出生直後に外見上の性別に不明瞭な点があるのが分かることがあります。これは半陰陽やインターセックス、または第3の性、アンドロジニーなどと呼ばれるものです。
半陰陽とはどのようなものなのでしょうか?周りに半陰陽である知人が存在することは少ないと思います。また、性に関するデリケートでかなりプライベートな深いことなので打ち明けられる人はかなり限定されるのではないでしょうか。
日本では1500〜2000人に1人程の確率で発症している性染色体異常であり、生物学的に性別があやふやな状態で生まれてくる子供は全体で1/1500と言われています。
自分が半陰陽であると大人になってから気づく人も多く、正常に生理や男性の性器活動が行われている場合でも性別がわからないというケースもあります。
半陰陽に関する詳しい情報を見ていきましょう。
半陰陽とは
半陰陽とは、通常染色体で分けられる性別と生殖腺という生殖細胞をつくる器官に矛盾のあることを言います。インターセックスや第3の性とも言われます。性分化疾患のひとつです。
性分化疾患とは、半陰陽など先天性の外性器異常や思春期になってわかる異常(思春期発来障害)、性同一性障害などの疾患の総称です。半陰陽をはじめとするこれらの疾患は、社会的な性を必要とする上で様々な障害を感じるため、難病として扱われています。中でも半陰陽は、以下のような様々な種類があるため、対応もそれに応じて慎重に扱わなくてはいけないものとして認識されています。
日本では、毎年600人程度の半陰陽の子供が生まれていると考えられています。この数字は生後すぐの検診などでの外陰部異常で発見される数字です。半陰陽には思春期などになって分かる場合もあるので、実際はもっと多くの人がいると思われます。
また成長するにしたがって、ほとんどの半陰陽の人が社会的な性別を決めて生活をしていることから、医療現場では半陰陽という表現はあまり使われないそうです。
半陰陽の原因
半陰陽の原因といわれているのは、遺伝子の異常です。通常遺伝子は2つづつ対になって合計46本の染色体に記憶されています。そして46本の染色体の中44本、22対の部分は常染色体と呼ばれ、残り1対が性を決定する染色体になります。
多くの人がこの1対の染色体の違いから男女の性が分けられることになります。染色体はY染色体とX染色体の二つの染色体で構成されており、2本共に染色体がXであれば、女性、XYという染色体が1つづつあると男性になります。
しかし半陰陽は、細胞分裂の際に何らかの異常ができ、性染色体の細胞が半数でこの両方の染色体を同時に持つ形になります。女性型であれば、46本XX、男性型であれば、46本XYということになります。またこれ以外にも様々な形があります。
半陰陽の症状
半陰陽は性染色体異常の先天性の疾患です。男性の内性器、外性器を持ち合わせながらも母乳の発達や精子の減少などが見られたり、尿道下裂、排尿異常などがの症状を発症する場合がります。
また女性男性関係なく先天性な腎臓の機能異常、ホルモンの分泌異常障害などの障害が現れます。男性なのに女性の様な体つきであったり、骨盤の歪みから腰が痛くなったり、女性器がついているのに射精が起こったりします。新生児の時に発見されなかった場合、初期症状としても特に問題がない場合が多く体毛が濃いことや、成長が早かったり、女性なのに男性並みの身体能力があるなどの変化しか見られない場合が多いです。
性器は女性のそれ、男性のそれがついているので周囲も自分も気づかずに一生を終えるケースもあります。しかし、女性の場合は内性器が正常に働かず自然な妊娠がほとんど不可能な場合があります。また男性でも精子の量が少ないので自然な妊娠が難しくなっています。
それぞれ人工受精での妊娠は行えるので妊娠が不可能な訳ではありません。
このように、不妊治療の過程で自分が半陰陽であると言うことを知る人も少なくありません。しかし、生まれてくる子供にも遺伝的性障害が発生する可能性も多いことも悩ましい問題の一つです。
半陰陽の種類
半陰陽でも、その染色体の別などによって種類があります。多くは出生時の検査で発見されるのですが、稀に成長過程で発見される場合もあります。
真性半陰陽
精巣と卵巣を両方持ちます。外性器も両方の形を備えています。性器の状態にはばらつきがあり、はっきりその要因は定められていません。両方の性器が正常に働くケースは稀で何かしらの異常が見受けられる場合がほとんどです。
仮性半陰陽
真性半陰陽が、精巣と卵巣の両方の機能を持つことに対して、仮性半陰陽は、性腺が男女どちらかの片方のものしかなく、外性器の形が染色体による性別のものとは逆の状態になっていることを指します。
①女性仮性半陰陽
染色体が女性で、外性器は男性の形に分化していること。
②男性仮性半陰陽
染色体が男性で、外性器は女性に分化していること。
