シガテラ毒の症状って?毒を含む魚を知ろう!治療方法は何?

「シガテラ毒」とは、魚介類の食中毒の1種です。南洋の海に発生する有毒性のプランクトンによって汚染された魚介類を食べると、「シガテラ毒」という食中毒を起こします。

魚介類の中毒というと、つい「フグ」を思い浮かべてしまいますが、アサリやホタテ、カキなど2枚貝の貝毒も恐ろしいですね。シガテラ毒も貝毒も、プランクトンの毒による汚染が原因です。

シガテラ毒による中毒は、世界周航を3回も成し遂げた海洋探検家ジェームズ・クックの1774年の航海日誌にも書かれています。「シガテラ毒」という言葉は、キューバに移住したスペイン人が、当地で「シガcigua」と呼ばれる巻貝を食べて食中毒を起こしたことに由来します。

今のところ、日本ではシガテラ毒による死者は出ていませんが、フグや貝毒の食中毒では死亡する危険がありますから、決して軽視できるものではありません。シガテラ毒の毒の実態、中毒症状、対処方法について、お伝えしますね。

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シガテラ毒とは?

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シガテラ毒とは、熱帯の海に棲息する有毒渦鞭毛藻(ゆうどくうずべんもうそう)などの有毒プランクトンによって汚染された魚介類を食べることにより発症する食中毒です。

[毒素]

食中毒を発症する毒素には、いろいろあります。フグの毒は、主としてテトロドトキシンです。青酸カリの約1,000倍という強い毒です。

シガテラ毒を発症させる毒素は、シガトキシン・スカリトキシン・マイトトキシン・シガテリンなど類縁系も含めると20種類ほどあります。

シガトキシンは、非常に強い神経毒です。テトロドトキシンの数十倍も強いと言われます。マイトトキシンは、シガトキシンよりも、さらに強い毒性を有します。シガトキシンは血液脳関門を通れないので、末梢神経に作用します。

シガトキシンは、テトロドトキシンと異なり、ナトリウム・チャネルのサイト4と結合して、ナトリウムの透過性を高めます。ナトリウム・チャネルはイオンチャネルの1つで、ナトリウムイオンを選択して透過させます。ナトリウム・チャネルは、中枢神経・末梢神経・心筋・心室・心房に多数存在します。

ナトリウム・チャネルが開いて、ナトリウムイオンが細胞内に入ると、細胞が興奮します。細胞が興奮しすぎると、ナトリウム・チャネルが閉じてナトリウムイオンが入らないようにします。シガトキシンの毒性により、ナトリウム・チャネルがうまく働かないと、心収縮・聴覚・温度感覚に異常が生じます。

シガトキシンは熱に強いので、煮たり、焼いたり、加熱調理しても毒性は消えません。また、スカリトキシンやシガテリンなど類縁系の毒素も、シガトキシンとともに、魚介類の味を左右することはありませんから、食べても気がつきません。毒素が調理中に煮汁に溶けだすこともあります。これらの毒素は、母乳から乳児に移ることがありますので、魚介類を全く口にしていない乳児が中毒を起こす可能性もあります。

[なぜ魚介類がシガテラ毒を持つようになるのか?]

フグでも巻貝シガでも他の魚でも同じことですが、魚介類自身が体内で毒素を生成しているわけではないのです。毒性を持つプランクトンによる食物連鎖によって「生物濃縮」が起きるためです。生物濃縮は、「生体濃縮」「生態濃縮」とも言います。

有毒渦鞭毛藻のような植物プランクトンは、食物連鎖の生態ピラミッドの最底辺部に位置します。植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ、動物プランクトンはイワシなど小魚に食べられます。小魚はイカなどもう少し大きい魚介類に食べられます。この食べる・食べられるという関係を「食物連鎖」といいます。「食物連鎖」を図に表すと、ピラミッド状になります。つまり、下位にくる生物ほど個体数が多く、上位の捕食者ほど個体数が少なく、生態系のバランスがとれているのです。

「生物濃縮」とは、ある種の化学物質が食物連鎖を経て、上位捕食者の体内に高い濃度で蓄積されていくことです。

シガトキシンやテトロドトキシンのような有毒化学物質は、水に溶けにくく、水になじみにくい性質があります。その上、代謝しにくいので、尿などとなって体外に排出されません。生物の体内に蓄積されてしまいます。そのため、食物連鎖をくり返すことにより、上位捕食者の体内に有毒化学物質が蓄積され、有毒化学物質の濃度が増大します。これが「生物濃縮」です。

