女性であればいつもの事ともいえる月経ですが、月経以外の時に出血する不正出血には十分注意が必要です。個人差が大きいため、鮮血が出る場合もあり驚かれる事も多いかと思います。鮮血が出たからといって必ずしも大きな病気であるとは限りませんが、変化が合った場合には早めに病院に行くべきでしょう。
以下に不正出血の理由として考えられる病気と、予防策についてまとめました。
不正出血とは
不正出血とは、おおまかには生理時以外に出血する事をさしています。生理周期は一般的には25~30日程度ですが、個人差が大きく周期があてはまらない人やバラバラの人などさまざまです。そのため、不正出血に気が付かない事もよくある事です。
不正出血には以下のような分類があります。
機能性出血
卵巣の働きによるものです。月経はホルモンの濃度で変化していますが、このホルモン分泌のバランスが崩れると不正出血が起こります。
正常な場合、生理が終われば体内のエストロゲンというホルモンの濃度が低下しますが、濃度が高い状態が続く事で出血が起きてしまいます。また、エストロゲンの濃度が高いままだと排卵が起こらないという問題もあります。
- 出血の回数が多い(21日よりも周期が短い)
- 貧血
- 7日を超える長期の月経が起こる
などの特徴があります。
おおまかにはホルモンによる治療などが行われます。
器質性出血
子宮や卵巣、膣などに炎症があり、その炎症部分から出血しているものを指します。機能性出血よりも物理的な問題がある状態といえるでしょう。
ポリープやびらん、がんによる出血はこちらの器質性出血に分類されます。
血液の色による原因の違い
不正出血には様々な原因がありますが、鮮血が出る場合やそうでない場合など、ある程度予想がつくものについてまとめました。
茶色の出血
茶色の出血の場合、子宮や膣の奥で出血が起こっている可能性が高いと考えられます。そのため、茶色の不正出血が合った場合は子宮の病気が疑われます。
子宮筋腫
女性の4人に1人が子宮筋腫を持つとも言われる、非常に患者さんの多い病気です。子宮の壁は筋肉でできており、この筋肉の層の中で細胞が異常増殖して腫瘍ができます。
子宮筋腫ができ、表面がでこぼこになるとそれだけ表面積が増え、生理が長引いたり不正に出血する理由になると考えられています。
良性の腫瘍なので命に関わる事はありませんが、月経が長引いたり月経痛がひどくなる場合があり、治療を行うべきケースもあります。
子宮筋腫については、子宮筋腫の治療方法は?症状によって変わる対処方法!を参考にして下さい。
子宮内膜症
子宮の内側にある子宮内膜は、本来子宮の中にだけ存在するはずのものですが、何らかの原因によって他の所にできてしまう事があり、これを子宮内膜症といいます。
卵管や卵巣には特にできやすいですが、稀にあちこち移動して肺にできてしまう事もあるといいます。
子宮内膜の細胞は生理の時期にはがれおちるようにできていますが、子宮以外のところにできた内膜の細胞も同じようにはがれおちるので、血が出て行くところがなくて溜まってしまう場合や、周りと癒着してしまう場合があります。
薬物によるホルモン療法や病巣の除去手術などで治療します。
詳しくは、子宮内膜症は不妊になりやすい?原因や対処方法について!を読んでおきましょう。
子宮頸がん
子宮の頸部にできる悪性の腫瘍です。早期発見ができれば比較的予後が良く、婦人科検診でも見つけやすいがんと考えられており、特に早期発見が重要視されています。
特徴的な症状として、性交時など子宮頸部に刺激があった際に出血するというものがあります。また、進行するとがんが子宮の口をふさいでしまい、感染などが起こる子宮溜膿腫につながる場合があり、この場合は血と膿みが出て来るようになります。
がんの場合は子宮摘出が基本の治療となりますが、早期に発見できればホルモン治療が可能な場合もあります。
卵管炎
卵管は骨盤の中にある組織です。もともと無菌状態にある組織なので細菌への抵抗力が弱く、細菌が入ると炎症を起こしやすい組織です。
炎症が軽ければほとんど自覚症状がないものですが、進行するとおりものに膿みが混じって茶色がかってくるなどの症状が出ます。
抗生物質による治療を行いますが、重症化して周りの組織との癒着がある場合は卵巣や卵管を摘出する必要があります。
骨盤腹膜炎
骨盤の中で臓器を包んでいる腹膜が炎症を起こすものです。多くの場合、子宮頸管や内膜炎から広がって感染が起こっています。この場合も、膿みが発生するのでおりものに血が混じったようなものが見られます。下腹部全体の痛みや震え、悪寒、発熱などが症状として現れる場合もあります。
抗生物質による治療を行いますが、こちらも重症化して癒着がある場合は手術が必要です。
卵巣腫瘍
卵巣にはれがあるような状態の事を卵巣腫瘍といいます。良性のものも悪性のものも「卵巣腫瘍」という名前で呼ばれるところは他の臓器と大きく違う所と言えるでしょう。
強い下腹部痛があらわれる事が多く、腫れた卵巣がねじれてしまった場合は壊死の危険性があります。良性の場合も悪性の場合も、摘出手術を行い対処します。
鮮血の場合
