妊婦さんの食べつわり、吐きつわりは有名ですが、皆さんよだれつわりについてご存知でしょうか。妊娠中の症状は人によって異なりますが、いずれにせよつわりによって大変な思いをしている女性はとても多いです。
その中でも、よだれつわりの認知度は低くよだれつわりの症状がでる妊婦さんは理解してもらえないことが多くつらい思いをする方も多いようです。今回はつわりの症状の一つ、よだれつわりをピックアップし紹介していきます。
よだれつわりがの症状が出て不安な妊婦さんのために情報をまとめました。また妊婦さんの周りにいる人は少しでも彼女たちのことを理解して、協力してあげましょう。
この記事の目次
つわりとは、よだれつわりとは?
まずつわりについての基本知識です。
一般的につわりとは妊娠初期に起こる吐き気・嘔吐のことを指します。また妊娠初期の不快症状全般のことを言う場合もあります。つわりは妊婦さんの約80パーセントが経験すると言われています。
つわりには個人差があり、その症状も多様です。吐き気、嘔吐、唾液の増加、眠気、頭痛、匂いに敏感になること、食べ物の好みの変化、食欲増進・減退、胃もたれ、心身の不調などが挙げられます。早朝の空腹時に症状が強くでる傾向があると言われます。その中でも特に以下のものが代表的なつわりとして知られています。
・吐きつわり・・・吐き気、嘔吐のこと。
→症状が重い場合には、食べ物を一切受け付けなくなることもあり、脱水症状になる場合がある。
・食べつわり・・・空腹になると気持ち悪くなる。
→単純に空腹を感じると気持ち悪くなる方、食べないと気持ち悪いので食事をするがそれを吐いてしまうという吐きつわりとの併発をされる方もいます。
・匂いつわり・・・においに敏感になる。→
これまで平気だったたばこや炊きたてのごはんの香りなどに嫌悪感を感じます。吐きつわりとの併発で吐いてしまう方もいます。
眠りつわり・・・常に眠気に襲われる→寝ても寝ても眠たい。
→しっかり睡眠をとっているにも関わらず、日常生活のなかでしょっちゅう眠気を感じます。
そして今回紹介するのが、
・よだれつわり(唾液過多症)・・・妊婦さんの唾液・よだれの量が増加すること。
→唾液過多とも言われます。よだれの量には個人差があり、よだれを飲み込める人もいますし、量の多さ、匂いや味に不快感を覚えて飲み込めない人もいます。この症状が出る妊婦さんの多くは、不快感からよだれを飲み込むことができません。
したがって妊婦さんは常に身の周りにティッシュペーパーや空のペットボトルなどの小さな容器またはビニール袋などを用意しよだれをはきだす必要があります。中には1日に500ml以上の唾液が出る妊婦さんもいます。
よだれの質感もまた人によって異なります。さらさらしたものだったりねばねばしたり、苦みや不快な味を感じる妊婦さんもいるようです。妊娠中は嗅覚・味覚が敏感になっています。大量に飲み込んだ唾液に嫌悪感を覚え、嘔吐してしまう場合もあります。
よだれ・唾液の9割以上は水分です。よだれつわりは、吐きつわりや食べつわりの症状と共に出ることが多く、場合によっては水分の摂取が困難となり、脱水症状になっていまう人もいます。
よだれがよく出る時間帯も個人によって様々で、寝ている最中にもよだれが止まらない人もいます。
つわり・よだれつわりの原因とは?
では、よだれつわりの原因とはいったい何なのでしょうか?
