「何となく体がだるい」・・・現代人なら誰でも感じる「倦怠感(けんたいかん)」と言われる症状ですが、「べつに病気じゃないし」とそのままにしている人が大半でしょう。でもちょっと待って!
その「だるさ」を放っておくと、睡眠不足や食欲不振などの健康障害や、うつ病や心身症など精神疾患へと発展することもあるのです。毎日、残業をしていたり、たまの休みでも一日中、昏々と寝てしまって「起き上がるのがツライ」という人は要注意。軽視は禁物です。
倦怠感の原因とは?
「だるい」と感じる要因には3つの側面があります。
肉体労働などで体を酷使した場合
いつもはデスクワークの人が棚卸を手伝ったために、腕や脚が筋肉痛になったり、イベントなど応援業務で一日中立ちっぱなしで声を張り上げてセールスをしたなど、肉体を酷使したあとの疲労感です。
全身に倦怠感があり、帰宅してから倒れるように寝てしまったり、翌日はベッドから起き上がれなかったりします。長時間寝ても眠気や疲れが取れなかったりします。
内臓機能そのものの低下
仕事が終わったあと、毎日お酒が欠かせないという人は要注意です。また時間が不規則で寝る直前に食事をしてしまうという場合、寝ている間にこれらの食べ物を消化しようと、胃や腸はフル稼働します。
肝臓や腎臓、すい臓といった臓器もかなりの負担を受けるため、知らぬ間にダメージを受け、何となく体がだるいといった症状が現れます。
精神的なストレスからくる倦怠感
人間関係の複雑さやノルマ達成などのプレッシャーから精神的に追い詰められている場合、気持ちがすっきりしない、言いたいことも言えないモヤモヤ感が募っていきます。
これらが日常的に蓄積されると、やる気が出なかったり、その元凶となる人を避けようと仕事や学校を休んだりしますが、これが倦怠感を引き起こす3つめの原因です。こうした症状が長期間続くと「脳」にかなりの負担を与えると考えられています。
寝ても覚めても解消されない「倦怠感」って?
肉体疲労からくる倦怠感は、十分な休息と栄養を摂れば、数日~数週間で改善します。厄介なのは体を酷使した覚えがないのに、何となく全身がだるかったり、やる気が起きない蓄積型の「倦怠感」です。前述した内臓機能と精神的なストレスのケースがこれに相当します。
内臓疲労型の倦怠感は、多くの場合が生活習慣を見直せば、よくなります。暴飲暴食を控え、夜遅い時間の食事を避けたりまたは食事内容を変えたり「改善」することで、内臓の疲労が取れ、だるさも感じにくくなってきます。
症状によっては医師の診察を受け、適切な薬を処方してもらうことも得策です。
「好きなことなのに」体が動かないのは黄色信号
倦怠感の「倦怠(けんたい)」とは、飽きて嫌になることを指しますが、例えば休日に、大好きであるはずの趣味やイベントに行こうと思っても、なかなか起きられなかったり、いざ始めてもやる気が続かなかったり、本来楽しみにしていることでさえ億劫だったり、投げ出したくなることを想像してみてください。
「楽しみにしていたけど、きょうはパスしたいな~」とか、「約束したけど行きたくないな~」という、ちょっとした気持ちの揺れからそれは始まります。もちろん意志が強い人や気力がまだ十分ある場合は「いやいや、そうは言っても行かねば」「約束は守らなくちゃ」とヨッコラショと重い体を起こして準備をするわけですが、ときにどうしても体が動かない、無理!ということがあります。
気持ちが体にブレーキをかけているような状況です。これが精神的なストレスによる倦怠感と言えます。
ストレスからくる「倦怠感」の対処法
好きなことなのに、体が言うことを聞かない、動くことができないという場合の倦怠感は、スポーツに例えるとイエローカードをもらったような状態です。これはかなりの確率で脳の疲労が溜まっているサインと言えます。
「きょうは行きたくないなぁ。でも行かなくちゃなぁ」と気持ちは数ミリずつ動くのですが、まるでベッドに体をくくりつけられたように、体が持ち上げられない。「気合いダーッ」とばかりに起きようとするのですが、頭の中で行く・行かないと葛藤を繰り返し、5分10分とグダグダして、結局時間だけが過ぎていってしまうのです。
マジメな人ほど要注意?
いざ起きようとしてもなかなか体が言うことを聞かない。「そんなのしょっちゅうだよ」と思われるかもしれません。
実はここから先が重要なのですが、こうした倦怠感に対して、意志の強さや責任感と言った「精神力」で立ち向かう傾向の人がいます。元来、怠け者の人からすれば「スバラシイ!!」「人として立派!!」と、ほめ称える対象となるところですが、こうした「精神力で何とかしようとする人」には「有言実行」「約束したんだから、守らなきゃ」と、自分の不調にフタをして、自己を犠牲にしてまで目的を遂行しようとします。つまり無理をしてしまうのです。
本人としては「約束を守った」という達成感はあるのですが、本来、疲れているので、行くことで一層疲れが増してしまい、結果的にさらなる疲労を蓄積することにもなりかねません。またその内容や結果が自分の期待していたものより満足度が低い場合は「やっぱり家で寝ていればよかった」と心の片隅でちょっぴり後悔したりするのです。
マイペースなタイプほど自己回復力が早い?