女性仮性半陰陽
卵巣があり、内性器も女性であるけれど、胎児期(妊娠12週程度まで)に大量の男性ホルモンに過剰に影響され、外性器が男性の形に分化してしまったことが分かっています。この女性仮性半陰陽の原因の多くは副腎皮質ホルモンを生成する酵素に異常が起きる症状、先天性副腎皮質形成症といわれています。
身体の状態では、陰茎があるように見えます。多くの女性仮性半陰陽では、他の様々な部分で男性化が認められています。
男性仮性半陰陽
精巣があるのに、胎児期に男性ホルモンの異常があり、胎児に男性ホルモンが作用しなくなり、その影響で内性器、外性器が女性の形に分化してしまった状態です。この男性仮性半陰陽の原因の多くが男性ホルモン障害を起こす疾患や男性ホルモンを活性化させる酵素の欠損といわれています。
身体の状態では、陰茎が小さく、陰嚢に精巣がふれていません。そのために女性の外陰部のように見えます。多くが男性ホルモンが分泌されていますので、外性器が女性の形であっても男性の第二次性徴が出てくることがあります。
また逆に女性ホルモンだけが分泌された場合は、完全な女性とはいかないまでも、乳房の発達などの性徴が起こることもあります。しかし染色体は男性なので、妊娠は出来ず、不妊に悩み、検査で男性仮性半陰陽と分かる場合もあるそうです。
半陰陽の診断
半陰陽と診断されるには、どのような検査があるのでしょうか?多くが出生時の検査などの外陰部の異常で発見されます。その後に様々な検査を行うことで診断されます。
また稀に思春期に起こるはずの第二次性徴が起こらなかったり、男性であるにも関わらず、乳房が膨らんできたりすることで発見されることもあります。
染色体検査
染色体を調べる検査をします。調べ方の内容は病院によって様々ですが、多くが頬の粘膜を採取し、検査をする方法をとっています。もっと詳しく調べる場合には白血球を調べる検査などの方法があります。
または、婦人科で行われる検査方法でエコーやCTを用いて外内性器の状態を検査します。
性腺
性腺を検査します。具体的には血液中の性ホルモンを検査します。その上でCT検査などの検査を行います。また外・内性器の確認には、婦人科の検診、超音波検査、X線検査、場合によってはMRIなども行います。
治療の方法
様々な種類のある半陰陽ですが、どのように治療をしていくのでしょうか?
半陰陽の治療に関しては、出生後から治療を決意するまでに本人の意思が確認できる状態であれば、性器や染色体の有無に関わらず、本人の心理的な希望や適応性などが一番重要視されます。
成長する過程で主張してきた性へ、または思春期に今までの性から違う性への適合を感じる場合はその方向へ、本人と親族の意見を一番に、担当医師などと相談の上、ホルモンバランスを整えるためホルモン補充療法や性器の形成手術などの治療を行うことになります。
何科にかかればいい?
もしこれらの疾患に関係する症状や陰部の状態の異変が発見された場合は婦人科や泌尿器科などを受診しましょう。多くの場合は看護婦や医師が新生児の時に性器の異常に気づく場合がほとんどです。
検査ではクリニックなどでは保険が適用できないところもあります3〜5万円ほどの検査料が掛かりますので、出来るだけ保険が適用されるクリニックや病院での検査を受けたほうが良いでしょう。
また治療に関しても同じことが言えます。場所によっては保険が適用できない場合があります。きちんと医師と話し合って保険を適用してくれる所を探すことが重要でしょう。
半陰陽と混同しがちな疾患
半陰陽同様性に関する疾患について紹介します。
性同一性障害
近年よく耳にするようになった言葉ですが、この症状と半陰陽は違います。
性同一性障害は、染色体の性別と自分自身の内面的な性が食い違っていると感じる症状です。
症状
①異性の服装に興味、関心を持ち好む。
②自我が目覚めると、自分の性は反対だと主張する。
③自分の性器に対して異常な否定的感情を持つ。
④異性の集団遊びや活動に参加したがる。
自分の本来の性を受け入れられず、異性になりたいと強く願うことが多く、成長と共に性転換手術を希望する人も多くいます。
治療
治療には、違和感のある自分の性と向き合い生きていく精神的な辛さを解消するための治療を第一とします。具体的には、カウンセリングやホルモン療法、場合によっては性転換手術などです。
性転換手術に関しては、多くがその前になりたい性の性ホルモン補充治療をしながら1年間程度生活をします。実際に適合性などを見るためです。その後に手術を受けます。手術後は生殖能力はなくなりますが、精神的に安定した生活を送れるようになることや、パートナーとの満足する性的関係を持つことが出来るといわれています。
詳しくは、性同一性障害の診断方法って?原因や症状、治療方法を紹介!を参考にしてください!
