構音障害とは?その原因や症状、似ている病気との違いを紹介!治療法やリハビリ、コミュニケーションの方法は?

喉には問題はないのに、うまく言葉を作れない、簡単に言うと話せなくなる障害があります。構音障害といいます。生まれつき、音を作る器官に構造的な欠陥がある場合だけでなく、脳卒中などが原因で機能的に言葉を作れなくなることもあるのです。

構音障害とはどういう病気なのか知るだけでなく、身近に構音障害を持つ人がいる場合や自分自身がそうなった場合に、どのようにコミュニケーションをとったらいいのかも含めて見てゆきましょう。

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構音(こうおん)障害とは

口

一般的には調音障害(ちょうおん障害)といいます。構音とは一般的ではない呼び名です。構(コウ・カマえる)に音(おと、おん)で構音(こうおん)、音を形づくるという意味の医学用語なのですが、ここでいう”音”は、主に、わたしたちにとっての”言葉”のことになります。

”構”という字には組みたてる、囲い、といった意味があります。何らかの原因で音を組みたてる、あるいは囲む働きが出来ないために、調音できない、つまり言葉をつくれない障害のことをいいます。まずは、音と声と言葉を出す、つくるしくみを知りましょう。

発声器官と構音(調音)器官

わたしたちが普段「喉」と呼んでいる部分は、咽頭(いんとう)という部分と、喉頭(こうとう)と呼ばれる部分から出来ています。咽頭は鼻腔(鼻の穴)から、食道の入り口までの部分をさします。結構長いですね。この咽頭はさらに、上、中、下にわけられます。

発声器官は音を出す器官

上咽頭(じょういんとう)は、鼻腔からのどちんこの前あたりまでです。中咽頭(ちゅういんとう)はそこからちょっと下になる喉の奥までで、扁桃腺(口蓋扁桃)があります。そして、下咽頭(かいんとう)はさらに奥の、喉頭や食道へ繋がる部分を指します。

下咽頭の奥に喉頭(こうとう)があります。男性でいう、のど仏が飛び出ているあたりです。この喉頭の真ん中に声帯があります。声帯は普段は閉じていて、声を出す時や物を飲み込む時には開くように出来ています。

この喉頭が”発声器官”と呼ばれる、”音を出す器官”です。喉仏(女性は飛び出ていませんが)に手をあてて、「あーー」と言ってみてください。手をあてた部分が細かく振動していますよね。こうして声を出しているのです。

構音(調音)器官は発語するための器官

そして、咽頭部(上、中、下)が調音器官と呼ばれる、”言葉をつくる器官”です。調音器官は多くの部位からなっていて、それらを使って私たちは言葉を話しているのです。言葉を発する”発語器官”(調音器官・構音器官)は次のように分けられます。

空気を通す部分

下咽頭腔、中咽頭腔、咽頭蓋、口腔、口蓋垂(のどちんこ)、鼻咽腔、鼻腔といったものが空気を通す器官です。風邪で鼻腔が詰まると、声がおかしくなりますよね。

音をまとめる器官

口の中の奥の上側から前歯の裏あたりまで、壁となってくれているのが軟口蓋、硬口蓋、上あご、上下の歯茎、上の歯、下の歯、下あご、があります。そして下側には、舌の根のほうにある骨である舌骨などがあります。

音をよりくっきり言葉にする器官

舌と、口唇(上唇と下唇)も大切な役目をしています。ためしに、「あ」の口をして、口の形を変えずに、「い」と言ってみてください。言えませんでしたか? 「あ」の口で「い」の音を出すには、舌を使います。

唇の働きはどうでしょうか。子供の頃、唇に指をひっかけて左右にひっぱり、「学級文庫」と発音する遊びがありませんでしたか? 口唇が触れ合わないため、「ぶ」の音が「う」になってしまう不思議です。