一方で、同じように倦怠感を感じながらもきちんと心の声に耳を傾けて「きょうは行かない」という判断ができる人がいます。そのようなタイプの人はメールなどで「本当に申し訳ないんだけど、体がどうにも言うことを聞かず、今回はごめんね!」などと、わりと正直に理由を書いて相手に送ることができるのです。一見、無責任なヤツともとられそうですが、ポイントはストレスを受けていることを、正直に告白していることにあります。
ストレスが溜まると、肉体はおろか大脳にまで影響を及ぼします。それが脳の疲労で、ぎりぎりまで行く・行かないと考えているときは、知性的な思考(理性)と、感情的な思考(本能)が戦い(葛藤)を始めている最中です。体はクタクタなはずなのに「約束したから無理をしてでも行こう」と考えるのは知性です。「やっぱり体がツライから、悪いけど断ろう」というのは本能による行動というわけです。
倦怠感の改善方法
このように日々のストレスから受ける倦怠感や疲労感は同じでも、マジメな有言実行タイプとマイペースなタイプではその考え方と行動が大きく違います。
ポジティブな思考がストレスを軽減
マイペースなタイプはつねに心の声に耳を傾けているので、時間ぎりぎりまでウダウダとしながらも一転「行けば何か新しい出会いや発見があるかもしれない」とポジティブな理由づけをして、自分を奮い立たせる場合もあります。
土壇場で「やっぱり行こう!」とバタバタと用意をし始め、結果的に遅刻したりすることもあるのですが、帰りがけにはそんなこともコロッと忘れて「いや~ 最初は億劫だったけど、行ってよかった」と、いつの間にかポジティブな考えに置き換えているのです。
「ずいぶんと自分勝手なヤツだなぁ」と思うかもしれません。でもこのマイペースな思考こそ、脳の疲労から来る倦怠感の自己克服法といえるのです。簡単に言うと、我慢しすぎないということです。逆に我慢しすぎるとどうなるか? 自分を押し殺してしまいがちになるので、最後には心身のバランスが崩れ、精神に異常をきたす可能性があります。
脳の疲労を放置したままは絶対にNG
実際に脳の疲労を放っておくと、まず五感のうちの味覚から異常が出るという、研究結果も出ています。食欲不振になったり、逆に疲れから極端に味の濃いものや甘いもの、脂肪分の高いものを欲する傾向が現れます。もちろんこれらの食べ物も適量ならば特に問題はなく、疲労回復に役立つ場合もあるのですが、極度のストレスを受けた脳では、そうした正しい判断ができないと言っても過言ではありません。
「だるさ」の要因として挙げた2つめの要素の内臓機能の低下も、脳の疲労による味覚の異常やストレスが原因と言えます。過度の飲酒はもちろん、濃い味や脂肪分を好む偏った食生活からも十分起こりうると考えられます。
日常的にお酒を飲んでいなくても、腎臓や肝臓といった臓器は、日々の食事で摂取する有害物質や食品添加物などを、フィルターとしてろ過する役割を担っており、一番にダメージを受けることが考えられます。
また食欲不振などから栄養が不足すると、ビタミンやミネラル、たんぱく質といった本来体に必要な栄養素が摂取できなかったり、たとえ摂取はできていても吸収の効率が悪かったりと、いいことは1つもないのです。
日常生活でできる改善法とは?
脳の疲労から来る倦怠感は、まず大本となるストレスを失くすことが大前提です。でも言うが易し、行うが難しと思うでしょう。脳の疲労を軽減させるための方法として有効なことは、もちろん睡眠や休息を取ったり、適切な栄養を摂取することも大切なのですが、何よりも「自分を極端にしばらないこと」が挙げられます。
・自分に対して禁止事項を設けない
何事にもストイックになったり、あまり抑制をかけすぎない、ということです。自己犠牲はこの場合、何の得策でもありません。自分の行動に歯止めや足かせをするのはそろそろやめて、ゆるりと生きてみることが得策です。
・自分の心の声に耳を傾けてみる
ときには本能に従ってみることも大切です。他人がいいと言っていることも、少しでも自分が嫌だったり、不快に感じるならやらなくてもいいのです。他人の意見に惑わされたり、顔色をうかがうのではなく、自分自身の声を大切にしてみてください。
・ヨガや瞑想を取り入れてみる
瞑想するのもいい方法です。呼吸と同時に行うヨガはまさにうってつけの瞑想法で、スーハー、スーハーとゆっくりと息を整えることからでも始めれば、徐々に気持ちが落ち着いてきます。
最初はなかなか集中力を保てなかったり、あれやこれやとつい考えてしまうかもしれませんが、続けていくうちに本来持っている五感(見る・聞く・話す・味わう・嗅ぐ)が徐々に研ぎ澄まされていくはずです。どんなに小さなことでも受け身ではなく、能動的に考えるクセをつけるわけです。
まとめ
精神的なストレスからくる「倦怠感」は放っておくと、必ず蓄積していきます。その原因といえる「脳の疲れ」を取るために、上記のような訓練を重ねていくと、たくさんの情報から本当に自分に必要なものだけをより分けられたり、感情に左右されなくなったり、ブレない人でいられるようになります。
鎧を一枚一枚、はがすようにストレスを取り除いていければ、脳の疲れが取れると同時に、新たなストレスを受けにくい(受け流す)ようになれるはずです。好きなことをより多く見つけたり、実際にやってみたり、日常生活でできる範囲から始めてみましょう。
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