大腿骨骨折が最近増えているということですがこの骨折、かなり厄介のようです。腰から下にかけて、足がほとんど動かせないため、骨折以外に付随していろいろな面で大変な状況になります。
骨折自体は高齢者がほとんどで、その原因もほとんどが転倒による骨折ということです。確かに年を取ると、骨粗しょう症などの影響もあって骨が脆くなりますし、運動能力も低下してしまうことも関係していると思われます。
今回は、大腿骨骨折について、お伝えします。
大腿骨骨折とは
大腿骨というのは、腰の横についている骨で、膝まで伸びているいわゆる太ももの部分にある骨です。ここは腰から伸びている部分が、曲がっているために負荷がかかりやすく、骨が丈夫でないと折れやすいという性質を持っています。
通常、下半身の骨というのは上半身を支える意味でもそうとう頑丈です。ですが年をとってくると骨の病気などにより、その骨が転倒程度で折れてしまうのです。
大腿骨骨折には、頚部という付け根に部分の骨折と、大腿骨転子部骨折の2種類あり、さらに頚部の骨折にも内側と外側の2種類あります。
大腿骨頚部内側骨折
腰からつながっていて、回転しやすく丸状を帯びている骨で、丸状からくびれている部分が折れてしまうことです。この部分は非常に治りにくく、そのほとんどは人工関節での対処法となります。
大腿骨頚部外側骨折
主に太ももの部分の骨で、かなり丈夫にできている骨なので、通常は事故などでの骨折が多いようです。こちらは内側と違い、栄養素が通る血管があるため、骨接合による治療が可能です。ただやはり長く仰臥するようですと、他の部分に影響が出るために高齢者の場合は手術による治療が一般的です。
大腿骨転子部骨折
大腿骨で腰につながっている部分より外側の骨の部分であり、ここを転子と呼びます。そのほとんどが転倒などでぶつけて折れるケースが多いようです。
大腿骨骨折の原因
大腿骨骨折の原因について紹介します。
骨粗鬆症
大腿骨骨折のほとんどが女性の高齢者に多いという統計が出ています。おおよそ数値的には、80%が女性の高齢者となっています。その原因は、骨粗鬆により骨が脆くなった上に、筋力が衰えて転倒しやすいことのようです。そして女性の場合は高齢になっても貧血気味の人も多い上、栄養的な面でも鉄分が少ないということも影響しているためと思われます。
このような人は、ちょっとぶつけただけでも骨折してしまいます。他にもひねる表紙に折れてしまうなど、考えられない骨折を引き起こします。
転倒
高齢者に多いのですが、足の筋力が落ちていることもあり、足元がおぼつかず、ちょっとしたひっかかりでもつまずいて転倒、その拍子に骨折というケースが非常に多いということです。
そして、その転倒場所ですが、屋外よりも屋内、つまり家の中での転倒骨折が多いとの報告もあります。
事故などによる骨折
これは年齢に関係なく、事故などでの骨折ということになります。激しい事故の場合は、複雑に折れるケースもあり、治すのも難しいケースも多々あります。
大腿骨骨折の症状
大腿骨骨折の症状を紹介します。
腰の付け根の痛み
転倒して大腿骨の痛みを覚えるとともに、足を動かすと相当に痛みます。当然のように立って歩くことはできません。
また、高齢者で認知症患者の場合は、痛みをあまり感じない傾向もあり、本人の痛みの反応が薄く、発見が遅れることがあります。
歩行困難
当然骨折なので、痛みも相当なのですが、実は認知症気味の人にはあまり痛みを感じてない人もいます。その場合は介護をしている人、もしくは家族の方の観察が重要になります。
歩きにくそうにしている、何かにつかまらないと立てない、などは骨折の可能性がありますので、医師の診断を仰ぐことが必要となります。
うっ血、内出血など
骨折と同時にその箇所が内出血を起こしている場合があります。足の付け根が紫色の変色します。また、足首などが動かしにくくなるケースもあります。
大腿骨骨折の治療法
ここを骨折した場合、そのほとんどが入院して足を固定するため、基本的に動くことができません。そして、主な治療法として、以下の3つが挙げられます。
手術
人工骨頭置換術という手術となり、腰の骨に接触している丸みを帯びた骨部分を人工的な金属製の器具にします。俗にいう人工関節です。
本来ですと、身体全体と足を動かさないように固定して、骨の接合を図るのが理想なのですが、高齢者の場合は、ベッドを利用する治療となると、足腰があっという間に衰えてしまい、認知症などの症状が進行してしまうようです。
また、骨が丈夫ならば、金属で骨を接合して早期の回復を待つ方法もあります。そしてこの方法ですと、長い間にベッドに伏せることによる床ずれなども防げますし、筋力の低下も若干ですが抑えられます。いずれにせよ、早々にリハビリを開始する方法が望ましいようです。
保存療法
骨の折れた部分をきちんと合わせて固定し、接合を待つ方法で、主に若い人の骨折がこの方法をとります。ですが、骨折して血流が悪いようですと必要な栄養素が届かずに、接合がうまくいかない場合があるので、注意が必要です。
この場合は外側の骨折に有効であり、内側はこの方法では接合しません。さらに骨粗鬆にかかっている場合は接合も相当の時間を要しますので、身体が手術に耐えられないような方以外は、この方法は取りません。
大腿骨骨折による弊害
ほとんどが身体を動かせない状態で固定されるため、様々の問題も起こります。そして骨が治っても歩けなくなってしまったり、介助が必要となることも1/3の程の患者さんにはいるようです。