実はつわり全般について、原因ははっきりと分かっていません。しかしつわりの原因にはいくつかの仮説があります。
また大多数の妊婦さんがつわりを経験しますが、つわりの症状が全く現れない妊婦さんもなかにはいます。したがってつわりは個人差が大きく、全ての人に当てはまるつわりの原因は医学的に解明されていません。
ホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の変化によるという説
まずは一般的なつわりについての説明からはじめます。
女性の身体は受胎するとすぐに、胎盤の一部からヒト絨毛性ゴナドトロピンという、黄体を刺激しプロゲストロン(黄体ホルモン)の分泌が低下するのを防ぐホルモンが分泌されます(プロゲストロンは妊娠に重要な物質です)。
これによって子宮は受精卵の成長にふさわしい環境を維持することができます。逆に通常の月経では黄体が退行し、子宮粘膜が剥がれおちて排出されることになります。ちなみに妊娠検査薬はヒト絨毛性ゴナドトロピンに反応して陽性となります。
しかしこの体内で妊婦に必要なホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が急激に増加することで身体はその変化についていくことができず、脳の嘔吐中枢を刺激するためつわりが起きるという説です。
しかし一方でつわりの重さはヒト絨毛性ゴナドトロピンの量と必ずしも一致しているわけではないので、このホルモンだけが原因とは考えられていません。
よだれつわりについての説明は、黄体ホルモンの増加で胃腸の機能が低下する作用が起きると言われています。唾液は消化を助ける働きがありますので、その胃腸の機能の低下を補うためよだれの分泌量が増えてよだれつわりになるのではないか、と考えられます。
防衛反応という説
赤ちゃんにとって悪いもの、毒素のあるものを拒絶・排除するためだという説です。そのためつわりはあったほうがいいとも考えられています。赤ちゃんを守るために妊婦の身体をあまり動かせないようにするためという説もあります。
唾液には消毒の作用もあります。さらに口腔内の菌の繁殖を防いだり、酸を中和させたりする作用もあります。この説によるとよだれつわりは妊娠中、女性の体から老廃物、毒素を出そうとする働きによると考えられます。(水毒説)
拒絶反応という説
一種のアレルギー反応という説です。妊娠初期には、身体は受精卵を異物とみなし排除しようとしてつわりが起こるとも言われています。
自律神経の乱れ・心理的要因によるという説
・コルチゾールの影響
妊娠中はホルモンバラスが乱れやすくなっています。心理的にも不安定になりストレスを感じやすくなっています。妊娠中ストレスを感じると、コルチゾールが分泌されます。このコルチゾールがよだれの分泌異常を引き起こしていると考えられます。
・ビタミンB6の不足
幸せホルモンと言われるセロトニン(神経伝達物質)を作るためにはビタミンB6が必要です。妊娠中は情緒不安定になりやすく、ストレスがたまりやすくなっています。そのためセロトニンが生成されることがこころの安定を保つためにとても大切になります。副腎皮質ホルモン、別名ストレスホルモンはセロトニンの減少により増加します。
唾液の過剰分泌は、ビタミンB6の不足、セロトニンの減少、ストレスホルモンの増加、よだれつわりという順序を追って説明がされます。
つわり・よだれつわりの時期は?いつまで続くのか?
残念ながらよだれつわりは他のつわりに比べて長く続く場合が多いようです。具体的にはよだれつわりの症状が現れ始めてから出産まで続くケースが多いようです。しかし中には妊娠中期の数カ月ほど過剰の唾液を感じておさまる方や症状がでてから臨月までといった方もいます。
よだれつわりはいつまで続くかの回答は、一般的に妊娠16週頃から出産するまでということが言えます。妊娠中期に収まる方もいれば、出産を終えるまで続くケースもあるのです。
吐きつわりが治まっても、よだれつわりだけは続く場合もあります。過剰に心配をする必要はありません。よだれつわりは長く続くと認識しておくとよいでしょう。
一般的なつわりの症状は早い人で妊娠4週目から始まります。多くの人は妊娠5~6週からつわりの症状が出始めて、妊娠12~16週頃まで続きます。つわりが続くのは一般的に6~8週間ほどです。妊娠16週頃につわりが治まるのは、この時期に胎盤が完成、安定しホルモンバランスが落ち着くためだ、と考えられています。妊娠16週以降は安定期に入り、つわりの症状もなくなる場合が多いです。
よだれつわりへの対策・対処法
よだれつわりの対処方法を知りましょう。
吐きだす
よだれを飲み込めるようなら飲み込んでしまって問題ありません。多くの場合不快感・嫌悪感のため唾液を呑み込むことができません。そういった場合には吐きだす以外に方法がありません。よだれの分泌はコントロールができないので家の中はもちろん、外出する際には以下のものを持ち歩くのが安心です。
- 空のペットボトル(ペットボトルカバーがあると中身が見えずより安心です。)
- ビニール袋
- ティッシュペーパー、ハンカチ
また就寝時によだれが止まらない方も多いため、枕カバーの上にタオルを敷く、洗面器やタオルを枕元に置いておく等をしておくとより安心です。ふと目が覚めたときには口にたまったよだれをそこに吐きだしたり口元を改めて綺麗にしたりすることができます。
さらによだれの処理のことを考えて、チラシや新聞紙の上によだれを吐きだすのもおススメです。家の中にいるときには首のまわりにタオルを巻いて、よだれがたれるままにしている妊婦さんもいるようです。
