ミトコンドリア脳筋症という病気を知っていますか?ミトコンドリアって何かわからないといった人も多いと思います。
この病気は脳の神経や筋肉に様々な症状を及ぼす病気で難病の一つとされています。このミトコンドリア脳筋症について症状などできるだけ詳しく書いていきたいと思います。
ミトコンドリア脳筋症について
ミトコンドリア脳筋症は脳神経や筋肉に症状を及ぼす病気ですが、まずはミトコンドリアが何なのかを説明していきたいと思います。
ミトコンドリアとは
ミトコンドリアとは細胞に含まれている小器官の1つです。細胞の種類によって数は異なりますが、1つの細胞の中に数十~数万という数が存在し、細胞の10~20%を占めています。ミトコンドリアはエネルギーを作り出すことができます。運動をしたり、頭を使って考えたりなどをするにはエネルギーが必要です。人が活動するために必要なエネルギーを作り出すのがこのミトコンドリアなのです。
年齢を重ねていくとミトコンドリアの量が少なくなっていきます。ミトコンドリアが少なくなると作られるエネルギーも減ってしまいます。エネルギーは生きていくために必要不可欠な呼吸などの働きに優先して消費されていくため、遺伝子の修復や老化の進行を防ぐための働きにエネルギーが足りなくなってしまいます。それによって老化が進んだりガンなどの病気を引き起こしやすくなってしまいます。
ミトコンドリアが増えることは人体に良いことばかりなのです。ミトコンドリアが増えることで作り出されるエネルギーの量も増え、老化や病気の予防にもつながります。また、体力が増えることで健康体でいることもできます。脳内のミトコンドリア多くなることで集中力などがついたりと脳が活性化されることもあります。
ミトコンドリア脳筋症とは
ミトコンドリア脳筋症はミトコンドリアに異常が起こることによってカラダに様々な支障をきたす病気の総称であり、ミトコンドリア病ともいわれています。主に脳の神経や筋肉に症状が現れやすいためミトコンドリア脳筋症と名前がついているそうです。症状の出方や種類も多いため判断が難しいといわれており、難病の1つとしても指定されています。
欧米の統計では10万人に9~16人がミトコンドリア脳筋症患者であるというデータがありますが、症状や種類が多いために軽症の場合だとミトコンドリア脳筋症と診断されないことがあり、軽症患者も含めるとデータよりも患者数は多いのではないかと考えられています。ミトコンドリア脳筋症は20歳以下の若い年齢で発症することが多く、特に小さい子供に多くみられています。しかし、大人でも発症することはあるため、どのような人に起こりやすいかなどはハッキリとはしていません。
また、ミトコンドリアのDNAに異常が起こっていることもわかっており、DNAの異常で引き起こされた病気は母系遺伝することも判明しています。ただし、異常を起こしているミトコンドリアの数が低いと発症はせず、遺伝したからといって必ず発症するわけではありません。
ミトコンドリア脳筋症の原因
ミトコンドリア脳筋症の原因として核DNA上の遺伝子の変異、ミトコンドリアDNAの異常のどちらかが関係しており、薬物などが原因で引き起こされる場合もあるとされています。ほとんどの場合が遺伝子の異常によるものです。
ミトコンドリア脳筋症の症状
症状は種類も多く全身に現れます。けいれん、下痢、便秘、精神症状、筋力の低下、心筋症、肺高血圧症、視神経萎縮、肝機能障害、糖尿病、低カルシウム症など他にも様々な症状があります。たくさんある中でもやはり、脳、神経、心臓、筋肉などエネルギーの消費が多い場所に症状は現れやすいようです。
ミトコンドリア脳筋症の治療法
ミトコンドリア脳筋症は治療法がなく、根治することが難しいとされており、起こっている症状にあった適切な治療をすることが大切です。また様々な症状が重なることもあるため、その症状にあった専門医に診てもらう必要があり、いくつかを受診しなければいけなくなることもあります。
ミトコンドリア脳筋症の3大病型
ミトコンドリア脳筋症には代表的な3大病型があります。それぞれについて書いていきたいと思います。
慢性進行性外眼麻痺症候群
慢性進行性外眼麻痺症候群:CPEO(まんせいしんこうせいがいがんまひしょうこうぐん)とは目の周囲の筋肉に麻痺が生じることで眼球が動かなくなってしまうものです。初期には上のまぶたが垂れ下がってしまう眼瞼下垂(がんけんかすい)が起こり症状に気付きます。症状が進行すると全方向への運動に障害をきたします。目だけに症状が起こる人もいますが、ほとんどの場合筋力の低下や疲れやすくなるといった症状が起こります。
また眼症状の他に網膜の色素変性、心伝導障害がみられる場合はカーンズ・セイヤー症候群:KSS(Kearns-Sayre syndrome)と呼ばれます。KSSは低身長や難聴などの症状が現れます。CPEOはミトコンドリアDNAが一部欠失することが原因とされており、発症する年齢は子供から大人まで幅広いです。そして母性遺伝の可能性は低いとされています。
赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群
赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群:MERRF(マーフ)とは筋肉が素早く収縮したり、ふらつきが起こる小脳症状、筋肉の痙攣といった症状が現れるものです。主に脳や筋肉に症状が現れ脳卒中に似た症状が起こることもあるそうです。子供に多くみられますが成人でも発症します。40%の人に心筋症が出るというデータがあるようです。
ミトコンドリアDNAの変異によって母系遺伝しますが、核DNA異常が関係している場合メンデル遺伝によって起こるとされています。
ミトコンドリア脳筋症・アシドーシス・脳卒中様症候群
ミトコンドリア脳筋症・アシドーシス・脳卒中様症候群:MELAS(メラス)とは脳卒中に似た症状や意識障害、運動麻痺、筋力低下といった症状が起こるものです。初期には頭痛や吐き気などの症状が出ます。心臓、耳、内分泌器官などに症状が出ることもあるそうです。子供から大人まで発症の可能性はありますが、特に5~15歳の子供に多くみられます。
MELASの80%がミトコンドリアDNAの点変異によって起こり母系遺伝するとされています。頭痛、痙攣、意識障害などの脳卒中様発作が起こった際にCT検査やMRI検査をすると脳梗塞に似ている状態となっているようです。
3大病型以外の病型
ミトコンドリア脳筋症の3大病型について書きましたがそれ以外にも病型があります。
リー脳症
リー脳症(Leigh脳症)とは乳幼児期から発症し、筋力の低下、呼吸障害、知的退行などの症状が主に現れます。発育が遅れてしまったりすることもあります。血液や随液の中の乳酸値が上がることも特徴です。CTやMRI検査をすると脳の中心部分に異常が起きていることがわかります。症状が悪化すると無呼吸になってしまったり呼吸器の合併のリスクが高まります。その結果、人工呼吸管理となることが多く報告されています。
今のところ治療薬はなく、リー脳症の予後は症状の進行などによって様々です。
レーバー病
レーバー病(Leber病)とは両目に視力障害が生じるものです。初めは視力の低下がみられ次第に視神経乳頭が蒼白してしまったり、視神経が萎縮してしまったりなどの症状が起きます。10~30歳に多く発症し、特に男性に多くみられるのも特徴です。また、視力の低下の他に多発性硬化症様、片麻痺、てんかん、感覚異常といった症状を合併することもあります。
痛みはなく片目のみに発症した場合、早くて数週間遅くても1年以内にはもう片方の目にも発症することがわかっています。両目同時に発症することもあります。視力は人によって異なりますが両目が0.1以下になってしまうことがほとんどであるといわれています。少ない可能性ではありますが視力が回復することもあります。ただ画期的な治療法がまだありません。
ミトコンドリアを増やす方法
ミトコンドリアはカラダにとってとても重要です。カラダに必要なエネルギーを作り出すミトコンドリアは増やすことができるのです。その増やし方をあげていきたいと思います。
食事によって増やす
ミトコンドリアを増やすには食生活はとても重要です。普段の食生活で脂が多いものやバランスの悪い食事をしているとミトコンドリアを減らしてしまう原因となってしまいます。このような食生活を続けていると質の悪いミトコンドリアを作ることにもなってしまうのです。ミトコンドリアに良い効果を与える食材をいくつか紹介します。
肉類、卵、にんにく、レバー、納豆、貝類、カツオ、イワシ、ほうれん草などがミトコンドリアにとって良い効果を与える食材です。ビタミンや鉄、亜鉛、タウリンといった栄養素をバランスよく摂取することでミトコンドリアの活性化に繋がります。
有酸素運動をする
運動をするということはエネルギーを多く消費します。エネルギーがたくさん必要であるということをカラダが認識することでミトコンドリアが増えるのです。運動の中でも効果があるのはウォーキングやランニングなどの有酸素運動です。酸素を使い脂肪を燃焼させますが、その有酸素状態になるまでに通常だと運動を始めてから30分ほどの時間がかかります。短時間で有酸素状態にする方法は5分ほどで汗をかくような運動をすることです。汗をかき始めることが目安となるようです。
運動を始める直前は食事を控え、少し空腹状態にしておくことでミトコンドリアが増えやすい状況にしておくと効果が出やすいです。
まとめ
ミトコンドリア脳筋症は遺伝子が関係しており少し複雑でわかりにくいですが、ミトコンドリアがカラダにとって必要不可欠であるということはわかっていただけたかと思います。この病気は症状や種類が多いために診断が難しいですが、少しでも異変を感じた場合は医療機関を受診するのがよいでしょう。食生活や有酸素運動を取り入れミトコンドリアが不足しないように心がけましょう。