このように、沢山の部分が関わって、「音」はつくられ、発せられているのです。

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構音障害の原因となるもの

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喉から、口の中、舌などで言葉をつくっていることはおわかりいただけたと思います。誰しも経験があると思うのですが、風邪をひいたときなどに、声が枯れたりしますよね。あの状態は、喉の奥が炎症を起こし、また咳などでも声帯や喉の筋が傷つき、”音”を出す調節がうまくいかなくなるためです。

喉に問題がなければ”音”は出せますが、この”音”さえ出せないものは、その他のものも含めて音声障害といい、構音障害とは区別されています。では、構音障害は具体的にはどのような原因で起きるのでしょうか。

器官的な形状に問題があるもの

器質性構音障害(きしつせい こうおんしょうがい)といい、先にあげた発語器官の部位の形に異常があるために、その部位の役目の必要な音が出せなくなるものです。

前述の学級文庫の遊びのように、唇を横に引っ張っていたら、ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ や ば・び・ぶ・べ・ぼ といった破裂音は出せませんよね。代表的なものをあげてみます。

口蓋裂(こうがいれつ)・口唇裂(こうしんれつ)

先天的なものが多い口蓋裂は、器質性構音障害の代表的なものです。上唇だけが裂けている状態を口唇裂といいますが、その中でも裂け方によって、唇の赤い部分だけでなく、つながる皮膚のほうまで裂けている不完全唇裂や、唇から鼻孔内まで裂けている完全唇裂(かんぜんしんれつ)などがあります。

上唇だけでなく歯茎まで裂けている唇顎裂(しんがくれつ)や、もっと上の上あごの奥のほうまで裂けている場合(唇顎口蓋裂)もあり、上顎の奥の方の口蓋だけが裂けている状態のものを口蓋裂といい、どれも、先天性の顔面の奇形として見られます。日本では、1/500の確率で発生しているそうです。

この口蓋裂の場合、本来は唇から音がでるはずの音が、鼻の方にもれてしまうことで、鼻声になって聞き取りにくかったり、母音が違う響きになってしまったりという構音障害が起こります。

口腔や咽頭のがんの後遺症によるもの

舌(ぜつ)がんなどの切除をすると、舌や口腔の部分、咽頭などの組織も削り取られます。手術後の言語症状は、状態にもよりますが、音にかるい歪みが出る場合もあり、重症の場合では音声でコミュニケーションがとれなくなるほどになってしまうこともあります。

器官の運動性に問題があるもの

運動機能性構音障害といい、部位の形には問題はないけれど、機能の運動性に問題があるものをいいます。発声器官と発語器官に関わる筋肉や神経が病気のためにうまく動かず、話し言葉がはっきりしなくなるものです。

脳血管障害の病気や、神経筋の病気によっておこる運動麻痺や筋肉の硬直、あるいは小脳への障害からくるものもあります。

二次的なもの 聴覚性構音障害

発音器官や発語器官の形状や神経、運動性には問題がない場合でも、難聴などによっても構音障害は起こります。耳に障害があるため、正しい音が聞き取れず、発音が正しく行えないなどの場合をいいます。

人は発音を覚えるときに、耳から聞いたものを模倣することで学習します。江戸っ子が話すと「ひ」が「し」になってしまうのは、子供の頃、周りにそういう話し方をする人が多く、それを学んだためなのです。

原因不明のもの 機能性構音障害

上記の運動機能性構音障害にも、器質性構音障害にも属さないものを、機能性構音障害といいます。この中で、聴覚に障害のあるものは、上記の聴覚機能性構音障害となりますが、そうでないものの場合が、これに属します。

明らかな聴覚の障害がない場合には、学習の失敗によっての構音間違い、と分別されます。障害と名前はついていますが、実際は障害ではないという意見もあります。たとえば前述の江戸っ子の例などは、”発音の習慣的間違い”とか、”発音学習の失敗”などと言われたりもします。

そういう意味で、地方の方言などもこの種と考えられています。ただ、これはあくまで、障害ではない、といっているだけで、決してその土地ごとの言葉や方言が”間違い”であると言っているわけではありません。

