花粉症は、今や国民的な病気と言えるほど患者数が多く、花粉症を知らない人はいないといっても過言ではないでしょう。
花粉症の症状と言えば、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻の症状と目のかゆみといった目の症状が代表的ですよね。
しかしながら、このような代表的な症状の他にも、花粉症によって頭痛が引き起こされることがあるのです。花粉症によって頭痛が生じることは、花粉症患者でも知らない人が少なくありません。
そこで今回は、花粉症の基礎知識をおさらいしながら、花粉症によって起きる頭痛について、ご紹介したいと思います。
花粉症の基礎知識
まずは、花粉症によって生じる頭痛について理解するためにも、花粉症に関する基礎知識をおさらいしたいと思います。そこで、花粉症の症状、発症メカニズムなどについて、簡単にご紹介します。
花粉症とは?
花粉症は、スギ・ヒノキ・イネといった植物の花粉が原因となって引き起こされるアレルギー疾患の一つで、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみといった一連の症状が代表的な症候群のことです。
花粉症の一次症状
花粉症の一次症状は、主にくしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみの4つとされ、花粉症の4大症状とも呼ばれます。
鼻づまりや鼻水、くしゃみなど鼻に現れる症状は、アレルギー性鼻炎の症状です。花粉の飛散する季節だけに現れるアレルギー反応なので、通年性のアレルギー性鼻炎に対して、季節性アレルギー性鼻炎として分類されます。
一方で、目のかゆみや流涙など目に現れる症状は、アレルギー性結膜炎の症状です。アレルギー性鼻炎の場合と同様に、季節性アレルギー性結膜炎に分類されます。
花粉症の二次症状
花粉によるアレルギー反応の直接的な症状である一次症状が生じたことによって、二次的に現れるのが花粉症の二次症状です。花粉症の二次症状には、様々なものがあり、頭痛もそのうちの一つとされます。具体的には、次のような症状が二次症状として現れることがあります。
- 鼻づまりが原因で、匂い・香りを識別できない状態になる
- 鼻づまりで鼻呼吸ができず、口呼吸をすることで喉(のど)が乾燥し咳(せき)がでる
- 目の異物感、目やにが現れる
- 目の周辺や鼻の下などの皮膚に炎症が生じたり、肌荒れが生じることがある
- 副鼻腔炎、後鼻漏(こうびろう)が生じることがある
- 頭が重く感じたり、頭痛が生じることがある
- 鼻のかみ過ぎやくしゃみで筋肉が緊張して、首の痛みや肩凝りが現れることがある
- 全身の倦怠感
- 鼻づまりなどで苦しく睡眠不足になる
- 花粉を含んだ鼻水をすすり、誤って飲み込むことで吐き気を催すことがある
- 一次症状による集中力欠如やイライラ感などの精神症状が現れることがある
花粉症の発症メカニズム
花粉症の一次症状は、花粉が原因となって引き起こされたアレルギー反応によるアレルギー症状です。
ですから、花粉症の発症メカニズムは、アレルギー反応そのものと言えます。
免疫システム
人には、ウイルスや細菌などから体を守る仕組みとして、抗原抗体反応という仕組みが存在しています。
抗原抗体反応は、ウイルスや細菌など体にとっての異物(抗原・アレルゲン)が体内に侵入すると、抗原に対応した抗体が結合して、その結合物を免疫細胞(白血球やリンパ球)が処理する仕組みです。
この抗原抗体反応が仕組み通りに作用すれば、いわゆる免疫システムとして機能し、ウイルスや細菌から体を守ってくれます。
アレルギーの仕組み
花粉は、ウイルスや細菌ではないので、体には無害であるのが通常です。しかし、花粉のような無害の物質を異物(抗原・アレルゲン)として認識してしまうことがあります。すると、花粉に対して抗原抗体反応は本来作用しないはずなのに、異物として認識された花粉を排除しようと抗体が結合して、免疫システムが働いてしまいます。
