グリセリンは昔から名前は、広く知られていました。グリセリンは1779年に、スウェーデンのカール・ヴェルヘルム・シェーレによって、オリーブオイルに含まれるグリセリンを、発見したのが始まりです。
グリセリンとは動植物の体内に存在する、アルコールの一種で、別の名をグリセロールともいわれます。無色透明で、甘く匂いがありません。保湿力が高く色々な用途に使われています。
グリセリンが発見された当初は、膠(にかわ)やコルクの製造に使われていました。その用途はだんだんと広がって、インクの染色助剤や、現在では化粧品、食品、水彩絵具、医療などの分野と幅広く利用されるようになりました。
医療分野では利尿薬や、脳圧下降薬、目薬、浣腸、座薬と言った様々なものに配合され、広く利用されています。グリセリンについて、詳しく調べてみました。
グリセリンとは
グリセリンとはどのような物で、何から作られているのでしょうか?
グリセリンの原料
グリセリンは動植物や海藻などにも含まれて、自然界に存在する天然成分の、動植物の体内に存在するアルコールの一種です。ですから人間の身体にも存在するものです。植物オイルから抽出する、透明の液体で水に溶けやすく、水分を引き寄せる性質があり、味は甘くてにおいがありません。
グリセリンは20世紀以降に学術分野において、グリセロールの名前で呼ばれるようになりました。グリセリンは現在では、化粧品の原料や、食品の甘味料、医薬品など幅広く利用されていて、現在では大豆や獣脂から、抽出されて生産されています。パームやヤシ油からも天然グリセリンとして作られています。
グリセリンの性質
グリセリンにはにおいがなく、水に非常に溶けやすい性質があり、無色透明の粘り気をもつ中性の液体です。
また強い吸湿力と甘味を持つことから、甘味料や化粧品にも利用されています。無害であり生物分解も微生物により早いため、畑の腐植土(ふしょくど)や堆肥(たいひ)に活用されいます。またグリセリンは危険物第4類(引火性液体)の第3石油類に、消防法により指定されています。これはグリセリンが可燃性を持つためです。
グリセリンの注意点
食品や化粧品に含まれている、グリセリン及びグリセリン脂肪酸エステルは、毒性は低く全く問題がないと思いますが、グリセリンの容器からグリセリンを直接取り出して、肌に付けることはNGです。なぜなら原液のまま使うと、先にも書きましたがグリセリンは、水分を引き寄せる力がとても強いために、肌の水分を吸収して肌を乾燥させてしまいます。
グリセリンの水に溶けやすく、吸湿力がある性質がグリセリンを、直接肌に付けることで、肌の水分を吸い上げて、乾燥肌に変化させてしまいます。グリセリンの吸湿力の高い性質が解ると思います。また水で薄めても濃度が問題で、グリセリンの配合量が多すぎると、これまた乾燥肌の原因となります。
グリセリン配合の化粧品は、グリセリンが吸湿力が高いため、空気中からの水分を取り込みやすくなります。グリセリン配合の化粧品を、キャップの閉め忘れなどすると、空気中から水分を取り込んで、化粧品のグリセリンの濃度を下げて、化粧品の粘性を失ってしまいます。ですからグリセリン配合の化粧品は必ず、キャップをきちんと閉めて、空気中の水分を取り込まないようにしないといけません。
グリセリンの特徴
化粧品
グリセリンの特徴は安全性が高いうえ、保湿効果が高いために、化粧品を作る際にグリセリンを定番の原料として使うことが多くなっています。手作り化粧品などを作るときは、特に定番としての原料に加えられています。
化粧品では水に非常に溶けやすく、吸湿性の強いのを利用して、保湿剤として使われています。グリセリン配合の化粧品は、保湿効果が高い事と、肌をうるおす効果の、両方を兼ね備えていると言えます。
グリセリンの適度な濃度は、5~10%配合の化粧品が、一番肌を潤す量だと思います。手作り化粧品を作るときは、梅雨~夏にかけては5%ぐらいのグリセリンの配合で、冬の乾燥時期にはグリセリンは10%に濃度を変えてみると、とてもお肌を潤して、保湿効果が年中均等に肌を保つことになります。
またグリセリンとヒアルロン酸はとても相性が良くて、化粧品のほとんどはグリセリンとヒアルロン酸配合の化粧品です。
手作り化粧品
手作り化粧品をグリセリンで作ると、とても簡単に作れます。
