突然襲われた食道の痛み・・・。重い病気かと心配になってしまいますよね。代表的な病気は逆流性食道炎という病気ですが、最悪の場合は食道ガンも疑う必要があるかもしれません。それ以外にも、食道の激しい痛みやつかえには死に至る病気が存在します。
ここでは食道の痛み、違和感、異常の原因となる疾患についてご説明します。
食道について
食道とはどこにあってどんな機能を担っている器官なのでしょうか。病気の話の前に食道の役割についてご紹介します。
食道とは
食道は喉と胃の間をつなぐ臓器で、口から飲み込んだ食べ物を胃まで送ることが主な役割です。食道そのものに消化機能は有しておらず、あくまで食べ物の通り道にすぎません。
かたちは長さ25cm程度、太さ2〜3cm程度、厚さ4mm程度の管状です。場所は大部分が胸の中、一部が首・腹部に位置しています。また食道は4つの層からなる壁に囲まれています。内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜です。その食道の壁の内側は、粘液と粘膜でおおわれ食べ物が通りやすいようになっています。
食道は飲み込んだ食べ物を胃まで送る働きを担っています。食べ物を飲み込むと重力で下に流れる力が働くとともに、蠕動運動と呼ばれる食道の収縮運動が食べ物を胃に送り込みます。
また食道と胃の境界のすぐ上に下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という筋肉があり、食べ物を食べていないときはこの筋肉が収縮することによって、胃に送り込まれた食べ物が逆流するのを防止する役割を果たしています。
それでは、代表的な食道の疾患7種類をご紹介します。
逆流性食道炎について
食道炎の中でも最も代表的な病気です。日本人には少ないとされてきましたが、近年発症する人が増えているといわれています。
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は胃の内容物が食道まで逆流してしまい、その内容物に含まれる胃酸によって食道の粘膜がダメージを受けて炎症を起こす病気です。
この病気になると、胸やけや胸の痛みを感じます。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎は、脂肪分の摂り過ぎや食べ過ぎ、肥満、加齢、姿勢などによって、先に述べた下部食道括約筋等の食道を逆流を防ぐ仕組みがうまく働かなかったり、働いても追いつかないほど胃酸が増えすぎてしまうことが原因で起こります。
逆流性食道炎の治療
逆流性食道炎の主な治療は生活習慣の見直し・改善と薬物療法です。ほとんどの人はそれで治っていきますが、重症の場合手術が必要になるケースもあります。
感染性食道炎について
感染性食道炎とは
感染性食道炎はその名の通り真菌やウイルス、細菌などの感染が原因となって食道が炎症を起こす病気です。食べ物を飲み込むときにつかえたり痛みを感じたりします。また、胸の痛みを感じます。
感染性食道炎の原因
感染性食道炎の原因は、カンジダ・サイトメガロウイルス・単純ヘルペスウイルスなどの感染によるものです。健康な状態で感染する可能性は低いため、免疫を抑える治療を行っている、食道の粘膜が損傷している、普段の食事内容で食物繊維が不足し糖を過剰摂取している、などの要因が考えられます。
感染性食道炎の治療
抵抗力が健康な状態にあれば自然治癒することも多いですが、投薬による治療が効果的です。また食事療法として糖の摂取を抑え、衛生管理として歯ブラシを交換することが有効です。
腐食性食道炎
腐食性食道炎とは
腐食性食道炎は、アルカリや酸など人体への刺激が強い化学物質を飲み込んだことによって食道壁がただれた状態のことをいいます。飲み込んだ直後から口内に焼けるような痛み、胸部や腹部にも激しい痛みが現れます。
腐食性食道炎の原因
直接の原因は上述の通り化学物質の経口摂取です。現実的なケースでは、小さい子どもが洗剤を飲んでしまうなどということが考えられます。さらに、成人では自殺目的による使用のケースが多いです。
腐食性食道炎の治療
点滴や鎮痛薬、抗生物質、副腎皮質ホルモンの投与などを行います。
食道アカラシア
食道アカラシアとは
食道アカラシアは何らかの原因により食道の機能に障害をきたし、食道を食べ物が通過できなくなる病気です。食べ物が通過しにくいので、飲み込むときに強いつまり感が生じます。症状が進行すると、食べると嘔吐してしまうこともあります。
30歳代から50歳代での発症が多い病気とされていますが、子供の症例も報告されています。
食道アカラシアの原因