このように本来身体にとって無害な物質にまで、免疫システムが過剰反応してしまうことをアレルギー反応と言います。そして、アレルギー反応を引き起こす物質のことをアレルギー物質(抗原・アレルゲン)と言い、花粉症では花粉がアレルギー物質に該当します。体内からアレルギー物質を排除する過程で、様々な症状(アレルギー症状)が体に生じることで、人は苦しい思いをすることになります。
このアレルギー症状が、花粉症では一次症状のくしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなのです。
花粉症に伴う頭痛の原因
このように花粉症はアレルギー疾患で、花粉症の二次症状として頭痛や頭が重く感じる症状が現れることがあります。
それでは、どのような仕組み・原因で、花粉症の二次症状としての頭痛が生じるのでしょうか?花粉症での頭痛の原因を、ご紹介したいと思います。
脳の酸欠
花粉症による頭痛の原因はいくつか考えらますが、最大の原因は鼻づまりによって鼻呼吸ができなくなることで、取り込む酸素量が減少して脳に十分な酸素が供給されなくなることだと考えられます。
つまり、通常時よりも供給される酸素量が減ることから、脳が酸欠状態に陥ってしまい、頭が重く感じたり、頭痛が生じるのです。
鼻づまりになるのは、花粉によるアレルギー反応で鼻粘膜に炎症が発生して腫れあがるからです。鼻粘膜が腫れあがることで、空気の鼻通りが悪くなりますから、鼻呼吸がしづらくなるのです。
睡眠不足
脳の酸素不足とも重なりますが、鼻づまりの症状が続くと呼吸が苦しく感じて質の良い睡眠をとることができません。寝付きが悪くなるだけでなく、睡眠の途中で呼吸が苦しくなって覚醒することもしばしば発生し、睡眠不足に陥ります。
このような睡眠不足と脳の酸素不足によって、頭が重く感じられたり、頭痛が生じたりすることがあります。
首の痛みや肩こり
花粉症の二次症状として、鼻のかみ過ぎやくしゃみで筋肉が緊張して、首の痛みや肩凝りが現れることがあります。また、睡眠不足が続くと疲労物質が蓄積して、肩こりが生じやすくなります。さらに、一次症状による精神的なイライラ感がストレスになれば、ストレスによる血行不良が肩こりを誘発しやすくなります。
そして、首や肩の筋肉は頭部まで繋がっているため、首の痛みや肩こりが酷くなると頭痛が生じてしまうのです。
自律神経の乱れ
アレルギー反応やアレルギー症状の発生は、自律神経と深い関係性があります。アレルギー症状は、交感神経と副交感神経という自律神経のうち副交感神経が優位になっているときに発生しやすく、悪化しやすいことが分かっています。これを言い換えると、アレルギー体質の人は、副交感神経が優位になりやすい人なのです。
自律神経は、主に日中は交感神経が優位になりやすいのに対して、主に夜間は副交感神経が優位になりやすいのが通常です。にもかかわらず、アレルギーの人は日中にも副交感神経が優位になりやすいため、アレルギー症状が現れやすいのです。
ということは、アレルギー体質の人は、自律神経のバランスが崩れやすいと言うこともできます。そして、自律神経のバランスが乱れると自律神経のコントロール下にある循環器・呼吸器・消化器などの調整が上手くいかなくなります。
頭痛の場合、頭部などの血管の拡張や収縮が上手く調整されないことで、拡張が続くと血管近くの神経を圧迫して痛みを生じますし、収縮が続くと血流低下で疲労物質が溜まることにより痛みに繋がるのです。
副鼻腔炎
風邪やアレルギー性鼻炎によって鼻腔の鼻粘膜が炎症を起こすと、副鼻腔に炎症が波及して副鼻腔炎を併発することが良くあります。副鼻腔は、鼻腔に隣接して存在する骨の内部にできた空洞・骨洞のことで粘膜に覆われており、わずかな開口部で鼻腔と繋がっています。
風邪やアレルギー性鼻炎によって急性副鼻腔炎が発症すると、鼻の痛みなどの症状が現れます。急性副鼻腔炎が長引くと炎症によって膿が発生することがあり、その膿が排泄されずに貯留してしまうと慢性副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症になります。
慢性副鼻腔炎・蓄膿症になると、鼻の痛みだけでなく頭痛・頭重感・発熱・後鼻漏などの症状が現れます。