クラインフェルター症候群
よく半陰陽と混同されることの多い疾患で、クラインフェルター症候群があります。
この疾患は、男性だとXY、女性だとXXという性染色体の構成が、XXYやXXXYなどのようにX過多の状態になるために起こる疾患です。新生児の男児の1000人に1人の割合で起こります。
症状
出生は男性として生まれてきますが、第二次性徴期に精巣の発達が少ない、または無くなることがあります。また乳房が大きくなるなどの女性化することが分かっています。しかし女性化しても女性器はないので、多くが男性として生活をすることになります。
注意したいのは、乳房の発達があると、男性では稀な乳がんを発症しやすくなります。また糖尿病になりやすいともいわれているので、普段の生活習慣などで気をつけると良いでしょう。
また乳房の肥大や精液の減少などもあります。無精子症と診断されることもあります。そのため自然妊娠は難しく、不妊症と判断されることも多いのですが、人工授精などでの妊娠、出産の成功例もあるので、疾患が分かったら早めの対策をするのがよいでしょう。男性ホルモンを投与するなどの治療法があります。
アンドロゲン不応症
このアンドロゲン不応症は、染色体では男性として出生しますが、男性ホルモンであるアンドロゲンの異常によって、男性化が進まず、見た目はほとんど女性に見えるような疾患です。精巣女性化症候群とも呼ばれます。乳房が大きくなるなどの症状がでます。
日本では、13万人に1人の割合で発症する疾患で、X染色体依存の母親からの遺伝といわれています。具体的には、女性では2つあるX染色体のどちらかに異常ができます。その1つの劣勢遺伝子が母親にある場合、XXとなるので、もうひとつの正常な遺伝子Xが優勢遺伝子となり、その劣勢遺伝子の影響は受けません。
しかしこのような劣性遺伝子を持つ母親から男性が生まれると、XYとなり、その劣勢遺伝子の影響を受けた症状が出ることがあるのです。
症状
男性ホルモンの影響をあまり受けない疾患になるので、男性の性でありながら、女性のような外性器になることがあります。しかし、膣や子宮があるわけではありません。もちろん卵巣などもないために、月経や妊娠をすることもありません。
このような症状のため、遺伝子的には出生は男児ですが、分からずにほとんどがその見た目などから女性として育てられています。そして多くが初潮などの時期が来ないことや第二次性徴の遅さを心配し病院を訪れ、問診や内診、最終的には遺伝子検査などで発見されることになります。もちろん、今まで女性として成長してきているので、精神的な部分や性的志向なども女性に向いています。
治療法
この疾患の治療法については、とても慎重に行われることが多いといいます。
多くが女性として生きてきているので、妊娠や出産の可能性がないことを告知すること自体が医師や家族などにとって最大の難関といわれています。
さらに告知後の治療法についても、遺伝カウンセラーや医師などと協力して、本人の気持ちを汲みながらの治療をすることになります。女性としてこのまま成長できるように心身ともに補助をすることが第一になります。
具体的には、エストロゲンなどの女性ホルモンの補充療法や、体内に精巣がある場合などは、将来がん化する可能性があるので、手術で取り除くなどの治療が行われます。身体の治療では、膣の形成や陰毛欠乏の場合は手術や薬物療法での植毛など、女性として性生活を可能にすることを第一にします。
このように、疾患であることが判明したことで、精神的なダメージを大きくしないために、身体的な治療と共に、メンタルケアを重視していかなければならない疾患です。
まとめ
いかがでしたか?半陰陽や性分化疾患を少しは理解していただけましたか?
半陰陽という状態、またその他の性分化疾患などの症状は、それをもつ本人にとってとても受け入れがたく、辛いこともあるでしょう。しかしこのような状態を前向きに捉え、その人でしか歩めない輝くような人生を歩んでほしいと思いますね。
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