セックスをするときに痛み(=性交痛)を感じる女性は、4人に1人いると言われています。
しかしこれは、自分だけではなく、相手も関わるデリケートな問題でもあるので、そういった悩みをなかなか相談できずにいる女性も多いようです。
せっかく、大切な人と愛情を確かめ合えるひとときを、痛みに耐えながら過ごすのは、つらいものです。このような問題は、相手との関係だけではなく、身体にも悪影響を及ぼします。
そこで、ここでは、セックスのときに痛みを感じる原因と、改善方法をご紹介します。
セックスが痛い原因は?
セックスのときに痛みを感じる場合、いろいろな原因が考えられます。女性の身体は非常にデリケートなので、些細なことでも、大きく影響してくるようです。
また、痛みを感じる場所や程度によっては、病気を引き起こしている可能性もあり、その場合、早めに受診する必要があります。性交痛が起きるのは、どのような原因が考えられるのか、早速見ていきましょう。
女性の「身体の準備」ができていない
女性は、セックスをするとき、安心感や愛情に包まれ、気持ちが高まることで、徐々に体液が分泌され、膣内が潤い拡がります。しかし、前戯が不十分だったり、あまりにも激しく動かされ、強く膣を刺激されると、身体の準備が追い付かず、膣を十分に潤わせることができません。
また、これは相手との問題だけではなく、本人の精神的な問題である場合もあります。例えば、セックスに対して嫌悪感やトラウマを抱いている場合や、自分の身体に強いコンプレックスを感じているなど、精神的な余裕がなければ、安心してセックスを楽しむことができません。
そうすると、もちろん、身体もそのように反応し、体液が十分に分泌されないといった状態を招いてしまうのです。
このように、女性の「身体の準備」ができていない場合、膣の入口や、骨盤が痛むケースが多く見られます。
誘発性膣前庭炎
セックスで、慢性的に痛みを感じる場合は、誘発性膣前庭炎である可能性が高いかもしれません。実際に、この病気が原因で、性交痛を感じるケースが最も多く、成人女性の約12%もの人が患っていると言われています。
誘発性膣前庭炎は、膣入口の前庭部と呼ばれる部分に刺激を加えると、激しい痛みを生じます。それまで痛みを感じることがなかった人が、突然発症する場合もあるようです。さらに、セックスをするときだけではなく、タンポンや指の挿入でも激しい痛みを伴うといった症状があるのも特徴です。
原因は、次の3つが考えられます。まず1つ目は、真菌感染などの炎症反応によって、前庭部の粘膜にある痛覚神経が、約10倍以上と異常に増加することによって痛みを生じる場合。
2つ目は、遺伝的な素因、そして3つ目は避妊薬の長期使用によるホルモンバランスの変化によるものです。
この他にも、精液や下着などの化学繊維、または、コンドームに使用されるラテックスに、アレルギー反応を起こすことが原因となる場合も、まれにあります。
子宮内膜症
月経は、本来子宮の中でしか起こりません。しかし、子宮内膜症になると、何らかの原因で腹膜や卵管、卵巣などの子宮以外の場所で月経が起こり、様々な不調を招きます。
明確な原因はわかっていないものの、生殖機能が正常に機能している女性の約10%に見られ、20~30代の女性に多く見られると言われています。月経痛や経血量の増加などに加え、月経以外の時期でも、下腹部に痛みが生じるなどの症状が見られます。
子宮内膜症を発症している場合、セックスの体位によって、膣の奥に強い痛みを感じることがあります。
詳しくは、子宮内膜症は不妊になりやすい?原因や対処方法について!を参考にしてください。
間質性膀胱炎
この病気は、検尿をしても、膀胱鏡という内視鏡で膀胱の中を見ても、特に異常が見つかるわけではないのに、尿が溜まると強い痛みを生じたり、尿意を頻繁に生じる、慢性の病気です。
そのため、この病気を患った人は、一日中、頻繁に排尿をせざるを得ない状況になります。多い人では20~30回もトイレに行かなくてはならない場合もあるようです。また、日本には患者数が約25万人、そのうちの約90%が女性であると言われています。
セックスの最中、またはセックス後に痛みを感じ、痛みの範囲は骨盤、外陰部、ひどい場合には太ももにまで及ぶ場合もあります。
膣の大きさ・形
膣の大きさにも個人差があります。生まれつき膣が小さかったり、処女膜が狭い、または膣の形の奇形といった場合には、セックスでの挿入時、強い痛みを感じます。男性器でなくても、指を入れただけで痛みを伴う人もいるようです。
このほかにも、自分の膣の大きさや形と、相手の性器の大きさや形が合わないといった場合も、痛みを感じることがあります。
セックスの痛みを和らげる方法は?