花粉症に伴う頭痛の対処方法
それでは花粉症によって一次症状(くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ)の他に、頭痛の症状が現れた場合、どのように解決・対処すれば良いのでしょうか?花粉症に伴う頭痛の解消法・対処法を、ご紹介したいと思います。
鼻づまりを解消して酸素を取り込む
花粉症による頭痛の最大の原因は、鼻づまりによって取り込む酸素量が減少して脳が酸欠状態に陥ることでした。ですから、鼻づまりを解消して鼻通りを良くすることが、取り込む酸素量の回復につながります。
鼻づまり対策として、点鼻薬(鼻スプレー)を注入して鼻粘膜の炎症を抑制することが考えられますが効果は一時的で、あまりに頻繁に使用すると点鼻薬性鼻炎などの副作用の可能性が懸念されます。
ですから、生理食塩水による鼻洗浄や温めたタオルを鼻に乗せて血流を良くするといった方法を取るのが良いでしょう。鼻づまりの解消法ではありませんが、市販の酸素缶・酸素スプレーを使って酸素吸入するのも一つの対処法と言えるでしょう。
睡眠を十分にとる
花粉症の一次症状の影響で睡眠不足になり、睡眠不足から頭痛になる場合もありますから、睡眠を十分にとることが重要です。
寝付きの悪さや睡眠途中の息苦しさを改善するため、鼻詰まり対策の他に鼻孔拡張テープを使って鼻通りを良くすると、睡眠の質が多少なりとも改善されるのではないでしょうか。
血行を良くする
鼻のかみ過ぎやくしゃみで筋肉が緊張して、首の痛みや肩凝りが現れることで頭痛につながることもあります。
ですから、鼻が詰まるからといって強く鼻をかみ過ぎないように心掛けることが大切です。また、筋肉の緊張や睡眠不足による疲労物質の蓄積を防ぐためにも、適度な運動や入浴などによって血行を良くすると、頭痛の緩和につながるでしょう。
規則正しい生活
花粉症などのアレルギー疾患は、自律神経の乱れとの間に深い関連性があるとされています。ですから、乱れがちな自律神経を整えるために、生活習慣の改善・見直しを実施して、できるだけ規則正しい生活を送るようにしましょう。
また、代謝は新陳代謝や免疫力の維持などの他に、自律神経とも関わりがあります。適度な運動などを継続して代謝アップを心掛けると、代謝の向上が自律神経の安定につながるとされています。
副鼻腔炎の治療
花粉症による頭痛の原因が、アレルギー性鼻炎から併発・進行した慢性副鼻腔炎(蓄膿症)にある場合は、副鼻腔炎の治療を行わなければなりません。副鼻腔炎の治療法には、次に示すような複数の方法があります。
薬物療法
副鼻腔に貯留した膿には細菌が存在しますから、抗生物質・抗生剤の投与で細菌を除去する必要があります。また、炎症や痛みを抑制するには、消炎鎮痛剤が投与されます。
手術療法
慢性副鼻腔炎が重症の場合には、手術による治療が選択されることがあります。手術は、内視鏡を用いた鼻内内視鏡手術が一般的です。
東洋医術(鍼灸)
東洋医術では、顔面部の中央で頭髪の生え際より少し上に存在する上星穴と呼ばれるツボが、副鼻腔炎に効果があると考えられています。
頭痛薬の服用
頭痛を緩和させることを目的として、頭痛薬を服用することも対処法の一つになるでしょう。
ただし、花粉症の症状を抑制させる抗アレルギー剤と頭痛薬を併用することは危険です。薬剤に含まれる成分が重複することで薬効が強くなり体に害悪をもたらすケースや、飲み合わせの悪い薬剤があるからです。花粉症の薬と頭痛薬の併用については、薬剤の専門家である薬剤師に相談してから服用するか、医師の診断を受けて新たな薬剤の処方をお願いしましょう。
花粉症の治療方法・予防方法
花粉症に伴う頭痛の対処方法をご紹介しましたが、これらの対処方法は頭痛に対する対処法であって、花粉症そのものが治るわけではありません。ですから、花粉症が治らなければ、頭痛が再発する可能性もあるわけです。
花粉症に伴う頭痛をなくすには、花粉症そのものの治療が必要です。また、花粉症であったとしても、症状を悪化させない予防も重要です。そこで、花粉症の治療方法及び予防方法を、ご紹介したいと思います。
