献血は命を救う活動とされており、こちらからすると横になっているだけで社会貢献ができるいい機会なのですが、実はそれだけではなくかなり充実したサービスが行われています。
サービス目当てで献血しに行くというのも後ろめたいかもしれませんが、せっかくなのでどのようなメリットがあるか知っておきましょう。
献血とは
近代の輸血方法が日本まで伝わって来たのはそれほど昔の話ではなく、1919年頃と言われています。
初めは血液を採取してそのまま輸血するという方法をとっていたため、血液をあげる人ともらう人が並んで寝ている状態で行われていました。生命を救う事のできる画期的な方法ではありましたが血液による感染が起こる可能性があったため厚労省での事業が進む、1952年に赤十字血液センターの原型が開業しました。
血液を売買していた時代もあったようですが、これだと何回も血液を売りに来る人が発生して健康状態のよくない血液が集まってしまう事や、人身売買につながるという問題もあり現在の無償での献血が行われるようになりました。
血の行き先
献血された血液は感染症予防の検査や抗体の検査を受けます。
現在では血液の中から必要な成分のみを輸血する成分輸血が主流となっているため、血液は赤血球・血漿・血漿板などに分類されて輸血用の血液製剤となり保管されます。
病院からの発注があり次第これを供給し、医療の現場で使われます。
献血の可否
献血できる年齢は決まっており、種類によって異なりますが多くは18歳〜69歳まで、65歳以上の場合は60~64歳の間に献血の経験がある方に限られています。
また、体重や血圧に基準があり、男性は45kg以上(400mLの場合は50kg以上)、女性は40kg以上(400mLの場合は50kg以上)の人、最高血圧が90mmHg以上の人のみが対象となります。その他献血の種類や男女別で様々な基準が定められています。
その他にも、
- 特定の薬を利用している人
- 妊娠中、授乳中
- 過去3日以内に歯科治療をした人
- 過去6ヶ月に不特定の異性との性的接触があった人
- 一定の渡航経験
- 一定の病気治療経験
- 一年の献血回数を超えている人
- 間隔が一定以下の人
など、献血できない場合もあるので注意しましょう。
献血ルームでの流れ
献血の流れは以下の通りです。
- 受付にて同意書、本人確認を行う
- 問診票での健康状態の確認
- ヘモグロビン濃度測定、血液型の判定
- 献血
- 休憩
- 献血カード受け取り
各地にあるセンターや献血ルーム、移動採血車で行われています。針や器具は滅菌済みのものを一度しか使用しない決まりになっています。
献血のメリット
献血はボランティアなので、何か見返りを得たいと思ってはいけないのですが、やはりある程度痛い思いをするんだし…と思ってしまうものです。そこで献血で得られるメリットをご紹介します。
血液の成分結果
献血をすると、後日血液検査の結果をもらう事ができます。「検査結果サービス:」という名称のもので、希望者には親展で送付されます。具体的な検査内容は以下の通りです。
- 血液型の検査
- 生化学検査
健康状態が分かる検査です。また、肝臓の状態や糖尿病など、様々な病気の可能性を探る鍵となります。
- ALT(GPT):肝臓の値。急性肝炎で上昇する。
- γGTP:肝臓、胆道、脾臓、腎臓に含まれる酵素。アルコール性肝障害で上昇する。
- TP:蛋白質の値。
- ALB:血清蛋白の50%を占め、栄養が悪くなると減少する。
- A/G:血清蛋白の比率。この値が異常な場合には、肝炎、肝硬変などの肝臓障害、糖尿病、ネフローゼ症候群、骨髄腫、悪性腫瘍、リウマチなどが疑われる。
- CHOL:コレステロール値。動脈硬化のリスクを判断できる。
- GA:糖尿病検査の一つ。
・感染症検査
梅毒、B型肝炎・C型肝炎ウイルス、エイズウイルス検査、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)抗体検査、ヒトパルボウイルスB19抗原検査
・血球計数検査
赤血球の数やヘモグロビン量など、血液中の成分の量を検査するものです。出血を起こしやすいかどうかについてや、細菌感染症やウイルス感染症がある場合は値が異常になります。
・NAT(核酸増幅検査)
何かに感染していても、ウイルスに感染してから日が浅いと体内でのウイルス増殖が充分ではなく、まだ抗体ができていないため通常の検査では感染が分からない事があります。このような血液を輸血してしまう事のないよう、非常に微量なウイルスを検出するために行われるのがNATと呼ばれる検査です。従来の検査よりも感染してから早い時期でのウイルス発見ができます。
※当たり前ではありますが、感染したかもしれないから検査ついでに献血、というのは非常に迷惑なのでやめましょう。
無料のサービス
献血ルームに行くとジュースがもらえるという噂話を良く聞きますが、これは本当の事のようです。もともとは献血後には水分補給と休憩が必要なため無料でのドリンク類サービスがありますが、近年ではこの休憩エリアが非常に充実しているセンターが存在するようです。
ジュースにおやつ、アイスクリームなどのサービスがある他、漫画やネイル、占いのサービスがある所もあります。これだけのサービスをしなければいけない程献血する人が少ないという事で多少複雑ですが、献血を迷っている方はセンター毎のサービスを見比べてみてもいいかもしれません。
献血後の注意事項
献血後充分休憩スペースを満喫したとしても、血を抜いた後なので身体は正常の状態とは異なります。献血後の注意点について確認しておきましょう。
十分な水分補給、休息
身体から水分が抜けているので、水分の補給が必要です。また、貧血のような状態に成る事もあるのでいきなり動き回るのはあまりよくありません。ボランティアのつもりで献血したのに、自分が病院のお世話になっては意味がないので、遠慮せず休憩して下さい。
お酒は控える
アルコールは脱水症状を引き起こすので、脱水状態にある献血後のお酒は厳禁です。どうしてもの場合はお酒の前にお茶な水で充分水分補給をしてからにしましょう。
献血後2時間くらいあけてからと指導されています。
煙草は控える
煙草は血管を収縮させるため、めまいを引き起こす事があります。献血後は最低でも1時間あけるようにして下さい。
重いものは持たない
思った程痛くなかったという意見が多い献血ですが、採血用の注射針は太めなのでなかなか傷がふさがらない場合があります。献血時の絆創膏は2時間程度で剥がしてよいですが、当日は重労働や運動は避けた方が無難です。
お風呂
お風呂は献血後2時間以上開けるべきです。また、針が刺さった所をごしごしとこすらないように注意が必要です。
転倒に注意する
前述の通り貧血状態にあるため、転倒には充分注意が必要です。普段は階段を利用する方も、献血当日は無理せずエレベーターを使いましょう。
また、男性の場合トイレで失神する事があると言われています。献血直後に用をたす場合は座位がおすすめされています。
まとめ
痛い思いをして献血するのはちょっとと思う事もありますが、血液は常に不足しており、長期間の保管も不可能なためなかなか充実した量を供給する事が難しい状況にあります。そのためいろいろなサービスが提供されています。健康状態を知る事のできるいい機会にもなるので、迷っている際はこの点考慮してみて下さい。
ただし、明らかに感染のリスクがある状態で検査目的の献血を行うのはルール違反です。精密な検査が行われているのの、中には検査をすりぬけてしまう可能性があり、非常に危険です。また、休憩はしても構いませんが食べ物は食べ放題という訳ではないので注意しましょう。
協力によって支えられている制度です。ルールを守って協力するようにしましょう。
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