痛いのを我慢しながらするセックスほど、つらいものはありません。セックスが、愛情を確かめ合うための、素敵なひとときになるよう、痛みを和らげるための改善方法を見ていきましょう。
相手(パートナー)に相談する
こういった話は、大変切り出しにくいものですが、やはり、相手ありきのセックスです。とくに、十分な前戯がなく、膣が潤滑していない状態で痛みを感じる場合は、きちんと伝えるのが一番です。愛する人が、我慢しながらセックスをしているより、正直に話してくれた方が、相手も嬉しいのではないでしょうか?
セックスをしそうな雰囲気になってから話を切り出すのではなく、普段の会話の中で、「あのね、ちょっと言いにくいんだけど…」と話を切り出せば、相手も高揚した気分をへし折られた、といった印象を抱かずに済みます。
また、『あなたのせいで』というニュアンスを込めた話し方は、男性の心を傷つけてしまう可能性が高いので、「私は濡れにくいみたいだから、もう少し、時間をかけてやってみたい」というように、『自分がそうしたい』といったニュアンスで伝えると、受け入れてもらいやすいでしょう。
一度試して、たとえ上手くいかなくても、「次はこうしてみよう♪」と二人で違う方法を話し合えば、絆もより一層深まるかもしれません。
また、十分な前戯をしても、膣が十分に潤滑しない場合は、潤滑液などを使って、楽しみながら試してみるのも方法の一つです。
精神的な原因を取り除く
セックスに対して、トラウマや嫌悪感があったり、自分の身体に強いコンプレックスがあることで、セックスを楽しめず、膣が乾いたり収縮してしまう場合は、その根本となる原因を取り除く必要があります。精神的な原因は身体にも大きく影響します。
相手に打ち明けられる場合は、それを伝え、一緒に乗り越えていくことができれば、それが一番心強い方法と言えるでしょう。
精神的なダメージが大きい場合は、心療内科や産婦人科などで相談することもできますが、精神安定剤など、薬を使った治療よりも、心の傷を癒すという選択の方が、根本的な改善につながります。
心の傷はまず、傷ついたときの気持ちや、それに伴う現在の自分自身の「気持ち」を、「言葉」に変えることが、治癒のための第一歩です。言葉に変えて、それを人に話すことで、自身を俯瞰して眺めることができ、感情の波に飲み込まれるのを防ぐことができます。
恋人でも、友人でも、家族でも、カウンセラーでも良いので、自分の本当の気持ちをぶつけることができる相手に、話してみると良いでしょう。
セックスの体位を変えてみる
生まれつき膣の小さい人や、相手と性器の大きさや形が合わないと感じる人は、セックスをするとき、体位を変えてみるのも良いかもしれません。十分に膣を潤滑させておくことは大前提として、挿入後に痛みを感じる場合などには、効果的な場合があります。
楽しみながら、少しずつ、ゆっくりといろいろな体位を試し、挿入しても痛くない場所を探してみるのも良いでしょう。
また、膣の小さい人は、突然性器を挿入するのではなく、指で、膣の入口から内部に向かって、徐々に解してもらうのも、痛みを和らげる方法の一つです。
コンドームを見直す
コンドームの素材として一般的に使用されている、ラテックスという素材にアレルギー反応を示している場合は、コンドームを変えてみましょう。
自分自身では、なかなかコンドームのアレルギーだと気づきにくいので、産婦人科で相談し、検査をしてもらうと良いかもしれません。ラテックスアレルギーの場合、ポリウレタン製のコンドームもありますので、そちらを試してみるのも良いでしょう。
病院で診察してもらう
経血量の変化や、性交痛があまりにも強い場合は、一度産婦人科を受診することをおすすめします。子宮内膜症などの病気の場合は、早期の治療に越したことはありません。
また、感染症による炎症で膣が痛む場合は、セックスをすることで、相手にも細菌をうつしてしまう可能性もあります。感染症の疑いがある場合は、念のために自分だけではなく、相手も一緒に診察してもらうと安心でしょう。
そのほかにも、間質性膀胱炎のように、頻尿の傾向がある人は、泌尿科を受診しましょう。薬物療法のほかに、水圧拡張(麻酔をして、委縮した膀胱を水圧で拡張する)などの方法で、先に病気を治療することで、性交痛がなくなるケースも多々あります。
少しでも「普通ではない」と感じたら、病院で診察してもらいましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。問題が問題なだけに、なかなか人に相談しづらいとは思いますが、子宮内膜症などの病気が原因でセックスのときに痛みを生じる場合、放っておくと、年齢とともに症状が悪化し、ひどい場合には癌に病変することもあります。
身体に明らかに異変がある場合は、できるだけ早めに医師に相談しましょう。
また、女性の身体がデリケートであることを、相手に知ってもらうのは、とても大切なことです。痛みを生じていなくても、セックスが気持ちよくないと感じる場合は、「相性が悪い」という否定的な視点ではなく、「どうしたら気持ちよくなるか?」という視点で前向きに相談し合うと良いかもしれません。
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