軽い頭痛などの症状のときは、外にでて深呼吸する、換気をするなどで解決することもあります。しかし、体の中で何がおきているかはわかりませんから、一酸化炭素中毒が疑われるときには、症状が治まっても、病院へゆくことをお勧めします。
その際、医師には痛みなどの症状だけでなく、環境がどのような状態だったかを告知することが重要です。頭痛、吐き気だけでは、一酸化炭素中毒だとは通常は思わないからです。本人や家族は、その可能性があることを医師に伝えましょう。
検査方法のいろいろ
血液検査で、一酸化炭素に結合したヘモグロビンの濃度を測ることで、一酸化炭素中毒かそうでないか分かります。他にも、パルスオキシメーターを使って血液の中の酸素飽和度を測るなどの方法もあります。また、脳波検査も行われます。
間欠型の場合、本人も思い当たることがなく認知症のような症状が出ていると、そちらの検査から始めてしまうこともあります。一酸化炭素中毒の影響を見逃してしまいかねないので、可能性がある場合は、医師に忘れずに伝えることが大切です。
治療方法
まずは、酸素供給が第一です。酸欠状態になっていますから、初期の場合にはまずその処置からします。通常は酸素吸入(常圧酸素療法)を行いますが、それでも不十分な場合には、高圧酸素療法を行うことがあります。どちらを先にするかは、決まりがないので、医師の判断にゆだねられます。
体の中に入り込み細胞に隠れてしまった一酸化炭素を体から外に出すことが必要ですから、酸素吸入によって体の中が浄化されるまで、数日から数十日かかることもあります。
重症な場合には、脳への障害、神経障害などの症状も見られるため、それによる二次的な障害が生まれることがあります。後遺症といってもよいのですが、中毒の度合いでどんな後遺症が出るかに決まりはありません。障害をうけた場所により、知能が低下したり、記憶障害がでたり、行動異常や感覚異常(痺れ、麻痺など)などと一生付き合うようになりかねません。一酸化炭素中毒は、予防に努めることが肝心なのです。
回復のために
症状が軽くなった場合、またはじめから軽度な場合でも、リハビリはかかせないものとなります。軽度な場合でも、予後の経過をきちんと自分で日記のようにとることも大切になります。
疲れていないのに、ふらついたことはないか、勘違いを何度も繰り返したりしていないか。ついつい、日頃他のもののことのせいにして見落としがちですが、一酸化炭素中毒を経験した方は、どんなに細かいことでも、メモをとることが寛容です。これは、一酸化炭素中毒だけでなく、脳の神経障害をもつ方には皆に言えることなのですが、医師の目の届かないところをきちんと記録しておくことが、どんなリハビリをするか、回復のために何をするかを決定づける大切な資料となるのです。
一酸化炭素中毒の後遺症のリハビリは、主に高次脳機能障害の治療としておこなわれるものがほとんどで、症状に合わせて、リハビリのプログラムを組んで行われます。先述したように”細かくメモをとる”というのは、わたしが病院で受けたリハビリではなく、脳障害を持つ私自身が日常生活に順応するために必然的に身に付けたものです。
こういったリハビリは、どんな障害が出ているかによって、その障害を補完する能力を身につけることで、日常生活や社会活動に支障がないようにすることが目的とされます。脳の障害の部位により、たとえば足が動かなくなった場合には、運動機能が何処までのこっているかで、運動プログラムのリハビリも行われます。記憶障害の場合はメモをとり確認をする習慣をつける訓練なども行われます。
まとめ
知っているようで知らなったこともあったのではないでしょうか。一酸化炭素中毒までゆかなくとも、また暖房器具など使っていないときでも、部屋はまめに換気をすることをお勧めします。密閉性の高い環境などでは、換気設備が整っていないと、人の呼吸でも酸素は減ってゆきます。一酸化炭素中毒ではなく、二酸化炭素中毒になる可能性もゼロとは言い切れません。
また、火事の際、逃げられなくなって一酸化炭素中毒になり中毒死、焼死するケースもあります。避難訓練はきちんとする、避難路に物を置いたりしないなど、日頃の心がけも肝心です。振り返ってみましょう。
- 不完全燃焼を起こさないよう換気をまめにする
- 暖房器具の点検はきちんと、旧式のものは新しいものに変える
- 積雪時の車のマフラーにも注意
- 風邪の症状と似ているので自己判断で決めつけない
気をつけて、健やかな毎日を送りたいですね。