食物連鎖により、イシガキダイやオニカマスにはシガトキシンや類縁系の毒素が高濃度で蓄積されてしまいます。それで、イシガキダイやオニカマスなどを食べると、シガテラ毒を発症するのです。

これは、フグ毒テトロドトキシンやマリントキシンの仲間である貝毒も、同じです。毒素は「生物濃縮」により、魚介類の体内に蓄積されるのです。

[有害渦鞭毛藻]

シガテラ毒を起こさせるのは、有毒渦鞭毛藻です。植物性プランクトンの1種で、食物連鎖ピラミッドの最底辺部に位置します。

有毒渦鞭毛藻は、海水でも淡水でも発生するので、広い範囲に分布しています。しかも、シガテラ毒だけではなく、いろいろな毒素を産生しています。有毒渦鞭毛藻の毒素は4つに大別できます。➀直接、魚介類に害を及ぼす毒 ②麻痺性貝毒 ③下痢性貝毒 ④シガテラ毒・神経性貝毒 です。

シガテラ毒を産生する有毒渦鞭毛藻は、ややふくれた円盤状の細胞で、海藻などの表面に付着しています。カリブ海・インド洋・太平洋など熱帯の海に発生するとされていますが、船舶が高速で航行するようになり、また、航行船舶数が増加したため、従来の発生海域から外へ持ち出されることが多くなっています。地球温暖化により海水温度が上昇しているので、持ち出された有毒渦鞭毛藻が繁殖しやすくなっています。

日本では沖縄近海で発生していましたが、最近では、本州付近にも有毒渦鞭毛藻が発生しています。今までシガテラ毒が発症しなかった地域でも、シガテラ毒が発症することがあります。鹿児島県から千葉県、茨城県など太平洋沿岸で、シガテラ毒を保有する魚が水揚げされるようになりました。

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シガテラ毒の症状について

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シガテラ毒の主な毒素であるシガトキシンは、末梢神経に作用する強力な神経毒ですから、知覚異常が特徴的な症状です。

シガテラ毒の中毒患者数は年間約20,000人と言われます。シガテラ毒は、貝類ではなく、主に魚を食べて発症します。

[シガテラ毒の中毒症状]

一般的に、食中毒症状は、魚を食べてから1~8時間程度で発症します。しかし、遅い人は、2日後に発症することも、まれにあります。

➀神経系症状

最も特徴的な症状が、「ドライアイスセンセーション」という温度感覚異常です。冷たい物に触れた時、ドライアイスに触れて凍傷にかかったように感じます。

もう1つ、温度感覚異常として「コールドセンセーショナルリバーサル」があります。熱いものに触れた時、冷たく感じるのです。

不整脈や徐脈になります。不整脈とは、心拍数が異常に速くなったり(1分間に100以上)、異常に遅くなったり(1分間に50以下)、心拍リズムが乱れることです。徐脈とは、心拍数が異常に低下することです。1分間の心拍数が60以下になります。

胸がドキドキして、痛みや圧迫感を感じることもあります。血圧が低下するなど血圧異常が起こります。めまいがしてふらつきます。全身に脱力感があります。身体をスムーズに動かせない運動障害が起こります。

頭痛・手足の痛み・筋肉痛・関節痛などが生じます。痒くてかきむしりたいような感じなど、感覚異常が生じます。尿がでにくくなったり、頻尿、尿失禁などの排尿障害が起こります。

神経系に毒が作用して重症になると、麻痺や痙攣が起きて、ショック状態になります。昏睡に陥り、死亡することもあります。日本では、まだ死亡症例は報告されていませんが、海外では死者が出ています。

これらの神経系症状は、1~2週間で回復しますが、数ヶ月から1年も続くことが少なくありません。重症の場合は、回復に数年間かかることもあります。

②消化器系症状

吐き気・嘔吐・腹痛などが数日間続きます。時には、もっと長く、数週間続くことがあります。

[シガテラ毒の治療法]

シガテラ毒の効果的な治療法は、現在のところ、まだ確立されていません。それぞれの症状を抑える薬剤を投与する「対症療法」しかありません。例えば、痒みには抗ヒスタミン剤、徐脈には硫酸アトロピンという具合です。

対症療法にすぎませんが、放っておくと、回復に長くかかることもありますし、最悪、死の危険があります。「シガテラ毒の症状」で述べたように、「ドライアイスセンセーション」か「コールドセンセーショナルリバーサル」が現れた場合は、すぐに医師の治療を受けてください。血圧異常・脈拍異常・麻痺や痙攣などが起きるので、設備の整った総合病院へ行くことをオススメします。もちろん、近くのかかりつけ医師に診てもらう方が、手っ取り早いこともありますね。