- 用意するものは、グリセリン、精製水、化粧水容器(なければ100円均一などで探してみてください。)小さじ
- 容器を十分熱湯で消毒して、手で容器の口など触れないようにしましょう。雑菌の入る原因になります。
- 容器に精製水95㏄を量っていれます。グリセリン5㏄(小さじ1杯)を量り精製水の中に加えて、容器の蓋をしめて、混ぜ合わせます。
- グリセリン化粧水の出来上がりです。
- 純度の高い化粧品を作りたいときは、精製水とグリセリンの他に、クエン酸、エタノール、尿素、ヒアルロン酸などを入れると、保存のきく純度の高い化粧品が作れます。
これらの化粧品は雑菌が入りやすいために、冷蔵庫に入れて1週間ぐらいで使い切ることが大切です。精製水は不純物を取り除いて、作られた無味無臭の水で、比較的純粋な水です。紫外線、イオン交換、ろ過、蒸溜などの手法で濃度を上げたもので、減菌や殺菌などの精製されたものです。
食品
グリセリンは虫歯の原因になりにくく、その為に食品添加物や、甘味料などに使われています。
また保存料や、食品の水分を保つ保湿剤、ガムの粘度、柔らかさをつける軟化剤、日持ちをさせるための向上剤は、菌の増殖を抑制して菌を減らす、静菌性を持ち合わせています。また甘味料、増粘安定剤、脂肪酸と結合したグリセリン脂肪酸エステルは乳化剤、豆腐製造時の消泡剤などに使われています。
薬品
グリセリンは優れた血管拡張作用があるために、医薬品に幅広く利用されています。利尿薬や脳圧降下薬、慢性狭心症の痛みの軽減、また皆様ご存知の浣腸薬や座薬にもグリセリンが利用されています。
グリセリンの配合された、ニトログリセリンを舌で溶かして服用すると、全身の血管を強力に広げる働きにより、狭心症の発作の負担を軽減します。また目薬や軟膏などにも利用されています。
グリセリンとダイナマイト
1846年にイタリアのアスカニオ・ソブレロがニトログリセリンを発明しました。グリセリンと硝酸及び硫酸の混合物を、反応させ合成させました。
グリセリンは無害ですが、ニトログリセリンはとても驚異的な爆発力をもつ、危険極まりないものでした。ソブレロは余りにも危険すぎる爆発物で、自分自身も実験中の爆発によって火傷だらけになり、多くの人の命まで奪うニトログリセリンを、使い物にならないと思って、危険なニトログリセリンを作ったことを後悔していました。
この危険な爆発の威力に注目した人々の手によって、1867年にスウェーデンの化学者アルフレッド・ベルンハルド・ノーベルが、ニトログリセリンからダイナマイトを作り出しました。これはニトログリセリンを珪藻土(けいそうど)に染み込ませることで、固形化して安定させ、扱いの容易なダイナマイトに成功させました。
ノーベルはこのダイナマイトの、研究中に爆発によって、実の弟を亡くしました。現在ではダイナマイトは工事現場で、岩盤の破壊などに使われています。ダイナマイトは工事の作業の効率化を進めるうえで、無くてはならなくなり広く普及しました。また戦争でもダイナマイトは利用されました。
ノーベルは皆様もご存知のように、ノーベル賞の生みの親なのです。ダイナマイトを発明したノーベルは「ダイナマイトの父」と呼ばれています。
グリセリンと人間
さてそれでは人間の中に存在している、グリセリンとはどのような物なのでしょうか?
人間の中に存在しているグリセリンとは、中性脂肪としてグリセリンが存在しているのです。食べ物を食べて体内の中に吸収されたグリセリンは、一旦脂肪酸とグリセリンに分解されます。分解されたグリセリンは小腸で吸収されたのちに、小腸壁で再合成され中性脂肪となります。
普段は皮膚下や、筋肉などに蓄えられている、グリセリンと脂肪酸から構成される中性脂肪は、必要に応じてエネルギーに変えられます。この様にグリセリンは、人間の体内の中に存在しているので、医薬品はもちろん、食品や化粧品に利用されていて、無害でにおいがなくてとても扱いやすい物質です。
このグリセリンは動植物から抽出する天然のものと、石油から抽出するものがありますが、現在では石油から抽出することは、かえってコストが高くなり、採算が合わなくて、直接ヤシ油や、パーム油を加水分解して作られている、天然のグリセリンが殆どです。天然グリセリンから化粧品や、食物添加物、医薬品に利用されています。
グリセリンとワセリンの違い
グリセリンとワセリンよく似たような、感じですがどの様に違いがあるのでしょうか?