私の育った西多摩地区は、もともとは神奈川県でした。ですから、言葉じりや使い方など、東京標準語よりも、神奈川の地元の方と共通点が多いのです。環境によるものは言葉に強い影響を及ぼすようですね。

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その他の似ている病気との違い

話さない

他の似ている病気との違いを紹介します。

音声障害

音声障害とは、単純に、声が変だという状態を言います。声帯の一時的な問題や、声をつくるもととなる呼吸の調節がうまくいかないなど、様々な原因により声が変になる、音が変になることをまとめて言うので、構音障害は、音声障害のひとつである、と考えられます。

構音障害の場合には

脳出血や脳こうそくなどの後遺症によって、咽喉、呼吸器をはじめとする発語器官や発声器官が麻痺してしまい、運動機能障害性構音障害となるケースでは、その傷ついた脳の担当する部位によって、構音障害の出る部分が違います。認知症の場合には、構音障害は現れにくいものです。

失語症

構音障害の、運動障害性のものと同じように、の脳卒中の後遺症などが原因で起こるものですが、構音障害とは少し違います。構音障害か、失語症かによって、処置の仕方もかなり違ってきますので、違いを知っておいてほしいと思います。

失語症の場合には

発声器官や発語器官に運動機能的な障害がないのに、脳の、言語に関わる部分に障害が出ることが原因となりますので、自分で思ったのと違う言葉が出てしまったり、聞いた言葉はきちんと聞こえるのに、その意味がどうしてもわからない、といったような症状が伴います。

「言葉が出ない」という部分では、構音障害とよく似ていますが、原因が全く違います。症状の特徴としては下記の6つがあげられます。

  • 聞き取りができない
  • 話せない(思った言葉と違う言葉がでる、言葉がなかなか出てこないなど)
  • 相手が言ったことを復唱させようとしても、できない
  • 読み書きもできない場合もある
  • 物の名前を言うことができない
  • 計算ができない

などです。

構音障害の場合には、うまく話せないことはあっても、計算や読み書きができないことはまずありません。聴覚障害の二次的な物の場合はまた違いますが、失語症と構音障害を見分ける大きなポイントでもあります。

痙攣性発声障害

発語器官ではなく、主に発声器官、特に声帯を動かす神経が麻痺するなどして起こることがあります。ウィルスの感染でも麻痺は起こりますが、咽頭がんや下咽頭がんのほか、甲状腺がん、肺がん、食道がんなどによっても引き起こされます。

声帯そのものが痙攣(けいれん)することで、声が変になったり、声がうまくできなくなったりするのです。ですから、構音障害のように言葉がうまく話せないのとは、少し違います。

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構音障害の治療法

難聴検査

構音障害の原因によって、治療法は違ってきます。けれども、器質的なものでない場合は、構音障害や言語障害かも知れない、と思った時点で、まずは耳鼻科で診察をうけることをお勧めします。

診断法によって、原因をつきとめ、その原因にあった治療を受けることが肝心です。

外科手術

器質的な原因が明確な場合には、手術で発語器官の形態の異常を、できるだけ修復する外科手術が行われます。口蓋裂の場合は、口蓋形成手術、またがんによって組織を切除したことが原因の場合には、その組織の欠けてしまった部分に、近隣の組織を移動してきて欠損を補う皮弁形成術(皮弁再建術ともいう)を行うこともできます。

これらは、形成外科の分野となります。術後は、発語のためのリハビリを行うこととなります。

装具の装着など補助具をつかって補う

口蓋裂などで声が鼻にぬけてしまって発語がはっきりしない場合などで、軟口蓋挙上装置(なんこうがいきょじょうそうち)という補助具をつかって、空気の抜け穴を少なくすることもあります。また、口蓋の組織が大きく欠損している場合で、再建手術が不可能とされる場合には、専門の装具をつかって、欠損部分を閉鎖するような手術も行われています。