鮮血が出る場合、出血している部分は外側に近い可能性があります。特に20~30代であれば以下の症状が疑われます。
排卵によるもの
排卵の際、卵巣の表面が破れて出血するものが排卵出血です。また、ホルモンバランスの変化により出血する場合もあります。
どちらの場合も一般的には気が付かないほどの血がでる程度ですが、まれに鮮血が出る場合があります。生理周期が安定していて、排卵日前後の出血であればこの排卵による出血の可能性が高いのでそれほど心配する必要はありません。
ただし、何日も出血が続く場合にはやはり病院で診察を受けるのが良いでしょう。
子宮膣部びらん
子宮膣部がただれて見える事を指し、病気ではありません。月経がある人の7割に見られる症状とされています。ホルモンの分泌により子宮頸管にある皮がめくれてみえるためびらんと呼ばれますが、治療の必要は特にありません。
痛みはない場合がほとんどですが、鮮血が出る事があり、あまりにひどい場合はびらんを取り除く治療を行います。また、清潔を保つことが改善策になります。
子宮頸管ポリープ
やや注意が必要とされるのが、40~50歳で鮮血の不正出血が合った場合です。閉経前後には助成ホルモンが不足するため、膣や子宮の出口がただれやすくなり出血が起こる事があります。
また、大量の鮮血の塊がある場合は子宮がんが疑われるため注意しましょう。
詳しくは、子宮頸管のポリープは悪性?治療方法や症状についてを参考にして下さい。
少量の場合
少量の出血が続く場合、ホルモンバランスの乱れが考えられます。
妊娠の初期症状
妊娠した場合、生理予定の1週間前〜予定日までに着床出血が起こる場合があります。着床出血は誰にでも起こるわけではなく、全体の1~2%といわれています。
着床がおこり、体が胎盤を作ろうとする過程で子宮内膜が溶けるという説や、受精卵が移動する際に子宮にある血管を傷つけてしまう説など様々な理由がありますが、非常に個人差が大きく、少し出血するだけの人もいれば鮮血が出たという場合も見られます。
妊娠の初期症状かどうかを判断するには基礎体温を確認するのが確実です。妊娠している状態であれば生理のあとも体温が高い時期が続きます。
女性ホルモンを安定させる対策
不正出血については、女性ホルモンを安定させる事が一番の健康対策となります。また、普段から安定した状態を保つことで異常があった場合に気が付きやすいので、病気の早期発見のためにも女性ホルモンを安定させておきましょう。
睡眠
ホルモンが分泌されるのは寝ている間です。特に眠り始めの3時間はホルモンが分泌されやすい時間帯なので、質の良い睡眠が出来るようこころがけましょう。寝る直前までスマホやパソコンを見ている、コーヒーを飲み過ぎるなどは睡眠の質を下げる事になるので十分注意しましょう。
ストレス
ホルモンバランスはストレスであっというまに崩れてしまいます。リラックスできる時間をとるように心がけましょう。
食事
ホルモンバランスを整える成分として奨励されているものについてご紹介します。
ビタミンE…女性ホルモンの材料となる物質です。妊娠を望む方や更年期を迎える方は特に摂取しておきたい栄養素といえるでしょう。ごまやアーモンド、ひまわりの種などに含まれます。
ビタミンB6…女性ホルモンの代謝に関わる栄養素です。美肌や動脈硬化にも効果があります。にんにく、まぐろ、酒粕に多く含まれます。
プラセンタ…胎盤から抽出されたエキスの事です。アミノ酸、蛋白質、脂質、糖質などを含み、その他にもビタミンやミネラルなどを豊富に含んでいます。乱れたホルモンバランスを正常に整える働きのある栄養です。
ボロン…ホウ素の一種です。骨の形成に効果のある栄養素として知られていますが、エストロゲンと同じような働きをする作用があり、バストアップ効果があるとして注目されています。キャベツをはじめ、りんご、海藻類、大豆などに含まれています。
大豆イソフラボン…エストロゲンと似た化学構造を持ち、働きも似ています。エストロゲンの足りない人には補給のためになり、多過ぎる場合には下げる働きがあるためホルモンバランスを整えるために非常に役に立ちます。
肌や髪のツヤを保ち、PMS対策にもなる他、自律神経を安定させる作用があります。
名前の通り大豆製品に多く含まれています。納豆や豆腐、きなこやみそなど、和食中心の食事にする事で取り入れやすくなります。
ホップ…PMSや更年期障害に効果のあるハーブです。鎮静作用に優れており、女性ホルモンに似た働きをするフィストロゲンという成分が含まれています。特に年齢を重ねて女性ホルモンが減少しがちな場合におすすめです。
まとめ
不正出血が鮮血だった場合などは驚いてしまいそうですが、それだけで大きな病気だと決めつけて過剰に心配する必要はありません。ただ、逆に見た目はたいした事がなくても大きな病気である可能性もあるので、どちらにせよ早めに病院で診察してもらうのが一番といえます。
女性の体は環境の変化やストレスなどですぐに不調が現れやすいですが、普段の状態を把握しておく事で変化に気が付く事ができるので、普段から自分の体に注意するようにしておきましょう。