食道の蠕動運動の障害と下部食道括約筋の収縮・弛緩の運動機能の異常により食べ物の通過が困難になり、食道の拡張が起きます。食道の拡張が進むと食道が蛇行し食べ物が通り抜けることができなくなってしまいます。
根本的な原因は現在でも解明されていません。根本的原因は不明ですが、精神的ストレスや冷たい水が症状を悪化させるという特徴があります。
食道アカラシアの治療
食道の機能の低下を元に戻す治療はありません。バルーン(風船状の器具)を食道の下部に内視鏡によって挿入し膨らませることで下部食道括約筋を広げ食べ物の通過を促す治療などが用いられます。
それでも効果がなく症状が深刻な場合には外科的手術となります。手術では食道の筋肉の切除によって食べ物の通過をスムーズにします。しかし食道の拡張の進行度合いがひどいと筋肉の切除では期待した効果が得られない場合もあり、そのときには食道を切除することも行われます。
突発性食道破裂
突発性食道破裂とは
突発性食道破裂はブールハヴィー症候群とも呼ばれ、主に飲酒後の嘔吐が原因となって食道内圧が上昇し、食道が破裂する疾患です。
嘔吐反射直後に、激しい胸の痛みに襲われます。その後呼吸困難や冷や汗、顔色が青くなるなどの症状があり、ショック状態となります。死に至ることもある危険性の高い疾患です。
突発性食道破裂の原因
突発性食道破裂では、嘔吐反射の際、嘔吐をこらえる力によって食道内に嘔吐物があふれ、瞬間的に食道内圧が上昇することで食道壁が破裂してしまいます。食道下部の左側の壁が破れることが多いです。
突発性食道破裂の治療
全身症状があり危険な場合には緊急手術となります。発症後すぐに手術に入れれば食道破裂部位の縫合が可能であることが多いそうです。
食道の損傷がひどかったり時間が経ちすぎて縫合による破裂部位の閉鎖が困難になった場合には、食道にチューブを挿入するなどの処置が取られます。
発症後24時間以内であれば縫合できる可能性が高まるとされています。
食道潰瘍
食道潰瘍とは
食道潰瘍は、食道粘膜の損傷が粘膜下層にまで達している状態のことです。胸やけ、咽喉の異物感、食べ物を飲み込む際にしみる、咳、胸の痛みなどの症状があります。嚥下障害(食べ物を飲み込みにくくなる症状)が現れることもあります。
食道潰瘍の原因
食道潰瘍は、逆流性食道炎や感染性食道炎などの食道炎にともなって発症します。
食道潰瘍の治療
食道潰瘍の治療では、胃酸の分泌を抑制する薬品(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬)の投与が行われます。
逆流性食道炎が食道潰瘍の原因となっているときは、逆流性食道炎も同時に改善する必要がありますので、食事の量を減らしたり、アルコールやカフェインなど胃酸の分泌を促すものの摂取を控えるなどの、食生活の改善も必要になります。
食道ガン
食道ガンとは
食道ガンの原因
飲酒が食道ガン発症のリスクを高めることがわかっています。アルコールが体内で分解されるときに生じるアセトアルデヒドに発ガン性があるためです。日本人は欧米人に比べアセトアルデヒドを分解する酵素が少なく、食道ガンになる確率が高いといわれています。また喫煙も発ガンリスクを高めます。
さらに食道ガンでは、熱い食べ物を摂取することで食道が刺激を受けることもガン発症に繋がるとされています。寒い地方などで熱い食べ物を習慣的に食べる人たちは食道ガンを発症する人が多いそうです。
また、食道ガンは転移が早いガンであることが死亡率の高さの一因となっています。食道の壁の中と周囲にはリンパ管や血管が豊富であるため、ガン細胞はその流れに乗って体中へ広がります。リンパ管に入り込んだガン細胞は食道の周り、あるいは腹部や首のリンパ節にまで転移します。血管に入り込んだガン細胞は肝臓、肺、骨などに転移します。
食道ガンの治療
食道ガンの治療ではその進行のステージによりいくつかの治療方法が選択されます。
ガンを切除する外科的手術、ガンに放射線を照射しガンを小さくする放射線治療、抗ガン剤を投与する薬物療法、内視鏡を使ったガンの切除、あるいはこれらの治療の組み合わせなどが考えられます。
また、ガンにより食道が狭くなり食べ物を食べることが困難な場合には、食道内挿管法といってシリコンゴムや金属の網でできたステントと呼ばれる筒を食道の中に挿入し食べ物が通るようにする治療が施されることもあります。
まとめ
食道の痛み(多くは胸のあたりの痛みとして感じる)の裏には怖い病気が潜んでいるかもしれないことがわかりました。ちょっとした痛みや異常だからといって軽んじず、積極的に検査を受けるようにしましょう。
また、逆流性食道炎や食道ガンは飲酒などの生活習慣から発症するリスクもあるため、日頃から健康的な生活を心がけましょう。