いずれも、装置が安定するまでの定期検診や、発語の訓練やリハビリが必要となります。

リハビリ訓練

言語聴覚士の元で、発語の訓練をすることで、術後のリハビリをします。また、症状によってはこれのみでかなりの発語修正が行えるようです。

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早期発見のためのチェックポイント

学習

お子様の言葉が遅いと、もしかして何か障害なのでは・・・と不安になると思います。大人の場合は検査、手術、リハビリというように、気づいたらすぐ検査をすることがお勧めですが、お子様の場合には、成長の度合いは個体差がありますので、それらと合わせて判断する必要があります。

一応ではありますが、言語を話しだす年齢の目安を挙げておきます。男児と女児では若干違います。

子供が言葉を話し出す目安

3歳頃には

一般的にですが、3歳になるまでに、母音(あ、い、う、え、お)の発音が出来るようになるそうです。

言葉の早い子だと、「ぱ」行(破裂音、唇の筋肉を使う)や、「ば」行(破裂音、ぱ行よりも唇の力が必要)が出来るようになり、また、口蓋の動かし方(上あごと下あごの形)で発音する「や」「ゆ」「よ」や、ちょっと難しい「わ」「ん」なども出来るようになる子もいるようです。

4歳頃になると

4歳になるころには、「た」行や「な」行のように口の中で舌をつけて放すと同時に息をはいて音を出すという難しい発音が出来るようになってきます。

また、「だ」行のように口の中の発語器官の筋力のいる発音や、「ガ」行のような鼻に抜く鼻濁音、そして「ちゃ」行のような(ちゃ、ちゅ、ちぇ、ちょのクリアな発音)口の複雑な動きでの発音も出来るようになってくるようです。「ざ」行は難しいので、もう少し先ですが、それを除くほとんどの濁音の構音が出来るようになるようです。

5歳位になると

この頃になると、「か」行や「は」行など、口の中だけではつくれない腹筋や横隔膜の動きも大きく必要となる音を、しっかりと構音できるようになると言われています。

さらに、「さ」行や「ら」行など、音をつくるのが難しい言葉も出来るようになってきます。一番難しい「ざ」行(ざ、じ、ず、ぜ、ぞ)の発音も、徐々にできるようになってきます。

6歳から7歳くらいで

一般的には、6歳から7歳くらいで、ほぼ正常な構音が出来るようになると言われています。あいまいだった発音もより明確になってきます。

また、この年頃になると脳の発達もあいまって、言葉を扱う能力もかなり成長しますから、相手に応じた話し方をしたり、状況にあった話し方をする使い分けなども覚え始めるといわれています。

あくまで、目安ですので、3歳になったからといって、あ行が全部言えないとおかしい、というわけではありませんから、あまり不安にならず、家庭では沢山声を聞かせてあげましょう。心配なら、耳鼻咽喉科へいって、相談してみてもよいでしょう。言葉は、まず聞くことから覚えます。聞いて、真似してをくりかえすうちに、口の動かし方、舌の動かし方、あごの動かし方、発音の際の呼吸のしかたなどを学んでゆくのです。心配な場合には、構音検査のセットなども売っています。それは検査だけでなく、訓練になるものもありますので、試してみるのも良いでしょう。

お子様の場合は成長をみながら診断を

脳の発達の速度は人それぞれ多少は違いますから、言葉を覚えさせようと必死になりすぎて、子供を叱ってしまうことがないようにしましょう。言葉を話したいけれど口をうまく動かせない時期は、お子さんもいらだっていることがあります。

そのため、反発的ともとれる行動をとるかも知れませんが、そんなときには、病院へいって、相談しましょう。

大人の場合のチェックポイント

何かの後遺症など、原因がはっきりしている場合は別ですが、構音障害には運動機能性障害によるものもあります。その原因のおおもとが脳神経にあるとしたら、他の病気の未然予防、発見にもつながります。

発音明瞭度検査

文字を指差す

病院で、してもらえるところがあります。絵をみせて、そこに書かれたものを言わせる、文字を指差して発音させるなどして、発音の明瞭さやアクセントや抑揚などを調べたりします。また、聴くことの検査として、正しい発音と間違っているものを聞かせて正解を答える検査などもあるようです。