グリセリンとワセリンの違いは正反対の物質で、違いには色々あります。
グリセリン
グリセリンは水を加えると、きれいに混ざり合います。これはグリセリンは水溶性で水を吸湿する力が強いからです。化粧品には化粧水や、水を加えて作る乳液、クリームなど、様々な化粧品に配合されます。
グリセリンは水溶性のため、水に薄めたグリセリンをお肌に塗ると、お肌をしっとりしなやかにさせます。ワセリンとグリセリンの肌に付けたときの感触も、まったく異なります。グリセリンは水で保湿して、さっぱりした感触です。このさっぱりした感触は、湿気の多い梅雨から夏にかけても使いやすいです。
ワセリン
ワセリンは油性の物質で、液体にするためには、60℃以上の温度に加熱しなければなりません。ワセリンは水に溶けなくて、40℃近くで固形に戻ろうとする性質があるため、化粧品の原料には加えることができないのです。
ワセリンはグリセリンと違って、みずみずしい感触とは言い難いものがあります。ワセリンを塗るとべっとり感が否めません。しかしワセリンにはグリセリンにはない、寒さや乾燥に強くて、また水をはじく特徴があるので、一度ワセリンを塗っただけで、長時間肌をしっとりと柔らかく保つことができるのです。これは油性の性質のためです。ワセリンは肌を油性の保護膜として、肌を覆い肌の柔らかさを、保つことができるのです。ワセリンも医薬品に保湿効果として使われています。
ワセリンは石油が原料で、鉱物油からの精製による、炭化水素類の混合物の純度の高いものを、医薬品には使用しています。
グリセリンの生産
グリセリンは自然界に存在する天然成分ですので、年間100万トン以上も生産されています。
主に大豆油や、獣脂などの加水分解によって作られますが、プロピレンから化合合成することもできます。しかし化合合成は現代ではコスト面から見直されています。
油脂
グリセリンの生物の油脂には、トリアシルグリセロール(トリグリセリド)が、大量に含まれていて、これはグリセリンと、脂肪酸の化合物です。加水分解するとグリセリンと脂肪酸に分けられます。
プロピレン
プロピレンからエピクロロヒドリンやアクロレインや酸化プロピレンなどを経由して合成する方法が知られています。プロピレンからエピクロロヒドリンを経由するのが主でです。しかしバイオディーゼル燃料の普及によって、供給過剰にグリセリンはなっていて、化学合成法はコスト的に割に合わなくて、見直しをされています。
グリセリンの効果
美肌
グリセリンは保湿効果が高いため、化粧品に多く用いられています。水に溶けやすく、濃度が高いとべとついた感じになります。ですから皮脂欠乏症の方には、グリセリンの濃度の高いものをお勧めすると、潤った肌の感触を得ることになります。
グリセリン配合の化粧品で、保湿感とべたつきが増えてくるのは、グリセリンの添加率によるものです。また逆に肌の水分を奪うことになるのは、15~20%グリセリンが配合された化粧品です。
ヒアルロン酸とグリセリンはとても相性がよく、ヒアルロン酸とグリセリンを一緒に配合した化粧品が数多く出されていて、ほとんどと言ってよいと思います。グリセリン配合の化粧品は、グリセリン自体肌を柔らかくする効果があるので、保湿効果と肌を柔らかくする両方の効果が期待される化粧品が、数多くでています。
肌荒れ改善
グリセリンの効果は肌荒れを抑制する効果です。肌荒れには、疾病や精神状態など内部の自律神経の乱れや、乾燥や紫外線による外からの刺激によるものがあります。肌荒れになると、一般的に水分保持機能低下の角質層による、ターンオーバーの乱れから、バリア機能が損傷して、角質層の炎症が伴う症状が出てきます。
グリセリンは吸収性が強いため、角質層に潤いを与え、肌荒れを改善する働きがあります。肌荒れ防止剤は角質層本来の働きを取り戻させ、失われた成分補給を目的として、炎症や乾燥などの状態を改善します。
便秘解消
グリセリンは医薬品として利用されています。中でも浣腸薬に配合されているのは、グリセリンの持つ特徴の、吸湿性の効果を利用したものです。
排便を促すために、腸壁を刺激することにより、蠕動運動を促進するのですが、肛門から直接浣腸薬を入れることで、組織からの水を吸引して、腸壁に刺激をあたえて、便秘を改善します。
利尿効果
利尿薬としてもグリセリンは、利用されています。グリセリンは化学的変化を受けないため、尿の分泌を促す効果があります。グリセリンは腎臓にある糸球体でろ過されても、再吸収されないために、尿細管の浸透圧が増加して、水やナトリウムの再吸収が抑えられます。
狭心症
グリセリンは血管を拡張する効果があるために、狭心症発作が起こると、ニトログリセリンを舌で溶かして、狭心症の発作を緩和させるために利用されています。
狭心症は発作的に胸の痛みや、圧迫感などを起こす症状の病気です。血管内の内側が動脈硬化などで狭くなっていて、酸素や栄養を運ぶ血液を十分、心筋に届けることができなくて、発作的に胸の痛みや圧迫感が起こる病気です。
詳しくは、狭心症の症状をチェック!種類や原因、治療方法を紹介!を参考にしてください!
まとめ
グリセリンは現在ではあらゆる所で使われ、皆様も良くご存知のことと思います。グリセリンが身体の中の中性脂肪であることは、私は知りませんでした。動植物のほとんどのものに存在するものですから、毒になるようなものは存在しません。
グリセリンは化粧品だけでなく、医薬品にも幅広く使われていて、その利用方法は年々増えてきているようにも思われます。またポリウレタンやセロファン、フィルム、歯磨き、香料、石鹸、繊維、紙、溶剤などありとあらゆるものに、使われています。
とにかくグリセリンは食品、化粧品、医薬品の分野に幅広く利用され、その効果も非常に大きく、人間世界にはなくてはならない、物質になりつつあります。
またグリセリンは価格的に低下であるため、手作り化粧品などが簡単に作られています。
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