床ずれ
長期に渡りベッドに横たわっていると、床ずれといって、背中や腰などベッドにあたる部分が圧迫されて炎症を起こし、壊死してしまうこともあり、痛みや化膿なども起こします。
この場合は、寝返りを意識的に行うなど、身体を動かすようにしてください。
肺炎
寝たきりによる体力の低下が原因です。特に肺炎は合併症としてかかりやすいようで、注意が必要となります。
認知症
身体を動かさないことにより、筋力の低下や物事を考えないことが、認知症を引き起こしたり、認知症の進行を早めたりします。
治癒後のリハビリ
大腿骨骨折が完治した後は、ほとんどがリハビリの治療が必要となります。このリハビリをするしないでは、相当な率で治りが違ってきますし、治ったあとも身体への負荷が少なくすみます。
血栓予防
深部静脈血栓症というものが、退院後に起こりやすくなります。いうなれば、血の塊が血管内を流れてしまうことです。これを防ぐため、足の部分をマッサージし、血栓ができにくくするため、血液がさらさらになる薬
を投与し、他の部分へ飛ばないようにします。また、血液の流れをよくして、必要な栄養素を運びやすくします。
関節稼動域運動
足を動かさない状態があると動きにくくなるため、スムーズに動くように関節の稼動域を広げます。
ただし、この際に脱臼しないように注意することが重要となってきます。特に筋肉が減少気味となっていますので、脱臼が起きやすいようです。
筋肉増強運動
腰周りの筋肉や腹筋など必要なところの筋肉を、歩行を問題なく行える程度に鍛えます。やはりこれも無理は禁物で、時間をかけて行うことが望ましいかと思います。また、早く筋肉をつける意味でも、たんぱく質を多めに摂取することも必要かと思われます。
日常生活運動
生活するうえでの基本的な動作のリハビリです。
主に、歩行、階段の上り下り、トイレ、入浴、洗濯、買い物時の交通機関の利用など全般的に行います。仰臥していた期間によりますが、このリハビリはかなり時間を要することが多いようです。
大腿骨骨折の予防法
大腿骨骨折の予防方法を紹介します。
食事
ほとんどが女性の高齢者ということで、食事の量が減っていたり、必要な栄養素が足りないという状態が、骨折を招いていると思われます。
さらに食事に関しては、質のいい油をとることをお勧めします。脳は、70%が油でできています。あの100歳を超えても現役で頑張っている日野原先生も朝にはオリーブオイル大匙1杯を取っているということで、これはお勧めします。オリーブオイル、亜麻仁油、ココナッツオイルなどを積極的にとることは、脳の認知能力を高めたり、認知症予防にもつながります。
ただしこの場合、サラダ油、マーガリン、植物油脂、ショートニングなど人工的な油をなるべくとらないようにしてください。一説によると、これらの油が認知症を引き起こしているという仮説もあるぐらい、身体によくない油だからです。
特にマーガリンに含まれているトランス脂肪酸は諸外国では禁止されているほど危険な油です。
これらは、主に揚げているお菓子類、パン類に多く含まれています。
筋力の増強
食事も重要なことですが、骨を取り巻く筋肉量も減ってしまうと、骨自体をカバーできません。そうなると、衝撃などがダイレクトに骨へ伝わってしまうことがよくないと思われます。
普段から、筋トレなどができればそれに越したことはありませんが、さすがに高齢の女性には無理かと思われます。
この場合は、軽いウォーキングなどで意識的に身体を動かすのが望ましいと思われます。
さらに筋肉は運動した直後に、たんぱく質と糖質をとることにより増えます。運動した後は、たんぱく質を多く含んだ食事と糖分が多く入ったものを積極的に取ることをお勧めします。理想は、30分以内にたんぱく質系のものを摂取し、ジュース類の砂糖が入った甘いドリンクや饅頭、チョコレートを取ることです。
そのようにすることにより、筋肉のつき方が通常に運動したよりも早くつく事が確認されています。この場合のたんぱく質は、プロテインなども有効ですが、牛乳のみでもかまいません。
認知能力など
これも高齢者に多いのですが、やはり意識など注意力やバランス感覚が衰えてきます。これを鍛えるには少し難しいかもしれませんが、それなりの努力は必要かと思います。
いいといわれるのが、ウォーキングしながら単純計算をすることのようです。ウォーキングしながら、100から7をずっと引き続ける計算をするとか、暗記した俳句や言葉を思い起こすということが、脳の活性化につながり、認知能力も高まるとのことです。頭も常に使い続けることがいいということも解ってきています。
この歩きながらというのが非常にいいようで、普段歩いている時もそれを行うことが、プラスになります。
まとめ
いかがでしたか。名前が大腿骨という、あまりなじみがないものなのではありますが、相当大変な骨折です。あわせて、年を取っている人には、骨粗鬆などを起こしていると、折れやすいばかりでなく、治りにくいということもあり、いかに予防することが大事かということがわかるかと思います。特にこれからの高齢化社会を迎えると、このようなことが多くなると思われます。現に増えているという統計的なデータもあります。
一度大腿骨骨折をしてしまうと社会復帰が相当難しくなると言われているように、転ばぬ先の杖ではありませんが、用心に用心を重ねて、日々お過ごしされることを説に望みます。
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