大きく外見的にわかる器質的障害でなくとも、何らかの原因で発音の機能のための形がそこなわれることもあります。そういうものを発見するための検査などもあります。しかし、自分でもできる検査もあります。検査キットなども売っているようですが、下記のようなことで分かります。

  • 母音が続いたり、何度も出てきたりする文章をうまく発音できない
  • 閉鎖音(唇や舌が口の中の上部に触れて息を一度とめてから出す音、「だ」「ど」「で」「でぃ」や「た」「て」「と」などが連続する、あるいは頻発する文章がうまく読めない
  • さ行の続く文章を読むのがむつかしい
  • ら行の音が多く出る文章をうまく読めない

などです。たとえば、このような文章です。

  1. ささの葉が さらさらと音をたてる
  2. 青い青い澄んだそらに 白く白くただよう雲
  3. だりだり らりらり りらりらり
  4. あえいうえおあお あいうえお

急がなくともよいのです。これらが普通のスピードで(ややゆっくりめでも)明確に発音できないときは、一度専門医の検査を受けてみるといいかもしれませんね。認知症による失語症などが疑われる場合には、自己判断せず、専門医の診断をあおぎましょう。

おまけの訓練(かつぜつを良くするために)

発音明瞭度検査にも似ているのですが、役者さんやアナウンサーが明確な発音をする訓練として使う文章があります。滑舌(かつぜつ)が良い、悪いと最近ではあたりまえのように使われますが、滑舌という言葉はもともと、業界の専門用語です。お遊び程度にしてみてください。

  1. この竹垣に竹たてかけたのは 竹たてかけたかったから 竹たてかけたのだ
  2. あめんぼ赤いなあいうえお うき藻にこえびもおよいでる
  3. 抜きにくい釘 ひきぬきにくい釘 釘ぬきで抜く釘

構音障害の人は、あいうえおあお かきくけこかこ といった簡単な発音練習も、難しいと思われます。上の文は、カツゼツが悪いと思っているかたへの、訓練用メニューです。はじめはゆっくり正確に発音を、なれたら、少し早く読み、もっとなれたら、1文を5回は繰り返すという練習をします。

これが出来るようになると、少なくとも、「何言っているかよくわからない」とは言われなくなりますね。

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コミュニケーションは工夫して

手話

さて、実際に構音障害をかかえている人が家族や周囲にいる場合、そのコミュニケーションの方法には、どうしてもとまどうものがありますよね。構音障害の場合は、言葉はわかっているのにうまく発音できないという、障害者にとって、とてもストレスがあるものなのです。

はじめは何を言っているのかわからなくても、じっくりと耳をかたむけてあげることが、まず必要です。コミュニケーションをスムーズにしようと思うばかりに、よかれと思って何度も問い詰めるように聞き返してしまったり、常に先に答えを言ってしまうことは、場合によっては障害をもつ人に余計なストレスを与えてしまうかもしれません。コミュニケーションをとる上で気をつけたいこと、工夫できることを見てみましょう。

家族や友人が出来ること

器質的障害や運動機能性障害などの原因で構音障害を持った人、またその手術をうけた方の術後のリハビリ期間なども含め、言語聴覚士の指導のもと、訓練をしている最中の構音障害者の方は、決して「言葉が分からない」のではありません。「言葉をうまくつくれない」のです。

子供の場合は別ですが、大人の場合にありがちな間違いが、相手が言葉をうまく話せないと、ついうっかり、幼児言葉をつかってしまうことです。これは、構音障害者だけでなく、失語症のリハビリ中の方も、知らずに傷つけてしまいかねません。出来ることをあげてみますね。

  • 言葉はできるだけ端的に短くする
  • ゆっくり、1語1語丁寧に話す
  • ジェスチャーや文字を使う
  • 言い間違ったことをやたらと訂正しないようにする
  • 質問は、「はい」「いいえ」で答えられるものにする。
  • 相手が話そうとして必死になっていることもあるので、待つ心構えが必要

うっかりしても、やらないで!気をつけてほしい行動

相手が上手に会話できないと、知らぬ間に馬鹿にしたような態度になったり、そんなつもりはなくとも、答えをせかしてしまうことがあります。それは、構音障害の人にも、リハビリ中の人にも大変なストレスになります。うっかりしてしまいそうな、やってはいけない行動は以下のとおりです。

発語障害があっても、感情やプライドは健常であることを常に肝に銘じて!

