童話に出てくるような小さくてかわいらしい小人のような人たち、映画や舞台などで活躍されている人も多くいます。それらの人たちは、小人症という疾患のために身長が伸びずに低身長で大人になったということを知っていましたか?
およそ100人に2人程度の割合ですが、日本にもこのような疾患に罹る人がいます。あまり知られていない小人症についてまとめてみました。
小人症とは?
小人症とは、何かしらの原因で、身長が伸びず、低身長になる疾患です。低身長とは、同姓で同年齢の人の平均身長よりも著しく身長が低く、成長期の子供では、他の子供に比べ、身長の伸びる速度が極端に遅く、同じように成長できない状況です。具体的には標準成長曲線で、下の2%ライン以下を示します。(-2SDと表記されることが多い)
低身長の小人症の人は100人にわずか2人程なのです。その中でも原因不明の場合が95%であり、成長ホルモンが上手く分泌されない原因によるものは5%以下になり、日本では数万人が治療を施されています。
またこの治療の対象となる場合は、本人の希望や家族の希望、またはそのほかの疾患などを合併している場合などで、治療をする際に初めて小人症という疾患名が付きます。
小人症の種類
小人症でも、その原因によっていくつかの種類に分類されます。
成長ホルモン分泌不全性低身長症
脳下垂体から分泌される成長ホルモンの分泌が少ないために起こるといわれている疾患です。成長ホルモンは、骨や筋肉の成長を促すとても大事なホルモンで、これが少ないために低身長や骨の成長、また性的な成熟の遅れもでてきます。
年齢的には、6歳から17歳で男児1万人あたり2人程度、女児1万人あたり約1人程度の発症率です。具体的な遅れを感じるのは幼児期あたりといわれています。声や顔つきは子供っぽいことが多いのですが、知能は正常です。
成長ホルモン分泌の異常だけが原因であれば早期に治療を始めることで、身長の伸びは改善されます。
体質性、家族性、原発性低身長症
体質性、家族性、原発性低身長症とは、成長ホルモン分泌異常などの理由もなく身長が伸びないことを指します。特発性低身長ともいいます。このような症状は、内分泌の異常といった原因、奇形や慢性疾患、ステロイド治療が原因、情緒障害や心身症などが原因による低身長です。
多くが思春期に7割程度が正常な身長になりますが、3割程度は、思春期が早めにくることで低身長のままになることもあります。
SGA性低身長症
別名、胎内発育不全性低身長といわれています。出産は正常な周期であったにもかかわらず、低身長、低体重の子供や、早めに生まれた子供でも、その平均よりも低身長や低体重の子供は、胎内発育不全性低身長と判断されます。
胎内発育不全の場合は、約8割から9割が3歳ごろまでに正常な身長になるのですが、残りの2割程度は、思春期が早く来るために伸び悩み、成人身長が低くなるといわれています。この場合、成長ホルモンなどの治療が国で認められていますが、小児慢性特定疾患の対象ではないため、公費助成の対象外になっています。
ラロン型低身長症
ラロン型低身長症とは、イスラエルの医師が発見した遺伝子の異常による成長ホルモン不応症です。しかし成長ホルモン分泌不全性低身長症とは異なり、成長ホルモンは正常に分泌されていることが特徴です。また糖尿病とがんの発生率が極端に低いのも特徴です。発生地域は南米に多く、主にエクアドルに集中しているそうです。
愛情遮断性低身長
愛情遮断性低身長は、虐待やネグレクトなど、母親の愛情が十分に受けられなかったことが原因でストレスがかかり、成長ホルモンの分泌が低下し、低身長になってしまうという症状です。またこのような場合は精神発達の遅れや異常行動などの症状を起こすこともあります。このような行動を愛情遮断症候群といいます。
ターナー症候群
ターナー症候群は、染色体異常による低身長です。女の子のX染色体のうちのひとつが、欠損しているか、構造異常があるために発症する染色体異常症で、生まれたときは、やや小さめ、手足の浮腫が目立つなどの特徴があります。
また他の子供に比べ、成長のスピードが遅いため、幼児期から小中学生で身長に差が生まれ、目立つようになります。ターナー症候群の子供は、2次性徴がないので、思春期にその差が大きくなります。
ターナー症候群では、成長ホルモン注射の治療が行われます。その成果がでた後に2次性徴に対しては女性ホルモンなどの投与治療が行われます。
小人症と遺伝の関係
小人症の原因は、その95%がはっきりとしたものが分からない特発性のものです。
両親や片方の親の身長が低い場合、遺伝的なものが考えられていますが、遺伝性の小人症は稀であり、また遺伝の頻度も不明です。特徴としては、特発性の小人症よりもさらに低い身長であることが多いそうです。
合併症の可能性
小人症はさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
低血糖になる
先天的な重度の成長ホルモン分泌異常は、新生児期に低血糖になる症状が認められています。