[シガテラ毒の発症事例]

1997年~2006年の10年間で、シガテラ毒の患者は沖縄県で103人と報告されています。

イシガキダイによるシガテラ毒の発症例は、1992年までは沖縄県で報告されていますが、それ以降は、宮崎県・鹿児島県・千葉県で10人以上のシガテラ毒患者が発生しています。特に、1998年喜界ヶ島(沖縄県)では19人、1999年千葉県では12人と、多数が発症しています。2007年には、神奈川県で7人、大阪府で9人が発症しています。シガテラ毒を保有する魚が北上していることがわかります。

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シガテラ毒を防ぐには?

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シガテラ毒にかからないためには、シガトキシンなどシガテラ毒素を持つ魚を食べないことです。ところが、シガテラ毒素を保有する魚は400種類に及ぶので、ほとんどの魚が食べられなくなってしまいます。

[シガテラ毒素を保有する魚]

シガテラ毒素を保有する魚は、バラフエダイ・イシガキダイ・オニカマス・カマス・ウツボ・バラハタ・マダラハタ・ギンガメアジ・サザナミハギ・ヒラマサ・ブリ・カンパチ・ネムリブカ等400種類以上もあります。ウツボやカマス、ブリなどは上位捕食者ですから、シガテラ毒素の濃度も高くなります。

でも、ヒラマサやカンパチ、ブリ、カマスなど、上記の魚の中には、私達が日常食べている魚が多いですね。とても美味しい魚ですから、よく食べます。でも、たいていの人が、シガテラ毒を発症していません。それは、これらの魚が全部、シガテラ毒素を保有しているわけではないからです。毒素の濃度も、同じ種類の魚でも、個体差があります。

日本国内で流通している魚であれば、それほどシガテラ毒の心配はありません。危険なのは、有毒渦鞭毛藻が多量に発生するサンゴ礁で捕獲された魚です。

また、魚の部位によって毒素の濃度の高低があります。シガテラ毒素は、魚の内臓や消化管の内容物に高濃度で保有されています。シガテラ毒が心配ならば、魚の内臓を食べないようにすればいいでしょう。

熱帯地方や熱帯の発展途上国に行く時は、シガテラ毒のリスクが高くなることを、覚えておくといいですね。魚を食べて、30分から数時間以内に気分が悪くなった時は、ためらわずに医療機関へ行くようにしてください

[食用制限]

厚生労働省は、シガテラ毒を発症する魚を「有毒魚」として指定しています。昭和28年6月に「オニカマス」を有毒魚に指定して、食用を禁止しました。

都道府県では、シガテラ毒を発症した事例のある種類の魚を「有毒種」として、食べないように指導しています。

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まとめ

シガテラ毒は魚の食中毒の1種です。もともとは、熱帯の海のサンゴ礁に棲息する魚を食べて発症する食中毒でした。日本では、沖縄近海の魚がシガテラ毒素を保有していました。でも、地球の温暖化により海水温が上昇したため、シガテラ毒の原因となる有毒渦鞭毛藻という植物プランクトンの発生水域が拡大し、シガテラ毒素を保有する魚の棲息水域や種類が拡大しました。そのため、日本でも、シガテラ毒の発症が増えています。

シガテラ毒の毒素は、シガトキシンやマイトトキシンなど20種類以上あります。シガトキシンはテトロドトキシンの数十倍という強い神経毒です。テトロドトキシンは青酸カリの約千倍も強いといいますから、シガトキシンの毒性の強さが並々でないことがわかります。マイトトキシンはシガトキシンより強い毒素です。

シガテラ毒の怖さは、神経毒ということです。神経系に作用して、温度感覚異常や血圧異常、心拍の乱れを起こしたりするばかりでなく、麻痺や痙攣、昏睡などを引き起こします。最悪の場合は、死に至ります。また、回復までにかなり時間がかかります。時には、数ヶ月から1年も症状が続きます。重症になると、回復に数年間かかることもあります。

シガテラ毒は治療法もまだ確立していませんし、予防も難しいとされています。それほど神経質になることはありませんが、魚を食べた後に頭痛や吐き気、心拍異常が起きたら、シガテラ毒の可能性があります。

特に、「ドライアイスセンセーション」や「コールドセンセーショナルリバーサル」という症状は、危険信号です。すぐに医者へ行ってください!

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