うっかりやってしまいがちなのが、叱ってしまったり、怒ってしまうことです。すでに、うまく話せない本人は、言いたいことが伝わらないもどかしさを感じ、イライラしたり、自分をふがいないと思ったりもします。ところが、そういう状況になったことがない健常者は、つい、それを忘れてしまいがちです。

  • 「もっとしっかりしゃべって!」(励ますつもりでも、相手を傷つけます。)
  • 「何言ってるかよくわからない」(本人がそれを一番気にしています。思いやりのある態度を持ちましょう)

このような言葉は、たとえ健常者でも傷つきます。これが健常者どうしなら言い返し、喧嘩もできるでしょう。言いたいことを言えるのです。けれども、構音障害者は言いたいことはあっても、うまく言葉がつくれず、相手に伝えられないのです。

答えが遅くても、じっくり待つ気持ちを持ちましょう

本人が懸命に、自分の力で答えようとしているのに、先回りして「こうね?」と答えをいってしまうことがあります。相手は、「うまく伝えられるようになる」ことを目標としています。その努力の芽を摘み取るような行為になります。たとえ、よかれと思っても、相手を傷つける結果となりかねません。

褒めるのはいいこと、でもプレッシャーにならないように

後でも述べますが、うまく伝えられたときは、そのことを相手に知らせ、一緒に喜んであげることは、とても大切です。けれども、褒めすぎたり、「この調子ならもっとできる」など励ましすぎると、かえってプレッシャーになってしまいかねません。

他の人と比較してあれこれ言わないようにしましょう

構音障害の原因や、症状によっても違いますし、お子さんの場合なども回復の速度は人それぞれ違います。励ますつもりで、「知り合いのこういう人は何カ月で治ったよ」などと言うのもうっかりやってしまいがちです。また、「きっとよくなるよ!」などと、根拠不明のことをいうのは、あまりにも無責任なことです。御見舞などにうかがったときについ、口をすべらせてしまいそうですね。気をつけましょう。

コミュニケーションのコツを知っておきましょう

相手を尊重し、焦らずゆっくりと相手に話すときもゆっくりと、1語1語ていねいに、といいましたが、聴くときには、その倍以上の時間をもって、気持ちにゆとりをもち、聴くようにしましょう。

また、お互いの負担を減らすために、文字で会話する、ジェスチャーを使うなども、大いに使いましょう。ここでは、話しかける時、話を聞くときのポイントをみてゆきましょう。

くつろいだ会話

話しかけるときは

ゆっくりと、はっきりと、丁寧に、にこやかに。

  • 話し始めに、何の件の話しです、と話す内容を示すことで、その後の誤解が減ります。
  • 短い文、言葉で、ゆっくり、しかしはっきり話すよう心がけます。相手が難聴者の場合は、読唇で理解する方もいらっしゃいますので、話す時に口をはっきり発音するかたちにして、ゆっくりしゃべるのも、いい手段です。
  • 具体的に話すこと。通常の会話では、あいまいなことでも何となくわかったりしますが、誤解のもとでもあります。健常者には冷たく感じることもあるような、「端的」で「具体的」な表現をこころがけ、コミュニケーション上の誤解をさけましょう。
  • 相手が興味ある話題を優先して、会話への集中力を保たせてあげましょう。
  • 相手が使い慣れて来た言葉や、好きな言葉、方言などを使って、お互いの距離感を縮めるのも有効なことがあります。
  • ジェスチャーや、筆記、絵、実物など、恥ずかしがらずに、聴覚だけでなく視覚や嗅覚、感覚に訴えるコミュニケーション方法はかなり有効です。
  • 本人が理解できていないような場合、何度かゆっくりくりかえしてもだめなら、表現を簡潔なものに変えてみましょう
  • 構音障害でなく、失語症の場合は、理解に時間がかかることもあります。急に話題をかえたりすると、相手を混乱させてしまいます。
  • 認知症や記憶障害などを伴っている場合には、言葉そのものは理解できても、忘れてしまうこともあります。大事なことはメモに書いたり、連絡ノートをつくって書くなどして、お互いのストレスを回避しましょう。