よだれの処理にティッシュペーパーやハンカチを頻繁に利用すると口周りや唇を刺激して肌がかぶれてしまう場合もありますので、おススメはやはりペットボトルやシンクなどに直接吐きだす方法です。ペットボトルに唾液が溜まっていくのが不快な方は小さなペットボトルや缶を用いるか、こまめにペットボトルを交換するとよいでしょう。
温かい飲み物を飲む
温かい飲み物を飲むと一時的に唾液の量がおさまることがあります。逆に冷たい飲み物を摂ると唾液の量が増えるようです。身体のパフォーマンスを上げるためにも身体を冷やさないように、血流を良くするように努めましょう。
唾液は体外に悪いものを排出する働きによると考えるとそれに協力して身体を温めてあげる、ということになります。
飴をなめる、ガムを噛む
これは軽いよだれつわりの時に有効のようです。嗅覚・味覚が敏感になっていますので唾液の匂いや味を飴やガムによってごまかしてしまう方法です。口の中の味が変わることで気が紛れます。
歯を磨く・マウスウォッシュを利用する
こちらも軽いよだれつわりに有効です。歯磨きやマウスウォッシュでよだれの味や不快感を流し、口の中をすっきりさせます。
就寝する時にはタオルを噛んで眠る
口に唾液がたまって眠れないときに有効です。こちらも軽度のよだれつわりに有効です。
外出時はマスクを着用する
重度のよだれつわりの方の中には10分に一度吐きださないと口の中が唾液でいっぱいになってしまう、という妊婦さんもいます。そう言った方はマスクを着用しておくとよいでしょう。
対策・対処法のまとめ
しかし結局のところは気を紛らわす程度以上の効果を得ることは難しいようです。妊婦さんの中には、花粉症とよだれつわりが一緒になって鼻詰まりとよだれにより息をするのも大変という方もいます。
そしてしょっちゅう(朝起きてから眠るまで、夜中に起きるとき)、人によっては食事の合間にもよだれをださなければいけない、周りに理解者がいない等の理由からよだれつわりは最終的に精神的苦痛が大きいようです。自分に合った吐き出し方を見つけて、よだれつわりが終わるまで気長に付き合っていく必要がありそうです。
よだれつわりを改善するために
予防方法を紹介します。
身体を温める・水分の代謝を促す
身体を温めると代謝・血行が良くなります。そうすることで発汗や尿、便通をよくし、老廃物を体外へ出すことを助けます。また水分を摂取することも大切になってきます。よだれつわりが出る場合にはアイスクリームや氷は避け、冷たい飲み物より温かい飲み物をゆっくりと摂取するようにしましょう。
身体に毒素がより少なくなれば、唾液の量は減るかもしれません。
ビタミンB6を摂取する
食品で言うと肉、魚、にんにく、ごま、バナナ、トウモロコシなどにビタミンB6は含まれています。しかしよだれつわりでつわりで食べるのがつらい、または調理するのが大変な時には、サプリメントを摂るのもいいでしょう。
実際に毎日確実にビタミンB6を摂取するにはサプリメントがおススメで現実的と言えます。つわりがつらい時に食品を摂取する必要はありません。
鍼灸・漢方薬
効くかどうか個人差があるようですが、鍼灸・漢方薬・ツボもよだれつわりの緩和に効果的と考えられています。よだれつわりの症状が重い場合には鍼灸院を訪ねてみましょう。唾液を減らす治療をしてくれるはずです。その際には必ず妊娠していること伝えましょう。
漢方薬で唾液の抑制、吐き気止めなどの効果があるのは、益智(やくち)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりゅうとう)などです。漢方医や薬局などでぜひ聞いてみましょう。
ツボを刺激する
3つのツボを紹介します。いずれも自律神経の働きを調整・イライラの解消にも効果があると考えられています。
「中泉」
手の甲側の手首と、人差し指と中指の間の谷の線が交わるところにある中泉というツボが唾液の分泌を抑える効果があると言われています。
自律神経の乱れを整え、呼吸を穏やかにすると考えられています。1秒に1往復程度の速さで左右の手を30回程度こすりましょう。寝る前に行うと効果的です。この時、気持ちが落ち着くのを意識するとより良いでしょう。
「内関」
掌側の手首から(脈をとるように)指幅三本分は離れた所、腕幅の真ん中に位置する内関をいうツボは消化器系の不調に効果があると言われています。
吐き気・胃痛・食欲不振などに効くとされていますので、とにかくつわりのある方にはおススメです。刺激すると中指にしびれるような感覚があるかと思います。少し強めの指圧(1回の指圧は6~8秒程度)を断続的に7回ほど行います。
「神門」
薬指の真下、内手首の上にあります。特に左手の神門は便秘に効くツボとして知られています。具体的には消化器系の機能の調整、腸の蠕動運動を活発にします。また自律神経を整えてくれる効果もあると言われています。神門はあまり強く刺激するツボではありません。
1日に両手のツボを1,2分軽く指圧するとよいでしょう。便秘が気になる方は左手の神門を起床後すぐに軽く7回程度さすってみましょう。
まとめ
つわりは漢字で悪阻と書きます。文字からとても辛い、しかし阻むことのできないイメージを持てますし、実際にそう感じる妊婦さんも多いです。また大多数の妊婦さんがつわりを経験しますが、つわりの症状が全く現れない妊婦さんもなかにはいます。辛いのはつわりの原因やつわりにずばり効く薬は開発されていないことです。改善の方法がなくよだれつわり終わるのを待つしかない方も多いようです。
今回は特によだれつわりについて追及してみましたがいかがでしたでしょうか。唾液には、雑菌の繁殖を防いだり虫歯ができるのを防ぐ効果があります。従って虫歯にはなりにくい、どんなに長くとも10カ月だ、というように前向きに考えるというのがよだれつわりが出た妊婦さんからのアドバイスです。
関連記事として、
・つわりの時の食事はどうするのが良い?食べ方の工夫方法など!
これらを読んでおきましょう。