骨が弱くなる
成長ホルモン分泌異常によって思わぬ合併症を引き起こすことがあります。成長ホルモンは、さまざまな組織の成長を促したり、代謝をコントロールする機能をもっています。
そのため、不足や欠乏などによっては、骨の代謝異常や発達障害が起こる可能性があります。また骨がきちんと成長しないので、骨折しやすいなどの弊害がでてきます。
第二次性徴がこない
成長ホルモンの分泌不足や欠乏がある場合、性腺刺激ホルモンも不足、欠乏している可能性があります。すると、第2次性徴がこない場合があります。
また同じように脳下垂体から分泌されるホルモンである、副腎皮質ホルモンや甲状腺刺激ホルモンなども不足、欠乏していると、副腎皮質低下症や甲状腺の機能障害などの合併症を引き起こす可能性があり、注意が必要です。
小人症の検査と診断
小人症の診断にはこのような検査が行われます。
レントゲン
まずは、レントゲンで、骨の年齢を調べます。
脳の下垂体に以上が起こっている場合では、身長年齢とだいたい同じになります。
血液検査
血液中の成長ホルモン濃度は変化するため、1回の血液検査では診断することはできません。
血液検査では、成長ホルモンを分泌させる作用のある薬を使って、血液中の成長ホルモン濃度が増えるかを調べます。
CTやMRI検査
レントゲン検査や成長ホルモン検査などとあわせて、さまざまな成長に必要な成分がきちんと分泌されているかを検査した後には、頭部CTやMRI検査をすることがあります。これは他の疾患が原因である可能性を調べるためでもあります。
早期発見の重要性
身長が伸び悩んでいると感じたら、日頃から身長のチェックや観察を行うことがとても重要です。また幼児期や小中学校で行われる身体検査などで身長のグラフを確認するのもよいでしょう。平均身長と比べ、異常がないか把握することで、早期発見につながります。
繰り返しになりますが、このような小人症の治療は、早期発見、早期治療がとても大切です。なぜなら大人の骨になってしまっては、不足している成長ホルモンを投与してもそれ以上は身長が伸びない可能性のほうが高いからです。
つまり、このような小人症の治療には、期限があるということです。また、ホルモン分泌異常のほか、他の疾患が原因で低身長が起こっている可能性もあることから、それらの治療のためにも、まずは早期発見が必要です。
小人症の治療方法
基本的な治療法は、成長ホルモン分泌異常の場合は、成長ホルモンを補充する治療法が行われます。主に注射で行われることが多くあり、自己注射で行うことがほとんどです。小さい子供は、自分で打てるようになるまで保護者が基本的には毎晩皮下注射をします。
さらに並行して、成長の促進効果が望める少量の副腎皮質ステロイド薬や甲状腺ホルモン薬などを併用して治療を行います。また、原因は他の疾患である場合は、それらの治療を行うことが第一となります。
治療にかかる期間
小人症のように治療に期限がある疾患の場合は、早期発見が重要になります。早めに治療を始めることで、身長の伸びの改善や第二次性徴へのスムーズな移行を行うことができます。第二次性徴が始まってしまうと、身長が止まってしまうので、成長ホルモンをいくら補充しても身長の伸びは改善されません。
そのため、不安に思ったら、出来るだけ早い段階での専門の医療機関に相談や診察を受けることをオススメします。またこの治療は、すぐに成果が現れるものでもないそうです。何年もかけてゆっくりと治療に取り組むことが一番の治療法です。子供の成長とともに気長に続けていくことが必要です。
治療の効果
治療には、気長にゆっくりと向き合うことが必要です。なぜなら、多くが治療後1年程度で8センチほどの伸びを示しますが、その後はあまり伸びていかないからです。
しかしきちんと治療を続けていくことで、その後はゆっくりとですが改善され、何年か後には平均の身長(男性で160センチ程度、女性で148センチ程度)に追いつくそうです。
治療費について
成長ホルモンは、とても高価な治療薬です。そのため、治療に当たっては、担当医師と相談の上、小児慢性特定疾患の申請を行うことをオススメします。
稀に助成外であることもありますが、認定されれば、治療費の自己負担をかなり減らすことができます。
まとめ
小人症かもしれないと思ったらどうしたらよいでしょうか?
幼児期や小中学校で、身長の伸び悩みを感じたら、まずは小児科医に相談しましょう。もし、小児科で対応できない場合は、小児内分泌専門の医療機関への紹介状をいただきましょう。そうすることで、スムーズに診療がうけられます。小人症は、成長ホルモンの分泌異常のほかにも、ホルモンの疾患や脳疾患などのほかの疾患が原因の可能性があります。
身長を伸ばす治療には期限があります。少しでも気になるようでしたら、小学校低学年までぐらいに医療機関に相談してみたほうがよいでしょう。
身長が低いのはもしかしたら小人症かもしれません。身長の伸びが平均よりも極端に遅いと感じたら、まずは医療機関に相談しましょう。