話を聞くときには

急かしたりしては、いけません。面倒くさそうな顔も、相手を傷つけ、会話することを嫌いになり、孤独になり、余計に話せなくなる、という悪循環を生む場合だってあるのです。構音障害の人とは、会話はスムーズにゆかないのが、「普通」「あたりまえ」です。自分のペースにならないよう、気をつけてみましょう。

  • 急かさないで、相手がゆっくり話せる雰囲気をつくることを心がける
  • 発音が間違っているときに、言い直して正すなども、うっかりやりがちですが、バカにしているととられることもあります。誤りを、いちいち指摘したり訂正するなどは、良かれと思ってのことでも、患者にはよくないことです。リハビリをする意欲を無くしてしまう人だっているのです。間違いを笑うなど、もってのほかです。
  • 「はい」「いいえ」で答えられる質問にする。相手が「はい」「そう」「ちがう」など、通常ではつっけんどんに思える回答でも、構音障害の人には、それが精いっぱいだったり、当たり前だったりもします。それを、「愛想がない」などと勘違いしないよう、知っておきましょう。
  • 相手が何を言いたいのか、想像力を働かせ、理解につとめます。でもだからといって、わかった!と思った時点で相手の話を遮って話してはいけません。最後まで、きっちり聞くのが、正解です。
  • お子さんなどの場合は特に、上手に話せたときには、上手に話せていることをつたえ、褒めるだけではなく、一緒に喜びましょう。リハビリ中などの大人にも、そうです。一緒に喜ぶこと、きちんと伝わっていることを伝えることが、つらい訓練の励みになります。でも、大人相手には、褒めると「馬鹿にしてる」ととられることもありますから、注意しましょう。
  • 本人が話したがらないときには、無理に会話しないようにしましょう。誰だって、話したくないときもあります。リハビリだからといって、相手が話したくないときにまで会話したところで、いい効果はありません。
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まとめ

扉を開く

いかがでしたでしょうか。難聴からくる二次的な構音障害の方と話す機会がよくあるのですが、筆談が主です。最近知ったのですが、聾唖学校では、会話(コミュニケーション)の際、結論を先に示し、あとから最小限の説明をという訓練を受けるようです。通常の会話になれているわたしたちにとっては、そっけなかったり、冷たい印象をうけることもあるようです。けれども、それが、彼らにとっては誤解の少ない、コミュニケーション方法なのだそうです。

最初の頃は、私も知らずについ、相手の話を遮り、早とちりな結論を言ってしまって、相手の方から人差し指を左右にふられ「違う」という仕草をされ、ノートに筆記されて、諭される場面もありました。今では、最後まで私もメモをとりながら聞くようにしています。わたしが聞いたことをメモすると、相手の方もそれをみて、間違い(聞き間違いや勘違い)を指摘してくれます。そんなコミュニケーション方法もあります。

器質的なものからくる障害の場合、見た目の問題や、さまざまなことで世間や社会から傷つけられずに暮らす方が難しいというものです。そういった方をささえるているものは、正しいプライドを身につけていること、自分に対する自身、そして本来の意味でのタフさかもしれません。周囲の人も相手のプライドを傷つけることなく、自分自身もタフになることで、どんな相手にも思いやりをもって接することができるといいですね。

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