花粉症の治療方法
花粉症の治療方法は、主に対症療法である薬物療法と根治を目指す減感作療法や手術療法があります。
薬物療法
花粉症に対する薬物療法では、アレルギー反応を抑制する抗アレルギー剤を用いるのが主流となっています。
抗アレルギー剤の代表格が、アレルギー反応で重要な役割を果たすヒスタミンの働きを抑制する抗ヒスタミン薬です。最初に開発された第一世代の抗ヒスタミン薬には眠気や口の渇きなどの副作用がありましたが、現在は副作用の発生を抑えた第二世代の抗ヒスタミン薬が登場しています。
また、強い抗炎症作用を有するステロイド薬が用いられる場合もあります。ただし、ステロイド薬は、抗炎症作用や抗アレルギー作用も持ち合わせる反面、アレルギー反応の根本にある免疫システムそのものも抑制してしまいます。そのため、免疫力が低下して、別の感染症を発症させるリスクがあるので注意が必要です。
減感作療法
花粉症を確実に根治させる治療方法は未だ確立されていませんが、減感作療法(アレルゲン免疫療法)は花粉症を根治に近い状態まで治療できるとされています。
減感作療法では、アレルギーの元となるアレルゲン(アレルギー物質、花粉症の場合は特定の花粉)を希釈したワクチンを、皮下あるいは舌下に投与することを繰り返します。免疫システムが徐々にアレルゲンに慣れることで、アレルギー反応も徐々に減弱していくのです。
手術療法
手術療法では、鼻粘膜にレーザー光線を照射して、鼻粘膜を焼いて変質させるレーザー治療が代表的です。アレルギー症状が現れる部分の鼻粘膜を変質させて症状が現れないようにするため、鼻水・鼻づまりなどの鼻炎症状には一定の効果が期待されます。
ただし、照射後から数日は鼻粘膜が火傷のような損傷を受けるため、花粉症以上の鼻水が現れる場合があったり、効果が大して現れない人もいるなど個人差が生じます。
手術療法では、後鼻神経切断術もアレルギー性の鼻炎症状の治療として実施されることがあります。アレルギー性鼻炎による症状の発生には、鼻の奥に存在する後鼻神経の過敏な反応も関与していることが判明していて、この神経を切断することで花粉に対する反応が鈍感になります。
花粉症の予防方法
花粉症の予防方法は、様々な方法が考えられます。まずはオーソドックスですが、花粉を体内に侵入させないようにマスクやゴーグルを装着することが対策法の一つとなります。
また、家では加湿器を用いて室内を加湿することで室内に入った花粉を舞い上がらせないことや、空気清浄機を設置したり、こまめに室内を清掃することも対策方法になります。
さらには、食生活の欧米化と花粉症患者の増加との関係性も指摘されていることから、高カロリー・高タンパクの食べ物はなるべく避けて、腸内環境を整え免疫力を高めるヨーグルトなどの発酵食品を摂取することも予防につながります。
スギやヒノキの花粉は飛散範囲が広く避けようがありませんが、春から夏にかけて起こるイネ科植物の花粉によるイネ科アレルギーは、花粉の飛散範囲が狭いので、土手や田んぼ付近のルートを回避すれば発症を防ぐことにつながります。
まとめ
いかがでしたか?花粉症に伴う頭痛について、ご理解いただけたでしょうか?
花粉症と言えば、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみといった症状が代表的ですが、花粉症の二次症状として、あるいは二次症状を原因として頭痛が現れることがあるのです。
本記事では、花粉症に伴う頭痛の一般的な対処法をご紹介しました。しかしながら、頭部や脳は人が生きていく上で、非常に大事な器官です。そして、頭痛は様々な原因によって生じる症状でもありまから、他の重大な疾患が原因で頭痛が生じている可能性も無いとは言えません。
ですから、花粉症の時期に頭痛が発生しているからといって、花粉症に伴う頭痛だと自己判断することは危険です。頭痛が発生したら、まずは病院を受診して、医師の判断を仰ぐことが何よりも重要だと思います。
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